メニュー

関連ページリンク

トップ > 本 小説 > 本 小説 - 人気ブログ(Blog)検索結果詳細 (2010年3月12日 1時)

[書評]のメルマガ vol.446

■■----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ               2010.03.10.発行
■■                             vol.446
■■ mailmagazine of book reviews     [ほんまや、歩いたはる 号]
■■----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------

★「背伸びして本を選ぶ」/十谷あとり
→司馬さんの思い出

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→紙芝居とデジタルとウクレレと猫、そして尼崎(1)

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/大麦親父乳酸脂肪
→忠臣蔵を観る

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→絵本の絵をみること、読むこと

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/庄司善彦
→出身企業は“母校”、そして私は“卒業生”

★献本読者書評のコーナー
→著者の方、出版社の方、読者の方、つまり、みんな必見です。

---------------------------------------------------------------------
■トピックス
---------------------------------------------------------------------
■今回の献本読者書評のコーナー

 ここのところ、毎回、ご紹介できて嬉しく思います。

 月末号の執筆者でもある守屋淳さんがプライベートブログで書評です(笑。
『暁の群像 豪商 岩崎弥太郎の生涯』(作品社)の書評、リンク先でお楽
しみください!

 NHK大河ドラマ「龍馬伝」で、あまりにリアルな、つまり小汚い姿が話
題になっている岩崎弥太郎の生涯を描いた小説です。筆者として気になるの
は、やはり渋沢栄一との絡みの部分。二人のこんな会話が描かれています。

 http://plaza.rakuten.co.jp/anjienji/diary/201003070000/

 まだまだ募集中の「献本読者書評」は、巻末のコーナーで!
---------------------------------------------------------------------
■「背伸びして本を選ぶ」/十谷あとり
---------------------------------------------------------------------
3 司馬さんの思い出

二月七日、思い立って、司馬遼太郎記念館に行くことにした。
近鉄の河内小阪駅で降りるのは十数年ぶりである。

わたしが通った高校は、河内小阪の東隣の八戸ノ里(やえのさと)という駅の
近くにあった。高校の三年間、毎日のようにこのあたりを歩いた。朝、パン屋
さんに寄って昼食を仕込んだり、部活の帰りにコロッケや回転焼きを買って食
べたりした。小阪の栗林書房や、西友八戸ノ里店の中の本屋さんにもよく寄っ
た。小遣いを惜しんで、立ち読みばかりした。かつてそのように親しんだ街の
中に、目指す記念館はある。

商店街を抜け、住宅や商店が密集している中を、覚えのある方向へ進む。公園
がある。中小阪公園だ。しかし見違えるほどきれいに整備されている。四角い
レリーフがあるので近づいてみたら、「二十一世紀に生きる君たちへ」の文学
碑だった。
昔通った道とはいえ、様子が変わっていて、歩いていても何となく頼りない。
やっぱり地図持って来た方がよかったかナ、と考え始めたあたりで、周囲の人
家とまったくなじまない、コンクリートとガラスの建物が現れた。立ち止まっ
て写真を撮っていたら、紺色のジャンパーを着た女の人が、にこにこしながら
「お撮りしましょうか?」と声を掛けてくれた。

記念館の入口はコンクリートの建物の先にあった。入口の周囲に高く巡らされ
ている白い塀を見て、ようやくなつかしさが湧きあがってきた。ここが司馬さ
んの自宅だった。学校の帰り、(この中に、司馬さんがいたはるねんな)(今、
ひょっとして、小説書いたりしたはるんかなぁ)と、ちょっとどきどきしつつ、
塀の前を通り過ぎたことを思い出す。その憧れの家に、足を踏み入れる日が来
ようとは。
門の前でしばらく感慨にふけっていたかったが、門のところにやはりジャンパ
ーを着た年配の男性がふたりいて、
「こんにちは」「チケットこちらで買うて下さいね」
と案内してくれるので、ぼやぼやしていないで中に入る。ここの人は、どうも
みなさん親切である。

記念館は司馬さんの自宅と、コンクリートの展示室の二つの建物で構成されて
いる。自宅は非公開だが、書斎は生前のままに保存され、庭から見学すること
ができる。
庭には、落葉樹や灌木がたっぷり植えられていて、雑木林のような景をなして
いる。庭を見回しているわたしの背後で、
「この枯れたとこ、切ったらええんや」「いや、まあ、置いといた方がええん
とちゃう」
などという声が聞こえる。さっきの案内のおじさんたちの庭談義だ。確かにこ
れだけ木があれば、手入れのし甲斐はありそうだ。

書斎の窓に近づいてみた。南向きの大きな窓、窓際に読書用の大きな座椅子、
その奥に執筆用の机。壁面はすべて本棚。家具調度に趣味やこだわりはなかっ
たようで、実用本位の部屋という印象。机の上には、ダーマトグラフを何本も
差したペン立てが。その横に目をやって、(あ)と、ちょっと涙ぐみそうにな
った。黒縁の眼鏡が置いてあった。

次に、安藤忠雄氏設計の展示室に向かう。さっきのコンクリート建築、バーム
クーヘンを四分の一に切ったような建物だ。外周のアールに沿ったガラス張り
の回廊から入る。回廊に、鹿児島県から届いたという菜の花の切り花が並んで
いる。そこに薄い日がさしてきた。目の底が明るくなった。

実は駅前から、記念館までの道沿い、中小阪公園、そしてさっき覗いた書斎の
前にも、菜の花忌を前に、地域の人たちが育てて持ち寄った菜の花がたくさん
飾られていた。道々、(みんながみんな司馬ファンでもないやろうに、何かま
ちおこしの御輿にされてるみたいで、ヘンな感じ)と、ほんの少し拗ねながら
歩いて来たのだが、ここまで来てようやく素直にこころがほぐれて、ええな、
きれいやな、と思えた。この時期記念館を訪ねる人は、蜜蜂のように菜の花の
黄をたどって歩けるのである。すてきなことではないか。

展示室の大書架は文字通り圧巻だった。蔵書六万冊のうち二万冊が展示されて
いるのだという。ひとりの人の蔵書が、建物ぐるみでひとつの作品になってい
るのだ。カーブする壁一面の本の背を、三階分の高さのあるステンドグラスか
らの光がやわらかく照らしている。無色のステンドグラスはまるでポジャギの
ようで、ガラスそのものも、ガラスから入る光もとてもうつくしい。(しかし
本は日焼けするかもしれない。)これらの本の集積は、司馬遼太郎の何ごとか、
またそれを超えて、人間の営みの何ごとかを語っているように思えた。買う、
読む、調べる、考える、書く、そのひとつひとつの中にたくさんの人間の生が
詰まっているのだ。

展示室の出口、著書販売のコーナーで、記念に一冊と思い、『微光のなかの宇
宙』を買う。受付の人が記念館オリジナルの書皮を掛けてくれた。わたしはそ
れを鞄にしまった。

高校の時も、よく書皮を掛けた文庫本を鞄に入れて歩いていた。
高校三年の秋から卒業の春まで、部活を引退してそれまでより早く帰宅するよ
うになると、ときどき、司馬さんが八戸ノ里の駅前を散歩している姿を見かけ
るようになった。
司馬さんは背もそんなに高くないし、服装も地味だし、歩いている後ろ姿はい
かにも市井の人といったたたずまいだった。白い髪だけが目立っていた。いつ
も奥さんと一緒で、とても仲良さそうに見えた。学校帰りのわたしたちは司馬
さんを見つけると
(あ、司馬さんや)(ほんまや、歩いたはる)
などと目配せをしたりくすくす笑ったりした。司馬さんはとにかくエラい人で、
そのエラい人が、自分たちの遠い親戚のように学校の近所に住んでいるという
のがうれしくて仕方がなかったのである。
ある日の帰り道、わたしが司馬ファンだということを覚えていた友達が、わた
しの二の腕を突いて
「あんた、サイン貰うてきィ」という。
はっと前を見ると、十歩前くらいの距離を司馬さんが歩いているのである。
「えッ」「え、やないがな。あんた、好きやねんやろ。チャンスや」
信号が赤に変わり、司馬さんと奥さんは横断歩道の手前で立ち止まった。わた
したちは追いついてしまった。友達にもう一度、二の腕を押された。わたしは
あわてて鞄の中を見た。この時もし司馬遼太郎の著書を持っていたら、蛮勇を
ふるって声を掛けたかもしれない。しかし鞄から出てきたのは、大江健三郎の
『洪水はわが魂に及び』の下巻だった。信号は青になり、司馬さんは道の反対
側へ渡って行ってしまった。

司馬さんの『風塵抄』というエッセイ集に、自宅周辺の散歩について書いた文
章がある。以下引用。

《私は毎日駅前あたりまで散歩する。
急行のとまらない駅ながら、公立二つ、私学二つの高校生が利用していて、午
後の散歩のときなど、しばしば下校時の群れに出くわす。
景色のいい生徒もいるのだが、多くの諸君諸嬢の場合、コロンボ風に歩く。こ
のため私などガチョウの群れにまぎれこんだような錯覚をもってしまう。
コロンボ映画のなかのコロンボ刑事には、痛烈な精神性があってまことに結構
なのだが、諸君諸嬢の場合、天然自然にコロンボ歩きである。
むろん、それがわるいというのではないが、せっかく学校へ行っているのだか
ら歩き方ぐらい教わればどうだろうと、ときに思ったりする。
――歩き方が体育の基礎です。
といった女子体育大の卒業生がいて感心したことがあったが、その人の母校で
は教科として歩き方を教わるというのである。
「一直線上を歩きなさい。前へ出す脚は、一歩ごとひざをまっすぐに。また上
体を正して、無用に動かさないように」
といったことだろう。それに加えて下腹に力を溜めて歩けば、精神の訓練にも
なるし、個人としての自然な威厳もでき、娘はまちがいなく何割か美しさを増
す。》[「歩き方」(一九八八年二月三日)より]

数年前このくだりを読んで、わたしは恥ずかしさで全身が真っ赤になりそうだ
った。ガチョウの分際で、サインをねだったりしなくてよかった。一生忘れら
れない愚行を、一つ増やしてしまうところだった。
しかし、どのみちくだらないことや愚かなことを重ねながら過ごしているのな
ら、生きている間に、あえて死ぬほど恥ずかしい思い出を作ってみてもよかっ
たのかもしれない。今になって、そう思う。

〈じゅうや・あとり〉ボタン屋さんの隅っこで古本屋をやっています。毎週土
曜日営業です。大阪船場のレトロビルに遊びにいらして下さい。
「ボタン王子のお店」http://artsynchs.co.jp/
「このはな文庫@船場ビルディング」http://konohanas.exblog.jp/

---------------------------------------------------------------------
■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
---------------------------------------------------------------------
<3> 紙芝居とデジタルとウクレレと猫、そして尼崎(1)

 初回、2回目と、昔のことばっか書いてきたんだけど、あんまり昔のことば
かり書いてると、昔懐かしがってるだけのオッサンと思われそう(事実、そう
なのだけど……)なので、今回は「今」を。

 昨年10月から、朝日新聞のウェブサイト『就活朝日』というところで、森
元暢之氏が『青空ノブくん』という漫画を、連載している。
 http://www.asahi.com/job/2011/

 ほしよりこ『きょうの猫村さん』(既刊1〜3巻:マガジンハウス)、唐沢
なをき『俺とねこにゃん』(既刊1巻:小学館)を例に引くまでもなく、書店
で単行本として並べられている漫画でも、その初出連載は紙の雑誌ではなく、
ウェブあるいはモバイルであるという作品が、近頃とみに目に付くようになっ
てきた。

 そのこと自体は、マンガという表現分野の、その発表媒体の裾野が広がった、
という意味において、マンガにとって、あるいはこれからマンガの世界を目指
す人たちにとっても、歓迎すべきことだと、わしはとらえている。

 また、デジタルという新しい媒体を得ることで、従来の紙媒体とは違う「文
法」もそこに生み出されてくるだろう(すでに生まれつつある)し、それによ
って、マンガの可能性もさらに大きく深くなってゆくと思う。

 ただ、現今の出版不況、とりわけ雑誌の低迷を救う“切り札”……には、な
り得ない、とも思うのだけど……
 雑誌つーのは、「雑」……即ち「その他諸々」があってこその「雑誌」だと
思うし、「雑」を実現する媒体としては、紙に如くものはない、とも思うから。

 森元暢之氏は、80年代に『ガロ』でデビューした後、同誌上に少年愛ある
いは古本、あるいは「大阪・たこ焼き・タイガース」をモチーフとした作品
(この説明で「どんな漫画やねん?」と思った人は、後述の氏の単行本を、な
んとかゲットしてご参照ください。「な〜る」と納得いただけます。)をコン
スタントに発表し、『ガロ』衰退後の90年代には、大阪在住のまま、『朝日
新聞』、『ぴあ』、また『ガロ』後継の『アックス』、それから西明石の極小
出版社「幻堂出版」発行の超不定期刊行誌『気刊・何の雑誌』などを舞台に、
漫画家としての活動を続けてきた人。

 この森元氏が、21世紀初頭、絶不調に陥ったのである。

 まったく描けなくなってしまった……そうだ。

 原稿用紙に向かっても、いったい何をどう描けばいいのかわからない……そ
んな漫画暗夜行路な日々の中で、氏が「漫画のリハビリ」として選んだ手段が、
「紙芝居」だった。

 森元暢之氏は、一旦は漫画として構想した物語を、二篇の「紙芝居」に仕立
てた。

 『原罪と楽園の追放』は、サナトリウムの敷地に生える1本のイチジクの樹
と果実をめぐって、二人の美少年と入院患者の少年が全裸で絡み合う、少年愛
的エロティシズムに溢れた一品。

 「雪女」から着想を得たという『恋はお好みに』は、愛を求めてさまよう女
の、悲しい涙が夜毎鉄板にはじけて散る、大阪コナモン文化の哀愁を、コミカ
ルかつリリックに描いた佳品。

 氏は、この自作の紙芝居を携え、音楽担当のギタリスト・たらすな氏の助演
を得て、地元・大阪のライブハウスやギャラリーなどで、上演する活動を始め
たのである。

 題して「森元暢之紙芝居一座」。
 森元暢之氏の、訥々とした、しかし妙に多弁な語りと、その語りに合わせて
時に扇情的に、時にものがなしく、即興で演奏されるギター、時にウクレレの
伴奏付きの紙芝居興行は、一部に熱狂的ファンを生み出すほどにうけた。

 漫画に対する読者の反応というのは、間接的にしか作者に伝わってこないの
だけど、紙芝居は「ライブ」だから、直截に、その場で観客の反応がダイレク
トに伝わる。

 手塚治虫は、漫画を「紙の映画」と言ったそうだが、その伝でいくと、さし
ずめ紙芝居は、「紙の演劇」、だろうか。

 「森元暢之紙芝居一座」は、公演を重ねるごと、森元氏の語りとたらすな氏
の演奏のシンクロ度も深まり、時にさしはさまれる森元氏のアドリブにも、た
らすな氏がアドリブで答える、というジャムセッションの様相をも呈し、その
円熟味を増していった。

 生来の遅筆もあって、量産はもとよりかなわないが、森元氏本来のペースで
紙芝居の「新作」も描きあげ、上演演目も次第に増えていったのである。

 そして、紙芝居の新作作りと平行して、漫画の制作にも取り掛かれるように
なって、森元暢之氏の「リハビリ」は、見事に功を奏したのである。

 前述の『青空ノブくん』は、その成果とも言える。
 
 『青空ノブくん』もそうなのだが、ウェブの漫画はたいていが、「1画面1
コマ」の構成で進行する。
 従来の紙の漫画は、見開き2ページを1画面として、2ページ、2ページの
リズムで構成するのが「文法」だったのだが、ウェブにはこの文法は通用しな
い。

 1画面1コマ……それは、まさに「紙芝居」だ。

 だからこそ、森元暢之氏が紙芝居で培った感性は、今やウェブ上で、このメ
ディアであればこそ、遺憾なく発揮されているように思える。

 さて、話を紙芝居に戻すが、森元氏の単行本を発刊したこともある、西明石
の極小出版社・幻堂主幹のなかのしげる氏にも、この活動は知ることとなり、
その上演に立ち会ったなかの氏は、「紙芝居」という、古くて、しかし新しい
表現媒体の可能性を、直感的に悟ったのである。

 家族総出の手弁当で製作した自主映画を、やはり家族総出の自主上映会でも
って公開する「自作自演」の映画作りから出発して、家内制手工業的出版に手
を染めたなかの氏は、なにをやるにも「ライブ」の人であった。

 「森元暢之紙芝居一座」の紙芝居は、そのなかの氏の「ライブ」魂に火をつ
けたのである。

 「映画」「出版」に続くパフォーマンスとして、なかのしげる氏は、この森
元氏の「紙芝居」をメインとしたイベントを、またイッパツかましたろやない
け、と、やや髪が薄くなりかけたアタマの中に、ライブ魂フツフツと沸騰させ
ながら、お湯割り焼酎ぐっと飲み干した、2003年神戸の夜なのであった。

 ……と、この項ちょっと長くなりそうなので、次回に続く。

※森元暢之氏の単行本は、『反省しない犬』(青林堂)、『NOBARA オ
チンポ博士の異常な愛情』(幻堂出版)。どちらも現在やや入手は困難だけど、
気長に探せばどっかにあります。

※森元暢之氏のHP( http://www.geocities.jp/onobichan/ )でも、その紙
芝居と漫画の一端は、見ることができます。

---------------------------------------------------------------------
■「日記をつけるように本の紹介を書く」/大麦親父乳酸脂肪
---------------------------------------------------------------------
第3回 忠臣蔵を観る

 日本人の生活や行動様式、あるいは考え方など諸々の事柄に深く根付いてい
る「忠臣蔵」。この物語が最も早く完成された形で登場したのが、人形浄瑠璃
の「仮名手本忠臣蔵」。寛延元年(1748)に大阪の竹本座にて初演された。実
際の事件から48年目のことである。二代目竹田出雲・三好松洛・並木千柳の
三名による合作と云われている。そしてその年のうちに人間が演じる、歌舞伎
でも初演されたそうな。

 なぜ「仮名手本」なのか。仮名の数は四十七。四十七士と同じであり、複雑
なこの事件を仮名交じりのわかりやすい文章で紹介しましょう、という意味が
あるという。
 それから250年間、この「仮名手本忠臣蔵」は歌舞伎の最高傑作のひとつ
に挙げられ続けている。近代になり映画が生まれ、そしてテレビが誕生しても、
この「仮名手本忠臣蔵」は“忠臣蔵”の原点として、その存在を示し続けてい
る。そして圧倒的な上演回数は多くの名優による様々な演出方法・型が生まれ、
現在に至る。

 実際、「仮名手本忠臣蔵」はおもしろい。構成が緻密であり、無駄がなく、
登場人物の造形がしっかりしている。筋書きに荒唐無稽な処が少ないので飽き
が来ない。

『芸づくし忠臣蔵』(関容子 著 文藝春秋 (1999))
 本書は、平成11年に発刊された。「仮名手本忠臣蔵」をめぐる歌舞伎役者
の芸談を取材してまとめたものである。役者だけでなく義太夫語りや後見役、
端役・ちょい役の大部屋役者たち、さらに道具方などの裏方たちの話も収録さ
れている。それも一段目にあたる大序からエピローグになる十一段目まで場面
ごとに細かい演出方法や舞台進行方法が載せられている。

 最初の「大序」では今は亡き中村歌右衛門に話を聞きに行く場面から始まる。
長い物語の導入部にふさわしい、まさにこの『芸づくし忠臣蔵』の「大序」で
ある。この立女形に「大序」のヒロインである、顔世御前の話を聞いて著者は
「大成駒が話すと、顔世の妹の姉自慢のように聞こえる。」と云っている。ま
ったくいかに著者が歌舞伎を愛し、成駒屋(中村歌右衛門)を尊敬し、そして
成駒屋から信頼されているか、がよくわかるのである。この著者であるからこ
そ本書ができあがった訳で、他の人ではこうはいかない。

 以下、最後のページまで著者の歌舞伎への愛が貫かれている。

 「大序」では、そもそもことの起こりが語られているが、「仮名手本忠臣蔵」
では“邪恋”にその原因を求めている。現在の物語としての忠臣蔵では浅野内
匠頭が吉良上野介へ刃傷に及んだその原因は、賄賂が少ないことによるいじめ
にあった、ということにしているのが最もポピュラーであるが、歌舞伎では高
師直(吉良上野介)が馳走役である塩冶判官(浅野内匠頭)の奥方である顔世
御前(阿久利)に懸想してしまうことが、ことの発端なのである。このように
わかりやすい原因ではあるが、しかし実を云えばこの大序にはひとつのトリッ
クが仕組まれている。それは塩冶判官と同役である桃井若狭之助(伊達左京亮)
は直情径行な性格であり、金と女と権力が大好きな高師直とことあるごとに衝
突している。この「大序」においても桃井若狭之助が高師直と言い争い、それ
を温厚な塩冶判官が取りなす、ということを繰り返す。つまり観客は高師直に
対して刃傷沙汰に及ぶのは若狭之助の方であると、てっきり思いこんでしまう
訳である。それは次の二段目でも受け継がれ、この場で若狭之助は家老の加古
川本蔵に、高師直を討つ覚悟を語る。ところがどっこい、三段目で実際に刀を
抜いて高師直に斬りかかったのは、塩冶判官であったわけだ。このどんでん返
しはこの芝居の最も良くできた部分のひとつであろう。

 芸談・裏話もこの部分をよく伝えている。芝居は役者がしっかり思い入れて
演じなければ観客は感じられない。そのとおりでこの「大序」(発端)、「二
段目」(決意)、「三段目」(急展開)と本書、『芸づくし忠臣蔵』ではまさ
に芝居のおもしろさ、見所を的確に伝えている。

 忠臣蔵の主人公たる大星由良之助(大石内蔵助)が登場するのは、ようやく
四段目になってからである。この大星由良之助という人物は器が大きく、品格
も備わり、冷静に判断し、まことに大人の男の手本になるような人物である。
歌舞伎で一座の立役者が演じる人物としては第一級の人物であり、この由良之
助の形を歴代の立役者たちが造り上げ、そしてそれが近代の映画、演劇で演じ
られる大石内蔵助という人物に投影され、今の歌舞伎にまたブーメランのよう
に戻ってきてさらに洗練された大星由良之助像というものが練られてきている、
と云えるであろう。本書でもこの四段目の由良之助の演出について最も多くの
頁を費やしている。

 「仮名手本忠臣蔵」は、この後、浄瑠璃の「道行」を挟んで、五段目・六段
目と勘平、おかるの悲劇を扱う。この錯誤による悲劇は、演出にはそれなりの
高度な計算がなされていて、観客にはわからないようなたくさんの決まりが存
在する。本書を読んでそれを確認する楽しさは、芝居好きには格別であろう。
 七段目に再び由良之助が登場する。この場はいわゆる、敵を欺き遊興にふけ
るお大尽の由良之助の場面である。

 八段目・九段目は、最近の歌舞伎座ではあまり上演されることも少なくなっ
てしまったが、大星家と若狭之助の家老である加古川家の物語であり、他の幕
にひけを取らないばかりか、この場がもっとも素晴らしいという人もいるくら
い、完成度の高い場面である。

 十段目は、現在はほとんど観ることができない場面である。この場面は昔を
良く知っている古老たちが駄作、と口を揃えていう場面であるので、本書でも
ほとんど触れていない。しかし芝居は上演されてそれを観なければ観客は何も
判断できないのであるから、是非とも観てみたいと思う。

 最後の十一段目は、討ち入りの場面であるが、現在この場は単に剣劇の場面
になってしまっている。忠臣蔵だから討ち入りがないと、という意見に従い、
この場を出しました、というまったく趣というか情緒のない最終場面であり、
「足取りの速い、それだけコクのない」場面になっている、と著者は云うがま
ったくその通りだと思う。

 「仮名手本忠臣蔵」では三人の侍が劇中に腹を切る。そして三組の愛の物語
でもある。主な登場人物は最終的にすべて死んでしまう。残るのは女性だけだ。
侍の世界を象徴するような物語である。

 著者の関容子さんは役者をはじめとした歌舞伎の関係者から信頼されている。
それが本書を素晴らしい良書にしている核心の理由であろう。

大麦親父乳酸脂肪(大田区に棲息し昼間は新宿区にも出没する大人の男)

---------------------------------------------------------------------
■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
---------------------------------------------------------------------
3 絵本の絵をみること、読むこと

 今回ご紹介するのは、とびきり愉快で楽しい一冊。絵の好きな人であれば、
さまざまな見方、読み方もできる絵本です。

 『えのはなし』 ポール・コックス作 ふしみみさを訳 青山出版社

 絵本といってみましたが、絵の本と、あえて「の」をいれた方がぴったりき
ます。絵本の形で「絵」について物語られている、まさにタイトルにあるよう
に『えのはなし』だからです。
 本の大きさは、高校生くらいの食欲旺盛な男子が喜びそうなお弁当箱くらい。
 厚みは2センチちょっと、読みごたえのあるページ数。
 そして、本の裏表紙にあるバーコード以外、出版社のロゴ含めて、すべて訳
者のふしみさんが手書きしています。タイトルも、作者名も、そして物語の文
字すべてを。作者のポール・コックスさんも、絵と物語を描いただけでなく、
ページのデザインもしており、まさにふたりのコラボレーション作品に仕上が
っている絵本。

 開いてみます。

 一ページに一枚の絵、そこに二、三行の文章で綴られる物語。
 そのリズムは最後までかわりません。

 さて、肝心のお話は、どんなでしょう。

 若くて貧しい絵描きのルコ・ポックスが主人公。彼は、アトリエの窓から見
えるお姫さまに恋します。お姫さまも窓から見える、アトリエで絵を描いてい
るルコ・ポックスに恋します。ふたりの思いは同じなのですが、恋に障害はつ
きもの。お姫さまのお父さまである王さまは、ふたりの恋路に猛反対します。
もともと、お姫さまが年頃になったら、自分の家来と一緒にさせようと思って
いたからです。家来もその日がくるのをよだれをたらさんばかりに待っていま
した。

 けれど、ルコ・ポックスが登場したのです。ふたりの思いはつのるものの、
直接会うこともままならないので、関係は見つめあうのみ。気晴らしに散歩に
出かけたルコ・ポックスは不思議な老人と出会い、魔法の筆を授かります。心
のきれいな人が使うとすばらしい絵が描けるという筆で、ルコ・ポックスはた
くさんの絵を描き、評判になっていきます。

 まず、その筆を使うと、絵に命が宿ります。命が宿った絵は、カンバスから
飛び出し、意志をもって動き回ります。けれど、絵は絵なのです。飛び出した
人や物は紙の厚みしかありません。その紙の厚みで動く絵の人間にも、物語で
は意味があります。
 そして、描かれた絵は、時間がたつごとに、絵自体が本物に近づいていくか
のような変化をみせます。

 この変化は読み手にも伝播します。

 線画でさらっと描かれた人物たちが、グリーン、オレンジなど発色の美しい
ページの中で、どんどん魅力を増していくのを読み手のわたしも実感できる、
つまりここにも変化がおきているのです。最初のページのお姫さまより、ペー
ジを重ねたあとの方がよりすてきなお姫さまに見えてくる、それは絵と物語が
両輪で読み手に近づき、ユーモアで気持ちを動かすからに他なりません。

 片岡義男さんは『本についての、僕の本』(晶文社)の中でこう書かれてい
ます。

 「ひとつの状況に対する人間の側からの働きかけを、通常とはまるでちがっ
た方向から見ることによってユーモアというものは生まれてくる。だから、あ
らゆるユーモアは、多少ともシュールな傾きを持つ。」

 作者ポール・コックスさんのユーモアな世界はまさにそう。シュールな傾き
をあわせもち、物語にコクをだしています。

 さて、物語の王さまは、自分のことばかり考えていて、意地悪な怠け者だっ
たのでその国は、暗くて退屈な国でした。けれど、ルコ・ポックスの絵のおか
げで、人々は世界はそんなにわるいものじゃないと気づいていくのですが、そ
の魅力をみごとに紹介されている松井るり子さんの文章を引用しましょう。

 ご自身も絵本を訳される松井さんが新聞に寄せたものです。

 「わっはっはと何度も大笑いさせられてしまう中で、結論がちゃんと絵画論
になっているところに感心します。」

             (中日新聞(関東地方は東京新聞) 夕刊文化面
    「続・絵本がともすあかり〜読み解きの楽しみ」2009年3月22日付)

 ほんとです。
 さらりとした軽やかな絵を見て、読んで、笑う、一呼吸おくと今度は絵本か
らもたらされた幸せを感じる――実にいい気分です。

(林さかな)
会津若松在住。主に児童書の新刊紹介をネットで公開したり、出版翻訳データ
ベースのサイト( http://www.trs-data.com/ )にて、翻訳者のインタビュー
記事を書いたりしています。個人ブログ http://r2fish.cocolog-nifty.com/

---------------------------------------------------------------------
■「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/庄司善彦
---------------------------------------------------------------------
出身企業は“母校”、そして私は“卒業生”

私は2000年に大学を卒業し、晴れて社会人となりました。当時は“就職氷河期”
と呼ばれる厳しい時期だったにも関わらず、遊びが高じて大学を1年間留年し
た私。大学4年次には親からも先生からも、就職自体危ぶまれていた、典型的
なダメ学生でした。

自分でも「本当に就職できるのか?」という疑念を抱きながらの就職活動だっ
たのですが、衣料品を取り扱う流通系企業S社から内定をいただき、運良く入
社することになりました。「よくぞこんな自分を拾ってくださいました!」と
いう感じです。

S社では毎年70〜80名程度の新卒を採用しており、私が入社した年の同期
入社は過去最多の106名。入社後は2〜3名ずつ関東エリアの店舗に割り振
られ、勤務にあたるのですが、入社後1年間は必ず月に1回、本社での集合教
育参加が義務付けられていました。

そこで同期同士顔を合わせて、昼は教育、夜はお互いの近況報告も兼ねながら
飲み会というのが定例パターン。羽目をはずしすぎて終電を逃し、同期数人と
駅前で雑魚寝して夜を明かしたこともありましたし(当時はネットカフェやマ
ンガ喫茶がまだ少なかったので)、本社教育ではない日でも、勤務地がバラバ
ラな10名前後の同期が勤務終了後1ヶ所に集まり、夜通し騒いで翌日また仕
事、みたいなことも多々ありました。今考えると、そんな体力よくあったよな
〜と恐ろしくなってしまいますね。きっと、若さの特権でしょう。

S社では、店長、本社バイヤーと面白いポジションを経験させていただきまし
たが、最終的には3年数ヶ月で退職することになりました。その後数回の転職
を経て、現在に至っております。

S社時代の同期付き合いは今も健在です。月に1度は飲みのお誘いがあったり、
離職組・在職組問わず集まる忘年会が毎年開かれたりして、切っても切れない、
一生モノの縁だなぁと感じずにはいられません。

最近では離職組の同期同士で「俺達で会社作って新しいビジネスでも立ち上げ
るか〜!」なんてホラ話まで出る始末。実現の可否はともかくとして、好き勝
手に全員で理想論を語りつくすのも、また面白い瞬間です。

ここで、はたと気づきました。私はS社退職後、2つの企業で勤務しましたが、
退職後も頻繁にメンバー同士で集まり、バカ騒ぎをしているのはS社出身の人
間とだけ。その後の2つの企業でも、在職時は同僚と毎晩のように飲みに行き、
今でも親交は途絶えていないにも関わらず、感覚的な薄っぺらさは否めないわ
けです。この差は一体、何に起因するのだろう?

今回取り上げる本には、その明確な回答が書かれているばかりか、企業が自社
を去る退職者に対して認識すべき、その先の強烈な提言までが記載されており
ました。

『日本で最も人材を育成する会社のテキスト』
 酒井 譲 著
 出版:光文社新書
 ISBN:978-4-334-03542-6
 発行年月:2010.1

IT関連の事業会社である株式会社フリービットにて、人事ジェネラルマネージ
ャーとして勤務している著者。奇しくも先月の書評で、私が「実際の人事担当
者が執筆した人事関連本は極めて稀」と言及したばかりだったので、今回の選
択は狙ったのか??と思われそうですが、決してそうではありません(笑)。

しかし、さすがに現役人事の方が執筆された本ということもあり、人事コンサ
ルの方が書く「こうあるべき」という論調ではなく、人事として「こうありた
い」という視点、そして実際に自社で導入されている人事制度の紹介も満載な
ため、人事担当者にとっては、ここまですんなりと内容が腹落ちしてくる人事
本というのも、珍しいのではないかと思います(あくまで人事目線ですが)。

さて、先に挙げた疑問点の回答及びその先の提言として、著者はこのようなメ
ッセージを発しています。

 「いよいよ企業は学校になる(教え合い、学び合う場)」
 「退職していく人材は、自社の“卒業生”である」
 「今後、出戻り人材(=卒業生)の活用が必須になる」

ここで私は「あ、なーんだ学校ってことか!」と妙に納得してしまったわけで
す。新卒で入社した同期生=同級生とでも言いましょうか。お互い好きなこと
を言い合いつつも、何かを教えて、教えられて、そして一緒に成長して。企業
である以上、営利団体という性質は捨てられませんが、その枠を超え、社員の
生涯学習を支えるまでの「学校」になるべき、とのご主張。なるほどなーと思
いましたね。

これが中途採用だったならば、きっと“転校生”のような感覚になるんでしょ
うか。いや、既に他社で別の教育を受け、何かしらの専門スキルを得たうえで
の転職、ということを前提にすると、転校生にも成り得ないかもな…。例え年
齢が同じでも、同期という関係性にはならないですしね。遠慮があるから、同
期生同士のような高め合い方はできないし。

であるならば、中途採用の新たな手法として「一度自社を去った“卒業生”を
呼び戻す施策を考えよう」と著者は主張するのです。この考え方は斬新でした。

中途採用選考を実施する際、採用側は候補者のスキルのみならず、「自社風土
に合うパーソナリティを持ち合わせている人材か?」について、必ずチェック
します。どんなに高いスキルを持っている方でも、自社の社風に合い、ともに
成長できる存在ではないと、お互い不幸になってしまうので当然の視点です。

しかし、念入りに選考を重ねて採用してもミスマッチが起こってしまったり、
数年後に退職されてしまったりと、中途採用は新卒採用に比べ、離職リスクの
高さを露呈することもよく知られています。

著者は本書の中で「今後労働者人口が確実に不足していく現状を踏まえた、新
たな採用手法」としてこの施策を紹介しているのですが、決してそれだけでは
ないと思います。“社会人の基礎・働き方”というアプリケーションを、会社
風土とともに最初にセットアップした会社が、一度退職した社員を呼び戻す、
という視点で考えると、離職のリスクを抑えるに留まらず、より高い確率で自
社に貢献する人材の採用が可能な、現実的な中途採用手法と捉えられるのでは、
と思うのです。

もちろんその前提にあるのは、人事(または育成担当者)による質の高い教育
と、“学びあい、高めあえる”就業環境の整備であることは言うまでもありま
せん。私も人事である以上、もし仮に自社を卒業する社員がいるならば、その
卒業生にはどこの会社に行っても、評価される人材であって欲しいと思ってい
ます。

いつまでも仕事のスタイルや考え方は、自社のイズムに染まりつつも、転職し
た他社で評価され、そしていつかは戻ってきてくれる。そんなサイクルがもし
実現でき、一般的になるのであれば、それはこれまでの転職という概念を超越
した新たな就業観として、我々の前に姿をあらわしてくるような気がします。

S社を退職して既に6年が経過した私。それでも社会人基礎力と言いますか、
“仕事をする筋肉”はS社で培われたものと実感しておりますし、今でも仕事
に対する考え方の中にS社イズムが反映されていることを感じます。

今からS社に入り直したらどのくらい貢献できるかな…なんて考えてはみたも
のの、そもそも大幅なジョブチェンジをしてしまっているので難しそうです。

せめて、S社同期の離職組で本当に起業することになったら、多少の出資ぐら
いはしてほしいものですが(笑)。ダメかな?

(庄司善彦 IT関連企業人事担当者 (財)生涯学習開発財団 認定コーチ)

---------------------------------------------------------------------
■献本読者書評のコーナー(応募要項)
---------------------------------------------------------------------

 この本が欲しい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡ください。

『100のキーワードで学ぶコーチング講座』(創元社)
 http://www.sogensha.co.jp/book/2009/12/100-1.html

『マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/geijyutsu-etc/tanpin/22575.htm

『戦う女たち 日本映画の女性アクション』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/jinbun/tanpin/22568.htm

『愛するものたちへ、別れのとき』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/kaigaibungaku/tanpin/22681.htm

『暁の群像 豪商岩崎弥太郎の生涯』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22483.htm

『坂本龍馬』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22605.htm


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

---------------------------------------------------------------------

 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社でも著者でもどちらでも結構ですが、献本を募ります。冊数は
 何冊でもOKです。メールで【読者書評用献本希望】とご連絡いただければ、
 折り返し、送付先をお知らせします。

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、熱意と販促効果優先で選ばせていただきます。

3)発行委員会はいただいたメールの中から、熱意がありそうな方をピックアッ
 プして献本いただいた本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に
 応募数が満たない場合には、100日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンやbk1、楽天などのオ
 ンライン書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。
 つまりは当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願
 いします。

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

 2000年の頃、ITバブルまっさかりの中、私もIT業界の端っこにおりまし
た。ところで、今のIT業界について先日、あるWEB下請会社の女性社長が
面白いことを言っていました。

 今やIT業界は3Kと言われ、決して若者には人気の業界ではない、という
お話。ちなみにその3Kとは、

・給料安い
・帰れない
・結婚できない

 の3Kだとか。ちなみに、その会社は女性社員が多いそうです。

 今、若者に人気の業界ってどこなんでしょうね? 昔のIT業界も決して幸
せなワークライフバランスではなかったですが、少なくとも勢いはありました。

 ところで、パワーポイントがデジタル紙芝居作成ソフトだと思っているのは
私だけでしょうか?(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ」(毎月三回発行)
■ 発行部数 4766部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレス http://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー 0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================



作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.445

■■----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ               2010.02.28.発行
■■                             vol.445
■■ mailmagazine of book reviews      [悲しみよこんにちは 号]
■■----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------

★【新連載】「アニメ<<一気見!>>時評」/ぷちとたく
→「アニメ」を「一気見」して「時評」します。

★「月刊ニュースなビジネス書評」/aguni
→JALの行方がこんな本に。。。

★「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
→今回はお休みです。

★「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
→今回はお休みです。

★「25年ぶりに英語学び直してみました」/守屋淳
→今回もお休みです。次回、再開します!

---------------------------------------------------------------------
■トピックス
---------------------------------------------------------------------
■今回の献本読者書評のコーナー

 今回のメルマガ、連載原稿がおちまくっていますので、献本書評のさわりを
ご紹介したいと思います。

 まずは、前号でもご紹介しました、inokori(h2so4こと)さんによる『戦う
女たち 日本映画の女性アクション』(作品社)の書評です。

---------------------------------------------------------------------
■『戦う女たち:日本映画の女性アクション』/inokori(h2so4こと)さん

 ここ数年くらいの話ではあるのだけれど,邦画や韓国映画をレンタルDVDで
観るのが習慣に近くなっている.帰宅後の19:00から22:00位の時間帯,以前な
ら晩酌しながら,パソコンのモニタに向かってネットしつつ,脇でつけっぱな
しのテレビをつまみ食いのように見ていたのだが,最近はこの時間帯が映画を
観る時間になってしまった.とにかく芸人を引っ張り出してきて,無闇矢鱈に
食わせるか,クイズを解かせるか,そんなのばっかりでバカバカしさや演芸が
好きなあたしでも,まるでほめられない下らなさだからだ.

 そういう次第で週に3〜4本は映画を観ているのだけれども,子どもの頃から
熱心な映画好きだったか?と問われると「映画小僧」のような時代はなかった.
若い頃は,金があれば映画よりも本につぎ込んでいたという行動パターンだっ
た.また,仮に「これは観たい」という映画があっても,上映してくれる映画
館がいつも近場になかった(それは今でも変わらない),といういわば地理的
制約もあった.さらに,映画を観るという行為は,一定の時間そのことに拘束
されるものだから,生来何事も「〜しながら」な自分には苦痛で一時映画を観
ることを断念していた,ということもある.

 ⇒続きはこちらから
 http://d.hatena.ne.jp/h2so4/20100219
---------------------------------------------------------------------

 2本目は、山崎真司さん。『100のキーワードで学ぶ コーチング講座』
(創元社)の書評をいただきました。

---------------------------------------------------------------------
■『100のキーワードで学ぶ コーチング講座』/山崎真司さん

この本は某メーリングリストでいただいた本です。タイトルの通り、100の
キーワードでコーチングというものを語っている本です。1つのキーワードに
ついては4ページ前後で書いています。

この本ではコーチングを体系的に説明している本ではなく、各々のキーワード
を通して”コーチングマインド”を感じさせるものです。”コーチングマイン
ド”というのは、コーチが持つべき考え方とでもいうものです。

キーワードで語るというスタイルは好き好きがあるでしょうが、そもそもコー
チングって何、コーチングの技法を体系的に学びたい、という方には向いてい
ないかもしれません。(そもそも、コーチングに体系的な技法があるのか知り
ませんが...) ちなみに私はキーワードで語るスタイルの本は好きです :-)

 ⇒続きはこちらから
 http://books.yamazaki-shinji.com/article/35519137.html
---------------------------------------------------------------------

 3本目は、『愛するものたちへ、別れのとき』(作品社)です。せるぶすさ
んは、Amazonに書評を投稿いただきました。

---------------------------------------------------------------------
■家族の絆/せるぶすさん

ハイチで起きた地震の後、日本のマスコミでは一時期連日のように地震の状況
が報道され、かの国の不安定な政情や貧困問題も取り上げられました。そこで
私は、初めて名前しか知らなかったハイチという国の現状を耳にすることにな
りました。けれども、地震発生から日が経つにつれて他の事件事故に関心が移
り、取り上げられることも少なくなってきています。日本で普通に暮らし日常
に追われている私もご多分に漏れず、ハイチは遠い国、新聞やテレビでたまに
記事を目にする存在になりつつありました。そんな頃、購読の登録をしていた
書評のメルマガでたまたま献本読者書評の募集を目にし、本がもらえるならう
れしいな〜なんて気軽な気持ちで応募したのが、本書と出会うきっかけとなり
ました。

治ることのない病に弱りつつある父の病状、そして著者に宿った新しい命、本
書はこうした場面から始まります。けれど、物語は貧困ゆえに著者と弟を置い
てアメリカへ行かざるを得なかった両親、そして残った彼らの世話を当然のよ
うに引き受けるもう一人の父である伯父とその一家との生活を軸にして、大国
の思惑に翻弄され政情不安と貧困にあえぐハイチの現状を浮き彫りにしていき
ます。声高に主張するでもなく、強硬な意見を述べるでもなく、著者は家族に
降りかかる災難や死、そして生まれ来る命を淡々と綴りながら、読者の心に語
りかけているのです。読み始めてすぐにその優しい文章に引き込まれ、あっと
いう間に読み終えてしまいました。

 ⇒続きはこちらから
 http://www.amazon.co.jp/gp/cdp/member-reviews/A28ULR7L2ALZCM/
---------------------------------------------------------------------

 ご協力ありがとうございます!
 まだまだ募集中の「献本読者書評」は、巻末のコーナーで!

---------------------------------------------------------------------
■【新連載】「アニメ<<一気見!>>時評」/ぷちとたく
---------------------------------------------------------------------
1 婚活に『めぞん一刻』を一気見する!

 始めまして、ぷちとたく、です。ぷちとたくは、putit otakuと表記します。
putitは可愛いとか小さいという意味のフランス語です。仮性オタク、という
意味に受け取ってください。

 書評のメルマガなのに、アニメなんて、とも思いましたが、同じレビューだ
からOKという応援をいただきました。ネタが続く限り頑張らせていただきた
いと思います。

 さて、今日、取り上げるアニメは『めぞん一刻』です。昨年夏にテレビドラ
マにもなりましたが、このコラムで取り上げるのは、元のアニメです。放映は
1986年3月26日から1988年3月2日まで。今、聞いても斉藤由貴さんの「悲しみ
よこんにちは」は名曲ですね。やってくる悲しみを友達を迎えるように笑う、
というところ、響子さんの心境とシンクロさせて、勝手にぐっときます。

 簡単にストーリーを説明します。舞台は一刻館という下宿屋さん。そこに、
管理人として、美人未亡人である響子さんがやってきます。浪人生の五代くん
はひとめぼれ。で、いろいろあった結果として結ばれる、という話なのですが、
これがまあ、高橋留美子ワールドで、多彩で個性的な登場人物と、幸せが逃げ
て行く主人公によって、実に長い長いお話になります。

 アニメを見ていたとき、響子さんはよくこんな五代君と結婚したなぁ、と思
っていました。まあ、予定調和と言えばそれまでですが、納得はできなかった
のです。今、思えば、それは絵柄のせいでしょう。どこか貧相な五代君に比較
して、色気むんむんの響子さん。なんでこんな大人が子どもをと思ったのです
が、今になって、実はこの2人が2歳しか離れていないことを知りました。

 考えてみれば、響子さんというのも無茶苦茶なキャラクターです。高校生の
とき講師として赴任してきた10歳ほど年長の音無惣一郎と出会って、高校卒業
後に即、結婚。その後、家庭に入るものの、惣一郎の死後、一刻館の住み込み
管理人に。こんな人生、リアルではなかなかないでしょうね。

 結局は2つ年下の五代くんと結婚するわけですが、そのときの年齢を考える
と、漫画版の場合には28歳、アニメ版の場合には、計算上、24〜25歳くらいで
す。高卒未亡人で、これと言って特技もない。これからの人生をどのように過
ごすつもりだったんでしょうね。やはり、最愛の夫を失くして茫然自失、何も
考えられなかったのでしょうか?

 もともとギャグマンガであるものをリアルにリアルに考えること自体、冒瀆
かもしれませんが、しかし、そう考えたときに、一つ屋根の下というシチュエ
ーションの持っているパワーはすごい、と素直に思ったのです。

 物干し台が共同だったり、隣との境に穴を空け、毎晩が宴会で、管理人さん
がつまみを差し入れ。電話は共同電話。こんな環境ではプライベートも1人で
落ち込んで暗くなることもできません。引きこもることも不可能です。そう考
えると、惣一郎さんの父である音無の爺さん(大家さん)が、なぜ、この仕事
を響子さんにさせたのかがわかってきます。一つ屋根の下、誰かに出会って幸
せを手に入れなさい、そういう親心なのではないかと思うのです。

 最近、世の中では婚活というのが流行っているそうです。昔は飲み会での合
コンというのが主でしたが、最近では、ボランティアをしたり、料理を作った
りといった、もっと人となりがわかるものが求められているとか。

 だったら一刻館でしょう。と、久々に見返してみて、思いました。廊下もト
イレも電話も物干し台も共同のアパートに住んでみる。もう人となりどころか、
いいところも悪いところも全部見えて、一緒に住むということがどういうこと
なのかが見えてきます。婚活の一環として、いかがでしょうか?

 ちなみに、フランスでも、このめぞん一刻は人気だそうです。日本人の日常
生活が見ることができて面白い、というのが高評価の理由のひとつだそうです
が、これが今の日本人の日常かと思われると、そうでもないような・・・。

 というところで今日はここまで。また来月お会いしましょう。

ぷちとたく:ライター。フランス語でちいさなオタクという意味。のつもり。
フランスではゴスロリは日本の文化ということになっているほど、日本のアニ
メが人気です。私にはオタクというほど知識はありませんが、その分、取材の
(アニメを見るだけ)に時間をかけて頑張りますので、どうかよろしくお願い
します。
---------------------------------------------------------------------
■「月刊ニュースなビジネス書評」/aguni
---------------------------------------------------------------------
 JALの元大株主の本を読んでみた。

 aguni です。

 『金儲け哲学』
 糸山英太郎 著
 出版:かんき出版
 ISBN:978-4761260118
 発行年月:2002/06
 http://www.amazon.co.jp/dp/4761260114?tag=bizknowledge-22

 2月のトピックスといえば、やはり、とうとう日本航空の株が紙くずにな
ってしまったということでしょう。若い人間にはぴんときませんが、元国有
・国策企業の株が紙くずになってしまったというのはこれはすごいことなん
でしょう。

 しかも、まだ毎月200億円の赤字を出し続けているというのですからす
ごいですよね。これから先、この会社はどうなってしまうのでしょうか?

 世の中では有名な話なのかもしれませんが、恥ずかしながら、私は知りま
せんでした糸山英太郎さん。JALの個人筆頭株主であったとき、この本に
JALの将来について語っています。

 章題は「JAL筆頭株主として航空業界一本化を目指す」。ここに気にな
る記述があります。

「私は日本には航空会社は一社あれば十分だと思っている。もっと言えば、
将来的にはANAをも合併して、国際的な競争力を高めなければ、日本の
航空会社は生き残れないのではないか。」

 とのこと。残念ながらこの構想が実現するとしたら、ANAが飲み込む形
になりそうですが・・・。

 糸山さんの主張はこういう風になっています。

「日本は島国である。外国に出かけるためには、いやでも飛行機を使うしか
ない。ナショナルフラッグであるJALが株価四百円前後の体たらくでどう
するんだ。国際的に相手にされない会社に落ちぶれていいのか。」

 ここで「ナショナルフラッグ」という言葉が出てきましたが、これも若い
世代にはピンときません。要は国の旗、国策飛行機会社とでもいうことでし
ょう。その国を代表する航空会社のことだそうですが、現在は名実ともに、
ANAがその名に相応しい企業になったということでしょうか?

 とはいえ、糸山さんも、JALがそのままで生き残れるとは思っていなか
った御様子で、

「さらに強力なコーポレート・ガバナンスを発揮し、ANAとの統合を視野
にいれて、JALを根本から建て直し、グローバルスタンダード企業に成長
させたいという思いを強めている。」

 とのこと。裏読みすれば、「コーポレート・ガバナンスに課題があり、根
本から建て直さないとグローバルスタンダード企業に成長できない」という
ことですね。

 その後、糸山英太郎さんは日本航空の特別顧問(エグゼクティブアドバイ
ザー)に就任、2009年には辞任しています。この間、何をして、何を見たの
でしょうか。気になるところです。

 ちなみにこの筆頭株主。倒産前にもちろん売りぬいていたであろうことは
想像に難くありません。同じ著者の書『怪物商法』によれば、「自分で相場
を作れる資金があるのならともかく、少ない資金で勝負をするのはおやめな
さい。」とのこと。まあ、損したのは一般投資家ばかりでしょう。糸山さん
の株の動きを見ていれば、損することはなかったかもしれませんね。

 しかし覆水盆に返らずです。残念だった方は、こうなったらJALの飛行
機に乗って、お酒をたくさん飲んで、つまみを食って、少しでも取り返しま
すか!

       aguni ビジネス書評者/(財)生涯学習開発財団認定コーチ
                 経営品質協議会認定セルフアセッサー
                 日本経営品質賞審査員
                 【bizbook.tv】http://bizbook.tv/
---------------------------------------------------------------------
■献本読者書評のコーナー(応募要項)
---------------------------------------------------------------------

 この本が欲しい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡ください。

『100のキーワードで学ぶコーチング講座』(創元社)
 http://www.sogensha.co.jp/book/2009/12/100-1.html

『マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/geijyutsu-etc/tanpin/22575.htm

『戦う女たち 日本映画の女性アクション』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/jinbun/tanpin/22568.htm

『愛するものたちへ、別れのとき』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/kaigaibungaku/tanpin/22681.htm

『暁の群像 豪商岩崎弥太郎の生涯』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22483.htm

『坂本龍馬』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22605.htm


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

---------------------------------------------------------------------

 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社でも著者でもどちらでも結構ですが、献本を募ります。冊数は
 何冊でもOKです。メールで【読者書評用献本希望】とご連絡いただければ、
 折り返し、送付先をお知らせします。

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、熱意と販促効果優先で選ばせていただきます。

3)発行委員会はいただいたメールの中から、熱意がありそうな方をピックアッ
 プして献本いただいた本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に
 応募数が満たない場合には、100日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンやbk1、楽天などのオ
 ンライン書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。
 つまりは当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願
 いします。

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

 2月は28日しかないということで、慌しいですね。お陰様で発行日が遅れた
上に、(?)月末号のレギュラー陣の原稿が全滅ということになってしまいま
したが、新連載と読者書評に救われました。ありがとうございます。

 というわけで、月末号執筆者をさらに募集します。
 我こそは!という方はお気軽にお問い合わせください。

 きっと楽しいと思いますよ!(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ 」(毎月四回発行)
■ 発行部数 4766部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレスhttp://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================



作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.444

■■-----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ               2010.02.20.発行
■■                             vol.444
■■ mailmagazine of book reviews    [▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ 号]
■■-----------------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
---------------------------------------------------------------------

★「トピックス」
→初の献本読者書評が掲載されました!

★「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→今回は受験に役立つ(?)本です。

★「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
→▲がたくさん出てきます。

★「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
→作家もコンビニも大変だ。

★【募集中】献本読者書評のコーナー
→読者の方、著者の方、出版社の方、必見です。

---------------------------------------------------------------------
■トピックス
---------------------------------------------------------------------
■今回の献本読者書評のコーナー

 このコーナーを開始して1ヵ月半。
 記念すべき、初の献本読者書評が掲載されましたので、ご紹介します。

 inokori(h2so4こと)さんによる『戦う女たち 日本映画の女性アクション』
(作品社)の書評、リンク先でお楽しみください!

 http://d.hatena.ne.jp/h2so4/20100219

 inokori(h2so4こと)さん、ありがとうございました!

 まだまだ募集中の「献本読者書評」は、巻末のコーナーで!

---------------------------------------------------------------------
■「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
---------------------------------------------------------------------
 こんにちは。大友舞子です。441号「京大法学部関連小説を読む」で『京
大少年』(菅広文著 講談社)を紹介したところ、ロザンファンの方のブログ
「YUNAKOのロザン狂」で紹介していただき、ブログを読んだ方からも温
かいメッセージをいただきました。ロザンって女心と母心の両方を震わす不思
議な魅力がある芸人さんなんですね。ありがとうございました。

高校入試「国語」に役立つ、おもしろ本

さて〜、昨年の今ごろのこと。高校入試を直前に控えた長男が「国語の長文読
解がまったくわからん」と言い出しました。国文出身の母にとって、「まじで
?長文なんぞはカンでするもの、教えられない!」とは思ったものの、これで
落ちてはたいへんと、ワラをもすがる思いで書店に駆け込み、あちこち探して
数冊の本を購入。ということで今回は、高校入試国語に役立つ本。

そのとき、おばちゃまが買った本がこちら⇒

『小説入門のための高校入試国語』(石原千秋著 NHKブックス)
『評論入門のための高校入試国語』(同上)

 石原千秋さんは、日本文学科の大学教授。このほかにも中学入試から大学入
試までを分析解説した著書が多数ある、「入試国語」の研究者です。

 で、最初は長男のためにと読み始めたんですが、いやこれがおもしろかった
のなんのって。時々、「こんなこと書いちゃってええのん?」と爆笑しつつ、
読みました。

 先生は、入試国語に出る長文のジャンルとコンセプトは決まってると書いて
ます。それは何か?たとえば、

【小説の長文の場合】
○父と子が登場する場合=父はいつも強く正しい
○母と子が登場する場合=母は愛にあふれた孤独な存在。過去で語られること
 が多い
○老人=生と死を教える存在として描かれる
○恋愛=恋心に気付かなかった思い出として描かれる

 というもの。というか、この主題でしか描かれないから、その文脈を読みと
っていけば正解はわかりやすいといいます。

「おいおい、父がいつも強く正しい?わけないじゃん」とか「だったら苦労し
ね〜よ」みたいな感想はここでは忘れないと試験でいい点は取れマセン。

 では評論文ではどうでしょう?

【評論】
○自然=自然と人の関係では「開発は善」、「開発は悪」、「地球にやさしく」
 の3つの論があるが、高校入試では「地球にやさしく」の思想しか出題され
 ない。
○比較文化=かならず、比べるのは日本と西洋。日本は察する文化、西洋は主
 張する文化などの対比が多い。

 です。なるほどね。
 で、こういう記述の中にときどき大胆な発言が飛びだすのです。

「科学技術の問題がさかんに出題されるけれども、面白いものはほとんどない。
 しかし、だからといってその結論が重要ではないわけではないのだ。世の中
 には平凡で退屈でも大切なものがあるということは、覚えておかなくてはな
 らない」

「国語の教員にも科学はよく理解できないことが多いから、受験生にもよくわ
 からないだろうと考えるのがふつうだ。(略)同じように比較文化の場合も、
 国語の教員には西洋の事情はよくはわからないから、どうしても一般論が中
 心でやさしくなる」

 ここで私、爆笑しました。自らも国語の教員だからこそ言えるのかと思うけ
ど「国語の教員には西洋の事情がわからない」って言うとこ、大胆。でも確か
にそうかも。いずれにしても、ここまで言い切れるのはおもしろ〜い。

 と笑いつつ読んだ2冊ですが、難点が1つ。どちらも字がびっしりで300
ぺージにもなろうかという本。もし、これが読みこなせる中学生がいたら、入
試の長文なんて屁でもないでしょう。誰か〜中学生向きにこの本の図解本、作
ってやれ〜!

 この後、入試国語に目覚めた私はこんな本も発見⇒

『東大入試 至高の国語第2問』(竹内康弘著 朝日新聞社・朝日選書)

 東大入試である時期出題されていた記述式問題を例に、小手先だけの受験技
術では解けない、むしろ優等生ではない、深く考えることのできる生徒を選び
だす問題とは何かを考察した一冊。この第2問に対して予備校などが作成した
模範解答への批判が爽快。こちらもぜひ読んでください。

大友舞子(おおとも・まいこ) 
昭和20年代生まれ。雑誌と単行本それぞれ少々づつ仕事してるフリー編集&
ライター。関東生まれで関西在住。

---------------------------------------------------------------------
■「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
---------------------------------------------------------------------
【マキァヴェッリ全集を読む14】「戦争の技術」三巻〜五巻

第三巻は編成の基本について述べている。基本的な考えは、「会戦のために部
隊を配備する人々が犯す最大の混乱のもとは、最前列の兵士だけに一回限りの
突撃と、出たとこ勝負を与えて、それにゆだねてしまうことだ。これは、一列
隊をほかの隊列に組み入れるという古代人が使った方法を失ったがためだ」と
いうこと。

槍兵とか歩兵の配置とか、細かいところはすっ飛ばして、もう少しかみ砕くと、
こんな感じで部隊が配置されているとする。

▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲
▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲
▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲

▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲
▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲
▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲ ▲▲▲

前の部隊が最初に敵に向かっていくが、それで敵をやっつけられるならいい。
しかし前線を突破出来なかったり、敵が強くて後退せざるを得ない時はどうす
るのか。

上の最前線が攻略に苦労していたら下の部隊が援軍を送らなければならないが、
これだと加勢しようにも前の部隊の間隔が狭すぎて入っていけない。また最前
線が押されて後退してきた場合も、下の部隊が邪魔になって後退できないとい
うこと。だから、マキァヴェッリは以下のような編成を考える。部隊間の間隔
に注意。

▲▲▲  ▲▲▲  ▲▲▲  ▲▲▲  ▲▲▲
▲▲▲  ▲▲▲  ▲▲▲  ▲▲▲  ▲▲▲
▲▲▲  ▲▲▲  ▲▲▲  ▲▲▲  ▲▲▲

▲▲▲       ▲▲▲       ▲▲▲
▲▲▲       ▲▲▲       ▲▲▲
▲▲▲       ▲▲▲       ▲▲▲

▲▲▲                 ▲▲▲
▲▲▲                 ▲▲▲
▲▲▲                 ▲▲▲

これだと最前線に援軍を送りこめるスペースがあり、逆に最前線が後退してき
ても第二陣に受け入れるスペースがある。それでもだめなら第三陣を投入する
なり三陣まで後退するなりして全部隊が戦えばよいのである。それが「一列隊
をほかの隊列に組み入れるという古代人が使った方法」なのだ。

ここで質問が出る。なぜあなたは大砲について言及しないのですか?大砲の前
では兵士は無力です。どうやって防ぐのですか?

ファブリツィオは、大砲の餌食になりたければ玉が届かないところにいるか城
壁に守ってもらうしかないが、そんなことよりもさっさと進軍して敵の大砲を
奪ってしまうことだ。それが一番損害が少ない。

もう一つの質問は前線から5-3-2ではなく、2-3-5の編成の方が良いのではない
かという質問。楔形の編成で最前線を突破したら3部隊、そこも突破したら5
部隊が相手をする編成。そうすると攻める方としては深く行くほど守りが強固
になるが、ファブリツィオのやり方だと深く攻めるほどたくさん出てこないの
で弱体だと気付かれるのではないか?

もちろんこれは前述した説明を繰り返し、後退した時のスペースがなければ混
乱するということで反論。マキァヴェッリは全部の兵が十分に動けるスペース
について重視していることが再確認される。

第四巻は、そうした定石以外の部隊の編成と、孫子の「兵は詭道なり」を彷彿
とさせるというか、ほとんどそっくりな情報収集や策略による攻め方、守り方
が語られる。

三巻で示した編成は前面の部隊が厚くなっているが、これは基本的に広大な地
形でやるもので、前面を広げるか狭めるかは敵味方の兵力によって変わる。ま
た地形によっても変わり、荒蕪地などでは何の利点もない。

逆に不利な状況下で戦わなきゃならない時は、攻撃しやすく攻めにくい高台を
選び、太陽を背にして陣を敷く。負けた時のためにバラバラに逃げられるルー
トと集合場所をあらかじめ決めておく。

敵の最精鋭部隊が攻めてきた時は、そこは手薄にしたおき、精鋭は敵の弱いと
ころを突いたり、敵精鋭が自陣深くまで進行してきたところで両方から包囲せ
よ!敵は勝ち続けていると錯覚し冷静さを失い、統制がとれなくなってくる。
そこで絶望の渕にたたき込むことで敵は大混乱をきたす。

攻めてくるなら後退し、逃げるなら追う。援軍が来ると噂を流したり、非戦闘
員をデコイ代わりに馬に乗せて大軍に見せかける。

見たことのない新兵器で敵の度肝を抜くとか、敵の指揮官が死んだと噂を流す
とか、夜間戦って、夜明け前に味方の兵士の遺体だけを片づけ、朝には敵の遺
体しか戦場にないようにして敵兵にこっちは全く打撃を受けていないと勘違い
させてビビらせる。

てな感じでその他いろいろなテクが書いてあるが、基本は自分が主導権をとっ
て有利になることなら、あらゆることをやれということ。たとえばこちらが不
利な状況で敵がハサミ状の陣形を取って包囲をもくろんでいる時、敵はこちら
が楔形の陣形をとらなきゃしょーがないと思っている状況を考えよう。

敵はそう想定していることを折り込んで楔形を編成するならよい。そうでなく、
本当に仕方なく楔形をやるなら、負けるから逃げろである。同じことをやるに
しても、自分が主導権をとれるかどうかで攻める、逃げるが違ってくるわけだ。

五巻は行軍に関する話で、先遣隊を出して敵や地形を見つつ慎重に進軍、正方
形の形を保って四方向どこから攻めてこられても対応できるとする。命令が誤
認されないように、たとえば「右翼に」「後に」は間違えやすいので誤解を招
かないように「後ろに」は「退却」と言い換えて命令を工夫し、身軽に移動す
るため、食料を簡素化。

兵の敵地での掠奪は許さず、戦利品は全て軍隊中枢で管理、のちに功績に応じ
て褒美を取らせる。そうすると兵は逃げたくなっても自分の財産が置いてある
から簡単に逃げない・・・なるほどw

ここで興味深いのは、兵の食糧の中にワインが入っていることだ。ローマ時代
では兵は自分で小麦粉を持って行ったし、めいめい自分の好きなようにパンを
焼き、酢やラードで味付けして食っていた。それで十分だったのだ。

しかしこのころになると兵は平時の家庭と同様のパンだけでなく、ワインも欲
しがった。どちらも供給するのは大変だし金もかかるから、できるだけ遠ざけ
なればならないというのだが、ファブリツィオ(マキァヴェッリ)はワイン禁
止はできないだろうと判断している。

軍隊のことはよく知らないが、今の軍隊でも基地で休んでいる時はアルコール
は飲めるだろうが、出動したら飲めなくなるのではないか?そう考えると、マ
キァヴェッリの軍隊が負けたのもわかるような気がする・・・と書こうとして、
フランス軍とかスイス兵とかは進軍する時にワインは持っていったのだろうか
と疑問がわくが、どうだったんでしょ?

同時に、この本があまり有名でない理由もわかった。一般の読者を想定するな
ら、この内容なら孫子の方がエッセンスをくみ取りやすいからだ。孫子の場合、
簡潔に書いてあるのであんまり軍隊の知識がなくても理解はしやすいが、この
本はそうはいかない。

孫子よりも劣っているとかではなく、深い、現場の戦闘レベルまで解説してい
るので、それなりに知識がないと読みこなしにくいというわけ。

なんてことを思いつつ、六巻は宿営について、最後の七巻は城塞攻撃について
書いてあるのを読みすすめる。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 マカー歴二十うん年)
---------------------------------------------------------------------
「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
 (60)乱歩賞作家が見た「コンビニの泥沼に咲いた蓮の花」
---------------------------------------------------------------------
森雅裕『高砂コンビニ奮闘記 悪衣悪食を恥じず』(成甲書房・1,500円)

作家、小説家でもう一つ職業を持っている人は多い。サラリーマンを別とすれ
ば、医師、教師、弁護士なんていう人も結構多い。医師は新しいところでは
「バチスタ」の海堂尊さん。古くは森鴎外(古すぎる)。教師は北村薫さんが長
く二足のわらじを履いていた。古くは夏目漱石(古すぎる)。弁護士はミステリ
ー作家で何人かいる。和久峻三、中嶋博行など。

どちらにせよ、「先生」なんだな。他にないかな、「先生」と呼ばれる職業。
政治家か? 政治家で作家っていたっけ? いないよね。しまった、わが知事
閣下がいた。いかんいかん。

渋いところで、「刀鍛冶で作家」と言う人がいる。よくいる「自称・作家」で
はない。刀鍛冶でありつつ日本で最もハードルが高いと言われる文学賞の一つ
を受賞している(同時受賞が今をときめく東野圭吾)。

しかもこの人は、「コンビニ店員」でもある。いや、あった。店の閉店と同時
に「卒業」した。そのコンビニ勤務でのあれこれを書いたのが今月ご紹介する
『高砂コンビニ奮闘記 悪衣悪食を恥じず』(成甲書房)である。

その人の名は森雅裕。

1953年生まれ。東京芸大出身。1985年「モーツァルトは子守唄を歌わ
ない」で第31回江戸川乱歩賞を受賞してデビューした。同時受賞者は東野圭
吾だ。芸大では日本画と彫金を専攻し、また刀鍛冶の修行も積み刀装具も手が
ける職人、アーティストでもある。

文筆についても職人気質で、乱歩賞を受賞した後、いわゆる「玄人受け」する
作品をコンスタントに書いていた。しかし持ち前の頑固さからなのか何なのか、
ことあるごとに編集者、出版社と衝突することになり、いつしか「干された」
状態となった。作家としての仕事が来なくなり、また刀装具というものはほぼ
需要が無いものだから、無収入の状態が何年か続いた挙句に漂着したのが葛飾
区高砂のコンビニ店員の夜勤のアルバイト。そこでの激動の十数ヶ月のことを
書いたがこの本だ。

「そういう本ってよくあるじゃん。いわゆる業界内幕暴露ものでしょ」という
人もあるかもしれない。

ちょっと違います。暴露や告発などしていない。業態のシステムとして未成熟
な面はあるが概ね法には則っているし、その未成熟なシステムも理に適っては
いる。理に適わないのは人間の方。この本に書かれているのも、それに関わる
人間たちの姿だ。人間観察のプロである。そして情景描写に長けた手錬れのミ
ステリー作家である。深夜のコンビニの慌しくも気だるい気配、愛すべき小さ
な人間たちの性がよく伝わってくる。

前書きにいわく、「コンビニという泥沼に蓮の花を見た」。

コンビニに咲く「蓮の花」とは何か? それがこの本のキモで読んでもらうし
かないのだけど。

俗な言い方ではあるが、そこは「現代社会の縮図」である。「漂着者」同士の
淡い連帯感もいとおしいし、そこにも存在する、一人「嫌われ役」を配するこ
とで結束が強まるという人間社会の原則も切ない。

普段使っているコンビニの裏側を垣間見る趣向ももちろん面白い。定番のクレ
ーマー・ウォッチングは抱腹ものだし、期限が来て廃棄する肉まんを平らにつ
ぶしてフライヤーで揚げてみたら美味かった話とか、嫌いな著者や版元の本が
入ってきたら「優先的に」返品しちゃうという著者ならではの話(「困るなぁ
そういうのは」〜都内出版某社勤務者・談)なども面白い。また、「立読み客
は深夜のコンビニにとって防犯効果がある」という定説が都市伝説に過ぎない
ことも教えてくれる。そんなことより、「立読み客が突如、強盗に豹変する恐
怖」の方が、この世相においてははるかに勝っているのだ。

コンビニ業界も激しい淘汰の波に洗われている。森さんが勤務していた店も閉
店し、森さんも一年と数ヶ月の長くて短い旅を終えた。そして、閉店後の森さ
んの近況だが、たまたま先日の「日刊ゲンダイ」に載っていた。リンク先がい
つまで生きているかわからないけどご参照を。
http://gendai.net/?m=view&g=geino&c=070&no=29153


僕も一日に一回か二回はコンビニに入る平均的都市生活者なのだけど、この本
を読んで以来、レジでお金を払う際に奥の事務所をチラリと覗いてしまう癖が
ついた。何を探しているのかって?

そりゃもちろん「蓮の花」ですよ・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
蕃茄山人=都内出版関係某社勤務。退屈な日常と多忙な妄想は毎日更新のブロ
グ『蕃茄庵日録』に連載中。http://d.hatena.ne.jp/banka-an/

---------------------------------------------------------------------
■献本読者書評のコーナー(応募要項)
---------------------------------------------------------------------

 この本が欲しい!という方は、応募要項を御確認の上、ご連絡ください。

『100のキーワードで学ぶコーチング講座』(創元社)
 http://www.sogensha.co.jp/book/2009/12/100-1.html

『マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/geijyutsu-etc/tanpin/22575.htm

『戦う女たち 日本映画の女性アクション』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/jinbun/tanpin/22568.htm

『愛するものたちへ、別れのとき』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/kaigaibungaku/tanpin/22681.htm

『暁の群像 豪商岩崎弥太郎の生涯』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22483.htm

『坂本龍馬』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22605.htm


 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

---------------------------------------------------------------------

 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社でも著者でもどちらでも結構ですが、献本を募ります。冊数は
 何冊でもOKです。メールで【読者書評用献本希望】とご連絡いただければ、
 折り返し、送付先をお知らせします。

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、熱意と販促効果優先で選ばせていただきます。

3)発行委員会はいただいたメールの中から、熱意がありそうな方をピックアッ
 プして献本いただいた本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に
 応募数が満たない場合には、100日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンやbk1、楽天などのオ
 ンライン書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。
 つまりは当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願
 いします。

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

 先日、海外に行ってきたときに、Kマートで買ってきた「サッポロ一番 
 BEEF味」なるインスタントラーメンを食べてみました。

 濃いというのか、きついというのか、バーベキューの肉の味のラーメンと
 いうのは、なかなかすごいものがありました。

 結局、しょうゆを入れて何とか食べましたが、作り方を見ると、卵・温野
 菜・肉を入れるのにもTry、と書かれていました。

 前にタイで買ってきたトムヤムクン・ラーメンの方が、東洋人としては、
 味覚が合うようでした。

 皆さんも、機会があれば、Let's try !

 しかし、どこが「サッポロ」なんでしょうか。。。(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ」(毎月三回発行)
■ 発行部数 4759部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレス http://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー 0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================




作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.443

■■----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ               2010.02.10.発行
■■                             vol.443
■■ mailmagazine of book reviews     [おっちゃんありがとう 号]
■■----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------

★「背伸びして本を選ぶ」/十谷あとり
→マルグリット・デュラス『アウトサイド』

★「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→イカロスの翼は左向き

★「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→『数学をきずいた人々』

★「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/庄司善彦
→社内の「おかん」は会社の背骨

★「日記をつけるように本の紹介を書く」/大麦親父乳酸脂肪
→リチャードさまざま

★献本読者書評のコーナー
→著者の方、出版社の方、読者の方、つまり、みんな必見です。

---------------------------------------------------------------------
■今回の献本読者書評のコーナー
---------------------------------------------------------------------

 日本全国の方より御応募いただいております。ありがとうございます!
 でも、まだまだ下記の書籍について、募集中です。

『100のキーワードで学ぶコーチング講座』(創元社)
 http://www.sogensha.co.jp/book/2009/12/100-1.html

『マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/geijyutsu-etc/tanpin/22575.htm

『戦う女たち 日本映画の女性アクション』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/jinbun/tanpin/22568.htm

『愛するものたちへ、別れのとき』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/kaigaibungaku/tanpin/22681.htm

『暁の群像 豪商岩崎弥太郎の生涯』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22483.htm

『坂本龍馬』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22605.htm

 この本が欲しい!という方は、当メルマガの巻末の応募要項を御確認の上、
ご連絡ください。

---------------------------------------------------------------------
■「背伸びして本を選ぶ」/十谷あとり
---------------------------------------------------------------------
2 マルグリット・デュラス『アウトサイド』

本を買うという行為が、軽くなった。

五百円札一枚を握りしめて、公設市場の中にあった石川書店に行っていた頃、
棚の前で迷った挙げ句、一冊を選ぶ決断は重かった。帰り道、家からほんの五
分ほどの道のりなのだけれども、その五分が待ちきれず、紙袋を開けて本を出
し、両手で広げて眺めながら歩いて帰った。本を読みながら横断歩道を渡る姿
を、石川書店のおっちゃんが見ていたらしく、次から勘定の時に

「家帰ってから見ィや、けつまづくデ」

と言われるようになった。うん、おっちゃんありがとう。しかしやはり、歩き
ながら紙袋を開けずにはいられなかった。

そのように、本は本屋さんで買うものだったが、今はいろんな買い方が選べる
ようになった。

ご近所の地べたの本屋さんで買う。デパートの書籍売り場で買う。紀伊國屋書
店やジュンク堂にも行く。

Amazonも利用する。昔は取り寄せを依頼してから二週間待つこともめずらしく
なかったが、Amazonで注文したら、早ければ次の日に届いたりする。早すぎる。
期待に胸をふくらませる暇もない。

そして何より、古本を買うようになった。

学生の頃まで、古い本を触るのが苦手だった。図書館の本ですら、日に焼けて
いたり傷んでいたりすると何となく手に取るのが嫌だった。それが、三十五歳
を過ぎてから、抵抗がなくなった。なぜか?

きっかけは短歌だった。歌を書き始めると、短歌の本を読みたくなる。しかし、
新刊書店に行っても、歌集はあまり置かれていない。あっても種類が少ない。
気に入ったものが見つからない。困っていたところへ、たまたまインターネッ
トの検索でたどりついたのが「日本の古本屋」サイトだった。欲しい本がいっ
ぱい見つかる、おまけに安い!かくして「読みたい」は「触りたくない」をい
とも簡単に駆逐し、古本ワンダーランドへの扉は開かれた。

今は新しい本古い本、読みたい本売りたい本と、ちびちび切れ目なく本を買っ
ている。まだ読んでいない本があるのに買う。家に帰って袋から本を出したら、
同じ本が机の上に載っていたこともある。阿呆だ。しかし、しあわせだ。本で
散らかった部屋の中で本を読む。こんな楽しいことが他にあるだろうか。

うれしい楽しいと調子に乗って本を買い、さらっと一度目で撫でただけで「あ
あ面白かった」と片付けて読み返しもしない。そんな、本に対して罰当たりな
ことを繰り返していたら、時に、本からお灸を据えられることがある。「日本
の古本屋」で注文したマルグリット・デュラスの『アウトサイド』(晶文社/
一九九九)が、そうだった。

このエッセイ集には、過去に書かれた新聞記事、芸術家に関する文章、小学生
や読み書きのできない女性へのインタビューなどが収められている。デュラス
自身のことを書いた文──インドシナ時代のこと、夫や亡くなった息子のこと
──もあり、わたしは最初それを目当てにしていた。しかし、目次を開いて一
番に目に刺さってきたのは「九九パーセントのボツ原稿」というタイトルだっ
た。(以下、《 》内は本書より引用。)

《ある大きな出版社の文学部門の編集主任にお願いして、潜在的な文学の世界
──性格上、一般大衆にはまったく知られていない──について、すこし明ら
かにしていただいた。》

冒頭にこうある。つまり、「ボツ原稿とその書き手」をテーマに、デュラスが
編集者にインタビューするという内容なのだ。

《──出版される文学のパーセンテージはどのくらいですか?
 ──約一パーセントです。約九九パーセントの原稿が永久に作者に戻される
   わけです。》

《彼ら(引用者注:ボツ原稿の作者たち)の共通した欠点は、「なんというロ
 マンだろう、わたしの人生は」と考えて、一般に興味を持たれるものと家族
 的経験の思い出にすぎないものを区別できないことです。》

《──そういう生(なま)のままの文学の作者たちは出版のしきたりさえ知ら
   ないことがあるのでしょう?
 ──しょっちゅうですよ。》

 あらゆる人があらゆるところで書いているけれど、その原稿のうち出版され
「文学」となりうるのはたった一パーセントだ、とこの編集主任は言う。ボツ
原稿の作者たちは「現実を考慮していない」「明らかに無教養、先行者たちの
ことを何も知らない」とも。

《──できの良し悪しにかかわりなく、全文学の唯一の共通点は何ですか?
 ──あらゆる作家にとって書くことは激しい悲劇的な欲求だということです。
   多くの場合、良い作家よりも悪い作家のほうがそうなのです。書くこと
   は時には途方もない精神的努力を必要とする企てです。作者は小説を作
   るために自分の余暇を割くばかりか仕事をも割きます。彼はいつも孤独
   であり、とくに窒息状態から抜けだすために書く地方においてはそうで
   すね。言うまでもありませんが、拒絶はつねに恐ろしいことで、時には
   悲劇的なことです。原稿を拒むこと、とくに最初の原稿を拒むことは、
   ひとりの人間全体を拒むことであり、彼を忌避することです。》

 この本を読んだのは、短歌を書き始めて間のない時期だった。その頃のわた
しは、古典もろくに読んでいないのに、三十一音でさえあればよしと決め込み、
手当たり次第に何でも歌に詰め、いつか短歌雑誌の新人賞に応募してやろうと、
愚かなエネルギーでぱつぱつになっていた。一九五七年に行われたこのインタ
ビューの、九九パーセントの原稿を葬り続ける編集主任のひとことひとことは、
まさにそのようなわたしに向けて語られることばだった。そして、それを書き
留めているのは、「一パーセント組」の中でももっとも輝かしい書き手のひと
りであるデュラスなのだ。わたしは鉄パイプで頭をブン殴られたようにくらく
らになり、しばらく立ち直ることができなかった。

〈じゅうや・あとり〉2月20日(土)、奈良県香芝市のおしゃれな家具屋さん
「ファニチャーストック」にて、「絵本と絵のある本の古本市」が開催されま
す。こども向け絵本、大人向け絵本、洋書、図版入り単行本などがちょこちょ
こ並びます。このはな文庫も参加いたします。お近くの方はぜひお運び下さい。
「ファニチャーストック」http://www.furniture-stock.com/FURNITURE%20STOCK.swf
「このはな文庫@船場ビルディング」http://konohanas.exblog.jp/

---------------------------------------------------------------------
■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
---------------------------------------------------------------------
<2> イカロスの翼は左向き

 1973、4年ころ、『ガロ』が買える書店は限られていた。

 学校のある三田市には、そのころ書店が3、4軒だったと思うのだけど、そ
のいずれにも『ガロ』は売っていなかった。

 神戸市北区山田町というところから、途中乗り換え一回の片道約1時間をか
けて通学していたのだけど、その乗り換え駅の……山と田圃が広がる田舎電車
沿線の所々に団地が開発され始めたばかりの、当時の区内では唯一の「街」だ
った……鈴蘭台の2軒の書店にも、それは売っていなかった。

 『ガロ』は、神戸の都心に行かなければ手に入らない……と思っていた……
ところが、家から一駅の団地内に新しくできた、市内の老舗書店のちっちゃな
支店に、それが置いてあるのを発見して狂喜した。

 通学途上で、定期的に『ガロ』を入手する手段は確保できた。
 のだけど、今度は、その誌上に広告されている単行本が買いたくなったんで
す。

 ちなみに、現在は、大から小までどんな書店にでも「コミック」という売り
場は、設けられているのが「当たり前」なのだけど、そのころは違っていた。
 当時の「ちゃんとした」書店では、漫画の単行本など、置いてなかったので
すね。

 「神戸最大の書店」として鳴り物入りで三宮に「ジュンク堂書店」が開店し
たのは、わしが神戸を離れた後の1976年だったけど、ここも、当然「ちゃんと
した」書店だったから、当初は「コミック」あるいは「漫画」の売り場はなか
ったのです。

 神戸一番の老舗書店「海文堂」にもなかったし、先鋭的な品揃えで知られた
「コーベブックス」にもなかった。
 紀伊國屋書店梅田本店(ここは今なお、ない)にも、旭屋書店本店にも、も
ちろん、なかった。

 そのころ、いわゆる「コミックス」……「少年サンデーコミックス」とか
「少年マガジンコミックス」なんてーのを、置いてる書店は?つーと、それは
場末の、不機嫌そうな顔したオッサンの店主が、手にしたハタキでもって立読
み客を追っ払いながら店番してるような本屋だけだったのだ。

 家から一番近い「街」の鈴蘭台は場末であるから、そこの2軒の書店には当
然「マンガ」の売り場はあったのだけど、漫画の単行本並べてるような場末の
本屋には、『ガロ』版元・青林堂の本は、なかった。

 「どこに売っとんねん!?」と思ったら、答えは『ガロ』の中にあった。
 広告ページの裏側に「青林堂出版物が常時揃う書店」というリストが、付記
されていたのだ。

 リストには、北は北海道から南は九州まで、7、80件の書店名が羅列して
あった。
 で、神戸、神戸……は? と北から順に見ていくと、「三宮・イカロス書房」
と、神戸では一軒きり、店名があった。

 「イカロス書房」という店は、知っていた。
 ジーパンや靴が安く買え、しかもたいていの店では交渉次第でさらにマケて
くれるので、もっぱら衣料品を買うのは「ここ!」と決めていた、三宮高架下
商店街の中ほどにある、十坪足らずの小さな本屋。
 入ったことはなかったが、そこは、左翼系書籍を中心に扱っていて、ゼンキ
ョートーのおニイさんたちがよく出入りしてることで有名な書店だった。

 その、なにやら難しそうでラディカルなフンイキに恐れをなし、入ったこと
はなかったのだが、そこに青林堂の本があるのなら、神戸ではそこにしかない、
のであれば、これは行かねば入らねば……と、勇躍三宮へ向かった。

 イカロス書房は、間口の真ん中を割って両面棚がそびえ、それと向き合うそ
れぞれの壁沿いにも、いずれも天井まで届きそうな高い棚が配され、そこにぎ
っしりと本が詰まった店だった。

 真ん中の両面棚と奥の壁に挟まれた狭い空間に置かれた帳場の机には、店番
らしい、いかにも「全共闘!」なお兄さんが、時折、額にかかる長髪をかきあ
げつつ、なんだか難しそうな顔で難しそうな本読みながら座っていた。

 恐る恐る店に足踏み入れ、順番に棚を見ていく。
 「マルキシズム」「唯物史観」「実存」「闘争」なんて単語がやたらと目に
付く背表紙の中に、澁澤龍彦や夢野久作や稲垣足穂なんかの幻想系、それに別
役実の戯曲なんかも混じって、現代思潮社、桃源社、幻燈社、三一書房といっ
た出版社名が多く目につく。

 それら「かしこ系」の書籍群にビビリながら、「せ、青林堂は、どこかいな
……?」と棚の背表紙を辿っていくと……端っこの方に『林静一作品集』をみ
つけた。
 やはり青林堂の、「現代漫画家自選シリーズ」のうち、勝又進『わら草紙』
と林静一『赤色エレジー』も、並んで置いてある。
 が、青林堂の漫画は、それら含めて5、6点で、どうやら「青林堂すべて取
り揃え」というわけでは、なさそうだ。

 まあ、この狭い店ではしゃーないな、と一人で合点しながら、さてでは、本
日はなにを買っていくか……と棚に手を伸ばしたとき、『夜行 3』というB
5判ハードカバーの本が目に付いた。

 背表紙の「北冬書房」という出版社名は、聞いたこともなかったが、同じ背
表紙に記された「つげ義春 つげ忠男 かわぐちかいじ 古川益三」という
「ガロ」でよく目にする名前が、目をひいたのである。
 「ひょっとして、これも漫画?」
 と抜き出してみると、果たしてそれは、B5ハードカバーの「雑誌」なのだ
った。

 定価は七八〇円。ちょっと痛かったが、本日はこれ、と即決。
 帰りの電車の中で、濃い緑色一色の中に小さく「イカロス書房」と白抜きの
ブックカバーが、なんだか誇らしかった。

 その後、イカロス書房では、青林堂や北冬書房の漫画を買う他に、「ガロ」
つながりにて唐十郎や寺山修司、稲垣足穂なんかにも手を出すようになったの
だった。

 そして、この「常時揃う書店」リストを頼りに、大阪や京都まで、「ガロ系」
を求めて遠征するようにも、なっていった。

 高架下のイカロス書房は、今はもうない。

 ガロ系漫画を求めて、イカロス書房を訪れた何度目だったか、入り口の一番

作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.442

■■----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ               2010.01.31.発行
■■                             vol.442
■■ mailmagazine of book reviews   [この機会に重版して下さい 号]
■■----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------

★「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
→やっぱり今がいい。

★「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
→本屋大賞ノミネート作品10作が発表されました。

★「月刊ニュースなビジネス書評」/aguni
→『100のキーワードで学ぶコーチング講座』発売されました。

★「25年ぶりに英語学び直してみました」/守屋淳
→今回はお休みです。

---------------------------------------------------------------------
■トピックス
---------------------------------------------------------------------
■今回の献本読者書評のコーナー

 まだまだハードルが高いのでしょうか? 応募者はちらほら出ていますが、
まだまだ募集中です。

 この本が欲しい!という方は、当メルマガの巻末の応募要項を御確認の上、
ご連絡ください。

『100のキーワードで学ぶコーチング講座』(創元社)
 http://www.sogensha.co.jp/book/2009/12/100-1.html

『マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/geijyutsu-etc/tanpin/22575.htm

『戦う女たち 日本映画の女性アクション』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/jinbun/tanpin/22568.htm

『愛するものたちへ、別れのとき』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/kaigaibungaku/tanpin/22681.htm

『暁の群像 豪商岩崎弥太郎の生涯』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22483.htm

『坂本龍馬』(作品社)
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22605.htm

---------------------------------------------------------------------
■「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
---------------------------------------------------------------------
「やっぱり今がいい。」

『うつくしく、やさしく、おろかなり──私の惚れた「江戸」』杉浦日向子
ちくま文庫 定価693円(税込)

ずいぶん前に読んだ本だが、年末に出た文庫の装幀がいい感じなので、つい
また買ってしまった。

一読。情けないことに、内容はほとんど覚えていない。それでも、また楽し
く読めた。

本の冒頭の文章に、「江戸に住みたかったろう」とよく問いかけられるが─
─といった一文がある。

杉浦さんの描く江戸の世界は、この本のタイトルのように、“うつくしく、
やさしく、おろかなり”といった風情があり、そこでは江戸っ子が楽しげに、
生き生きと描かれているから、尋ねる人も、どれだけ憧れているのだろう、
と思って聞いたことだろう。

ところが、この問いに、

「日夜江戸に淫し、のべつまわらぬ舌で江戸を語る(騙る)身にあっては、
ソウ尋ねられるのが日常だ。けれど自分は今がよい。昨日でも明日でもない、
今日この日の、ここが良い。どこへもいきたくない。現在たまたまいる場所
が、いつでもどこよりも良い」

こんなふうに答えている。

杉浦さんの本を読んで、江戸時代がすごく好きになったときには、江戸に行
ってみたくなった。映画を観たり、音楽を聞いたり、本を読んだりして感激
してしまうと、その役者や演奏家、作家などに会いたくなったりした。誰に
でもあることだし、多くの人が「行きたい」「会いたい」と答えるのではな
いだろうか。

しかし杉浦さんは、「今日この日の、ここが良い。どこへもいきたくない」
という。

よくよく考えてみると、「行きたい」という人よりも、「行きたくない」と
いう人のほうが、江戸への憧れが強いのではないだろうか?

なんでもかんでも私のなかに取り込むのは、「好き」とか「憧れ」なんてい
うのとは違った欲望のような気がする。自分をどんどん大きくしていきたい、
というような。

曖昧な妄想はともかく、

「江戸のおんな」で取り上げられている古川柳の読み、が面白い。解読して
くれなければ、意味のわからないものが多いので、『風流江戸雀』のように、
ストーリーを作ってマンガで見せたのは大正解だろう。

江戸に行ってしまったら、杉浦日向子は読めないから、やっぱり今がいい。

(ミラクル福田 編集者)
---------------------------------------------------------------------
■「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
---------------------------------------------------------------------

皆さん、こんにちは。

今年も本屋大賞ノミネート作品10作が発表されました。
http://www.hontai.or.jp/

毎年、投票締め切りの前日まで大いに悩むんですよ、我々書店員は。

「この作品は絶対入ってくれなきゃ困る!」という作品にはもちろん投票する
のですが、「私が投票しなきゃ誰がする!」という作品と、「この作品はたぶ
んほっといてもノミネートされるけど、私としても大好きだし、はずしたくな
いよね…」という作品の間で激しく揺れるんですよ。個性派男子とモテ男子の
間で、求められてもいないのに勝手に揺れる妄想系女子高生みたいなもんです。

本屋大賞って、投票する書店員の作品に対する片思いの告白の場所なのかも…。
そう思うとちょっと恥ずかしいですね。

結果から言うと、「この作品は絶対入ってくれなきゃ困るよっ」と思っていた
『船に乗れ!』(藤谷治 著 ジャイブ)が無事ノミネートされたので、ほっ
と一安心です。なんといっても、この作品は私が近年読んだ青春小説の中でも
最高の作品だし、第1巻が出た一昨年から絶対にノミネートされてほしかった
1冊なので。

青春小説なんか読まない、と言う人にも、ぜひとも読んでいただきたいです。

本屋大賞の発表は4月20日。読者の皆さん、ぜひお楽しみに。

さて、今回オススメしたいのは、『シブすぎ技術に男泣き!』(見ル野栄治 
著 中経出版)と言うタイトルのコミックエッセイです。著者は、『スナック
鳥男』(コアマガジン 現在品切れ)というシュールなギャグマンガや、『東
京フローチャート』(小学館)という実験マンガで一時期私の胸を軽くときめ
かせていた異色マンガ家。とは言え、私の勤めるビジネス街のど真ん中の書店
で売れるものでもないだろう、そのうち買おう、と内容をちゃんとチェックせ
ず、普通に売り場に出しておいたのですが、なんと、入荷した分がすぐに売り
切れてしまいましたよ。

内容を確認してみたら、元機械設計の会社に勤めていた著者が、日本のものづ
くりの現場を取材したマンガ。これは理系男子のお客様も多くいらっしゃる私
の店でも売れるはずだわ…、と納得しました。あの変なマンガを描いてた人
(失礼!)がこんな作品を書くとはね。本は内容ちゃんと見て売らないといけ
ないなあ、と初心に帰って反省です。すぐに追加してドーンと平積みしました。

と言うことで、早速購入し読んでみました。前半は電子回路だの、スピーカー
だの、日本の中小企業の現場を取材して、軽く笑わせつついい話にまとめ、技
術にも感動、という読者の期待にぴったりの内容。が、後半は著者がゲーム機
械設計会社に勤務していた時代の苦労話、ダメ話が中心。前半のノリを期待し
て購入した人はちょっと肩すかしを食らうかも。しかし、文系女子私としては
案外この後半部分が楽しめましたね。苦労して作ったメダルゲーム機が全くお
客に使われなかったり、社運をかけて開発させられたものの、どう考えても人
気が出そうになかったり…。一方で、機械技術にはまったく知識のない私にも、
ものづくりに対する熱意が伝わってくるし、日々何も考えずに使っているいろ
いろなものが、こういう人たちの技術に支えられてるんだなあ、とグッときた
りもします。惜しい部分もありますが、ここのところ各社出し過ぎで食傷気味
だったコミックエッセイの中では、価値のある1冊です。なんでもコミックエ
ッセイにすれば売れるって言う考えは、そろそろやめてほしいものですね。

第2弾に期待してますが、ちゃんと取材した前半部分をキッチリやった方がた
ぶん売れるだろうな…。ブレイクも充分期待できるのではないでしょうか。
(そして、『スナック鳥男』!この機会に重版して下さい。)

今月は、まだ読んでいない本屋大賞ノミネート作品の読破が忙しくなりそうで
す。それでは、また来月もよろしくお願いします。

---------------------------------------------------------------------
■「月刊ニュースなビジネス書評」/aguni
---------------------------------------------------------------------
 いまさらながら、コーチングって何だ?

 aguni です。

 『100のキーワードで学ぶコーチング講座』
 原口佳典 著
 出版:創元社
 ISBN:978-4-422-10084-5
 発行年月:2010.1
 http://www.amazon.co.jp/dp/442210084X?tag=bizknowledge-22
 http://www.bk1.jp/product/03223386

 はい。今回は自著の宣伝です。すいません。

 16日に販売開始し、現在、あちこちの書店さんでもビジネス書の平積みに
積んでいただいています。ありがとうございます。積んでいない書店さんの
ご担当者様はこの機会に積んでください。ありがとうございます。

 この本は実はとてもすごい本です。タイトルは「コーチング講座」とあり
ますが、これはわかりやすくするためにこうなっているのであって、実は、
「コーチ養成講座」とでもいうべき内容です。

 コーチって何?という方のために改めて定義しますと、対話を介して人の
問題解決なり意思決定なりをサポートし、人の成功や幸福や自己実現を応援
するお仕事をする人のことを言います。

 そのかかわりはコンサルでもカウンセラーでもありません。コーチはどち
らかというと触媒のようなもの。あくまでクライアント(や部下や子ども)
が主体で、その能力を引き出すかかわりをするのです。

 これがどういうことかと言うと、ものすごいことなのです。例えば、教え
ることをティーチングと言ったりしますが、ティーチングには限界がありま
す。それは知っていることしか教えられないという限界です。

 コーチングは成長を相手に委ねるかかわりです。ですので、限界はありま
せん。コーチは人が自立して成長できるようなかかわりができる人なのです。

 さて、では、どうやって人はコーチになるか、ということですが、残念な
がら、基本的にコーチの本というのは普通、セミナーや研修、あるいはコー
チ養成プログラムへの集客という要素が強いですので、その中身と言います
か、コアの部分はあまり書籍として外に出てはいません。結果としてよくわ
からないけどコーチングってすごい、という風に思える本が多くなっていま
す。

 もちろん、コーチのかかわり方はひとつのコミュニケーション術ですから、
そのスキルのエッセンスを生活やビジネスの現場に応用することはできます
し、セルフマネジメントなどの自己啓発に利用することはできます。それは
それで有益なこととは思います。

 しかし「コーチ養成講座」を形にしてしまおう、という本は今までなかっ
たでしょう。それがこの『100のキーワードで学ぶコーチング講座』なのです。

 もちろん、この本を買って読んだからと言って認定証も資格も発行されま
せんが、なるほど、コーチングというのは単に対話やマネジメントのテクニ
ックだけではないのだな、ということを理解していただくことができるでし
ょう。それはひとつの生き方なのです。

 あ、最後によく聞かれる質問なのですが、コーチって儲かるの?というこ
とですが、それは人による、というのが正直なところです。しかしマネジメ
ントや子育てをする上で、あるいは研修や教育に携わる上で、コーチングを
知っているかどうか、というのは、明らかに差が出ます。その差が富や成功
を生み出すということだけは、保障できると答えられます。

 というわけで、入門書では満足できないあなたに、お勧めの一冊です。

       aguni ビジネス書評者/(財)生涯学習開発財団認定コーチ
                 経営品質協議会認定セルフアセッサー
                 日本経営品質賞審査員
                 【bizbook.tv】http://bizbook.tv/
---------------------------------------------------------------------
■献本読者書評のコーナー(応募要項)
---------------------------------------------------------------------

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

---------------------------------------------------------------------

 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社でも著者でもどちらでも結構ですが、献本を募ります。冊数は
 何冊でもOKです。メールで【読者書評用献本希望】とご連絡いただければ、
 折り返し、送付先をお知らせします。

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、熱意と販促効果優先で選ばせていただきます。

3)発行委員会はいただいたメールの中から、熱意がありそうな方をピックアッ
 プして献本いただいた本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に
 応募数が満たない場合には、100日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンやbk1、楽天などのオ
 ンライン書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。
 つまりは当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願
 いします。

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

 発行が遅くなり、すみませんでした。10日号の原稿はぞくぞく集まっていま
すので、きちんと発行できそうですので、お許しを。

 読者献本書評のご応募もお待ちしています!(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ 」(毎月四回発行)
■ 発行部数 4747部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレスhttp://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================

作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.441

■■----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ               2010.01.20.発行
■■                             vol.441
■■ mailmagazine of book reviews  [おばちゃんノリでたらたらと 号]
■■----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------

★【新連載】「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
→一人読書会って何だ?

★「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
→嵐山光三郎『新廃線紀行』(光文社・1,575円)

★「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
→「戦争の技術」一巻〜二巻

★「どこでも読書」/オオウラウタコ
→興奮する本?

★【新企画】献本読者書評のコーナー
→読者の方、著者の方、出版社の方、必見です。

---------------------------------------------------------------------
■トピックス
---------------------------------------------------------------------
■今回の献本読者書評のコーナー

 前号より開始したこの企画。作品社様の賛同をいただき、献本書籍が増えま
した! ありがとうございます!

 しかし、書き方のハードルが高かったのか、応募者ゼロ!(泣

 ということでルールを少し変更、3ヶ月の間、在庫のある限り告知し続けま
す。

 この本が欲しい!という方は、当メルマガの巻末の応募要項を御確認の上、
ご連絡ください。

『100のキーワードで学ぶコーチング講座』(創元社)5冊
 http://www.sogensha.co.jp/book/2009/12/100-1.html

『マックス・フライシャー アニメーションの天才的変革者』(作品社)3冊
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/geijyutsu-etc/tanpin/22575.htm

『戦う女たち 日本映画の女性アクション』(作品社)3冊
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/jinbun/tanpin/22568.htm

『愛するものたちへ、別れのとき』(作品社)3冊
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/kaigaibungaku/tanpin/22681.htm

『暁の群像 豪商岩崎弥太郎の生涯』(作品社)3冊
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22483.htm

『坂本龍馬』(作品社)3冊
 https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/nihon-bun/tanpin/22605.htm

---------------------------------------------------------------------
■【新連載】「おばちゃまの一人読書会〜中高年の本棚〜」/大友舞子
---------------------------------------------------------------------
 こんにちは。大友舞子です。昔、学校のホームルームの時間とか、街の喫茶
店でも、数人集まると、1冊の本をテーマに「読書会」をして、激論を戦わせ
てませんでした? 今はそんなことする人いないけど、今こそ、そんな熱い議
論が必要かもれないと勝手に思い、ひとりで読書会を開くことにしました。サ
ブカル系が多い「書評のメルマガ」ですが、私はおばちゃんノリでたらたらと
読んでいこうと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

◎《京大法学部関連小説》を読む

 今から15年前、京都大学法学部に入学した某青年は、同級生の中に、周囲
を睥睨するように振舞う男を発見。1年たって教室から姿を消し、授業に出て
こなくなったその男の消息を、青年は学内新聞の記事で知ることになる。「よ
しもと興行でお笑い芸人をめざす京大生」としてインタビューされていた彼こ
そ、現在、クイズ番組で活躍する、お笑いコンビ・ロザンのツッコミ担当・宇
治原史規。青年はその記事を読んで「自分にはめざすべき何もない」と悩み、
数年後、就職した会社を退職して小説を書き始める。それが万城目学。この同
期の1学年上には、在学中から華やかにも新進作家として注目されていた男も
いた。それが平野啓一郎である。

 ということで、おばちゃまがここ2か月で読んだ本がこちら⇒

◎『ドーン』(平野啓一郎・講談社)
◎『プリンセス・トヨトミ』(万城目学・文藝春秋)
◎『京大少年』(菅広文・講談社)

題して、京都大学法学部関連本!
(読む時間がかかる順で掲載してます)

 関連本というのは厳密に言えば、「京大少年」は宇治原氏の相方・菅広文氏
の著作だから。ただ、主人公が宇治原氏ということで、ひとくくりにしてみま
した。(いい加減)。

『ドーン』は、前作『決壊』の舞台が現代なのに対して、今作品は近未来。で
もどちらも、日常生活の描写からはじまって、だんだんとヤバ〜いことになっ
ていくゾクゾク間がたまらないです。島田雅彦氏が「日本の今の小説は私小説
の変形。だが平野作品は世界観、歴史観が屹立してる」と言ってますが、たし
かに。
ただ、おばちゃんには平野作品は正直、難しい! 昔、初期の「夢の遊眠社」
の野田秀樹の劇をわかったフリして見てたけど、ホントはまったくわかってな
かったのを思い出します。でも、これからもがんばって読むけどね。

『プリンセス・トヨトミ』は大阪の人間の誰もが夢見る「大阪の日本からの独
立」モノ。(京都人が「日本の都は今でも京都」と信じているように、大阪人
は「いつか大阪は日本から独立する」と信じているらしい)。ひっちゃかめっ
ちゃかな世界に笑えるが、登場人物の名前からネタバレしてるのはご愛嬌?

で、現在売上6万部超という『京大少年』。30分で読めて、分類すればタレ
ント本のくくりかもしれないものの、やや斜に構えた独特の文体で描く相方・
宇治原との友情物語は、ほのぼのとした優しさに満ちています。一流大学に合
格するための参考書として読むママたちも多いみたいですが、それではもった
いない。これは1人の男の子が、大きくなって、大海原に出て冒険する物語。
人と違う道を切り啓くには海はあまりにも大きく荒れているので、男の子はも
う1人の友達も誘って、2人で必死に船を漕いでいきます。だから私は読みな
がら時々、泣いてしまいます。男の子を育てている母は読んでみてください。

大友舞子(おおとも・まいこ) 
昭和20年代生まれ。雑誌と単行本それぞれ少々づつ仕事してるフリー編集&
ライター。関東生まれで関西在住。
---------------------------------------------------------------------
「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
 (59)廃線の旅はおじいちゃんの七回忌に似て
---------------------------------------------------------------------
嵐山光三郎『新廃線紀行』(光文社・1,575円)

当代随一の旅名人による旅行記である。冒頭でまず痺れる。

「廃線旅行は、鉄道の歌枕を訪ねる旅である」

『芭蕉紀行』『奥の細道温泉紀行』『悪党芭蕉』で俳聖の旅を極め、『死ぬた
めの教養』『追悼の達人』で追悼の技を極め、『日本全国ローカル線おいしい
旅』『日本一周ローカル線温泉旅』でローカル線の旅を極めた著者が満を持し
て送り出す「廃線となったローカル線を追悼する旅行記」である。歌枕、追悼、
ローカル線の三題噺。こりゃ面白くなかろうはずはない。

ところで、「廃線の旅」というと誰もが思い出すのは宮脇俊三であろう。本作品
ももちろんこの大先達に最大級のリスペクトを捧げている。捧げているが、内
容は全然似ていない。

むしろ内田百間(すみません、正しい字が出ない。門構えの中が日じゃなくて
月)先生の趣すら漂う。

国宝級の同行者・「ヒマラヤ山系君」にあたるのが、本作では編集者のダンゴ
ロー氏とイソ坊氏。この二人の実直な同行者が?ややわがままにしてかなり気
まぐれな?平成の百鬼園先生をフォローし、絶妙のチーム・プレイを見せる。
僕は読んでいてこの二人に激しく嫉妬した。本を読んで嫉妬するなんてことは
めったに無い。だって・・・、なんてうらやましい旅なんだろうかっ!!

読んでいて、意外なほど圧巻だったのが“自然の力”だった。廃線となると、
あっという間に廃駅は草木に覆われ、トンネルは木の根に穴を穿たれる。絶対
に勝つ日が来ない自然との戦いの日々だ。よく、「開発による自然破壊」なん
て言うけど、どっこい自然というものは開発ごときに屈服するほどヤワじゃな
い。ほんの数十年、いやほんの数年で開発の痕跡を、人々暮らしの刻印を呑み
込んでいく。その様子が迫力ある筆致で描かれている。

そんな廃線追悼の旅日記、バランスがいい。思いっきり感傷的になるところも
あれば、妙なボケをかますところもある。不味いものを訪ね求めての寄り道も
楽しい(熊谷のフライ焼き、本当に不味そうだぁ)。もちろん追悼の旅だからセ
ンチメンタル・ジャーニーである。でも基本線としてはひたすら楽しい。追悼
しつつもとにかく明るい。

途中で気づいた。ははぁ、これは法事なんだなと。決して葬式じゃない。

例えばおじいちゃんが死んだのは悲しくて、それが癒えることはないのだけど、
三回忌、七回忌と時間が経ってから親戚が集まると、思い出されるのは楽しい
記憶ばかりじゃないですか。つらい思い出も時間が浄化してくれて、ひたすら
楽しい。大人たちは思い出に浸り、子どもたちは何だかわからないけど人が集
まっている非日常を楽しめる。

僕も覚えがある。祖父の七回忌で従兄弟たちが一同に集まったのがとにかく楽
しくて、「次は何回忌だ」と母にまとわり付き、「次は十三回忌」と聞き、
「あと6年もかよ」と目の前が真っ暗になった覚えがある。一方、大人たちは
「いやあ、大変なじいさんだったよなぁ」「頑固でなぁ」などと言いながら楽
しそうに盃を重ねていた。

「小説宝石」の連載をまとめたこの本、初めて知った路線の旅行記も楽しいし、
いくつか出てくる自分が知っている路線も楽しい。実際に乗ったことがある路
線の項では、それこそ大好きだったおじいちゃんの七回忌のような気分で実に
楽しかった。そう、大好きだったあの人のことを一緒に話してくれる人がここ
にいる、という感覚だ。

写真も豊富。廃線跡の鉄道公園でのディーゼル車運転体験中の嬉しそうな顔っ
たら。また著者手描きのイラスト、地図・路線図もいい。6Bのエンピツでぐ
いぐいと描いたような力強い描線が、今は亡き鋼鉄の戦士たちのスピリッツを
リアルに表現している。データも豊富。きっと二人のヒマラヤ山系君が一生懸
命、調べたのだろう。

もちろん、この一冊では網羅しきれないほどの廃線が、捨てっぷりのいいこの
国にはまだまだたくさんある。ぜひ、俳句、追悼、温泉に続く新たなライフ・
ワークとして、この道を極めていただきたいと思った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
蕃茄山人=都内出版関係某社勤務。退屈な日常と多忙な妄想は毎日更新のブロ
グ『蕃茄庵日録』に連載中。http://d.hatena.ne.jp/banka-an/

---------------------------------------------------------------------
■「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
---------------------------------------------------------------------
【マキァヴェッリ全集を読む13】
「戦争の技術」一巻〜二巻

マキァヴェッリは1515年ごろからオルチェッラーリの園というフィレンツェの
知識人サークルに通っていた。ここでマキァヴェッリは集まった若者相手に政
治の話をしつつ「ディスコルシ」をコツコツ書いていく。

オルチェッラーリの園の主催者は、コジモ・ルチェッライ。評判高く将来を期
待されたいた人で、マキァヴェッリが「ディスコルシ」を献上したくらいの人
物だ。しかし、1519年25歳で夭折する。

「戦争の技術」全六巻からなり、オルチェッラーリの園でコジモと傭兵隊長フ
ァブリツィオ・コロンナとの間で行われた戦争に関する議論という形式をとる。
コジモは、当時のマキァヴェッリの主張に関するフレンツェ市民の主張。ファ
ブリツィオはマキァヴェッリの主張を述べる形で議論が進められる。

第一巻
コジモは、ファブリィツィオにあなたは古代の生き方を最上とするが、実際に
古代の生き方は難しいと言う。軟弱な生き方を拒否しようにも、現代は腐敗し
た時代だから古代の生き方を再現しようとしても嘲笑されるのがオチではあり
ませんか?しかもあなたは古代流の戦争をやっていないじゃありませんか?

ファブリィツィオは、コジモの主張を肯定しつつ、自分は現代にも通じる生き
方を提案しているということ。そして自分には古代流の軍隊を作りたかったが
そのチャンスがなかったのだとする。そして戦争を職業にできるのは共和国か
王国しかないと言う。

なぜなら共和国と王国こそが傭兵に依存しない軍隊を作れるからだ。これらの
国では制度が整っていれば戦争を職業とすることは臣民にも市民にも認めなか
ったし、善良な人が戦争を肯定などするはずがない。

戦争を職業とする者がいると、戦争がある時はいいがなければ食うのに困って
敵味方関係なしに盗みや恐喝殺人などやる始末。傭兵隊長は戦争を長引かせよ
うとするし、戦争が出来なきゃ手ごろな地方の掠奪をやる。そんなやつらに国
を任せられない。

市民軍が一番いいのだ。普段は市民としての仕事に従事していて、軍事教練を
欠かさないようにしていればいつ戦争になっても戦える。しかも常備軍にはな
らないから戦争がない時に金を払わなくて済む。

いまでは世界中の軍隊が採用している、平時には下士官が兵隊より多い状態に
して平時の軍隊維持コストを落として、いざという時には大量の歩兵を短期養
成するやり方に通じる考えだと思う。

第二巻では、歩兵や騎兵など軍隊の装備面からの考察が行われている。軽装兵
と重装歩兵の装備の違いから入って、騎兵よりも歩兵の方が強い理由を武装の
面から説明し、最強なのは古代ローマとドイツの武装がよろしいと結論づけ、
ローマ式とドイツ式半々の装備で軍隊を作りたいとする。

しかし一見すると、歩兵よりも騎兵の方が強そうである。馬に乗っているから
高いところから武器を使えるし、何よりも機動力が歩兵とは比べ物にならない
ではないか。

そんな疑問にファブリィツィオは、馬は危険を察知する勘の良い動物であり、
騎兵の思うようには動かないと言う。たとえば壁に向かって全速力で駆けさせ
ようとしても、馬は壁とぶつかりたくないから直前でスピードを落とす。

同じように前方に危険が迫っているとわかれば、馬は旗手の言う通りにはなら
ない。「歩兵は騎兵に対してきわめて確実性があり、それどころか騎兵によっ
ては征服されえないものだ」

うーむ、テレビや映画では危険を前に勇猛果敢に突っ込んでいく騎馬軍団なん
てシーンはよくあるけど、言われてみれば確かに馬が言うことを聞くとは限ら
ない。

そして軍隊は「勇敢な軍隊は勇敢な兵士で作られるのではなくて。規律があっ
てそれがよく守られるところにある」から、教練には実戦さながらの演習を行
い、先鋒がやられた時は次どうするのかなどさまざまなケースでの動き方やラ
ッパの音による指示に従う術を身に付けさせる。

でもって次に軍隊の動かし方なのだが、こちらもいろんなケースを想定して書
いてあるのはわかるのだが、当時の軍隊について私が知識を持っていないもん
だから読んでいてさっぱりわからないw

そこまで話を聞いたコジモは、あなたの言うことはわかったが、なぜ現代は古
代のしつけ(要はローマ式のやり方)がおろそかにされて、目に余る臆病や混
乱がもたらされるようになったのでしょうかと聞く。

ファブリィツィオは、ヨーロッパには戦争に卓越した人材が多く出るのにアジ
アやアフリカでは出ないのか?それはアジアやアフリカに一つか二つの君主国
とわずかな共和国があるのにに対し、ヨーロッパには多数の君主国や共和国が
あることたという。

21世紀に生きる現代人の我々から見ると、マキァヴェッリの言うアジアはせい
ぜい中東止まりで、インドや中国はもちろん、日本のことなど全く見えていな
いのはしゃーないとしても、次の発言には注目だ。

「より多くの国がが存在するところでは、まさしく優れた人物を輩出し、国家
が消滅する必然の姿につれて力量(ヴィルドゥ)のあるここの人も消え果てる
のは、人間を力量ある人物にしたてる、そのもとになるものが消滅するからだ」

ローマ帝国が勢いを増し、ヨーロッパだけでなくアジアアフリカの大部分の国
家を消滅させたことで、ローマにしか力量ある人材はいなくなった。そしてそ
れゆえにローマもまた力量ある人材は少なくなり衰退する。

また昔は戦争に負けたら全員殺されるか奴隷にされるしかなかった。それに比
べて今は戦争に負けても街は取り壊されたりしないし殺されもしない。せいぜ
い賠償金を課されるのを恐れるくらいだ。

要は、満つれば欠くしかないし、負けたら殺される恐怖がなければ古代のよう
なやり方は出来ないという運命論的な結論になる。ではどうするのか?

ということで、つづく。

---------------------------------------------------------------------
■「どこでも読書」/オオウラウタコ
---------------------------------------------------------------------
あけましておめでとうございます。
には遅いですが、今年もよろしくお願いいたします。

ということで、年初から興奮する本が発売になったのでいくつか。

ジョルジュ・ペレック『煙滅』水声社
フランス語で一番使われている母音eの字を使わずに書いた実験的作品
があるらしいというのは何かの文学案内本で読んだ記憶はあるけれど、翻訳は
無理とあるから、きっとずっと読めないままなんだろうな。
などと思っていた本が翻訳に。

という噂を聞いてウキウキしていたのですが、まず本の形が素敵。
表紙は「いきしちにひみゐり」の字の形の穴があいてるし、アナつながりで
(と信じてるのですが、)帯には菊地成孔のあおり文。本文終了後は「い」も
あることを示すのに文章のインクの色が違っているなど、形だけでもウットリ。

これは「翻訳不可能」や「実験」の文字を見ると心浮き立つ、背伸び体質の人
間は買わなきゃだめな本だ、とムキャキャーといたします。(研究や出版の正
統派の人はもちろん買うでしょうから、言うまでもなく)

そして、肝心の中身なのですが、当初は語られる内容よりも「い」抜きを意識
してしまったものの、朦朧と欠落に翻弄される登場人物、謎の死、開かされ続
ける出生の秘密に夢中になったり、同期したり俯瞰していくうちに、なぜ「な
い」のか、が判明。「読めばわかる」という素晴らしい本なのです。(でもわ
かったかどうかはよくわからないので、一生のうちあと何回かは読むと思いま
す)

今後、さまざまな媒体に出るであろう、本書の書評や紹介について、「い」段
抜きで書くのは誰なのか知らん、を読む楽しみも待っています。

「水声通信6号」はジュルジュ・ペレック特集号も副読本としてゼヒ。

あと帯担当の菊地成孔『ユングのサウンドトラック』も1月に発売。
内容は雑誌、パンフレットやDVD解説やトークショー等の映画についての雑
文集で蓮實重彦との対談も収録。これまたゴダール始め、背伸びしたまま数十
年、時々思い出したように、あの映画のアレはあれかーと膝を叩くことのある
方は読むと面白い本だと思います。

それから、フランスとは関係ないんですが
二見文庫から『高慢と偏見とゾンビ』も発売になりました!
ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』がゾンビ世界と融合。説明するにも、
それ以上のことは言えない『高慢と偏見』を読んだ全ての人が手にとって、バ
ッカだなーとにっこりするといいな、な本です。新しい形の新訳としてシリー
ズ化してほしいと切望。

とかなんとか言ってるところで、また。
(オオウラウタコ 35歳
こんなこともしてます http://www.webdoku.jp/shoten/hayashi/ )

---------------------------------------------------------------------
■献本読者書評のコーナー(応募要項)
---------------------------------------------------------------------

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 皆さんのご応募、お待ちしております。

---------------------------------------------------------------------

 このコーナーの仕組みはとてもカンタンです。

1)まず、出版社でも著者でもどちらでも結構ですが、献本を募ります。冊数は
 何冊でもOKです。メールで【読者書評用献本希望】とご連絡いただければ、
 折り返し、送付先をお知らせします。

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、熱意と販促効果優先で選ばせていただきます。

3)発行委員会はいただいたメールの中から、熱意がありそうな方をピックアッ
 プして献本いただいた本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に
 応募数が満たない場合には、100日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンやbk1、楽天などのオ
 ンライン書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。
 つまりは当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願
 いします。

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

 読者献本書評のコーナー、前回、ちょっとハードル上げすぎました(笑。
 皆様のご応募お待ちしております!(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ」(毎月三回発行)
■ 発行部数 4747部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレス http://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー 0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================


作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.440

■■----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ               2010.01.10.発行
■■                             vol.440
■■ mailmagazine of book reviews        [いきなり新連載 号]
■■----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------

★【新連載】「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
→それは「ガロ」から始まった

★【新連載】「背伸びして本を選ぶ」/十谷あとり
→学研の図鑑「魚」

★【新連載】「日記をつけるように本の紹介を書く」/大麦親父乳酸脂肪
→『謎ときシェイクスピア』

★【新連載】「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
→はじめまして。林さかなです。

★【新連載】「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」
 /庄司善彦
→ゆとり社員をどう活かし、成長させるか

★【新企画】献本読者書評のコーナー
→読者の方、著者の方、出版社の方、必見です。

---------------------------------------------------------------------
■トピックス
---------------------------------------------------------------------

 皆様、新年、明けましておめでとうございます。
 今年も[書評]のメルマガをよろしくお願い致します。

 今年から[書評]のメルマガは、10日号、20日号、月末号の月3回ペースに
て、配信させていただきます。そして今回の10日号はリニューアルに相応し
く、全てが新連載です。

 ジャンルも漫画、古本、演劇本児童書、人事書など、多彩な顔ぶれになり
ました。

 巻末には新企画の告知もございます。これもどんどん御活用いただければ、
と思います。

---------------------------------------------------------------------
■「漫画’70s主義〜オッサン目線な漫画の地平〜」/太郎吉野
---------------------------------------------------------------------
<1> それは「ガロ」から始まった

 「ガロ」という漫画雑誌の存在は聞いてはいたのだが、それに初めて接し
たのは1972年…だからわしは高校2年生で、11月だった。

 高校で一緒に漫研をやっていたアキオくんが、発売されたばっかりの「ガ
ロ12月号」を学校へ持ってきて、漫研仲間皆して…つーても全部で5人ほど
だったのだけど…で、「へーえ、これが『ガロ』かいな」と覗き込んだのだ
った。

 赤瀬川原平筆になる、なんだか乱雑な座敷に置かれた赤ちゃん人形のイラ
ストが表紙で、30ワットの裸電球の真下に極彩色のセルロイド置いたみたい
な、妙に暗明るいその表紙からして、異様な雰囲気をたたえた雑誌であった。

 72年当時の「ガロ」は、白土三平『カムイ伝』終了後の低迷期を経て、未
だに「低迷」は変わらなかったのだけど、つげ義春や林静一をはじめとした
新しい漫画表現を模索する才能が集まり、安部慎一、鈴木翁二、古川益三の
いわゆる「一二三トリオ」やら、川崎ゆきお、淀川さんぽ、やらがその誌面
で、既成の漫画表現にとらわれない、闊達で奔放な筆をふるっていた。

 当時のわしはといえば、それまで漫画といえば「少年サンデー」で時たま
「マガジン」だったのが、高校生になったんやからと、「ビッグコミック」
に乗り換えたばかり。(ちなみに新興の「ジャンプ」「チャンピオン」は、
「二流の格下やしな」と一顧だにしなかった……のは、わしだけではなくて
当時の一般的評価だったと思う。)

 そんなわしには、ペンで引っかいたような荒い描線と、黒ベタの多い、
「スクリーントーンなんて知らんもんね」なそれらの漫画との出会いは、と
ても衝撃的だったのだ。

 それ以前、同じ漫研で手塚信奉者のモッちゃんが持ってきた「COM」には、
表紙に謳う「まんがエリートのためのまんが専門誌」という惹句にまず「ケ
ッ!」と思い、中を開いても、手塚治虫の『火の鳥』はじめ、石森章太郎や
永島慎二が描く、田舎モンが田舎スーパーで買ったペランペランのスーツ着
て、どうや!これが最先端じゃ!と勘違いの大威張りで歩いてるみたいな漫
画に、吐き気催すほどの嫌悪覚え、思わず破って捨てようとして、人の本だ
ったと気づいて思いとどまったのだけど、「ガロ」との出会いは、「これや
〜〜っ!」やったんですわ。

 思わず学校を飛び出しては、そのまま電車飛び乗り、終点の新開地で山陽
電車に乗り換えて所要約1時間20分の須磨海岸まで行って、海に向かって
「こんな漫画が、あったんや〜〜っ!これぞ、わしが求めとった漫画や〜っ
!」と叫び……はさすがにしなかったけど(遠いし…)、それほどの高揚が
あった、と思っていただきたい。

 で、その衝撃があって爾来、漫画雑誌は「ガロ」しか買わない。「ガロ」
以外の漫画は(自分の中では)漫画と認めない、という価値観を持つに至っ
てしまうのですね。(はい。極端なんです。)

 とは言え、自分の中で「ガロ的」と認めた「ヤングコミック」は買ってた
し、東京で大学生になって後は、「サンデー」「マガジン」「ビッグコミッ
ク」「オリジナル」を、毎号買い揃えて置いてある喫茶店に通っては、各誌
に一応目を通してはいたんだけど、しかし、買うのは「ガロ」(…と「ヤン
コミ」)という矜持(なのか?)は守り続けたんである。

 前述の「COM」というのは、ただいま現在、「ガロ」と並べて論じられ
ることが多いのだけど、「まんがエリートのための〜」という惹句に表象さ
れるごとく、その誌面というのはまさに漫画「にしか」開かれてなく、言葉
を変えればとても閉鎖的内向的だったのに対して、「ガロ」は、漫画以外の
ジャンルにも全方位的に開かれており、その誌面あるいは漫画そのものが、
映画や演劇、あるいは音楽、文芸やなんかともリンクすることで、当時の編
集部にその意識があったかどうかは別として、結果、漫画というメディアの
表現領域の、さらなる拡大拡張膨張深淵化を図る、一種の実験場でもあった。

 実際、わしはその後「ガロ」を通じて、唐十郎や寺山修司、稲垣足穂、あ
るいは鈴木清順や深作欽二、神代辰巳、また当時活発だった「関西SF」、
等々の世界を知ることができた。

 そんなわしは、次第にモノゴトすべて「ガロ」というフィルター通して見
るようになって、結果、「ガロ的なもの」と「そうでないもの」という、し
ごく単細胞な二極的価値観を持つに至り、その価値観のままに、「ガロ的」
な「ヤングコミック」に連載漫画を持っている、という理由でだけ、それを
作っていた漫画プロダクションにマネージャーとして入社(えへ、実は「ガ
ロ」の青林堂に入りたかったのだけど、論文審査で落とされたのさ)した後
は、メジャー向けエンタメ的価値観も少しは身に付けたはずなんだけども、
その後、故郷の神戸でこれまた「ガロ的」価値観による品揃え中心の本屋を
開き、当然のごとく商売にはならずあえなく沈没させて後は、いくつかの学
校掛け持ちで、漫画家を目指す若者相手に、知ったかぶりで「漫画とは?」
なんて言うとんですが、やっぱり「ガロ的」価値観はいまだチラチラと顔を
出し、「お〜〜っと」とココロの中でエンタメに舵切ること度々。

 そんな「ガロ的」を引きずったオッサンが、懲りもせずに、ガロ的70年代
的目線でもって、ただいま及び昔の漫画とその周辺、主にポップカルチャー
方面を、ぐだぐだだらだらねちねちと、あっち行ったりこっち行ったりしな
がら、ぬるくゆるく且つ訥々と、語ってゆきたいと思いますので、しばらく
はお付き合いのほどを、よろしくお願いいたします。

太郎吉野(たろう・よしの)
元・漫画プロダクション勤務を経て元・本屋。ただいまの本職は「文筆業」
のはずなのだが、もっぱらは複数校掛け持ちにて漫画家を目指す若者たちに、
えーかげんなこと教えては路頭に迷わすことで生計を立てている。神戸在住。

---------------------------------------------------------------------
■「背伸びして本を選ぶ」/十谷あとり
---------------------------------------------------------------------
1 学研の図鑑「魚」

 はじめまして。十谷あとりと申します。初回ですので、簡単な自己紹介をさ
せていただきます。

 1965年大阪府生まれ、奈良県在住、大阪に通勤という「奈良府民」です。歌
を詠みます。(「日月」「玲瓏」所属、歌集『ありふれた空』2003年刊。)
 2005年に古物商取得、オンライン専門古本屋「このはな文庫」を開業。神戸
の海文堂書店さん、奈良のカフェ「南果」さん/植物屋「風草木」さん、神保
町の古書店「ブック・ダイバー」さんのイベントなどに参加。2009年6月、夫
のボタン専門店(「ボタン王子のお店」)開業に伴い、店の一隅に古本の棚を
構え、「usedbooks このはな文庫」としてリニューアルスタート。大正14年築
の渋ビル「船場ビルディング」内で毎週土曜日営業中です。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

 ゴミの日に、自転車でご近所を走っていたら、道の角に本の束が見えた。自
転車の速度をゆるめて、どんな本か、見る。固い表紙のついた、大きな本が数
冊。小口はそんなに汚れていない。
 まあ、かわいそう。
 捨てられている本は、捨てられている子猫と同じくらいかわいそうだ。
 自転車を止めて、ちら、と左右を見、自転車の籠に本の束を載せる。また、
漕ぎ出す。
 捨て猫を全部拾って助けてやることはできない。本にしたってそうだけれど、
連れて帰れるものなら、連れて帰ってやりたいではないか。

 家に帰って紐をほどいてみると、こども向けの図鑑の束だった。中から、
『学研の図鑑「魚」』が出てきた。表紙の写真に見覚えがある。奥付を見ると
昭和四十五年初版発行となっている。やっぱり!わたしがこどもの頃持ってい
たものと同じだ。なつかしいなぁ学研の図鑑。濡れ布巾で表紙を拭いてから、
ページをぱらぱらめくる。何年ぶりの再会だろう。

 こどもの頃、千円小遣いをもらったら、本屋さんに行った。月に一度だった
か、二月に一度だったか。
行けば二回に一回は学研の図鑑を買った。当時この学研の図鑑は次々と新しい
シリーズを刊行していた。平積みになっているそれを、前回は「植物」、今回
は「昆虫」……といったふうに一冊ずつ買い揃えていくのだ。図鑑でなければ、
学習まんがを買った。(これもまた学研だ!)内山安二の絵が好きだった。勇
んで家に持って帰ると、ちらっと本に目をやった母が(またそれかいな)と言
いたげな顔をしていた。父も母も、本を読まない人だった。家には本棚もなか
った。わたしは学習机の上に本を並べた。

 今あらためて大人の目で見ても、悪くない図鑑だと思う。大きな分類ごとに
見開きになっていて、丁寧に描かれた標本図や写真が並んでいる。合間に、ち
ょっと漫画チックなイラストも入っているが、くだけすぎた感じはしない。こ
どもの時はそれとは気付かなかったが、解説のページに東君平の見開きイラス
トがある。
毎日図鑑を取っ替えひっかえ、飽かずに眺めていたことを思い出す。あの頃、
世界は自分の知らない、見たことのない、生きているもの、生きていないもの
でいっぱいだった。わたしはひたすら名前を覚えた。飼うことも、観察するこ
とも、標本を作ることもしなかった。ただ頭の中を知識で、ことばで、いっぱ
いにしたかった。

 どうしてそんなに図鑑が好きで、本に書いてあることを何でもかんでも覚え
たいと思ったのか。この性癖はぬきがたく、大学生になっても、さほど必要で
もなかった『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会刊)を買い込んだりしてい
る。「図版」「解説」二冊組で、定価が36,000円だった。

 一生懸命覚えたいきものの名前も、今はほとんど忘れてしまった。例えば、
若山牧水の

 海底に眼のなき魚の棲むといふ眼の無き魚の恋しかりけり

という歌を読んだりする時、(ああ、深海魚もいろいろいたなぁ)となつかし
い気持ちにはなるが、この歌に該当するような具体的な魚種を思い浮かべるこ
とはできない。そのことを少し淋しく思う。しかし、生物学的に正確な知識が
なければ、短歌の鑑賞ができないというわけではない。〈海の底に棲む眼のな
い魚〉という表現を受け取る時、わたしは自分の頭の中の薄暗がりに、鰭や鱗
のあるものないもの、不気味だけれどいきいきとしたもの、見たこともないの
に親しいものがうようよとうごめく気配を感じる。本で覚えた有象無象は確か
にわたしの中に生きている。生活上では何の役にも立たなかった記憶が、今で
も、わたしの貧しいこころに滋養を与えてくれている。

 お気に入りだった学研シリーズは、度重なる引っ越しの間に処分されてしま
って、今は一冊も手許に残っていない。大図鑑はさすがに手放さずに置いてあ
るが、息子のいたずらで函にべたべたとシールが貼られている。わたしは拾い
ものの本を「売らない本の棚」の高いところ、大図鑑の隣に並べた。長い時間
をかけて、自分の本が帰って来たような気がした。

〈じゅうや・あとり〉1月は2つの古本市に参加します。まずは2010年1月12
日(火)〜16日(土)、神保町「ブック・ダイバー」さんの新春ミニ古本市
「女子とふるぽん〜」寄港市。つづいて1月23日(土)、奈良市の公設市場
「大門市場」(おおもんいちば)にて、一箱古本市「大門玉手箱」が開催され
ます。どちらも古本・ハンドメイド雑貨etc が並びます。みなさまどうぞお越
し下さい。

「「大門玉手箱」…の箱」http://tamatehako.exblog.jp/
「このはな文庫@船場ビルディング」http://konohanas.exblog.jp/

---------------------------------------------------------------------
■「日記をつけるように本の紹介を書く」/大麦親父乳酸脂肪
---------------------------------------------------------------------
本が好きだと云って40年。芝居が好きだと云って30年。

芝居を観ることと本を読むことは、大好きですが、“三昧”とか“中毒”とか、
そこまでには至っていません。なぜならば、たとえば映画や話芸(落語、講談
など)、それから登山、サイクリング、彫刻や絵画鑑賞など、他にもおもしろ
そうなことがあればふらふらと近づいて、それに首を突っ込むたちだからです。

父親によく云われました。「おまえは落ち着きがない」と。あれこれ中途半端
にやってきて、それでも一日も欠かさずしていることと云えば、「日記をつけ
ること」だということに最近気がつきました。それはノートに鉛筆で書く、と
いう極めてアナログなものですが、読み返すと結構おもしろい。まあ、ひとさ
まが読めば退屈かもしれません。その日記の中には読んだ本の感想や観た芝居
の講評などが書いてあるわけです。大雑把なあらすじが書いてあり、そして印
象深い登場人物について誰に遠慮するわけでもなく大胆に書いています。これ
は我ながら感覚として悪くない印象なんです。手前みそでごめんなさい。

〔書評〕のメルマガなので、芝居の感想を書くわけにはいきませんが、芝居に
関する本をひとさまに紹介してゆこうと思います。その方法は、自分の日記に
書くように。ということですが、それは自己本位になる、ということではあり
ません。赤裸々に臆面もなく、ということを目指したいと思うから、敢えて日
記をつけるように、と表現しました。

『謎ときシェイクスピア』(河合祥一郎 著)(新潮選書)(2008)

 今や日本を代表するシェイクスピア学の俊英となった河合祥一郎の著作であ
る。河合はシェイクスピアはもちろん、イギリスの演劇論の専門家である。ま
た「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えた芝居である『国盗人』の作者で
あり、最近は『按針 ANJINイングリッシュサムライ』の脚本も手がけている。
その河合が“シェイクスピアとは誰なのか?”という古くからある疑問に挑ん
だのが、本書『謎ときシェイクスピア』である。

 シェイクスピアは手紙や日記を残していない。彼は自分の書いた戯曲だけを
残した。それがシェイクスピア研究をむずかしいものにしている原因であり、
また古くから「シェイクスピア別人説」が唱えられる所以である。そもそも、
「教育のない田舎者の役者シェイクスピアに、知性と教養にあふれた偉大なシ
ェイクスピア作品が書けたとは思えない」という発想がこの「シェイクスピア
別人説」の出発点である。役者シェイクスピアとは別にシェイクスピアを名乗
る蔭の劇作家がいたのではないかと疑い、その別人として哲学者、貴族、劇作
家、外交官、と多彩な人物が挙げられている。本書で河合はそれらの別人候補
たちひとりひとりについて反論し、やはりシェイクスピアはストラットフォー
ド・アポン・エイヴォンで生まれた役者もしていたシェイクスピアである。と
結論づけている。この有力な別人説に対して丁寧に反論をしている部分が前半
の読みどころとなっている。シェイクスピア本人が日記や手紙という資料を残
していないので、彼の出自や他の記事でシェイクスピアに触れているものを参
考にシェイクスピアの生涯を再構築してみせるのである。そうすると、やはり
シェイクスピアはシェイクスピアに違いない、と思わずにはいられない。少な
い証拠から見事な論理を形成してシェイクスピア像を描き出している処はまさ
に圧巻である。

 後半で問題になっているのは、従来シェイクスピアを読み解くための基本的
テクストとされていた、シェイクスピアと同時代に活躍した劇作家ロバート・
グリーンの『三文の知恵』という本についてそれがシェイクスピアに関する基
本的資料ではない、ということを論じている。この『三文の知恵』の中に書か
れている“成り上がり者のカラス”と云われている男がシェイクスピアである、
という意見は、現在のシェイクスピア学ではほぼ定説になっている。そして多
くの学者はこのことを前提にしてシェイクスピアの人間像や生涯を構築してい
る。グリーンはこの本の中でシェイクスピアのことを、役者のくせに自分たち
と同じ劇作家として出てきて、しかも素晴らしい戯曲を書いている、と云い、
その記載の仕方を後世のシェイクスピア学者たちは、グリーンがシェイクスピ
アに嫉妬して“成り上がり者のカラス”と表現している、と考えてきた。河合
はこのことに反駁を加え、“成り上がり者のカラス”はシェイクスピアではな
く別人である、という考えを示した。

 ここで重要なことは、シェイクスピアが生きていた16世紀から17世紀の
イギリス−エリザベス朝時代と云われている−が現在我々が生きている21世
紀とはその状況が大きく違っている、ということである。たとえば当時は著作
権など存在せず、劇作家の地位は役者よりも劣っていた。そのようなエリザベ
ス朝時代の状況であるから、“成り上がり者のカラス”はシェイクスピアでは
ない。という論理になっている。ここでも河合は根気よくひとつひとつ例証を
挙げて、自説を展開している。ではそれは誰か、ということは本書を読んでの
お楽しみである。この部分は上質な推理小説を読んでいるようなおもしろさが
ある。

 本書『謎ときシェイクスピア』を読めば、シェイクスピアの芝居がさらに楽
しめるようになる。シェイクスピアファンにはたまらない一冊だ。

大麦親父乳酸脂肪(大田区に棲息し昼間は新宿区にも出没する大人の男)

---------------------------------------------------------------------
■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
---------------------------------------------------------------------
 はじめまして。林さかなです。

 小学校の図書室で借りた児童書にケストナーの一文がのっていました。

《世間には、両親が別れたために不幸な子どもがたくさんいる。しかし、両親
が別れないために不幸な子どもも、同じだけいるのだ…》

 当時、この後者にあたる子だった私にはストライク! 目の前にいないけれ
ど、わかる大人もこの世界にはいるんだと確信した瞬間でした。

 私が大人になったいまもこどもの本を読む理由のひとつは、この本の恩返し
なのかもしれません。子どもが生きていくつっかえ棒になるような本を紹介し
たい思いが消えたことはないからです。力のあるこどもの本は大人にも支えに
なります。もちろん、本来の読者層であるこどもにも。

 このメルマガを通して、こどもの本の楽しさを伝えていけるよう書いていき
たいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 ということで、今回ご紹介したい一冊は『かいじゅうたちのいるところ』。
 アメリカの絵本作家モーリス・センダックの描いた絵本が映画化され、脚本
を書いたデイヴ・エガーズが、センダック自身に請われて書いた小説がそれで
す。

 絵本の初版は70年代。映画の監督をしたスパイク・ジョーンズも脚本を書い
たエガーズも子どもの頃からセンダックの『かいじゅうたちのいるところ』が
大好きだったといいます。だからこそ、この絵本を手がけたいと関わる人たち
の、「好き」パワーが結集しました。この小説もそうです。編集者の方が、や
はり絵本の大ファン。自分のこの映画化にあわせて何か本をつくりたいと思い、
小説と出会ったとうかがいました。好きという気持ちは、何かをつくるときに
本当に強い力になる!

 絵本はわずかな言葉でしか語られていません。でてくる人もマックスとかい
じゅうだけ。お母さんの顔も、手すら出てきません。いたずらをして自分の寝
室にほうりこまれたマックスは夕食もおあずけです。ところが部屋ににょきり、
にょきりと木がはえてきて、自分の部屋あっというまに見知らぬ森の中。波も
ざぶんと打ち寄せ、マックスは小さな船を何日にもこぎ、かいじゅうたちと出
会います。

 一方、小説では物語がおおきくふくらみます。マックスにはお姉さんがいて、
お父さんとお母さんは離婚し、いまはお母さんとお姉さんの3人暮らし。理由
のわからないイライラする気持ち、お姉さんやお母さんに優しくされたいと願
っているのに、自分のとる行動は彼女らの気持ちをさかなでするばかり。どう
して?と聞かれても「わからない、わからない!」とかんしゃくをおこすしか
ないのです。絵本と違い、マックスはどのようにかんじゅうたちのいる島にた
どりつくのでしょうか。

 こどもの不幸を物語るステレオタイプ的な背景に両親の離婚は必須アイテム
のひとつです。冒頭でマックスの家族を知らされていく読者は、その背景にち
ょっとひいてしまうかもしれません。私もそうでした。でもでも、そこから物
語はうねりはじめます。マックスもとびっきりすてきな少年として、物語の中
で動きまわるのです。

 センダックの絵本は、こどもの内面を深くほりさげ、それを見事に絵本に仕
立て上げた魅力に尽きます。自分でもどうしようもない気持ちをもてあまし、
別世界である意味その気持ちを昇華させる。帰ってくる家にはあたたかいスー
プが待っている幸せ。小説でも、見える風景は違えど、同じくマックスの強い
動的な気持ちが小気味いいくらい言葉化されています。総ルビなので、こども
も読める体裁です。こどもにも大人にもそれぞれ胸をうつものがあるはず。
 いまは思い出すこともなくなったこども時代――その時にしか持っていない
あの強烈な気持ち、それに心当たりがありすぎて、私はマックスにもかいじゅ
うたちに近しさを覚えてしまう。気持ちを動かされる読書はじつに爽快感を残
してくれます。

********
『かいじゅうたちのいるところ』(デイヴ・エガーズ作 小田島恒志・小田島
則子訳/河出書房新社)

(林さかな)
会津若松在住。主に児童書の新刊紹介をネットで公開したり、出版翻訳データ
ベースのサイト( http://www.trs-data.com/ )にて、翻訳者のインタビュー
記事を書いたりしています。個人ブログ http://r2fish.cocolog-nifty.com/

---------------------------------------------------------------------
■「人事なショヒョー〜組織とコミュニケーションを考える」/庄司善彦
---------------------------------------------------------------------
ゆとり社員をどう活かし、成長させるか

はじめまして。庄司と申します。
縁あって、こちらで書評を書かせていただくこととなりました。
読者の皆様、どうぞ宜しくお願いいたします。


私はIT系企業の人事担当者として、採用、教育、制度構築等に従事しておりま
す。そのため普段読む本も、組織や教育、コミュニケーションに関するものが
大半を占めます。初回となる今回は、ゆとり教育世代の若手社員の傾向と現場
での対応方法について解説された書籍の中で、特に面白かったものを取り上げ
てみたいと思います。

『職場を悩ます ゆとり社員の処方せん』
 池谷 聡 著
 出版:朝日新聞出版
 ISBN:978-4-02-250452-4
 発行年月:2008.7


新人教育をテーマに出版されている書籍は数多くありますが、この本は学術的
な要素がほとんどなく、実際に企業で起きた豊富な事例・ケーススタディと、
その対処方法がシンプルに記載されているため、サクサクと読み進められます。

そして、出てくる事例が冗談とも取れるぐらい極端なものが多いため、読んで
いるうちに自然と笑いが出てしまうんです。これは人事担当者よりも、新入社
員の理解に苦しんでいる現場にこそ是非読んで欲しい!と強く思いました。

まず目次を開きますと、このようなフレーズが並んでいます。

 ・「自分のやりたい仕事と違う」と会社をやめる
 ・「なんでこんなことをしなくちゃダメなんですか?」とムダを嫌う
 ・上司の注意に「そんなこと先に言ってよ!」と逆ギレ
 ・クライアントにメールでドタキャン
 ・部長命令に「私、いま忙しいから、あとにしてください」

初めて読んだ際は、思わず吹き出してしまいました(笑)。

私が人事担当者として、ここまで極端なケースに遭遇したことはさすがにない
ですが、そのような具体例を笑いながら読みすすめていると、
「なんかわかる気がするなぁ」って自然と納得してしまうのです。

同じ部署に入社1〜2年目の若手社員がいるビジネスパーソンなら、わかって
くれると思うのですが…いかがでしょうか(笑)?

これは誰かに勧めよう!と思い、手始めに同じ会社のバックオフィス部門で経
理を担当しているハヤシさんに本書を手渡してみたところ、彼も目次を開くな
り爆笑。

「この本、酒の肴になりそうだよね」なんて発言も飛び出し、2人で雑談をし
ていたところ、傍らでその様子をじっと見ていた新卒3年目の女性人事社員、
サカイさんがポツリと一言。

「ハヤシさんとショウジさんは笑ってますが…
 ここに書いてあること、『自分にはあてはまらない』って
 自信を持って言えるんですか?」

一瞬硬直し、何と返すか即座に回答が出なかったハヤシさんと私。若手社員の
彼女と私たち2人の常識レベルの差は、思った以上に大きかったようです。。。


そもそも“ゆとり社員”という言葉は、1992年から導入された“ゆとり教育”
の中で学校生活をすごしてきた若者たちが、社会に出てきたタイミングで使わ
れ始めました。

“個性の尊重”を学ばせることを重視したゆとり教育の結果、自分の言いたい
こと、やりたいことが強く主張できる一方で、規律の求められる企業社会には
馴染みにくい、という問題が語られます。

また、経済面で豊かな時代に育ったために、与えられることに慣れきってしま
っている(=自らやりたいことや手に入れたいものを探すのが苦手な)側面も
指摘されています。

コミュニケーションの面では、学生時代からメールが当たり前のツールとなっ
ているためFace to Faceや電話に苦手意識が高い・・・など、指摘される問題
点を挙げればキリがありません。


そんなイマドキ若手社員たちの採用と教育を担う人事の仕事って、常に板挟み
です。冒頭に記載したような事件を新入社員が起こしたとすれば、十中八九、
現場からつつかれるのは人事担当者。

「あんなやつ、なんで採用したの?!」
「やめたいって本人が言うんだから、やめさせればいいんだよっ!」
「だいたいさ、導入教育のやり方から間違ってるんじゃないの?」

そんな声が至るところから聞こえてきそうです。ひーっ!

私の会社は100人ほどの組織で、新入社員の数は毎年5名前後。こまめに人事
側がフォローできるため、それほど大きな事件も起きずにまいりました。しか
し、これが100名規模で新卒採用をするような大手企業であれば人事担当者の
心中はきっと穏やかではないのでしょうね。。。

人事側の本音としては、すべて採用・教育のせいにしないで現場サイドも一緒
に考えて欲しい!ということを考えていると思います。しかし現場サイドとし
ては、これまでの指導方法が通じない若手社員側が悪い、ひいては人事にも責
任がある、と考えている節がある。

そのようなギャップを埋める手段の1つとして、本書は有効活用できると踏ん
でおります。その納得性の高さと読みやすさから、読むこと自体に抵抗感が生
まれず、且つ短時間で読めてしまう。若手社員の問題について現場側と人事側
でディスカッションをする際、あらかじめ双方で本書を読んでおけば、書いて
ある内容自体が若手社員を語る際の共通言語となるため、そこには建設的な会
話が発生してくるはずです。


以前、何かの記事で「最近の若者は…」というフレーズが、太古の昔より存在
していたという話を読みました。よくよく考えてみると、それは私の世代(就
職氷河期)でも言われた記憶がありますし、もっと上の世代でも同じだったこ
とは容易に想像できます。

本書でも指摘されている通り“ゆとり社員”世代は、物事の考え方や表面上の
コミュニケーションなどにおいて、イマドキの若者特有の問題を抱えていると
指摘されますが、成長意欲やITリテラシーの高さなど、世代特有の長所も併せ
持っています。表面的な部分を批判するよりも、これらの長所をどう活かして
成長していってもらうかを考えていきたいですよね。

わたしたち人事や現場などの受入側としては、その点を十分に理解したうえで、
今後5年、10年後にはまた別の特徴を持っているはずの若手社員に対応するた
めその都度柔軟に適応し、新たなコミュニケーションスタイルを実践していく
必要がありそうだな、と思います。

(庄司善彦 IT関連企業人事担当者 (財)生涯学習開発財団 認定コーチ)

---------------------------------------------------------------------
■【新企画】献本読者書評のコーナー
---------------------------------------------------------------------

 これまで[書評]のメルマガにはたくさんの献本依頼が来ていましたが、あく
まで読者の立場から、目利きが本を選ぶという理由で、これらをすべて断って
いました。

 しかし、最近、企業研修などもやるようになって、とみに感じることがあり
ます。それは、読書レベルの低下とでも言うのでしょうか、特に大企業の若手
社員の方を中心として、読書量がかなり減っている人が多い、という事実です。

 自分を振り返ってみると、いい本を薦めてくれる先輩社員や友人が居て、そ
の中で読書の幅を広げていったように思います。さらには、本に囲まれた職場
であったために、幸せな読書人生を歩み、さらには、自分の著作まで出すこと
ができました。

 本を読む、書評を書く、それからメルマガ執筆者になり、さらに本を読み、
やがては本を書く側にまわり、今度は本を供給する。そしてさらに本を読む。
既に売れている著者に執筆を依頼するだけではなく、こういうサイクルが生ま
れてくれれば、きっともっと本が売れるのではないか、そしてこのサイクルが
できるきっかけを、もしかしたら簡単な方法で作ることができるのではないか、
ということを考えたのが、この「献本読者書評」のコーナーです。

 ということで、仕組みはとても簡単です。

1)まず、出版社でも著者でもどちらでも結構ですが、献本を募ります。冊数は
 何冊でもOKです。メールで【読者書評用献本希望】とご連絡いただければ、
 折り返し、送付先をお知らせします。

2)このメルマガ上で、その本を読んで、書評を書きたいという方を募集します。
 先着ではなく、熱意と販促効果優先で選ばせていただきます。

3)発行委員会はいただいたメールの中から、熱意がありそうな方をピックアッ
 プして献本いただいた本を送付します。(残念ながら提供いただいた冊数に
 応募数が満たない場合には、100日後に古本屋に売却します。)

4)ちなみにここでいう書評というのは、当メルマガに掲載する記事ではありま
 せん。送付先御本人分のブログ、あるいはアマゾンやbk1、楽天などのオ
 ンライン書店でも結構ですし、ブクログなど、専用のサイトでも構いません。
 つまりは当メルマガではないどこかリンクのできる外部に書評をアップお願
 いします。

5)献本を受け取った方は、1ヵ月後のメルマガ発行日までに、どこかに書評を
 掲載し、そのURLを発行委員会に送付します。(もし、本を受け取りなが
 ら期日までに書評を書かない場合には、以降、送付は致しません。

6)ちょうど一ヵ月後のメルマガにて、書いていただいた書評のURLを紹介さ
 せていただきます。期日に間に合わない、あるいは書けないという場合、送
 料をご負担いただき、書籍を返送いただきます。

 以上のサービスを、まったく無料で展開しよう、というのが今回の試みです。
とはいえ、書籍を送付するコストが気になるので、「100日後に古本屋に売
却」というルールを入れさせていただきました。

 まあ、要するに、雑誌の最後のページなどにある読者投稿欄のようなものだ
と考えていただければわかりやすいかと思います。ちょびっとの人数だけプレ
ゼントする、というようなアレですね。ただ唯一、違うのは、抽選ではなく、
書き手の能力を見てプレゼント先を決める、というところでしょうか。

 この仕組み、個人的にはとても画期的だと思うのですが、自分で考えて自分
で絶賛しても説得力がありませんので、まずは、1月10日号では、1月15
日に取次搬入となる、自著で試してみたいと思っています。

『100のキーワードで学ぶコーチング講座』(創元社)
 http://www.sogensha.co.jp/book/2009/12/100-1.html

 まずはこちらの本を5冊用意しました。

 参加ご希望の方(つまりは書評をご執筆いただく方)は、

・希望の書籍名:
・送付先ご住所・名前:
・筆名(あれば):
・書評アップ先の媒体予定:
・コメント:

 をご記入の上、下記までメールください。

 表題【読者書評参加希望】
 info@shohyoumaga.net

 今回の本は1月15日発売ですので、20日頃着でお送り致します。
 書評の執筆&記載URL送付期限は、2月4日。

 皆さんのご応募、お待ちしております。

---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

2010年初めの配信です。年末に続いて発行日に発行なんて、縁起が良いです。

「献本読者書評のコーナー」は、ここ数年温めていた企画です。読者と作者と
出版社をつなぐうまい方法を模索して、これだ!と昨年、アイデアが浮かびま
した。

今年、11年目の[書評]のメルマガ。より出版業界に貢献すべく、本の面白さ
をどんどん発信していきたいと思っています。

 本年もよろしくお願い致します。(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ」(毎月四回発行)
■ 発行部数 4733部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレス http://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー 0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================

作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.439

■■----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ               2009.12.31.発行
■■                             vol.439
■■ mailmagazine of book reviews    [終わり良ければ全て良し 号]
■■----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------
★「25年ぶりに英語学び直してみました」/守屋淳
→カタカナ英語です。

★「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
→「丁稚」です。

★「月刊ニュースなビジネス書評」/aguni
→2010年が素晴らしい1年になりますように!

★「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
→今回はお休みです。

---------------------------------------------------------------------
■「25年ぶりに英語学び直してみました」/守屋淳
---------------------------------------------------------------------
脳科学者さまにスガリます

『怖いくらい通じる カタカナ英語の法則』池谷裕二 
講談社ブルーバックス

「何か英語関連の良い本ないかなあ」と本屋さんの店頭で入門書をあさって
いたときのこと、タイトルは忘れましたが、背筋の凍る怖ーい本に当たった
ことがあるんです。

それは、英語の発音というのは、とにかく正確にしなければダメ。なぜなら
日本人の耳には聞き取れていないだけで、外国人というのは、ちゃんと発音
記号のように発音しているし、それを聞きとっているから。いい加減に現地
人風の発音をしていても、絶対にうまくはならない、と……

前に紹介した発音関連の本のCDをいくら聞いても、さっぱりわからない筆
者にとっては、「お前、いくら勉強しても英語なんかうまくならんぞ」と目
の前が真っ暗になるような指摘が、そこには書かれていたんですね。

しかーし、捨てる神あれば拾う神ありなのです。そんな頭の弱い筆者を救っ
てくれる(?)素晴らしい本を見つけました。著者は、最近ベストセラー連
発の脳科学者・池谷裕二先生。どうだ、最先端サマだぞ、脳科学だぞ、控え
おろーっ(なんのこっちゃ)

本書には、まったく逆の意味で衝撃的な事が書いてあるのです。

《一般に、言葉を覚える能力は8歳までだと言われています。この年齢を過
ぎると、新しい言語を覚える能力は急速に低下します。教育の現場では「9
歳の壁」と呼ばれる有名な脳の変化です。こうした現象が脳に備わっている
理由はまだよくわかっていません。しかし、私たちはこれを事実として受け
止めなければなりません》

《たとえば、5種類の母音「アイウエオ」を持つ日本語を聞いて育ったとし
たら、子供はこの5つの音を聞き分けられるようになるでしょう。それに順
応した専門回路が脳に組み立てられるからです。しかし、こうして組み立て
られた回路は9歳以降ほとんど変化することはありません。こうなってし
まってはもはや、日本語の3倍もの母音を含む英語に対処するのはとても無
理な話なのです》

《べつにカタカナ英語だっていいじゃないか。理想を求めることは潔くあき
らめよう。どうせ、私たちには英語を発音するための脳回路がないのだから》

これはまさしくコロンブスの卵のような指摘ではないでしょうか。そして池
谷先生このカタカナ英語に一つ工夫を加えるのです。

《多くの日本人はanimalを「アニマル」と発音します。たしかに英語の授業
でもそう習いました。でも、この発音ではいつまで経っても通じることはな
いでしょう。理由は単純です。割り当てるカタカナが間違っているのです。
本当は「エネモウ」と言わないといけないのです》

そう、通じるカタカナの発音があり、それには法則性があること、池谷先生
は発見したわけです。そして、そのカタカナの発音がヘボン式表記に馴染ん
できたわれわれ日本人には驚天動地の世界。例をあげていきますと、

・ワルヨイ テンカアバレ

・ジュワナ レスナ ミューゼッ

・エンポーッン

もとの英語、わかりますが。でもでもこれが、ネイティブの人にわかる発音
になる、というのです。こりゃ一種の革命かもしれません。

(守屋淳 自称作家)
---------------------------------------------------------------------
■「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
---------------------------------------------------------------------
日本の「技」と「人間関係」の伝え方

『丁稚のすすめ』秋山利輝 幻冬舎 1470円

 年末に、なんとなくふさわしい1冊となりました。

 著者は、有限会社秋山木工の代表で、家具職人。その独特な(今ではめず
らしい伝統的な)仕事の教え方で、テレビにも何度も出ている人(らしい)。
その職人である秋山氏が、自分の仕事の教え方を、著したのがこの本。
 サブタイトルに、「夢を実現できる、日本伝統の働き方」とあるように、
「手に職をつける」ために、秋山氏が弟子たちに実践している教え方、とい
うより、教え方の「スタイル」が書かれている。それを一言でいうと「丁稚」
となる。

 秋山木工では、職人になるべく面接を受ける若者に、面接だけで3時間を
かけ、さらに、全国どこへでも親のところに出向いて、親にも面接をして、
秋山氏のやり方を納得してもらった上で、はじめて「丁稚」として採用にな
るという。
 なぜ、採用のときに、そんなに手間暇をかけるのかというと、とにかく修
業が厳しいので、親の協力がなければ、若者を挫折(甘やかして)させてし
まうからだという。

 オビに記されている文言だけでも、かなり厳しい。
 ・起床は5時前
 ・女性も坊主頭にする
 ・携帯禁止
 ・恋愛禁止

 それで、実際にはもっと細々としたことまで、規定されている。毎朝のマ
ラソン、掃除もあれば、一日の終わりにはレポートを書くことが義務づけら
れている。それに、起床5時前とあるけれど、寝るのは0時を回ってからで、
実質3、4時間しか眠ることができないくらい、修業はみっちりとある。
 これを4年間。後輩が入ってきたら、後輩に技術を教えたりすることもそ
こには入ってくるというから、まあ、厳しいものだ。

 それでも、秋山氏のところで修業を終えると、みんな一人前の木工職人と
して活躍しているし、不況下のなかでも引く手はなくならないというから、
さすがだ。
 それ以上にすごいと思ったのは、「がんばる」ではなく、「本気でやる」
ようにと言っているところだ。「がんばる」は、「やらなくちゃ」という義
務感になってしまうこととなり、結果的に疲れて磨り減ってしまうけれど、
「本気でやる」であれば、求められているのは集中力であり、磨り減ること
はない、という言葉。
 とかく、便利になってしまった世の中では、職人だけでなく、いろんな人
に通じることなのではないかと思う。

 そして、思わずほろりとさせられたのが、丁稚の方々が、毎日書いている
レポート。それぞれの人が書いているものが「ぐっとくる」ものなのではな
く、このレポートが、彼らの先輩や秋山氏に見て、チェックされた後、学校
の先生や親にまで回り、それぞれがそれぞれの言葉を寄せてくれるというと
ころ。
 やはり、さまざまな人との関係の中に、自分自身もあるのだ、ということ
を、つらい修業のなかであらためて感じさせてくれるこのやり方は、ちょっ
と管理が行き過ぎている、などという人も出るかもしれないけれど、それで
いいのだと思う。

 よく現代は乱れた世の中になってしまった、といって、途方に暮れている
人がいるけれど、秋山氏のような、人間関係への積極的な介入を怠ってきた
ツケが、今に回ってきたのだと思う。
 世の中をよくするには、やはり、人間関係をまず身近なところからよくし
ていくしかない。古い日本のやり方ではあるかもしれないけれど、もういち
ど、見直してみるのもいいかもしれない。

***

今年の3冊

◎ 『宇宙兄弟』1〜8 小山宙哉 講談社
「モーニング」の連載も読んでいるが、本になっても買っている。
とにかく、いいです。
◎ 『差分』佐藤雅彦 美術出版社
あらためて、アニメーションの「動く」原理について、
これを読んで考えさせられました。脳はすごい。
◎ 『鬼振袖』河治和香 小学館文庫
とにかく、国芳の娘「登鯉」を主人公にしたこの連作は、
すばらしい。こんな可愛い主人公はいない!

---------------------------------------------------------------------
■「月刊ニュースなビジネス書評」/aguni
---------------------------------------------------------------------
 2010年を展望する

 aguni です。今年もこの1冊で締めくくりです。

 『展望と開運2010』
 村山幸徳 著
 出版:角川学芸出版
 ISBN:978-4-04-621160-6
 発行年月:2009.11
 http://www.amazon.co.jp/dp/4046211601?tag=bizknowledge-22
 http://www.bk1.jp/product/03186155

 先日、講師を招いて占いについてのセミナーを開いたのですが、世の中で
いかに占いの理論と占い師の人格との区別がつけられていないのか、改めて
思わされました。

 以前、マンガの『こち亀』で、占い雑誌の編集部に両さんが尋ねる話があ
って、サイコロ転がしたりカードめくったりしている場面が掲載されていま
したが、特に西洋の占いというのは、マクロコスモスとミクロコスモスがつ
ながっているという前提に立っているのか、それとも人の超能力を信じてい
るのか、単なる偶然で結果が決まるようで、何となく胡散臭いような気がし
てしまう。これってのは東洋人だからなんでしょうかね。

 逆に東洋人が信じ易い占いというのは、世の中が不易で、つまりは輪廻展
開変遷しているというもの。これに誕生日を組み合わせるのが、どうも日本
でも江戸時代くらいから好きだったらしい。あと、どうでもいいけど、血液
型占いなんてのを占いだと思っているのは日本人だけらしい。西洋では、血
液型で性格が決まるなんてナンセンス(非科学的)、とのこと。生まれつき
原罪を背負って生まれてきてしまう西洋人と、お天道様が見てるの東洋人と
では、感覚が違うのかもしれませんね。

 もちろん西洋でも占星術というのは誕生日の星の位置と、天球のめぐりで
判断するというのがありますが、どうもこれは純粋に西洋というよりは、西
アジアあたりの民族が移動しながら占ったのがルーツらしく思われます。だ
から本当に純粋に言えば、これも東洋系の占いなのかもしれませんが、最後
の最後で理屈ではなく占い師の感覚に頼っているあたり、ハイブリッドです
ね。

 なんて本とは関係ない前振りでしたが、この本は、占いの理論的には、九
星気学にあたります。生まれた年から一白水星、二黒土星、三碧木星、四緑
木星、五黄土星、六白金星、七赤金星、八白土星、九紫火星を判別し、それ
ぞれ1年の運勢と過ごし方を解説しています。

 ただし、ここでご紹介したいのはそちらではなくて、来年は八白土星。と
いうことで、世界というか世の中の動きも占っちゃっていますので、こちら
をご紹介。

 ちなみに昨年はこういう紹介を。。。
 あたってましたかね?
 http://back.shohyoumaga.net/?day=20090102

 2010年は改革と変化の年、それによる成長の年だそうです。というこ
とは変化しないと成長できない、ということでもあります。

 アメリカの消費大国からの転換、中国パワーの増大、そして日本はミッシ
ングからパニッシング(消滅)へ? リーダーシップも政治力もないと言わ
れて久しいですが、戦後アメリカの統治政策だった教育を改革してこなかっ
たツケがここに来て一気に問題になりそうです。

 で、ちなみに元衆議院議員政策秘書でもあった著者は、政権に向かってい
ろいろなメッセージを送っています。今年はそのメッセージの量が多く、具
体的な「予言」めいたものはありません。まあ、本来、東洋の占いというも
のはそういうものですが。

 テロに天候不順、紛争勃発と、キナ臭いことも多いようですが、混乱混沌
は新しいものが生まれるチャンス。過去の価値観に縛られることなく、新し
い価値を生み出していきたいですね。

 当たるも八卦、当たらぬも八卦。

 あなたにとって、2010年が素晴らしい1年になりますように!

       aguni ビジネス書評者/(財)生涯学習開発財団認定コーチ
                 経営品質協議会認定セルフアセッサー
                 日本経営品質賞審査員
                 【bizbook.tv】http://bizbook.tv/
---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

 終わり良ければ全て良し。ということで、2009年最後の号はちゃんと発行
日に出すことができました。なんだやればできるんじゃないか、と思ってみ
たり(笑。

 来年はこの[書評]のメルマガ11年目に突入、月三回発行にリニューア
ルします。

 新しい執筆者の皆様から続々、原稿も届いていて、皆さんにお届けするの
がとても楽しみです。

 では皆様、よいお年を。

 次回は1月10日号でお会いしましょう!(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ」(毎月四回発行)
■ 発行部数 4724部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレス http://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー 0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================


作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.438

■■-----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ                2009.12.20.発行
■■                              vol.438
■■  mailmagazine of book reviews  [本人が忘れちゃうから緊急 号]
■■-----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------

★「三ツ星☆☆☆・人情馬鹿の店」/大友 慶
→最終回です。

★「こんな本をセンデンしたい」/小林圭司
→これからもみなさんがすばらしい本と出会えますように!

★「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
→未完です。

★「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
→特別編「すごい本屋」に行ってきた!

---------------------------------------------------------------------
■「三ツ星☆☆☆・人情馬鹿の店」/大友 慶
---------------------------------------------------------------------
東京で地道に商いをする飲食店を毎回1店舗ずつ紹介――
【最終回】藤や(とうや)――居酒屋(神楽坂)

 神楽坂にも何度か変革の時があったろうが、2007年もまた神楽坂にとって
はひとつの元年となる年だったのではないだろうか。倉本聰脚本による神楽
坂を舞台にしたテレビドラマ「拝啓 父上様」が高視聴率を叩きだし、週末
ともなれば観光客で街が溢れ返るようになったのがこの年であった。それ以
前にも人気のある街ではあったが、全国からツアーでやってくるような場所
ではなかったはずである。

 神楽坂の坂を主幹とし、左右に路地という枝が広がって、そのあちこちに
葉となる店が点在する、そのように街の全体像を見立ててみる。坂の根元あ
たりにあるのが、抹茶ババロアなどが人気の甘味処「紀の善」、その少し手
前にペコちゃん焼き、ポコちゃん焼きで、あの賞味期限偽造問題時も行列が
途絶えなかった「不二家神楽坂店」。坂を上がっていくと左手に毘沙門様の
境内、その向かいには勘三郎せんべいが有名な「毘沙門せんべい」や鳥料理
の「鳥茶屋」などがある。鳥茶屋の脇から、枝の部分へ入っていくと、その
一角は石畳が美しい古いエリアで、花柳界として活況を呈していた頃の神楽
坂が偲ばれる旅館、料亭等が点在する。一見、完全にオープンになったかに
思われる神楽坂にあっても、おいそれとは敷居をまたげない家が、今でも新
しい店の狭間に凛と存在している。ドラマの舞台が料亭であったことから、
そうした情緒を味わいたいと集う観光客が多かった。彼らを当て込み、街の
風情を利用したにわかづくりの黒板塀やスロープに小石を敷き詰めるなどで
演出したそれらしい、小京都を狙ったような料亭風の店が近年どっと増えた。
小生もそのいくつかに入ってみたが、金額に見合う満足感を得られた店はひ
とつとしてなかった。

 そしてまた飯田橋〜神楽坂は、日仏学院がある関係で、数々のビストロは
じめワインやチーズを売る店がまことに多く、フランス人家族が大勢棲んで
いるという別の顔もある。

 昔ながらの花街の顔、昨今のブーム以来の小京都風の顔、フランス村とも
形容される顔、良かれ悪しかれこうした重層性・複合的性が、神楽坂の魅力
のひとつであるのだろうが、こうした街の運命にその都度ゆり動かされた地
元の人々は少なくなかったと思う。事実、坂下左側のエリアにあった店の多
くは再開発に伴う立ち退きを迫られ、最後まで残った洋食屋「トレビ」も今
年、30年間継ぎ足し続けてきたカレーの鍋の火を止めた。新しくビルが建っ
た後にテナントとして戻ってくるそうだが、苦渋の選択を迫られる親父さん
の気の毒な様子はテレビのドキュメンタリーなどでも再三取り上げられてい
た。

 表通りはすっかり変わってしまい、それは現在進行形で続いている。世に
言うシャッター通りのようにさびれてしまうのも困るが、あまり人が集まる
ために、ディベロッパーのような輩に目をつけられて開発されてしまうのも
困る。最もそれが生きている街というものの宿命なのかも知れないが……。
数年前まで軒を連ねていた下駄屋、小間物屋、青果店は既にビルとなり、当
世風のレストラン等が入っている。それもそうだろ、一日一足売れるか分か
らない下駄を扱うより、家主となって家賃収入を期待した方がどれほど楽か。
とにかく主幹となる表通りの新しい店はどこも高く、気取っているだけでだ
めだと思う。

 そんな神楽坂にあって「最後の良心」とも言いたい店が、「藤や」である。
ペコちゃん焼きの「ふじや」ではない、「とうや」と読む。この店は主幹が
大久保通りと交わる交差点を左へ左へ歩いていって、大江戸線の牛込神楽坂
駅の近くにある。枝の先の先だ。観光客が迷子になったとしても辿り着けな
い辺りである。

 入口には「藤や」の看板と紺色の暖簾がかかっているきり、黒板塀で仕切
るなどという余計なことはしていない。中に入るとコンクリートの床にテー
ブル席が5つ、カウンターに7席、小上がりの座敷に8席ほどのさっぱりと
した店である。しかしこの店の底力にはすごいものがある。店は飲食店の最
良のかたちである家族経営で、厨房に入る人とホールを動き回る人が兄弟の
ようだ。それに次男のお嫁さんと兄弟の母親が手伝っている。歩くとき、な
ぜか少しだけ内股になる次男の酒に関する知識は広い。休みの日には、全国
各地の蔵元を訪ね歩くという。焼酎や日本酒の豊富さは申し分ない、そして
おつまみもそれを上回る豊富さと質の高さ、適度な量、そして安さ。旬のも
のは別のボードに貼り出され、春にはたらの芽や筍の天ぷらの類、秋にはキ
ノコ、魚もその時々のものが供される。ポテトサラダやメンチカツ、豚キム
チといった家庭料理、更に〆の茶漬けやうどんなども適量で、薄めのカツオ
だしが、飲んだ後にもすっと腹に入ってくる。お袋さん手製の白菜の浅漬け
が、着席して1時間もするとそっとサービスされるのが嬉しい。小グラスで
飲む生ビールもまた泡がきめ細かくて美味。ビールサーバーをきちんと手入
れしている様子が窺われるのだ。ビールを飲み、焼酎を2〜3杯飲んで、好
き勝手につまみをとって、うどんで〆ても、ひとり3000円といかないことが
ある。こういう店こそ人に教えたいけど、教えたくない店だ。泣けるほど良
心的である。銀座の三州屋などと同じく、夜でも魚や肉の焼いたものや揚げ
たものとご飯、味噌汁、お新香が添えられた定食を食べさせてくれるのも、
単身者らにはありがたいだろう。カウンターでひとりご飯をほおばる常連客
も多い。

 こうした店はこれから神楽坂がどんな動乱に巻き込まれても、マイペース
で暖簾を掲げてくれるような気がする。3年前、「ミシュランガイド」など
というグローバルスタンダードが上陸し、それに翻弄された飲食店がいかに
多かったことか。神楽坂で黒板塀の店構えを誇る割烹の主人は、星を3つ獲
得したといって涙さえ浮かべていた、その人はその後、デパートに卸してい
た黒豆の瓶詰の保存状態のことで問題になっていた。料理人にとって、「あ
なたの店は優れている」と賞や勲章を授けられることは張り合いにもなろう、
しかしそれを目的にしている人と、もっと上のものを目的にしている人、す
なわち他人の評価ではなく、自分の中で最善を尽くせているか、あるいはも
っとお客さんを喜ばせたいという目的を持ってやっている人とでは、かなし
いかなその差が客にも透けて見えてしまう。

 この冬はあともう一度、たっぷりと脂ののりきった焼き鮭の分厚い切身を
食べに「藤や」へ行きたいものだ。

--------------------------------------------------------------------
■「こんな本をセンデンしたい」/小林圭司
--------------------------------------------------------------------

 ほぼ10年という長きに渡って、みなさんのご厚意に甘えて書き散らかして
きた当コーナーも、ついに最終回を迎えることになった。

 最後にふさわしい企画も特に思いつかないので、私が「センデンしたい」
本というよりも、本当に仕事上「センデンしなければならない」本を取り上
げるというワガママでお茶を濁すのをどうかお許しいただきたい。

 今年は初心に帰って外国文学を取り上げることにしてきたが、白水社が3
月からスタートさせた「エクス・リブリス」はまさに直球ど真ん中、外文フ
ァンなら要チェックの新シリーズだ。既にシリーズは6冊を数え、ほとんど
は本邦未紹介の、しかも英米からラテンアメリカまで様々な国の作家の作品
を刊行しており、この手のものの読者が常に抱いている未知なるものへの欲
求を満たしてくれる。

 もちろん、目新しければなんでもよいという訳ではないので、ラインナッ
プは厳選している。例えば全米図書賞受賞作家であるデニス・ジョンソンや、
50歳で急逝した後も国際的な評価は高まる一方のチリのロベルト・ボラーニ
ョ。この二人はシリーズの言わば二枚看板で、既刊の短編集『ジーザス・サ
ン』(柴田元幸訳)と『通話』(松本健二訳)は各紙誌で非常に高い評価を
いただいている。

 しかし、この二人以外の作品がまた最高に面白い!ということを、ここで
声を大にして主張したい。ポール・トーディ(英)の『イエメンで鮭釣りを』
(小竹由美子訳)は、純粋に鮭と釣りを愛する冴えない研究者が、政治や宗
教の絡んだ国際的陰謀と結婚生活のゴタゴタの渦に巻き込まれる超絶のコミ
ックノベルだし、アティーク・ラヒーミー(アフガニスタン)の『悲しみを
聴く石』(関口涼子訳)は、植物人間状態で戦場から帰還した夫を前に妻が
秘密を独白する、簡潔で研ぎ澄まされた文章と衝撃のラストシーンが鮮烈な
読後感を残す、密度の高い作品だ。

 最新刊、クレア・キーガンの『青い野を歩く』(岩本正恵訳)は、アイル
ランドの荒々しい自然と今も神話が息づくような人びとの暮らしの中で、因
習に捕らわれた哀しい男たちとそこから飛び立とうとする女たちを描いた、
これもまた優れた短編集となっている。

 中でも一番の収穫はニュージーランドの作家ロイド・ジョーンズの『ミス
ター・ピップ』(大友りお訳)か。内戦下のブーゲンヴィル島で、学ぶ機会
のない現地の子供たちを集めて白人の男が『大いなる遺産』を読み聞かせる
なんて、正直なところあまりそそられる話ではなかった。

 それでも、そんなことは滅多に言わない担当編集者の「これはおもしろい」
という言葉にだまされて読み始めると、なかなか出会えないような、自分好
みの小説だったのだ。政治に翻弄され、貧困に喘ぎ、近しい人を残酷な形で
失っていく状況で、人はどうすれば人間らしく生きていくことができるのか、
そこでは何が救いになってくれるのか。

 穏やかに進行していく前半と、主人公を試練が襲う急展開のクライマック
ス、その後に訪れるもの……極力ここでのネタバレは避けたいので、実際に
本を手に取ってお確かめいただきたい。

 こういう作品に出会えるのがシリーズ全部読みのよいところで、昔、国書
刊行会の「文学の冒険」シリーズでレイナルド・アレナスに行き当たった過
去の幸せな読書生活を思い出した。

 当シリーズは偶数月刊行で、来年の2月・4月に大作を控えて担当編集者
は死にものぐるいでがんばっているので、読者のみなさんも読むの大変だと
思いますが、付いてきてくださるとうれしいです。

 ということで当コーナーはこれでおしまい。

 このような機会を与えてくださった守屋さんには本当に感謝しています。
そして、現担当の原口さんには、新たな書き手と共に、本をめぐる現場を盛
り上げてくれることを期待してやみません。

 ちなみに私の降板は自分からお願いしたことでして、せっかくの5千部近
い発行数を誇る当メルマガを、オッサンの駄文なんかじゃなく有意義に使っ
ていただきたいと思ってのことでした。私自身はどのみち今後も本を宣伝し
たり売ったりということに関わり続けるので、お暇な方は下記や小社出版物
をチェックしていただけるとうれしいです。

メルマガ「月刊白水社」
http://www.hakusuisha.co.jp/magazine/

白水社ツイッター
https://twitter.com/hakusuisha

これからもみなさんがすばらしい本と出会えますように!

(小林圭司 白水社宣伝部 サカヲタ)
---------------------------------------------------------------------
■「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
---------------------------------------------------------------------
【マキァヴェッリ全集を読む12】

 マキァヴェッリの文芸関係の作品の最初は「イタリア十年史」これにはイ
タリアの歴史を1994年からの十年と、1905年からの十年を描く二作品がある。
最初の作品は1504年、マキァヴェッリがまだ現役の役人だった頃に書かれた
もので、最初に本になった作品。二作目はだいぶ後になって書かれたものら
しい。そりゃそうだ。十年年経たなきゃ書けない。

 いずれも十年という期間に何が起こってきたか、要はイタリアがどれだけ
外国の介入を受けてきたのかを皮肉ったらしく描く。これまで読んできた感
じでは、皮肉ったらしさは、マキァヴェッリがまだ鼻っ柱が強く、元気だっ
た証拠とも言え、二つ目の作品が書かれた年代は不明だけど、おそらくクビ
になる前、あるいは直後の作と思われる。

 再就職に難渋することで、マキァヴェッリのこうした性格は徐々に変わっ
ていったのだろう。「忘恩について」「運について」「野心について」「機
会について」の四作品ある風刺詩あたりは「君主論」や「ディスコルシ」を
彷彿とさせるものもある。

 その他の作品は前回紹介した三作品同様、女に惚れ、そのために苦しむ男
を描く作品が多い。マキァヴェッリは惚れっぽくて、妻の他何人か愛人がい
たことが知られているが・・・あんまり楽しかったわけでもなさそうだ。女
に精神的安らぎを求めていたが、実際は女のわがままに振り回されていたよ
うな感じである。

 でもってマキァヴェッリの創作上の限界は、そうした作風とは全く違う未
完の「黄金のろば」という作品に最もよく表れていると思う。

 人間から生まれ変わった?ロバが語る運命論的な叙事詩。あるとき道に迷
って真っ暗でじめじめしている谷に転落した主人公。どうも地獄に堕ちたよ
うだが、後光の差した絶世の美女に救われる。美女は主人公を地獄の管理所
みたいなとこに連れて行った後、家畜舎のようなところに案内した。

 そこにはかつて生きていた有名無名の者たちが獣になってうごめいている。
主人公は、そのうち一匹を選んで尋ねた。「人間に戻りたいか?」獣は人間
の野心や貪欲を非難したのち、言った。

「人間ほど脆い暮らしを送り、生きようと願えばそれだけ分けのわからぬ不
安が募り怒りがいや増すような生き物はどこにも見当たりはしない。豚が他
の豚に、鹿が他の鹿に苦痛を与えることはない。人間だけが他人を殺したり、
十字に架けたり、裸にしたりする」

「俺が人間だった頃味わったあらゆる悲惨な身の上から解き放たれている今
のいま、俺が人間に戻ることがおまえの望みとは何事だ」

で終わっている。冒頭にろばが出てくるが、なんて「黄金」なのかまでは書
かれていない。しかし何をテーマにしたかったのかは明白だろう。野心や貪
欲を求め、それゆえに殺し合いまでする人間とは何なのか?人はいかに生き
るべきか?

 この作品の問題は、マキァヴェッリが作品を完成できなかったことだ。書
簡の中に、当時評判をとっていた人の作品に対し、負けないようなものにし
なきゃと書いている。少なくともやる気は満々だった。

 しかし、作品のテーマが明らかになる上記引用の、これから本番でしょ?
と言うところから筆が進まなかった。

 おそらくは人間として望ましい生き方と、政界の裏切り寝返り的生き方の
対比を書こうとしたのだろう。相当な活躍をしたのにかかわらずフィレンツ
ェ政界から放り出されたマキァヴェッリ。これからはごく普通の小市民とし
て生きるべきだという考えると同時に、政界への未練も残していたと思われ
る。

 散文や風刺詩の中にも、そうした心の揺れを感じさせる作品は多い。前回
紹介した三作品のようなエンタテイメントに振った作品なら書けても、人の
生き方を問うようなテーマでは、迷いから筆を進められなかったと思われる。

 やはり自分は、薄汚い政治の世界で生きるしかない。そんなことを思った
のかかどうか知らないが、その後のマキァヴェッリ著作は再び政治的なもの
に戻っていく。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 好きなジャンル 何だろ?『戦略の名著!最
強43冊のエッセンス』(講談社+α文庫 税込860円)『〈イラスト図
解〉コメのすべて 生産、流通から最新技術まで』(日本実業出版社 1500円
税抜き)『農業に転職する』(プレジデント社 1,500円)『イラスト図解
農業のしくみ』(日本実業出版 1,500円)好評発売中)

---------------------------------------------------------------------
「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
 (58)特別偏。「すごい本屋」を見に行く
---------------------------------------------------------------------

 あっと言う間の年末である。来年のカレンダーの準備はおすみであろうか。
嵐山光三郎+安西水丸+南伸坊の夢のコラボレーション「俳画カレンダー平
成22年版」が発売中。詳細は、
http://www.citronbooks.com/ca/10calendar-6haiga.html  へ。

 とまぁ宣伝はさておいて年末である。今回は2009年の最終回。さてど
んな本を書評させてもらおう、と思ったのだけど、本以上の衝撃と感銘を受
けたことがあったので、勝手に「特別編」。緊急リポートを書かせていただ
く。緊急リポートと書いたが、その内容に緊急性があるかどうかは諸賢の判
断に委ねたい。書いとかないと本人が忘れちゃうから緊急、とも言える。

 去年の暮れであるが、われわれ本にかかわる仕事、生活をしているものに
とって衝撃的な本が出た。井原万見子『すごい本屋!』(朝日新聞出版)であ
る。翌月、僕はこの連載に書評を書かせていただいた。まずは下のリンクか
らその拙稿をお読みいただきたい。
http://back.shohyoumaga.net/?month=200901

 読んだ? 「あとで」なんていわずに今すぐ。こちらが「拙稿」とまでへ
りくだっているんだから(拙稿だけど)、さあ!!
http://back.shohyoumaga.net/?month=200901

 詳細は上記の書評に書いたが、その「すごい本屋」とは和歌山県の美山村
(合併して日高川町)の「イハラ・ハートショップ」のことである。いまや全
国レベルの有名書店といってもいいだろう。約20坪。山間の 100戸ばかりの
村落の唯一の商店で、厳選された本(特に児童書は驚異の充実)とともに、地
域の人の要望を容れて、「よろず屋」的にタバコもパンもマヨネーズも醤油
も洗剤も塩もお菓子も置いている。そんなお店だ。

 そのお店、「イハラ・ハートショップ」に行って来た。というのが今回の
リポートである。

 不便なところだ。どのくらい不便かというと、ものすごく不便なところだ。
最寄の鉄道の駅、紀勢本線の「御坊」から路線バスと町営のコミュニティバ
スを乗り継いで約一時間。

 それなのに原画展、サイン会など都会の書店に匹敵するイベントを次々と
仕掛け、多くのお客を集めているのだ。原ゆたか、宮西達也、今森光彦、都
築響一など多くの作家・文化人が訪れ、内外の注目を集めている書店だ。

 7年前、この店は初めてのイベント、林明子『こんとあき』のエスキース
(下絵)展を開催した。壁棚に白い布を垂らして白壁を作り、日曜大工のピ
クチャーレールで額を吊り下げたそのイベントの模様を報告した永江朗のリ
ポートがその後の快進撃の始まりである。言うまでもないが、僕もそのリポ
ートに大きな衝撃を受けた一人である。

 それから7年、7年目にしてやっと行けたのはこの11月の末。この店の原
点とも言うべきイベント、林明子『こんとあき』エスキース展をこの秋ふた
たび開催するという報に接したのである。これはもう行くしかないでしょう。

 実際に行ってみて、後悔した。今まで来なかったことを後悔したのだ。
「忙しい」は理由にならない。まさしく「忙しさにかまけて」いたのである。
もっと早くに来て、見ればよかった。

 感動した。店内の展示風景は7年前の永江リポートの写真のままである。
白布で作った白壁に飾られたエスキースの額。厳選された本と食料品や雑貨
に囲まれた店長・井原万見子さんの笑顔。それも7年前のリポートと変わら
ない。僕がこの店、および周辺にいたのは10時の開店からの約2時間だ。山
里である。道を歩いていても擦れ違う人などほとんどない。驚くことにその
間、この店に(僕の他に)お客がいなかった時間がないのだ。

 近所のおじさんがタバコを買いに来て、また近所のおばあさんが調味料を
買いに来て、「ほうほう」と行ってエスキースを見て井原さんと世間話をし
て帰っていく。他の町から車に乗ってやってきた家族連れがエスキースをゆ
っくり見て、絵本の棚の前で「あ、この本知っている!」とワイワイ。その
後は井原さんも交えて絵本談義。子どもの本選びの相談にも乗っていた。ど
のお客も井原さんとの会話の時間を持っている。無言でレジを済ませて無言
で帰っていく人など誰もいない。そう、村のコミュニティとして機能してい
るのだ(町だけど)。遠くからも来る。数日前には遠くからバスを乗り継い
でやってきた女子高生があったという。井原さんに「図書館司書を目指して
いる」と夢を語ってくれたそうだ。

 この店を訪れた文化人の一人である都築響一は店の近所の上阿田木神社の
森を会場にトークイベントを行った。ジュンク堂で行うようなイベントをイ
ハラ・ハートショップがしかけたのである。写真パネルを見せながら「日本
で一番多いスナックの名前は“来夢来人”」というふうなトークイベントは
大層盛況だったようである。前述、『すごい本屋』に書かれていた。

 今回の訪問に際し同書を読み返した僕はふと立ち止まる。「来夢来人だ」
と。イハラ・ハートショップこそ「来夢来人」なのではないだろうか。小さ
な店、山間の店ではあるが、井原店長が夢を語り夢に向かって進む姿に惹き
つけられるように多くの人が来て夢を語り、夢に向かっていく…。すっかり
汚れた大人になってしまった僕ではあるが、この店を見ていると夢を語って
みたくなる。

 暗ければ明かりをつければいい、息苦しければ窓を開ければいい。愚痴っ
ていても埒はあかない。そんなシンプルなことに思い至った秋の終わりの
「イハラ・ハートショップ」訪問であった。

 最後に大事な事。「何かないかな」と書店に入ったけど、収穫がなくて手
ぶらで出てくることがよくあると思う。小規模ながらこの店には読みたい本
がちゃんとある。一冊は、都築響一がイベントを行った上阿田木神社の森を
歩いていて「鞍馬天狗が出てきそうだな」と思った直後に棚で見て読みたく
なった、大仏次郎著・縄田一男編『時代小説英雄列伝 鞍馬天狗』(中公文
庫)。もう一冊は、いつかは読もうと思いつつも読んでいなかったR.F.
ジョンストン『紫禁城の黄昏』(岩波文庫)。この2冊を東京までの7時間
余の旅の供に購入した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
蕃茄山人=都内出版関係某社勤務。最近、嵐山光三郎+安西水丸+南伸坊の
夢のコラボレーション「俳画カレンダー平成22年版」を制作。
詳細は、http://www.citronbooks.com/ca/10calendar-6haiga.html  へ。
今回のリポートの「裏バージョン」は、毎日更新のブログ『蕃茄庵日録』に
て連載中。http://d.hatena.ne.jp/banka-an/

---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

 今年最後の20日号です。月末号が年内に出せる自信がありませんので(笑、
もしかしたらこの号が年内最後かもしれません。

 連載終了の大友さん、小林さん、長い間、ありがとうございました。(って
またいつか復活するかもしれませんが。

 そういえば、ある会社さんでは、社員は家族と同じということで、退社する
ことを「家出」と言っているそうです。「家出」したままよその子になってし
まうこともありますが、お腹を空かせたら戻ってくるさ、みたいな感じ。面白
いですよね。

 [書評]のメルマガも来年はどんどん家族を増やしていく予定です。引き続
きのご愛読ご紹介、よろしくお願い致します。(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ」(毎月四回発行)
■ 発行部数 4708部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレス http://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================

作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.437

■■-----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ           2009.12.17発行

■                     vol.437
■■  mailmagazine of book reviews  [ ひとまずおしまい 号]
■■-----------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★ときどき連載「入谷コピー文庫 しみじみ通信」堀内恭
 →限定15部でオモシロ小冊子をつくる極小版元の活動報告です。
★「ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱」根岸哲也
 →“本棚のために家をつくった男”がずっと読み続けてきた作家たち。
★「新・新刊書店の奥の院」荒木幸葉
 →金沢から新天地に移り、そこでもやっぱり書店員の日常です。
★「もっと知りたい異文化の本」内澤旬子
 →ずっと読んでる途中のトム・ルッツ『働かない』をご紹介。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「渡辺洋が選ぶこの一冊」
 →植草甚一の文章を読んで、なんなんだ、いまの世の中はと思う。
★「全著快読 編集工房ノアを読む」北村知之
 →「全著快読」新シリーズ。大阪の文学出版社の全冊を読みます。

*本文中の価格は、表示のあるもの以外は、税抜き(本体)価格です。

-------------------------------------------------------------------
■入谷コピー文庫 しみじみ通信  堀内恭
(28・最終回)2009年をふりかえって、しみじみと
-------------------------------------------------------------------
 もう師走ですね。ご無沙汰しています。半年ぶりの登場です。
「入谷コピー文庫」2009年下半期のご報告です。刊行は以下のとおりです。

1 桂浜吉『続・パッパ本! 父に捧げるほろ苦い鎮魂歌』(8月)
2 『ザ★あたご劇場 高知市名画座ものがたり』(10月)
3 赤穂貴志『ツッコミ!邦画劇場』(11月)
4 『入谷コピー文庫図書目録2009』(11月)

 上半期5冊、下半期4冊の合計9冊の刊行でした。昨年は4冊でした
から、今年は多かった方だと思います。
 1は『パッパ本!』第2弾で、紙切り2代目林家正楽さんへの反響が
多かったです。
 2が、やっと、故郷の愛すべき名画座を紹介することができました。
表紙は青柳省吾氏。
 3は、赤穂君にとって、7冊目となる邦画ネチネチ読み物の力作です、
今や赤穂君は「コピー文庫の四番バッター」です。
 4は、以前より要望のあった「図書目録」をどうにかこうにか作って
みました。

 あと、『彷書月刊』12月号(彷徨舎)で、南陀楼綾繁さんと対談させて
もらったのも、忘れられぬ出来事でした。
2010年は、『呑んべえ巡礼日記 大阪・鳥取・長崎篇』の第3弾から、
スタートする予定でいます。「手に入りにくい無名のコピー冊子」ですが、
また来年もよろしくおねがいします。では、この辺でお開きということで。

〈ほりうち・やすし〉1957年生まれ。フリー編集者。

-------------------------------------------------------------------
■ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱
(17・最終回) SFの可能性に身震いしながら書きまくった小松左京 その2
-------------------------------------------------------------------
「SFマガジン」編集長の福島正実が企画した日本SFシリーズで、『復活の日』
を小松の処女長編として出版しようと考えていたところ、カッパ・ノベルズ
から『日本アパッチ族』が先んじて発売されてしまった。ハヤカワ文庫から
復刊された『未踏の時代』で、福島は、そのショックを10ページ以上にわたっ
て綴っている。

『日本アパッチ族』は光文社の大規模な宣伝もあり、話題を集めたが、その9
年後の1973年に同じカッパ・ノベルズから発売された『日本沈没』は、大ブ
ームを起こし、コミック化、ラジオ化、テレビ化、映画化された。その後にSF
専門誌が4誌になるほどのSFブームを牽引する役目も果たしたと言えるだろう。
よく知られているように、本来、沈没によって日本という国を失った日本人を
描き、「日本人とは、日本文化とは、国家とは、民族とは何か」を考えるために
書き始めたものの、日本を沈没させるだけで膨大な量になってしまい、そこま
で行きつけなかった(その後、谷甲州との合作で第二部を2007年に発表)。筒
井康隆が紫綬褒章を受章したが、自分が受章していないのは、外国を全て沈め
た(筒井は『日本沈没』ブームの真っただ中に「日本以外全部沈没」を発表)
のと、日本を沈めてしまった“愛国心”の差ではないかと冗談を語っている
(『SF魂』新潮新書)。

『日本沈没』は、SFファン以外にも多くの人を惹きつけたが、やはり、小松SF
の真骨頂は、「結晶星団」、「ゴルディアスの結び目」などの宇宙SFにあると考
える小松ファンは多いだろう。『日本沈没』以後、小松は『さよならジュピタ
ー』、『虚無回廊』といったハードな長編宇宙SFを発表した。前者は、小松自ら
製作した映画の原作として書かれたもので、映画の印象で損をしているが(無
重力下でのSEXシーンをしきりに宣伝していた)、重厚なハードSFと細やかに
描いた人間ドラマが融合した傑作である。後者は、宇宙空間の巨大建造物SSの
謎を描き、3巻まで刊行されたものの執筆が中断している。中断の理由は、まだ
SSの深部に何があるか、「宇宙にとって知性とは何か」を見出せていないからだ
というが、3巻まででも読みごたえがあり、小松宇宙SFを代表する作品の一つと
なっている。

 中断のもう一つの理由が阪神大震災の衝撃だ。地震や地殻変動を熟知してい
ると自負していたが、阪神地区にあのような地震が起こる可能性を予見できな
かったことを、自分の「勉強不足」と捉え、鬱状態にまでなってしまったとい
う。小説を書くだけでなく、60年代から、“未来学者”として、社会に積極的
に関わってきた小松らしい責任感と言える。

 1967年刊行の『未来の思想』(中公新書)のエピグラフに「汝らは何ものか?
いずこより来たりしか? いずこへ行くか?」と小松は書いた。この答えに小松
がたどりついたときが、『虚無回廊』が完結するときだと思うが、難しいだろう
か。難しいと思いつつ、待ち焦がれている。

◎小松左京はこの作品を読め!
『果しなき流れの果に』『エスパイ』『復活の日』『継ぐのは誰か』『ゴルディ
アスの結び目』『さよならジュピター』『虚無回廊1〜3』(ハルキ文庫)
『日本沈没(上下)』(小学館文庫)
長編の印象が強い小松作品だが、短編も40冊以上にまとまる程の量がある。
日下三蔵により傑作選が以下のように編まれている。
『物体O』『高砂幻戯』『くだんのはは』『男を探せ』『結晶星団』『夜が明けたら』
『日本売ります』『時の顔』(ハルキ文庫)
※全ての作品が、『小松左京全集 完全版』<小松左京事務所、城西国際大学出版
会、コニカミノルタビジネスソリューションズ(株)によるオンデマンド出版)
でも読める。http://www.jiu.ac.jp/sakyo/

(ねぎし・てつや) 1966年生まれ 団体職員。平凡社コロナブックスの『作家
の酒』に、楽しそうに酒を酌み交わす星新一、小松左京、光瀬龍らの姿が。今回
で、この連載も最終回。このような執筆の場を与えていただいた南陀楼編集長、
おつきあいいただいた読者、特にご意見・ご感想を寄せてくれた皆様に感謝。ま
だまだ好きな小説世界のエンターテイナーは数多いが、またの機会に。See you!

「ふぉっくす舎」
http://d.hatena.ne.jp/foxsya/

---------------------------------------------------------------------
■新・新刊書店の奥の院 荒木幸葉
(25・最終回)漢弁当デコ弁当 の巻
---------------------------------------------------------------------
会社のお昼ごはんは弁当、の暮らしをつづけてはや5年。かつて炊飯器はホコリ
をかぶり、深夜、新聞紙をランチョンマットがわりにコンビニのデカ盛り弁を缶ビ
ールで流し込むような生活をしてたのが、弁当女子になるなんて、いやはや。

社員食堂がない職場に移ったのがきっかけとはいえ、朝からちまちま作るなんて
むりだ。すこしでも楽しく簡単にできるように、まず、両脇がぱっちんと留まるア
ルミの弁当箱を買いました。どんぶり一杯分くらい軽く収まります。

ごはんをどーんと敷きつめ、晩ごはんの残りの肉、小松菜とかのなっぱにトマト
や梅干し、なければ冷凍の揚げ物系おかずにケチャップで赤みをさし(パートのお
ばちゃんに教わったワザ)、色が浮けば黒ゴマやのりでも散らせば、なんとなく弁当
っぽくなるものです。

 あれ、私の弁当なにかに似てる、と気づいたのが、料理書の棚にずらり並んだ男
の弁当本。自ら弁当を作る男性「弁当男子」がブームだそうですが、『男弁当』『男
前弁当』など書籍も増殖中。働き盛りも満足、ガツンとうまい!といった力づよい
コピーに、大きな弁当箱もりもりの白飯、肉、野菜、以上ってかんじのざっくりビ
ジュアルがメイン。書店員は肉体労働なので、これでいいんだマイ弁当は。

 最近は『Men’KITCHEN』(本体657円、KKベストセラーズ)なる雑誌もでました。
ここでも、「目指せU-300円&秒!漢(オトコ)の弁当道場」特集が。工夫や段取り
をゲーム感覚で「とにかく楽しむ」、「主菜、副菜、トッピング(ふりかけでも)の
3点で作る!」、仕切りやカップ不要で「汁混ざり上等!」とのお言葉に勇気がでま
した。

 ここにきてその対極にあるのが、『すてきな奥さん』11月号付録「初めてでもか
んたん 100円デコ弁つくろう!」です。デコ弁とは、「デコレーション弁当」の略
で、こどもの弁当をキャラクターなどで、かわいく飾りたてたもの。そのテクニッ
クが紹介されています。

まずは基本のご飯デコ。人の顔は鮭フレークの肌色、クマや犬など動物系はおか
かを混ぜ茶色に。キャラの形を作ったら、のり(目、髪)、うずらの卵(顔や胴体
に)、ほうれん草(茎を裂き、口などの線に)といった定番食材を駆使し、お絵かき
感覚でパーツの飾りつけです。

マストアイテムは、工作用はさみ(のりや細かいパーツを切る)、クッキングシ
ート(透けるのでイラストに重ねてキャラの形を整える)、ストロー(チーズやハ
ムをくり抜き水玉模様や目に)、楊枝(蜂蜜やマヨネーズをつけパーツを接着)など
家にあるものばかり。しかし根気がいるよなぁ。

例えば「ハローキティのおにぎり弁当」。ラップしたおにぎりに、耳をつくりキテ
ィの形に整える→のりを2センチの帯状に切り側面に巻く→プチトマトの種を取り
リボン形に切る→リボンの裏側に乾燥スパゲティを刺し、おにぎりに突き刺して留
める→卵焼きを鼻、のりをひげの線に切り貼る。目は黒豆を半分に切り、ごはんに
埋める……ふぅ。

こんなに食材を触りまくって衛生的に大丈夫かと心配になるけど、こどもがお弁
当箱あけたときの笑顔を想像しながらつくると苦行じゃないんだろうなぁ。いつの
日かわたしも優雅にデコ弁つくる身分になりたいものですな。ちなみにキティの目
は、のりじゃなくて、黒豆なところがポイント。つやがあってうるっとした目はた
まらんです。

〈あらき・さちよ〉弁当のあとのいっぷくは、魔法瓶コーヒー。通勤電車の発車待
ちの間、ちょっとフライングして、こぽこぽいれたのを座席ですするのも至福のひと
とき。
7年間! 書店員生活のちょうど半分のささいなあれこれを、かきとめておけたこ
とに感謝します。南陀楼さん、みなさまありがとうございました。

---------------------------------------------------------------------
■もっと知りたい異文化の本  内澤旬子
(41・最終回)怠惰を貫く
---------------------------------------------------------------------
『働かない 「怠けもの」と呼ばれた人たち』トム・ルッツ 小沢英実、篠儀直
子訳青土社

 書評のメルマガ、とうとう最終回となりました。いままでありがとうございま
した。これからは自分のブログの方でちょこちょこと本の感想などを書いていき
たいと思いますので、たまに覗いてみてくださいませ。

そして最後に紹介しようとおもっていた本が、読み終わりません。実は半年以
上前から読んでいるのですがもう1ページ読むたびにうわあああああ、わかる、
わかるよおおおと深く頷いてしまって、いろいろ思いを馳せてしまうので、なか
なか進まないのです。しかし私はここ半年この本とともに生きていたと言っても
過言ではないのです。というわけで、第四章までの途中読みで恐縮ですが、ご紹介
します。

私はイラストを描いたり文章を書く仕事をしてるんで、長年まわりの人から「す
きなことを仕事にした人」として見られ続けてきてます。しかしいくら絵を描くの
が好きだからとて、なにを書いても楽しいのかといえば、そりゃそうじゃないでしょ
う?  文章だって同じ。とくに好きでもないそば屋についてほめたたえなきゃならな
い文を書くのに心の底から楽しくて仕方ながない人は、そんなにはいないと思います。
ただ、他の仕事をするよりは文字をポチポチ打つ方が向いてるからとか、苦にならな
いからとか、ちょっとは楽しいからとか、そんなところが正直なところなんだと思い
ます。長年どちらかといえばそのような仕事(自分にとっては)をこなしている時間が
ほとんどでありましたので、仕事をするのが嫌で嫌でたまりませんで、締め切りギリ
ギリになっていました。自分はなんてわがままな人間なのだろう、営業経理をやって
いたころに比べれば天国みたいな仕事なのに、なぜこんなに仕事が嫌なのだろうか。
いやいや、本当に自分が書きたいこと描きたいことをやれば、きっと楽しくて仕方
なくなるに違いない。ずっとそう思い続けてきたのです。

ところが最近ありがたいことにかきたいことをかかせていただけるチャンスをよ
うやくいただけるようになったのですが、それでも締切ギリギリにならないと書け
ないんですよこれが。なぜだー。一体なにをしたら面白くてたまらなくて締切より
もずっと早くあがっちゃったという境地にいけるのか。

それと同時にもう一点、ようやく自分がかきたいことをかいて、それだけで思い
っきりカツカツに節約すれば暮らしていけるくらいはお金をいただけているのにも
かかわらず、これまでの仕事がなかなかできないとうだっていたにもかかわらず、
ちょっと気が向かない仕事でも、よっぽどのことがない限り断ることができないん
ですよ、これが。なぜだー。まあ長年生活不安と隣り合わせだったからですけどね。
いったい自分は働くのが好きなのか嫌いなのか。どこまでいけば「ジョブ」じゃなく
「ワーク」になるのか。嫌だ嫌だといいながら、実はガツガツ働いていたいのではな
いか。またそんだけ働きながらも、これだけの量の仕事をこなしつづけないと満足の
いく収入が得られないことに、どこかで絶望もしている。こんなことはそう長くは続
かないだろうとも思っている。

さらにやっかいなことに、働かないひとを見ると、ちょっとイラッとしてしまう。
自分の気に染まないことをやるくらいなら働かない、気に染むものであっても大変
だったら働きたくない、という気持ちはだれよりも痛いくらいわかるし、むしろ自
分だってそう思っているのに、実際にその信念を貫き通して働かない人を見ると、
羨ましいを通り越して、やっぱりちよっとイラッとしてしまう。ああ。なぜなんだ
ろう。器むちゃくちゃ小さいぞ、自分。

そんなどうしようもないわがままなことで、日々心のヒダヒダを無駄遣いしている
のは、きっと自分だけだろうと、ずっと思っていました。

 同じことを考え患っているひとがいました、ここに。というわけでようやく本の
内容です。すみません、前段が長くて。しかし自由に書いていいのがこの書評のメ
ルマガのいいところでありました。最後のわがままです。お許しください。

著者トム・ルッツは、徴兵を逃れて大学に入る前に十年間もヒッピー生活をしたの
ちに、大学に行き、研究者となり脚本なども書いている。好きなことを好きなように
やる優雅な暮らしにあこがれながら、大学の瑣末な事務に追われ、雑誌記事や新作映
画のチェックも欠かさず、ある日別れた妻のもとにいた息子と同居することになる。
大学進学の前に一、二年の休みをとってなにか好きなことにチャレンジしてみたいと
いう息子。ところが息子は彼の家に来たとたん、誰に逢いに行くわけでもなく、一日
中カウチにねっ転がってテレビ三昧。著者はだんだんイライラしてくる。俺がヒッピ
ーだったころは、たしかに仕事はしなかったけれど、毎日あんなことやこんなことも
していたのに。苛立ちの中で、彼は自分自身と仕事との歪んだ結びつきにはじめて目
を向ける。働くことの切なさ、働かないことの難しさを。そうして人類と労働との切
ない関係を振り返り、検証していく。

たとえば労働時間。雨が降ったら休み続け、収穫期や種まき期には何日間も休みな
くぶっ続けで働く、というような暮らしをしていた農夫たちが、農業革命、産業革命
によって、都市にでてきたとき、毎日決まった時間に始業して八時間ずっと働いて定
時に仕事を終える、というやり方になかなか順応しかったという。十九世紀のアメリ
カの工場労働者たちの実態には衝撃を受けた。全従業員が酔っている、無断で狩りに
出かける、全員一致で仕事をやめてビーチに行ってしまった……。労働時間中に平均
十回はウィスキーを飲みに出かける。工場主がやめさせようとするとストライキで対抗。

ええ?? 労働者って、労働組合運動が発展するまで、子どもの時から毎日休みなく
朝から晩まで働かされていたんじゃないんだ?? うわああああ。

さらに。あの『資本論』を書いたカール・マルクス。彼は八時に起床し、新聞を
読み、翌朝の二時か三時まで、ときには徹夜で仕事をした。仕事を中断するのは食
事と散歩のときだけ。それが死ぬまで続いたそうだ。本人主張するところの生産性
の倫理に文字通り身を投じた人間だ。

 ところがその娘婿のラファルグ。医学生であったけれど、医者になれなかった男。
彼はマルクスの秘書を務めた。マルクスの死後、なにを考えたのか発表したのが四
十ページのパンフレット『怠ける権利』。その中で一日三時間を超える労働を法律で
禁止することを提案している。彼は労働の倫理的な価値を信じることで、自分たち
の首を絞めるような抑圧に加担してはならないと労働者たちに訴える。それで余っ
た時間になにをしろというのかといえば、楽しく怠惰でいろと。それを大真面目に
説いたらしいです。

こんな具合で登場する作家も思想家も労働者たちも、みんな怠惰です。ちゃんと怠
惰であろうとするあまり筆を折っちゃう書き手なんかももちろん登場します。

今までそれほど興味もなかったんですが、ソローもホーソーンもマーク・トウェイ
ンもメルヴィルも、怠惰を貫くというバイヤスをもってみると読んでみたくなる不思議。

ああ、今抱えている仕事を全部仕上げたら怠惰になろう!! と心に決めてんですが、
著者自身がこれだけ怠惰に魅せられているにもかかわらず、資料を駆使した五百ペー
ジ弱の大著を書いてんだからして、なあ……(溜息)。とりあえずこの本は、追われる
ことなく、気ままにいつでも読める場所に置いて、怠惰に読もうと思ってます。それ
くらい怠惰でもいいでしょ?

〈うちざわ・じゅんこ〉イラストルポライター
岩波書店「世界」にてにわか養豚体験記「飼い食い」、角川書店「野性時代」にて
「もう一周! 世界屠畜紀行」、小学館「ビックコミックスペリオール」にて「ひと
がき」、朝日新聞出版「一冊の本」にて「身体のいいなり」など連載しております。
どうか読んでやってください。

-------------------------------------------------------------------
■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(17・最終回)ひとつひとつに思い出が
------------------------------------------------------------------- 
2009年10月24日
今年のD坂シネマは仕事とその結果がテーマ。
でも隠れたテーマは水と川とダム。3日目の今日は「あらかわ」を見る。荒川
の上流、中流、下流の様子と、そこに暮らす人びとの生活を描いたドキュメンタ
リー。
山に湧き出た水は川を流れ、海へ。そしてまた山へ戻る。
加古隆の音楽がやたらにエモーショナルなので、身構えてしまった。
D坂シネマ、今年は山?さんがほとんど準備してくれた。

11月4日
ほうろうさんで、「彷書月刊」編集長田村治芳さんの独演会。
頭にどくろの手ぬぐい頭にまいて、雑誌とは……と話す。
田村さんが、原一男をひきあいに「私は全身編集者にはなれなかった」と言うと、
会場から「でも、全身彷書月刊でしょ」との声。
そうだ、そうだ。

12月11日
2週間近く、谷根千工房の引っ越しに向けて片付けをしている。
25年間谷根千工房があつめた地域の資料をとりあえずまとめておくため、蔵の2階
を借りて、来週そこへ運ぼぶ。
ダンボールに資料をつめて、A(本。一番先に並べるから)、B(資料。次にあける)、
C(視聴覚のシ?)、D(写真)とかいていく。他に、Yの机周り、とか、Oの棚とか注
を付ける。小さいのと大きいのあわせて、全部で90箱くらいにはなったか。
私の机の周りには、家から持ち込んだ本やガラクタがほとんどで、蔵行きのものは
箱一つにもみたない。

Yはいさぎよく捨てている。
Mは、引き出しをあけるたびに、うわーこれがあったか、と残念がっている。
Oは捨てられないねえ、といいながら捨てている。

なぜか、あちこちから出て来る延長コード、パソコンのケーブル、ネジやクギ。
初期の頃使っていたテープレコーダーやカメラは、さまざまな機械は、夏の展示で
見てもらいたかった。

ひとつひとつに思い出があるらしく、それは品川さんにもらったんだよとか、これ
は佐藤さんが捨てたのをもらったんだよ、とか。
机にしても食器にしても道具にしても、それ以外のものにしても、谷根千工房の中
身は誰かからもらったものの固まりだった。

〈かわはら・さとこ〉(いつまで谷根千工房社員か)
食べ物も頂き物がほんとに多いです。

「谷根千ねっと」
http://www.yanesen.net/

------------------------------------------------------------
■渡辺洋が選ぶこの一冊
(37・最終回)「わくわく感」をどうキープしていくか
------------------------------------------------------------
津野海太郎『したくないことはしない 植草甚一の青春』新潮社

−−「書評のメルマガ」に書くのもこれで一段落、初めて書いたのが2001年の初夏
なので(取り上げたのはハイチ出身の合州国作家エドウィージ・ダンティカさんの
『クリック? クラック!』)、8年ちょっとですか。この間に流れた時間が走馬灯
のように駆け巡りますね。

−−最後は植草さんの伝記です。「書評のメルマガ」の執筆者や読者には植草フリー
クも多いと思うので、普段ならびびって取り上げないところですが、最後だからい
いでしょう。
−−基本的にはすごく目新しい要素はないんですが、読者それぞれが植草さんの思
い出をなぞりながらその生涯を辿り直すのに程よくまとめられています。
−−植草さんが本当は外国文学の紹介の仕事をもっとやりたかったということ、ブ
レイクする前は不機嫌で編集者たちから恐れられていたこと、東中野が表現を夢見
る若者たちのコミューン的な土地だったことなどは面白かったです。また植草さん
のコラージュ好きは青年期の構成主義や築地小劇場へのこだわりをずっと大切にし
ていた証しだったのではという指摘もね。
−−基本的に植草さんは真剣な芸術家であって、「雑学」の人というのは人気も出て、
人にそう言われることを楽しめる余裕ができてから、遊び半分で言ったことかもし
れませんね。

−−でもこの手の本って、津野さん自身の演劇や編集者体験の回顧だった『おかし
な時代 『ワンダーランド』と黒テントへの日々』(本の雑誌社)なんかもそうだ
けど、こんなにあの頃は面白かったわけだけど、これを読んでいる今って何なんだ
ろう、面白いことは今どこにあるんだって気にもさせられるんですよね。
−−葛井欣士郎さんの『遺言 アートシアター新宿文化のすべて』(聞き手、平沢剛。
河出書房新社)なんかもそうでしたね。過去を美化しているわけじゃないんだけど、
過去があまりにも輝いていたという。
−−去年、ザ・フーのライブを観たあとも似たようなことを思ったなあ。オリジナ
ル・メンバーの生き残り2人がサポート・メンバーを従えて「ここは十代の荒地に
すぎないんだ」と歌う(「ババ・オライリー」)。数日間、その感動の余韻があったんだ
けど、ふと思うと40年近く前の歌なんだよ。何か、それがやりきれないというか。
−−植草さんのスクラップブックも今読んでも面白い。で、ふっと気がつくと、こ
うした空気感を出せる人って今はいないんじゃないか、何なんだ、今の世の中って、
30年前に亡くなった人の文章がこんなに面白くていいのか、という。

−−ま、それはこちらの年齢のせいでもあるだろうし、ごく個人的な感慨にすぎない
かも。世の中どんどん変わってきているでしょ。
−−神保町の洋書古書店の東京泰文社がなくなったり(1996年)、洋書の老舗の北
沢書店が大幅縮小したり(2005年)する一方で、地元の下町にもブックオフが4軒
もできたり、谷根千の一箱古本市が始まったり(2005)、三省堂や東京堂が古書を扱
いだしたり、今は今の歩き方があるってことは分かるんだけど。
−−アマゾンジャパンは2000年から(古書の扱いは2002年から)だけど、植草さん
が生きていてアマゾンを知ったらどうなっていたんでしょうね。
−−どうだったのかな。話は変わるけど、この本についてもネット上で、出るとか、
出たとか、献本されたとか、情報がどんどん出るじゃない。だから本屋で見たとき
感動がないんだよね。東京堂では買う気が起きなかったけど、地元の本屋に1冊入
っててさ、その健気なたたずまいに俄然買う気になりました。
−−この前も、事前にまったく知らないで、本屋で松本大洋さんの『竹光侍』(原作、
永福一成。小学館)の新刊見つけた時はうれしかったですよね。歩いててよかった
あ、という。
−−その「わくわく感」をどうキープしていくかですね。

−−そう考えると、うちの娘(大1)なんか、ネットをいい意味で駆使しているな
あ。本の情報はもちろん、映画やアメコミやチェコ・アニメ、合衆国の写真家まで
調べ上げて、通販でしか買えないものは取り寄せるけれど、どこに行けば何が見ら
れる手に入るというと飛んで行くし。最近はチェコの若者と英語とチェコ語のちゃ
んぽんでスカイプして、お金をためてチェコに行くって言ってますよ。
−−植草さんも今を生きていたらはまっていたかもね。地上でも買い物、ネットで
も買い物していたら、寝る暇もないまま破産していたかもしれないけれど(笑)。
−−海外に同好の士を見つけて、時差を超越してチャットしたりしてね。
−−やっぱり今がつまらないと思うのはフットワークの問題かもね。

〈わたなべひろし〉詩人
年明けくらいに8年ぶりの詩集『向日 歌う言葉』(書肆山田)を出します。白髪の
「少年」の抒情詩といったところです。Twitter始めました。
アカウントはhiroshi1001です。

------------------------------------------------------------------
■全著快読 編集工房ノアを読む   北村知之
(12・最終回)エレベーターの詩人
-------------------------------------------------------------------
杉山平一『詩と生きるかたち』2006

阪神タイガースの赤星が引退した。その日の夕方のニュース番組に金村がでてい
て、「もしまたなにかあれば、こんどは自分が車イスに乗らなあかんのです」と言っ
ていたが、よっぽど怪我がひどいのだろう。赤星が試合で盗塁をきめるごとに、おな
じ数の車イスを寄付していたのは有名だ。ほっぺたに力がはいりすぎているような打
席での顔が嫌いだったが、いい選手だった。今年は広島カープの緒方も引退した。応
援している選手がいなくなるごとに、歳をとったなあとおもう。

いつからかタイガースとそのファンを憎むようになってしまった。そういうひと
は関西には多いかもしれない。

詩人の杉山平一は、戦時中の大衆の気分を阪神タイガースのファンにたとえて書
いている。

 而も、戦争中というのは見事な挙国一致というブームの渦中にあったのであって、
それに浸れるのは、野球の観客席で、「六甲おろし」をうたっている快さに近いので
ある。大阪では、阪神タイガースが優勝したとき、興奮して川へとびこんだ人が何
人もいたらしい。(「世辞と誇張」)

 ただ「人間は気分によって、反戦詩を書く日もあれば、好戦詩を書く日もある」
ともいっている。詩人にとって戦争詩は仕事であり、その役目はCMだった。戦争映
画を作らなかったことで評価された伊丹万作は、「自分が戦争映画を作らなかったの
は、注文がなかったから」と語っている。おなじように戦争詩を依頼したのは新聞
や雑誌の編集者で、書きのこしていない詩人は下手や無名のために注文されなかっ
たからだそう。

以前、現代詩文庫の『杉山平一詩集』(思潮社)を買ったときに、帯の「第二期近
代詩人篇」とあるのにおどろいてしまった。本棚からおなじ第二期近代詩人篇に収
録されている詩人を探してみると、『北園克衛詩集』、『尾形亀之助詩集』、『高祖保詩
集』があった。一九一四年という生年を考えればあたりまえだが、つい先日も編集
工房ノアから新刊の詩文集『巡航船』がでたばかり。

杉山平一の詩が近代詩か現代詩かということではなく、文学史上の詩人が「六甲お
ろし」で「ムードは何を人に為出せるかもわからない」と戦時中の雰囲気を語って
いる。さらに『蛍の宿』がドラマになって織田作之助を桂三枝が演じたことに、「か
つての友人として愉快ではなかった」と書き(「天皇と言葉」)、「四季」の詩人がカ
ラオケで演歌を歌わないだろうと書く(風土の韻律)。

それは長命な詩人の思い出話ではなく、近代をとおした眼で、前近代的な現代を
評している。

〈きたむら・ともゆき〉
1980年生まれ。海文堂書店勤務。

塩屋の旧グッゲンハイム邸で、季村敏夫さんと内堀弘さんのトークイベントが開催
されます。http://shioyag.exblog.jp/13127062/
日時:2009年12月22日(火)冬至 16:00 open 16:53 start
 ※開演時間は冬至の日の入り16:53(神戸)に因んで。
 17時開演とお考えください。日没の海を眺めながらはじまります。
会場:旧グッゲンハイム邸(JR/山陽塩屋駅徒歩5分)
   〒655-0872 神戸市垂水区塩屋町3丁目5-17
料金:予約 ¥2,000 当日 ¥2,500
予約・問い合わせ:旧グッゲンハイム邸事務局
 TEL : 078-220-3924 FAX: 078-202-9033
 E-mail : guggenheim2007@gmail.com
 http://www.geocities.jp/shioyag
 ※ご予約送信の際に、ご希望の鑑賞日、お名前、電話番号、枚数を明記下さい。
主催:りいぶるとふん‘ドノゴトンカ Donogo-o-Tonka’
共催:塩屋音楽会 / 震災まちのアーカイブ
グッゲンハイム邸近くのカレー屋「ワンダカレー店」おいしいです。

------------------------------------------------------------------
■おわりに
-------------------------------------------------------------------
 毎月前半の2号の編集を担当してきましたが、この号をもって降りさせてもら
うことになりました。
 私が「書評のメルマガ」をはじめて担当したのが、2001年4月10日号です。
その号にこんな言葉を書いています。

***
「書評」って読むのも、書くのも、ちょっととっつきにくいカンジがありま
せんか? 自分がおもしろく読んだ本の内容をきちんと伝えるのは難しいし、
読者の方も書評を情報として使いこなすのが難しい。でも、「[書評]のメル
マガ」を名乗るからには、一冊でも多く、その本を手に取ってくれる読者を
増やしたい。だから、今月から毎月10日号は、それぞれにテーマや字数を設
定し、少しでも読みやすくしていきます。また、執筆者の一部は、毎月交代し
ます。それでは、行ってみよう。 
***

 アート本、演芸の本などというテーマや、3人によるロング書評のリレー
連載、ひとりの作家の全作を読む「全著快読」など、なるべく多面的な切り口
で書評や本に関するエッセイを載せていきました。途中から始まった「ホンの
メド」は、最初は目立たない新刊やミニコミについてのニュースでしたが、2000
年代中盤からは、ブックイベントの紹介が中心となりました。いまでも、「あんな
イベントあったなあ」と思って検索すると、自分が書いた紹介文が最初に出てくる
ので、同時代の資料としては、ウェブにデータが残っている限り、使えるものに
なっていると思います。

 また、年末や年始には「この版元がエライ!」という特集号も出しました、その
年、注目すべき本を出した版元を各自があげてほめるというアンケート企画です。
5年ぐらいやったハズで、版元の担当者からメールをいただいたりしました。ただ、
当初もくろんでいた、この特集を元に書店でフェアをやるというのが、実現にいたら
なかったのは残念です。

 反省点も多くあります。自分が面白いと思う人に、存分に書いてほしかったの
ですが、執筆者が増えると字数も増えていく。途中で月に2号担当することにしま
したが、それでも入りきらなかったです。最後まで、メルマガにふさわしい編集の
しかたが、見えなかったという気がします。

 降りることにしたのは、ことし6月に「本のメルマガ」「書評のメルマガ」の
創設メンバーが抜けたためと、私自身もややマンネリになりつつあったためです。
この辺で一区切りつけたいと思います。これまでずっと無償で書いてくださった
方々と、長ったらしいメルマガを毎号読んでくださった読者の方に感謝します。

「書評のメルマガ」じたいは、今後も続きます。よろしくお願いします。
では、またどこかで。              (南陀楼綾繁)

===============================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ 」(毎月4回発行)
■ 発行部数  4721部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の執筆者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで kawasusu@nifty.com
■ HPアドレスhttp://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
==============================================================












作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.436

■■------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ   2009.12.11 発行

■         vol.436
■■  mailmagazine of book reviews [ これまでとこれから 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★短期集中連載「なぜ、フリーペーパーなのか」
 →全国各地のフリーペーパー発行者の「生活と意見」をお聞きします。
★「関西古本女子だより」次田史季(ちょうちょぼっこ) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「食の本つまみぐい」遠藤哲夫
 →〈大衆食堂の詩人〉エンテツが料理文化史の重要本を紹介します。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

---------------------------------------------------
■短期集中連載 なぜ、「フリーペーパー」なのか
(5・終)『セイカノート』のこと 竹内厚
----------------------------------------------------
関西の情報誌『Lマガジン』の編集を長くしていた。長くといっても8年くらい。
昨年末に雑誌が廃刊になった。結構、突然の話だった。そして、会社を辞めた。

そんな中で声をかけてもらったのが、京都精華大学で3号連続のフリーペーパ
ーを出すという話。マンガ学科のある芸大として知られる精華大だが、中には人
文学科もあって、その認知度をもっと高めたいというのが学校側の希望だった。
だから、対象読者は受験を控えた高校2、3年生が中心。そういえば昔、Z会が
出してた雑誌、『Z-Kan』というのがあったことを思い出した。面白い執筆陣を集
めてたわりには、あっという間に休刊になった。あれは、高校生向けだったか、
大学生向けだったか。

大学案内の冊子はすでにある。だから、このフリーペーパーでは学校案内を繰
り返すことはしなくていい。1号ごとに「映画」「音楽」「本」の3つのテーマで
特集を作って、精華大のことは連載コラムというカタチで側面から紹介すること。
精華大出身の編集の方が連載ページを受け持ち、自分が特集面を担当する。およ
その枠組みは話を受けた時点でだいたい決まっていた。

『Lマガジン』がカルチャー誌だったから、「映画」でも「音楽」でも「本」でも、
記事にしたいようなことはいくらでもあった。ただ、それをどう高校生に届けるか。
これがこのフリーペーパーの一番のカギで最大の壁、そして面白いところだと思っ
た。とはいえ、それをいかに誌面化するかはかなり難しい。悩む間もなく、編集作
業ははじまって、結果それなりにも形になっていったのは、デザイナーの川名潤
(pri graphics)さんによるところがとても大きい。

ちなみに、川名さんとは細かいことはほとんど何も相談していない。川名さん
は『Lマガジン』のADをやってもらってた頃からのつきあいだったし、向こうは東
京でこっちは大阪という地理的事情もあった。でも何より、大学のフリーペーパー
という枠組みのなかで、お互いにやれる範囲でやりたいようにやるということだっ
たと思う。

高校生向けということで言えば、「映画」特集を『戦場でワルツを』のドキュメン
タリー話からはじめて、SPOTTED PRODUCTIONS、シマフィルムといった映画制作者へ
と抜けていく構成が良かったのか悪かったのか。「本」をテーマに、華恵、白根ゆた
んぽ、菊地成孔のインタビューから始めたのがどうだったか。間違いなく自分は好
きやけど、高校生の読者も好きだった?と大声で聞いてみたくなる。

それにしても改めて、なぜフリーペーパーなのかと問われると答えが見つからな
い。今年1年で、他にもいくつかのフリーペーパーの編集に関わったけど、フリペ
ゆえの主張は特にしてこなかった。結局、どれも依頼されての編集仕事だったから
かもしれない……と書き進めるほどに、あんまり自分が何も考えてないことに気づ
いてガックリする。もちろん、編集はしたけど持ち場でベストを尽くしたという感じ。
雇われサラリーマン根性が抜けてないのかもしれない。

何かしらのお題に対して、硬軟、メジャー/マイナー、その他いろいろなバラン
スと個人的嗜好をうまく按配しながら情報を切りそろえて形にしていくこと。長年
やってきただけに、個人的にはこの一連の流れにあまり迷いはない。それでも、せ
っかく情報誌を辞めたから違う方法論で編集をしたいという思い、もしかすると強
迫観念もなかなか根強い。単行本の編集をしたり、東京の雑誌を手伝ったり、場づ
くりの企画に顔を出したりしながらの、いわば編集モラトリアム。自分ごとながら、
これがなかなかメンドくさい。でも、実際のところはそのうちなるようになりそう
な気がして、ぼんやりと過ごしている。今はただ、もくもくと様々な編集機会を逃
さず試すのみだ。

最後に。3号だけの予定だった『セイカノート』は来年3月にまた違うかたちで
出すことになるかも。改めて考えると、大学が出すフリーペーパーってもっともっ
と可能性があるはずで(遅い!)、チャンスがあればさらに変テコな、でも高校生に
ラブずっきゅんなやつを作ります。ではまたー。

〈たけうち・あつし〉今はRe:Sというところに所属しながら、Re:Sの仕事をした
り、個人で仕事を受けたり。ちなみに、Re:Sにはかなりはっきりしたメッセージを
持った同世代の編集者がいます。対照的です。
「Re:S」http://re-s.jp/home/

---------------------------------------------------
■関西古本女子だより  次田史季
(28・最終回)10年目の初旅行
----------------------------------------------------
来年4月に10年めに入ろうとしている貸本喫茶ちょうちょぼっこですが、いま
まで4人で旅行をしたことがありませんでした。それが、今回なんとなく話がま
とまり、10月24、25日と初旅行に行くことになりました。大阪からと東京から
合流なので、間をとって愛知県にしようということに決まりました。

宿を決めるのは、ご飯を食べに行くところを決めるときと同じように、ネット
であそこがいいここはどうと、それぞれ宿の候補を挙げることから始まります。
私はいつもネットのやりとりには出遅れて、いつの間にか決まっていたというこ
ともしばしばなのです。今回は福島さんに宿の予約をお任せし、全部手配しても
らいました。私たち3人に任せると、いつになるか分からないと思ったのかどう
かはわかりませんが。愛知県渥美半島にある猫ちゃんのいるちょっといいお宿、
角上楼にお泊まりすることになりました。

さて、当日。大阪組は3人で新大阪で待ち合わせ。会った瞬間、私の荷物に驚
く2人。真治さんの荷物は、普段の私の荷物よりも少なそう!と私も違う意味で
驚きました。私はいつもなぜか荷物が多くなってしまうのですが、今回はいいお
宿に泊まるとわかっているのになぜか不安になり、バスタオルを2枚も入れてし
まったのでした。

そして3人は新幹線で名古屋まで。名古屋からは名鉄で豊橋まで。新幹線で直
接豊橋まで行った方がらくちんで早そうですが、郷田さんの調査の結果、安い方
法で行くことに。安い切符は郷田さんが3人分用意してくれました。東京からの
福島さんとは豊橋で合流。福島さんも私の荷物に驚いていました。確かに、パソ
コンを持ってきた福島さんの荷物とどっこいどっこいの重さだったので、無理も
ないでしょう。

お昼前に豊橋に着いたので、少し散策しながら乳母車やさんなどをひやかしつ
つ、とうふ田楽と菜めしのお店へ。たくさん食べて満腹に。お店の前で写真など
撮ってみました。甘味処が近くにあったのでのぞいてみましたが、おなかがいっ
ぱいのため今回は断念。ちくわやさんも気になりましたが、帰りにまた来ましょ
うということで豊橋としばしお別れ。

バスに乗って早速宿へ。一番後ろの席で熟睡。少々雨が降っておりました。着
いたら、まず喫茶風のバーへ通され、お茶とお菓子をいただきました。置いてあ
った雑誌などを眺めつつゆっくりした後、どきどきしながらいよいよお部屋へ。
木造の本館から、中庭を通った別館にありました。洋室と和室と螺旋階段の上に
はベッドルームとシャワールームとお風呂が。

真治さんは部屋へついたとたん、ソファーへ横になり、福島さんはお庭を見に
外へ。郷田さんと私はカメラを持って部屋中を探検。ソファーの上の真治さんと
外にいる福島さんもカメラに収めました。夕飯前にお風呂に入りましょうという
ことで、真治さんは檜のお風呂へ、あとの三人は露天風呂へ。温泉ではなかった
ので何度も入らなくてもいいかと言っていたのに、夕方、夜、朝と違うお風呂に
入り結構楽しみました。

お風呂上がりに、また喫茶バーへ寄り、福島さんと郷田さんはビール、真治さ
んと私はジュースをいただきながら宿の雑誌を熟読&おしゃべり。そのとき、お
つまみを出していただいたのですが、福島さんは、その半分を囲炉裏風のテーブ
ルの灰の中に落っことしてしまいました。ちょうちょぼっこの4人の中で一番し
っかりしていて落ち着いているイメージの福島さんですが、あわてんぼうの一面
が見えたひとときでした。

さて、いよいよ夕飯。廊下を歩いていたら、浴衣を着せてあげると呼び止められ
ました。せっかくなので着せてもらうことに。それぞれ好きな柄を選ぶと、80歳を
過ぎているという大女将がきびきびとした手つきで着付けてくれました。浴衣を着
たのは久しぶりでうれしく、かしこまったような気持ちになりましたが、おいしい
料理をたくさん食べている間にきつくなって少しゆるめ、部屋に帰った瞬間みんな
脱いでしまったのはちょっともったいなかったです。

部屋に帰ってからは、だらだらおしゃべり。何をしゃべったんだか、いつもと同
じようなこと。

ベッドが2つ、お布団が2つだったので、どこに誰が寝るかをジャンケンで決め
ました。郷田さん、次田、福島さん、真治さんの順に勝ち、それぞれ布団、ベッド、
ベッド、布団を選択。真治さんだけがご不満だった様子。

朝起きると、みんないなくて私だけおいてけぼり。私以外の3人は、少し早く起
きてお風呂に行っていたのでした。朝食まであまり時間もないので、部屋のガラス
張りのシャワールームでシャワーを浴びて朝食へ。久々に豪華な朝食。毎朝こんな
んだったらいいのにねぇと言いながら。

猫好きな2人は、宿の猫とふれあう。夜は福島さんがだっこして、朝は真治さん
が猫と見つめあう。

さて、名残惜しくも宿をあとにし、宿のバスで近くの海岸まで送ってもらいま
した。海を見て波を見て、貝や石を拾い、おみやげに。そのあと道々写真を撮り
ながら、灯台へ。

蜘蛛や蝶がたくさんいる道を散歩しながら、福島さん念願の漁港へ。福島さん
が、おっちゃんにいろいろ聞いたりして、えらく丹念に魚を見ているなぁと思って
いたら、まさかの購入!小さい魚入りの発泡スチロールの箱をぶら下げて歩く福島
さんは、今まで以上に格段に足どり軽く、かなりうれしそう。るんるんといって差
し支えない様子。カメラを向けると、とったどーのポーズをしてくれました。

それぞれお土産を買って、またバスに揺られ、電車に揺られ豊橋まで戻ってき
ました。そしたら事件が! 福島さんのあんなに喜んでいたお魚がない! 電車に
乗ったとき、福島さんが網棚の上に魚の荷物を置いた瞬間、福島さん以外の3人み
んなで絶対忘れるよと言っていたのでした。忘れるからやめた方がいいと冗談交じ
りに言っていたのが、ほんとに忘れるとは。降りる20分前くらいから、お手洗いに
行きたいというのに集中していたからかもしれません。真治さんはバスにストールを
忘れ、私はカメラのキャップを落としたので、バスに残っていないか確かめてもら
っているときのできごとでした。ふいに気づいた福島さんは、急いで駅まで逆戻り
し、まもなく折り返す電車の中から間一髪でお魚を取り戻したのでした。真治さん
と私の忘れ物と落し物も無事見つかり、その待ち時間が功を奏し、お魚は無事福島
さんの手もとに返ってきて一件落着。

ネフのおもちゃで遊んでいたとか言われたりしている福島さんですが、おつまみ
を灰の中に落としたり、大事な魚を置いてきたり、あわてんぼうで超うっかりやさ
んが露になった旅行でした。

ちなみに真治さんは、豊橋に戻って、一件落着のあと遅いお昼代わりをとりに
行った、「三愛」というホットケーキ屋さんで旅行一の笑顔を見せておりました。私
も真治さんと同じ、マロンクリームシャンティ(ホットケーキを使った三愛風モンブ
ラン)をいただいたのですが、勝手に顔がにやける味でした。福島さんが頼んだラズ
ベリーも、郷田さんが頼んだシンプルなバターもとてもおいしそうでした。

最後にブックオフに寄って、豊橋をあとにしました。

〈つぎた ふみき〉ちょうちょぼっこメンバー。マンガ読書会の発表のひどさにい
つもあきれられています。先日、元お向かいさんだったおまめこと柴田尚美さんの豆
本講座をちょうちょぼっこでひらきました。また春頃にできたらなぁと思っています。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第1北堀江ビル402
http://www.geocities.co.jp/chochobocko/
open 第1〜3週末 金18:30〜21:00、土日 13:00〜20:00

★前野健太さんがちょうちょぼっこでライブをしてくれることに!
「貸本喫茶の夜」(企画:夏のあくび)
12月20日(日)@大阪北堀江 貸本喫茶ちょうちょぼっこ
出演:前野健太
開場18:30/開演19:00 (21時頃終演予定)
チケット代
ご予約1,500円/当日2,000円(共に別途+1drink代500円要)
※限定20名l(先着順)となります。
※ご来場の皆様に特製「ちょうちょぼっこマッチ」をプレゼントいたします。

<チケットのご予約>
natsuakubi@gmail.com
宛にメールをお送りください。
その際、件名に「12月20日ライブ予約」、本文に「お名前・ご予約人数・電話番
号又はメールアドレス」をご記入ください。こちらからのメールの返信を もちまし
てご予約完了となります。
※万が一、3日以内に返信がない場合はお手数ですが再度メールをお送りください。

--------------------------------------------------------------------------
■食の本つまみぐい  遠藤哲夫
(35・最終回)ごまんとある料理の本を無用にする一冊
--------------------------------------------------------------------------
玉村豊男『料理の四面体』鎌倉書房、1980年

人類の歴史のなかでも料理の歴史は最も古いほうだろう。少なくとも日本の文
学の歴史と比べたら、かなり古い。そして日本の文学は、ながいあいだ料理の歴
史について無関心だった。いまでも大勢は、そうである。だけど、その空白を、
この一冊が埋めている。ほかの食べ物や料理の本など、まったく無価値で退屈な
存在にしてしまう力がある。のみならず、言葉と論理をもって、ものごとの本質
や原理に迫る愉しみを教えてくれる。

『鶏料理三百六十五日』といった本を「全部丸暗記したとしても、三百六十五種
類の料理しかつくれないのである。/イッパツで料理の一般的原理を発見し、そ
れを知ったらあとは糸を紡ぐように引けば引くだけ次から次へと料理のレパート
リーが無限に出てくる……というような方法がないものだろうか」と考えた著者
は、大胆不敵な試みをした。つまり、何をどう食べるかの生活の技術としての料
理を、四面体におさめてみることによって、どんな素材でも、そこにあてはめる
と、たちまちその料理法のいくつかを思いつくという料理の構造を見つけ出した。

著者はフランスに留学し、世界各地をほっつき歩いた。本書の話は、アルジェリ
アで出合った「アルジェリア式羊肉シチュー」から始まる。「世界の国々を旅行して、
いろいろなものを食べてみると」まったく違った姿の料理に最初はおどろくが、そ
のうち「材料や調味料は異なるとはいえ、料理の方法じたいにはそう変わりないの
ではないか」と気づいたこと。それから、四面体にはフランス構造主義の影響、か
なり直接的にレヴィ=ストロースからのヒラメキがみられる。

とかく日本人の枝葉末節の知識を自慢しあう習慣のなかでは、フライとてんぷら
とトンカツと目玉焼きとチャーハンとやきめしに共通する原理とちがいなどは見過
ごされがちだ。しかし、あじの日干しもローストビーフもおなじ料理だし、刺身は
サラダなのであると著者は語る。その論理と言葉のつかいかたは、料理の愉しみだ
けでなく文章を読み考える愉しみも広げてくれる。登場する各国の料理も、手に入
る材料でつくってみたくなる。一冊で、いろいろにおいしい。

この連載は、これが最後。連載を始めるときに、最初は江原恵さんの『庖丁文化
論』で、最後は本書で締めくくろうと決めていた。日本の料理の歴史のなかで、も
ちろん万全ではないが、「画期的」といえるのは、この2冊だろうと思う。しかし、
どちらも古本でしか手に入らない。料理は「実用」か「趣味」そして「くえればよ
い」「うまければよい」から成長のない文化なのかも知れない。

〈えんどう・てつお〉ありがとうございました。ひきつづき、よろしくお願い致し
ます。Webサイト「小学館ブックピープル」で、料理研究家・瀬尾幸子さんの料理
に文章をそえる「わははめし」連載中。毎月1日ごろ更新で、5回まで掲載中。
来春、書籍化の予定。
http://bp.shogakukan.co.jp/wahahameshi/

「ザ大衆食」http://homepage2.nifty.com/entetsu/

---------------------------------------------------------------------
■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(79・最終回)二日酔いにて役に立たず
---------------------------------------------------------------------
『酒とつまみ』12号が出てしばらくは、年末へ向けての雑誌の仕事やら、単行本
の仕事やらで、忙しく過ごした。11月も半ばになって、やっとひと息ついたのだが、
その頃には、12号の営業仕事は、すでに落ち着いていた。

 そして12月初旬。連載をしてくださっている松崎菊也さん、すわ親治さん、石倉
直樹さんがそろって舞台に立つ『はだかの王様』というライブが開催された。毎回、
風刺と音楽とで楽しませてくれるライブだが、私たち『酒とつまみ』は、最新号が
出れば必ず、会場で売らせてもらってきた。

 12号の完成が、前回の9月の公演に間に合わなかったため、この会場で売らせて
いただくのも、ずいぶんと久しぶりのことになる。元気に売り子をしよう。と、当
初は思っていた。

 でも、できなかった。理由は酒だ。前日、冷たい雨が降る日比谷を歩いていて、
ああ、飲みてえ、と思ったのが午後4時半。それから4軒で、上がりが朝5時、と
いうことになってしまった。

 途中、酔っているせいか、なかなかうまく帰れない事情もあって、帰宅は7時を
過ぎていたか。少し寝て、すぐに起きる。ライブの出演者やスタッフの方たちに差
し上げる酒を買ってから会場に向かわなくてはいけない。

 駅前の大きなスーパーで、けっこう上等なブレンデッドのスコッチを買う。それ
を肩から下げるカバンに入れ、電車に乗り、膝の上にカバンを置いて、ああ、これ
でなんとか間に合うなとため息をついたら、両サイドに座っている人が同時に私を
見た。酒臭いんだ。

 ああ、これはまずいなあ。できるだけ息をしないようにするが、ああいうときは、
なんというか、体全体がアルコールを発散しているみたいだ(たぶん、間違いない)。
で、とても申し訳ないのだが、ひとまずは乗っていくよりないので、心の中でゴメ
ンゴメンと謝りながら電車を乗り継ぎ、会場に着いた。

 しかし、酔いはいよいよぶり返す感じなのだ。まったく、使い物にならない。昼
の公演であるから、お客さんで1杯召し上がってから来ている人というには、想定
にしくい。つまり、ちょっと飲んだだけですぐにそれとわかる会場に、アルコール
漬けみたいな人間がひとり入り混むのだから、これは問題だ。私はできるだけ、売
り場を離れていなければならない。

 なんのために来たのか、まるでわからない。私は、どうも、いつも使い物になら
ない。

 それでも、WクンもSさんも一緒だから、販売自体は順調で、その日も、33冊も売
れた。嬉しいなあ、と思う。いつものとこながら、これは本当に嬉しいのだ。

 そして打ち上げ。赤坂の居酒屋で出演者の方々、プロデューサー、スタッフ、み
なさんと同席をさせていただく。どうにも調子が悪くて最初の生ビールを吐きそう
になるのだが、2杯めで元気になり、そのあとは芋焼酎をお湯割りでビシビシと飲む。

 用事のある人から先に、三々五々、帰っていく。最後には、主催者のお二人と松崎
さん、私とWクンが残った。もう、だいぶ、飲んでいる。でも、いつまでも酒が飲め
るような気もしてくる。私も、遠慮なしに喋る。

 酒とつまみを始めてからの7年。いや、創刊の準備をしていた頃から数えるとちょ
うど8年、ずいぶん飲んだなあ……。松崎さんは、まだ酒つまが影も形もなく、ある
のは話だけ、こんなバカをやろうかと思います、という決心しかなかったときに、「そ
の話、乗った」と言ってくださったのだった。

 それ以来の連載。創刊2号には、すわさんを紹介してくださり、後に石倉さんにも
イラストを描いていただけるようにしていただいた。こんな私に、ずいぶんと長く、
お付き合いをいただいている。

 生キャベツに細切りの塩コブをふりかけ、ごま油のドレッシングをかけただけの1
品が、ばかにうまい。丼ばち1杯で180円。ますます、うまい、と思う。

 とにもかくにも、今日という日までやってくることができた。それで良しとして飲も
う。そんな気分になってくれば、腹の中に、ぽっと火が点いたような温かさを感じる。

「毎号、創刊号のつもりでつくったらいいよ」
 松崎さんが、私に言ったことばだ。できたばかりの創刊号を肴に1杯飲んでいただい
たときだった。「これ、ひょっとすると、相当、おもしろいことになるぞ」。
そうもおっしゃった。

 私はまた、思い出す。そして、『酒とつまみ』を始めたからこそ、この出会いがある
のだと、思いを新たにする。

 たくさん、たくさん、飲んだ。打ち合わせと言って飲み、取材と言って飲み、入稿
祝い、校了祝い、刊行祝いと言っては飲み、営業がうまくいけば書店さんの近くで
飲み、『酒つま』を置いてくださるバーへ納品に行けば当然そこで飲み、深夜、自宅
でひとり、読み返しては、また、飲んだ。それが、とても楽しかった。

 今後も、そんな日々が続いていくことだろう。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
長い間ありがとうございました。今回で、この連載は終了します。79回、書かせてい
ただきました。少し経ったら、じっくりと読み返してみたいと思います。『酒とつまみ』
13号の制作も開始しています。ぜひ、ご期待ください。最後になりますが、編集の南
陀楼綾繁さんに、このような場へお誘いいただきましたこと、感謝いたします。http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

---------------------------------------------------------------------
■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(89・最終回)解放出版社の巻 大飯食らいだけが取り柄のうどの大木ビル
--------------------------------------------------------------------- 
エロ・銭・覗きを3本柱とする『週刊新潮』の発行元が、”新潮社”と名乗
るのも厚顔の極みだが、社名の臆面のなさという意味では、この社の右に出る
版元はない。”解放出版社”様だ(千代田区神田神保町1ー9 稲垣ビル8階)。
ここは東京営業所で、本社は大阪市浪速区の”大阪人権センター”にあると
(これまた御大層な箱物名だ。名が体を表わしてりゃいいけど)。

 東京営業所のあるのは、要するに神保町交差点。九段方面からの靖国通りと、
後楽園側からの白山通りが交差する、角地の稲垣ビルに(ビルは9階建てで、
最上階に大家が)。「岩波ホール」前の信号に立ち、明大方面に渡ろうとすると、
なぜか8階なのに、解放出版社の白地に紺文字の看板が、嫌でも眼に飛び込む。
むかつく社名だ。水戸黄門の印籠のように、有無を言わせない押し付けがまし
さが爆発。「俺は絶対に解放されたかねんだ、糞馬鹿野郎!!」金のない日は
(1年中という事だが…)、常に心中で看板に怒鳴り返している。看板目撃者の
50人に1人はそう思ってるはずだ(第3者委員会で決定された訳ではなく、筆者
の直感)。

 実は筆者、稲垣ビルの1〜2階は、「廣文館書店」と長年勘違い。隣り合わせで
ビルの色こそ似てるが、全く別物だった(付近で40年近く生活してるのに、初老
開きめくらですいません!)。両物件共に、下手なペンキ屋が値切られて塗った感
じの白いビル(でもかなり色褪せてて、黄を10%は混ぜた風に見える)。特に稲
垣ビルの芸のない造りは付近でも目立ち、大飯食らいだけが取り柄のうどの大木
野郎が、居眠りしつつ立ちすくんでるよう(ひいき目に見て、栃木県の3流私大の
体育館)。

 解放出版社に落ち度がある訳ではないが、やはり大義が売りの版元は、入居物
件の趣味や立地条件、交通量等を考えた方がいい。知らないうちに、進歩的で善
良な市民を敵にしてるかも(オメ−だけだっつーの!!)。目立つ場所にある割に、
大味感溢れる建物の外見がマイナスに作用してか、現在6〜7階は空き部屋。関
係者じゃないけど、中にも侵入(日本じゃこれでパクられ、最高裁で有罪になる
の忘れてたよ。今井功最高裁判事よ、君はハレンチ裁判官の鏡として、日本司法
史に刻まれる)。

 外見と同じレベルで黄ばんでた。場所柄、排気ガスのせい?省エネ主義者ゆえに、
エレベーターを無視、狭い階段をテクテク。粋がるもんじゃないっすね。6階で息
切れ。解放出版社の玄関も拝見せずにトボトボと、「このビルに共同トイレはない」
との警告のある、1階まで戻る。階段横の窓ガラスとか、もっときれいに磨いと
いてくれると、外の景色楽しみながら、8階までたどり着けたのに(うるせえ!)。

『人権反射鏡』『人権50話』『人権のまちづくりガイドブック』『わたしの人権教室』
『いのち・愛・人権』『人権百話』『「人権の宝島」冒険』『ちょっと待て!人権がある』
『人権教育の未来』…同版元の2010年版図書目録の、最初の数ページ開くだけでこ
れだ。さぞや聖人君子揃いの版元なんだろうよ。「人権粗茶に人権まんじゅう人権
ようじも!」と、俗人は突っ込みたくなるな、恥ずかしくって(あ〜あ、しがねえ
エロ本屋で本当に良かったヨ)。

 内澤旬子の『世界屠畜紀行』以外は、ここの本は持ってない。これからもだろう。
差別撲滅に異論はないが(実現は無理だろうが目標としては正しい)、もう少し日本
語を大切にしろよ。稲垣ビルの外壁の色同様、この版元の図書目録に掲載された”大
義後”は、片っ端から色褪せてて悲しい。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

========================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ 」(毎月4回発行)
■ 発行部数  4724 部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の執筆者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで kawasusu@nifty.com
■ HPアドレスhttp://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
==========================================================

作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.435

■■----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ               2009.11.30.発行
■■                             vol.435
■■ mailmagazine of book reviews      [一種の神話となった 号]
■■----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------
★「25年ぶりに英語学び直してみました」/守屋淳
→天啓です。

★「月刊ニュースなビジネス書評」/aguni
→GHQです。

★「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
→ビー玉です。

★「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
→ゴクミです。

---------------------------------------------------------------------
■トピックス
---------------------------------------------------------------------
『ポスターを盗んでください+3』(平凡社)刊行記念トークショー
 原研哉トークショー  ゲスト: 西本和美(季刊『住む。』副編集長)

 オリジナル刊行から14年を経た今、デザインの最前線で活躍する著者にと
って、あのころの「格闘」はどんな意味を持つようになったのか? デザイ
ナーであるという実感を得られなかった時代に輝いていたものは何かを反芻
する。聴き手は、著者の「どこかにある」が連載されている季刊『住む。』
の副編集長・西本和美氏。学生時代からの友人である西本氏との対談から、
著者の「デザイナーになるまで」が浮かび上がってくる。モノ作りを志す人
には、必聴・必見です。
2009年12月6日(日)18:00〜20:00(開場17:30〜)
会場:青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山
入場料:700円(税込)/定員:120名様
ご参加方法:[1]ABCオンラインストアにてWEBチケット販売いたします。
[2] 本店店頭にてチケット引換券を販売。(入場チケットは、イベント当日
受付にてお渡しします。当日の入場は、先着順・自由席となります)
※電話予約は行っておりません。
お問い合わせ:青山ブックセンター本店03-5485-5511(10:00〜22:00)

---------------------------------------------------------------------
■「25年ぶりに英語学び直してみました」/守屋淳
---------------------------------------------------------------------
自分の頭で考えること

『英文法の謎を解く』副島隆彦 ちくま新書

今では、なかなか毀誉褒貶の激しい国際関係モノを、次々出版されている副
島隆彦さんですが、今から10年以上前、私が書店員だった頃には英語関連
の本でやたら論争の多かった人だったなあという記憶があります。

1995年に出された本書もその一冊で、英語を学びなおし始めたばかりの
筆者には、残念ながら中身の当否についてはまったく言及できないのですが、
いくつか感心したところがありましたので、それをご紹介したいと思います。

まず、英語絡みではないんですが、I don't know.についての次の指摘。

《私は、中学校の時以来、英語の教師たちに根掘り葉掘り質問すると彼らは、
必ず「そうなっているからそうなっているんだ」と答える。せめて、I don't
know.「分かりません」「これ以上は、英米人に直接、聞きなさい。私の
知っているのは、ここまでです。それ以上のことは、分かる人に聞きなさい」
と答えてほしかった。日本人の教師・学者という人種は、I don't know.とい
うコトバの真のおそろしさを知らない。「アイ・ドント・ノウ」と答えるこ
とは、科学=学問の精神に合致した、すばらしい態度だからだ。「ここまで
は、私は分かっている。だから、学生である君に説明してあげよう。しかし、
ここから先は、私には分からないんだ」「だから、君自身が、この疑問を大
切にして、分かった振りをしないで、ずっと疑問として、分かるまで、考え
続けなさい。あるいは、もっと分かる人に、聞きなさい。私が教えてあげら
れるのは、ここまでなのです」このように答えるのが、本物の教育者だ。優
れた英米人(あるいは、近代ヨーロッパ知識人)は、このI don't know.と
いうコトバを実によく使う。自分が「知っていること」と「知らないこと」
を、常に、キチンと分けながら生活しているからだ。これが、学問=科学と
いうことの本質だからだ》

これって、実は『論語」にある次の言葉にそっくりなんです。

・これ子路よ、そなたに「知る」とはどういうことか教えてあげよう。それ
は他でもない、知っていることは知っている、知らないことは知らないと、
その限界をはっきり認識すること、それが「知る」ということなのだ(由、
女にこれを知るを誨えんか。これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知
らずとなせ。これ知るなり)『論語』為政篇

まあ、その意味では科学=学問という書き方自体は、西欧に毒され過ぎとも
思うのですが、筆者は、こうした傾向は逆なのかと思っていました。つまり、
東アジアの儒教の影響を受けた地域では、孔子の教えが根強く残っていて、
西洋はそうでもない、と。実際、内田樹さんの本にもこんな指摘があります。

《アメリカの高校生だってユーゴの戦争についての知識は私とどっこいどっ
こいのはずである。それにもかかわらず、彼らはあるいは空爆に決然と賛成
し、あるいは決然と反対するらしい。なぜそういうことができるのか。
 たぶんそれは「よく分らない」ことについても「よく分らない」と言って
はいけないと、彼らが教え込まれているからである。「よく分らない」と言
うやつは知性に欠けているとみなしてよいと、教え込まれているからである》
『ためらいの倫理学』角川文庫

まあ、ある種、どんな国であるにせよ、本当にレベルが高くなっていけば、
出てくる知的な発想というのは似てくるということかもしれません。まあそ
れ以上に、個人的感覚から類推して、西欧的や東アジア的といったものを語
ることが、そもそも難しいともいえるのですが……

そらに、英語関連でいえば、こんな指摘もあります。

《私は、現在完了形はあまり使わない。(1)未来形か、(2)現在形か、
(3)過去形かのどれをかを意識しながら使えば、それでよいと思っている。
この先、死ぬまでずっと英語を話していても、この「have+p.p.」の壁を完
全に越えたと思うことはないだろう。とあらかじめ、あきらめているという
か、タカをくくっている》

なーるほど、その手があったのか。現地人並みにしゃべれなきゃダメみたい
な価値観をもたなければ、これも当然ありなんですね。怠け者で、たどたど
しくても何とか通じてくれればいいやとしか思っていない筆者にとっては、
天啓のような一節でした(笑)

(守屋淳 自称作家)
---------------------------------------------------------------------
■「月刊ニュースなビジネス書評」/aguni
---------------------------------------------------------------------
 政治が経営にできること

 aguni です。政治が経営にできることって何でしょうか?

 『忘れ去られた経営の原点―GHQが教えた「経営の質」CCS経営者講座』
 後藤俊夫 著
 出版:生産性出版
 ISBN:4-8201-1652-5
 発行年月:1999.3
 http://www.amazon.co.jp/dp/4820116525?tag=bizknowledge-22

 今日はたまたま出会ったちょっと古い本をご紹介します。この本は戦後の
日本で開催された「CSS経営者講座」がすごいよ、という本です。

 ここのところ私が考えているのは、日本の大企業が大企業になったのには、
時代的な背景だけではなく、政治的な意図がかなり関わっていたのではない
か、ということでした。

 この本がその疑問に対する答えになっているのかどうかはわかりませんが、
ひとつ面白いエピソードを知ることができました。

 実は、有名な話かもしれませんが、時代は遡ること戦後すぐの時代。当時、
GHQは日本の民主化政策のために、ラジオと電話を普及させて、民主主義
の思想をくまなく日本全土に広めようとしていたというのです。

 でも、しかし、日本にはマトモなラジオを作れる会社なんてなかった。そ
こでマッカーサーは、とりあえず通信関係のメーカーのトップを呼びつけて、
セミナーをやるから受けろ、とやったんですね。

 このセミナーがつまり「CSS経営学講座」です。本の中では、「経営者
の頭を根本的に切り替え」る、なんて過激な表現もあります。つまりはトッ
プ・マネジメント・セミナーの元祖、というわけですね。

 内容は「会社は何のためにあるのか」から始まり「経営の失敗はトップの
責任」ということ、それから「経営管理とは何か?」ということ。そして、
科学的で統計的な品質管理について。

 この統計的な品質管理というところがどうも当時のメーカーの社長には響
いたようです。すごいすごいというのでみんなでこぞってやり始めた。その
うち品質が高くて生産性が上がると、海外で製品を輸出するようになった。

 品質管理を日本に来てわざわざ教えに来てくれるほど暇だった無名の統計
学者、デミングを祭り上げてデミング賞という賞まで作っちゃった。

 で、その後、どうなったかというと、日本製品が粗悪品から品質が良くて
安い商品になり、アメリカのものが売れなくなった。日米貿易摩擦になった。

 当時、1980年にアメリカでテレビで「日本ができるなら、なぜ米国にでき
ないのか?」という番組が放映され、この「CSS経営学講座」が紹介され、
当時、まだ無名だったデミングなどがもてはやされるようになった、という
のです。

 まあ、このエピソードも面白いとは思うのですが、私がもっと面白いな、
と思ったのは、GHQの発想です。民主主義を広げるためにラジオを使うた
めにラジオを作らせるためにメーカーの経営者を教育しよう、というもの。
当時、テキストも授業も英語だったと言います。まあ、占領側だったから出
来たことかもしれませんが、その熱意と言いますか、思いの強さがすごいな
ぁ、と思うのです。

 政治が国民のことを思うのは大事ですが、それは同時通訳がついていない
とやる意味がない的な、会場はこうでないととか、まずは箱だよね、全国一
律だよね、みたいな、いたれりつくせりである必要はないと思うのです。

 それよりも欲しいのは熱意ですね。現金をあげるよ、借金待ってあげるよ、
というセーフティネットだけではなく、こういう思想に基づいてこういう社
会にするためにはこういう施策が必要なんだ、そういう熱さを伝えて欲しい
と思っているのは、私だけでしょうか?

       aguni ビジネス書評者/(財)生涯学習開発財団認定コーチ
                 経営品質協議会認定セルフアセッサー
                 日本経営品質賞審査員
                 【bizbook.tv】http://bizbook.tv/
---------------------------------------------------------------------
■「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
---------------------------------------------------------------------
はたして人体にビー玉は内蔵されているのか?

○長新太 著
『ユーモアの発見』(岩波ジュニア新書81) 
『海のビー玉』(平凡社ライブラリー)

「ある朝、息子はオチンチンのあたりをおさえ、少し不安な表情でわたしの
ほうにあるいてきた。目玉を上にあげて、熱心になにかを究明するようなふ
うです。息子がなにをいうのか、わたしは待ちました。やがて息子はしゃべ
りはじめたが、よく意味がわからない。(中略)彼はオチンチンの部分には、
ビー玉に類するものが二個入っていることを発見したが、まだそれがビー玉
だと確信がもてない。それを私に問いただすつもりなのだ!」(「ビー玉人
体内蔵説」『海のビー玉』)

いきなり何を引用するんだ! と思われるかもしれないが、読み始めて4行
目で、腹をかかえて笑えたエッセイの「起」の部分。
この後、「発見者」の父にして著者である長さんは、「親指と人差し指をま
るめ、小指を立てて、ビー玉をはじくようなしぐさでせまってくる」息子か
ら、逃げまわるのだが、それでも、
「こうした子どもの言うことをきいて、全世界のアリ全員虫歯なのではなの
かもしれぬ、と思ったり、パトカーは「パポパポ」であるかどうか、たしか
めるくらいの大人にならなくてはいけない。「ハテネ?」とか「ソーカシラ
?」と思うだけでもよい」(『ユーモアの発見』)
という長さんは、さらに息子の想像をふくらませるようなことを言ってしま
い、のっぴきならない状況になってしまう。それにしても、「ビー玉」は絶
妙ではないか。

『ユーモアの発見』では、そんな「子どもの目」を大事にしている長さんが、
いくつかのお題にたいして、真面目に「大人の頭」で考えている。
「オチなんてつけなくてもいい、とにかく自由に考えてみようよ」そんなこ
とを言ったかどうかは知らないが、子どもよりも大人に読んでほしい本だ。

それで、冒頭の引用はどう解決するのかというと、ほんとうに、子どもらし
い形で解決(?)してしまう。オチ(結論)なんかよりも、一所懸命にかん
がえている、そのグダグダが面白いのだと思う。

(ミラクル福田 編集者)
---------------------------------------------------------------------
■「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
---------------------------------------------------------------------

皆さんこんにちは。

伊坂幸太郎の新刊から村上春樹の短編集、あの「ミシュラン」まで、
話題の本がたくさんあった11月でした。

後半のある日は、文芸書としてはおそらく今年一番の新刊の多さでしたね。
入荷した大量の書籍を載せる台車が足りないかと思いましたよ、ホントに。
もう少し考えて配本日を決めてくれればいいのにさ…、
と愚痴りつつ涙目で品出しをしました

そんな中、最も華やかだった新刊は「ゴクミ」(後藤久美子 著 講談社刊)
でありましょう。彼女がF1レーサーとの交際をきっかけに、若くして日本の
芸能界を去って10年以上。もう忘れ去られてもおかしくない元アイドル女優
の本がどうして売れるの?と疑問に思う人も多いようですね。20代のスタッ
フの中には、「後藤久美子って誰?」なんて人も。

一部の女性にとっては、フランスのお城でリッチなダーリン、美しい子ども
たちと優雅に暮らし、マスコミにほとんど姿を現さない(時々雑誌に出るく
らい)にもかかわらず他を圧倒する美しさとオーラを保ち続け、同世代の女
優には真似のできない風格すらも身につけてしまったゴクミは、最もリスペ
クトするべきセレブの一人なんですよ。

発売前からどのくらいのマダムぶりを見せ付けてくれるのか、楽しみにして
いましたが、カンペキな美しさ、ドレスの時もカジュアルな時も常にゴージ
ャス。いやいや、圧倒されました。

雨宮塔子、中村江里子、中山美穂、バレリーナのミテキ・クドー…、今年も
たくさんのフランス在住セレブが本を出版しています。他の女性たちがどん
なにリッチでセレブなダンナがいようと、具体性のある生活感や親しみやす
さをあえて漂わせているのに対し、ゴクミはストイックに「私の哲学」と
「家族への愛」を語ります。若き日に『ゴクミ語録』をヒットさせただけの
ことはありますね。なかなかの言語センスです。何かを告白して話題作りを
することもなく、使えるお店情報も披露せず、ただひたすらドラマチックに
カメラの前にたたずむゴクミ。女性向けに作られた一般的なタレント本と違
い、自分の生活の参考にできるポイントは一切ないですね。読者に対する媚
びも一切なし。装丁は、女性タレント本としては珍しいやたら分厚く重たい
A5版ハードカバー。普通だったら敬遠されるようなつくりを、あえて選ん
でいるところがうますぎる!読者に媚びていないところに、作り手の自信と
著者の魅力に対する信頼を感じました。

女性タレント本のヒットが多かった2009年においても、最も印象的な1冊と
言えましょう。

「私の人生なんて、まったくおすすめできないわよ。だって大変だもの。」
と言うのは、この本に書かれた彼女の一番の名言。(こんなセリフを素でい
える30代ってゴクミだけですよ、たぶんね。)

もはや、一種の神話となった後藤久美子は、今後美貌が衰えることも不幸に
なることも、疲れを見せることも、愚痴を言うことも、人生に迷うことすら
も許されていない気がするので…、確かに大変かもね。

これからも、あまり姿を現しすぎず、2年に一度くらい単価高めの単行本で
ゴージャズぶりを見せ付けてほしいものだと思います。

と、ゴクミに熱くなったところで今回は終わりますが、今月ようやく完結し
た『船に乗れ!』(全3巻 藤谷治著 ジャイブ)をぜひとも皆さんに読ん
でいただきたい!ここ数年で読んだ青春小説の中でナンバー1です。「いや
いや今更青春なんて」と言う大人の皆さんも、だまされたと思ってぜひ。

それではまた来月もよろしくお願いします。

---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

 書評コラムの書き手さん募集にたくさんのご応募ありがとうございました。
まさに「本の目利き」に相応しい豪華なメンバーになりそうで、今からとて
も楽しみにしています。

 今回のリニューアルに際しては、もうひとつ、大きな目玉を考えています。
 そちらは今、アイデアを形にすべく、構想中。

 こちらもお楽しみに!(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ 」(毎月四回発行)
■ 発行部数 4697部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレスhttp://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================


作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.434

■■-----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ                2009.11.20.発行
■■                              vol.434
■■  mailmagazine of book reviews        [面白い自慢話 号]
■■-----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■コンテンツ
--------------------------------------------------------------------

★「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
→戯曲「マンドラーゴラ」「クリツィア」寓話「大悪魔ヴェルファゴール」

★「どこでも読書」/オオウラウタコ
→引越が終わりました。

★「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
→「オリバー君」って仇名つけなかった?

----------------------------------------------------------------------
■トピックス
----------------------------------------------------------------------
■〔書評〕のメルマガ 書き手さん募集
└──────────────────────────────────

 〔書評〕のメルマガでは来年からのリニューアルを予定しています。

 そこで、書評コラムの書き手さんを若干名、募集します。

 あくまで無報酬のボランティアですが、毎月一本、本を読んで書いていた
だくだけ。内容も自由ですが、読書の目利きを自称(あくまで自称)する皆
さん、是非、こだわりのあなたのお気に入りの一冊を薦めてください。

 我こそは!という方は、下記のメールアドレスまでご応募ください。

 ご応募お待ちしています。

 info@shohyoumaga.net
 http://www.shohyoumaga.net/

 また、リニューアルに伴い、発行も10日号、20号、月末号の月3回発行と
なります。

---------------------------------------------------------------------
■「マキャヴェッリ全集を読む」/朝日山
---------------------------------------------------------------------
【マキァヴェッリ全集を読む11】
戯曲「マンドラーゴラ」「クリツィア」寓話「大悪魔ヴェルファゴール」

 まずはイタリアを代表する戯曲とまでいわれる「マンドラーゴラ」前口上
には「わびしい日々に心和むひとときをさしあげようというのが作者のもく
ろみ。それというのもこの作者、別の仕事で別の才能を示すのは差し止めら
れているゆえに、ほかになすべきこともなく(以下略)」

と言う感じで、おまえは野村監督か?と突っ込みたいのを抑えて読み進める。

パリ帰りの裕福な青年カッリーマコ。幼い頃にパリに来てから20年、イタリ
アに帰る気はさらさらなかったが、ある時フィレンツェからやってきたカミ
ッロという男と付き合っていると、ある時論争になった。

フランス女とイタリア女とどっちが美人か?パリのフィレンツェ人はすべて
フランス女を支持したが、カミッロは、たとえイタリア女がすべて負けても
一人だけフランス女に勝てる女がいるという。高齢の法学者ニチア博士の美
貌の若妻ルクレッツァだ。

それでどんな女だとわざわざフィレンツェに帰ってきたカッリーマコはルク
レッツァに一目ぼれ。ぜひともルクレッツァとお手合わせしたいが、ルクレ
ッツァの身持ちの固さは自他共に認める堅牢なもの。

普通なら思いは遂げられないのだが、ニチア博士の夫婦は子供ができず困っ
ていた。カッリーマコは、子供を餌に博士とルクレッツァを騙して思いを遂
げようと策を練る。

医者に化けて、妊娠薬マンドラーゴラを処方する。もちろん効能などインチ
キだ。そしてこの薬を飲んでから1回目に性交する男はマンドラゴーラの毒
にあたって数時間後に死ぬと吹いておいて、その後変装した自分が最初の性
交相手として選ばれるという算段。そして思いを遂げて悠々バリに帰るはず
だった。

リグーリオという男をニチア博士のところに行かせ、パリからやってきた名
医がいると吹き込み、ティモーティオという懺悔聴聞僧を抱き込んでルクレ
ッツァや彼女の母親を騙して、カッリーマコはとうとうルクレッツァのいる
ベッドに潜り込むことに成功。結果はどうなった?・・・というお話。

人妻を寝取る話、しかも牧師まで金目当てに協力するというストーリーの中
にも謀略の匂いがする。なにせティモーティオを抱き込む時にニチア博士を
連れて行くという大胆なシーンが読みどころ。

「クリツィア」
は、高貴な方から預かり育てた娘クリツィアに恋した男親と息子がとりあう
話。主人公は息子クレアンドロ。男親はニコーマコ。

普通なら高貴な方から預かった娘を自分たちの意思でヤッてしまうのは非常
識なのだが、高貴なお方はいっこうに娘を迎えに来ないから、もう死んだの
ではないかと思っていたからできること。

ニコーマコは当然既婚者で奥さんソフロニアも健在だ。だから自分の召使い
ピッロと結婚させて、自分もチョメチョメさせてもらうという計画。

息子のクレアンドロは、クリツィアと結婚したい。だが親がそんな調子だか
ら、自分も配下の農場管理人エウスタキオと結婚させて自分が実質的に娶る
という計画。

ニコーマコの妻ソフロニアは、ニコーマコの計画は察知していて猛烈に反対
する。しかしクレアンドロとの結婚もさせるべきではないとも考えている。
ピッロとクリツィアの結婚を阻止するという意味では、クレンアンドロはソ
フロニアと共闘する。しかし自分との結婚には反対するのはわかっているか
ら、ソフロニアはいつ自分の敵に回るかわからないという立場だ。

ニコーマコ対クレアンドロ&ソフロニアは、お互い譲らないので、とうとう
どっちの意思を通すかをくじ引きで決めることにした。くじ引きは、ニコー
マコの勝ちだった。ニコーマコは明日結婚させると宣言して急いで準備を始
める。

クレアンドロ&ソフロニアはニコーマコの野望を阻止できるのか?読んでか
らのお楽しみ・・・・。

そして寓話の「大悪魔ヴェルファゴール」
地獄において、良き人が地獄にたくさん落ちてくるのは結婚をするからでは
ないかという説が持ち上がり、その調査のため人間界にヴェルファゴールが
派遣される。

ヴェルファゴールは大金を持った人間になりすましてフィレンツェに潜り込
む。名前はロデリーゴと名乗った。程なく結婚相手を見つけて調査を始める
が、奥方になったオネスタは並外れたぜいたく好きの傲岸な女だった。

オネスタの虜になってしまったロデリーゴは逆らう術を持たず、たちまち大
金は底をつく。破産寸前、借金取りが押し掛ける前ら逃亡しようとすると、
逃亡を予期していた借金取りが大挙して追いかけてくる。

もはや逃げられないというピンチの時、ジャンマッテーオという男がロデリ
ーゴをかくまった。自分を救い出してくれたら金持ちにしてやるという約束
をしたため、ロドリーゴは自分の正体が悪魔で、これから悪霊としてとりつ
かれる人をつくる。おまえが来たら退散するから、礼金もらってそれで金持
ちになってくれという。

ロドリーゴがとりついた先を知らせてくれるので、そこに行ってテキトーに
お払いをすると悪霊が退散する。ジャンマッテーオはたちまち大金持ちにな
った。ロドリーゴはこれで恩を返したから、もう俺と出会わないのが身のた
めだと言って姿を消した。

それでジャンマッテーオは悠々自適の暮らしができるようになったかと思っ
ていたら、ロドリーゴはやはり悪魔であった。ルイ17世の王女に取りついた
のだ。ルイ17世は、評判を聞いたジャンマッテーオを招いて、もしも王女に
とりついた悪霊を退散させられなければ、おまえの首を刎ねるという。

ジャンマッテーオは、王女に取りついたロドリーゴと交渉するが、ロドリー
ゴはジャンマッテーオを破滅させるつもりだから言うことを聞かない。そこ
でジャンマッテーオは命をかけた勝負に出る・・・。


この三作品に共通するのは、騙しとどんでん返しの物語だということ。読者
を騙すからどんでん返しになるんだろうと思うなかれ。どんでん返しの準備
としての騙しとは別の騙し。相手を騙そうと画策する者たちの物語だという
こと。でもって騙されるのは、馬鹿という点で共通している。

とはいえ、いわゆるマキァヴェッリズムが作品を貫いているわけではなく、
比較的純な登場人物に救いが用意されているところがエンタテイメントであ
る。

もう一つの特徴は、物語の大事なところには必ず女がいること。マキァヴェ
ッリが基本的に女好きなのもあるだろうが、女に振り回されるのが男だとい
う考えからか?それとも男ばかりの権謀術数の世界はディスコルシほかで書
いているから、全く違うものを書こうとしたのか?

また、この三作品は、大きくわけると今の日本の小説的ポジションで言うと
いずれもエンタテイメントの範疇のお話だけど、「マンドラーゴラ」はわり
と純文学寄り、「クリツィア」と「大悪魔ヴェルファゴール」は童話寄りの
作品だ。

そしてマキァヴェッリは「マンドラーゴラ」をもと純文学寄りにしたような
作品も書いている。未完の叙事詩「黄金のろば」だ。これが未完であること
にマキァヴェッリの物語作家としての限界も見えるが、それは次月にという
ことで、続く。

(朝日山 烏書房付属小判鮫 好きなジャンル 何だろ?『戦略の名著!最
強43冊のエッセンス』(講談社+α文庫 税込860円)『〈イラスト図
解〉コメのすべて 生産、流通から最新技術まで』(日本実業出版社 1500円
税抜き)『農業に転職する』(プレジデント社 1,500円)『イラスト図解
農業のしくみ』(日本実業出版 1,500円)好評発売中)

---------------------------------------------------------------------
■「どこでも読書」/オオウラウタコ
---------------------------------------------------------------------
どうもこんにちは

無事、先週引越が終わりました。
どうしたって、退去の日はやってくるのですから終わるも何もではあります
が。段ボールを片付けるまでが引越、、とつぶやきつつ布団をかぶる毎日を
送っています。今日はこれを書いてからカーテンを買いに行きます。
ちなみに電話は通っていません。(二ヶ月なにしてたんだか)

といった中、持ちあるいて読んでいたのは
ニール・ゲイマンの短編集『壊れやすいもの』角川書店

ニール・ゲイマンはアメコミ『サンドマン』の原作や、「もののけ姫」の英
語版脚本などで有名で来年2月頃映画公開の『コララインとボタンの魔女』
の原作も、だったり、書いた作品たちは世界幻想文学大賞、ブラム・ストー
カー賞、ヒューゴー賞等の幻想文学がらみの賞を一通り受賞のイギリス人作
家。

本国ではデュランデュランの伝記や銀河ヒッチハイクガイドのガイドブック
等も手がけており、私の中ではサブカルいえゴスッ子アイドルの箱に入って
いる作家です。

(写真で見る限りいつも黒い服着てるし)

翻訳本もしっかりと出ており、お父さんが神?なチャーリーの冒険『アナン
シの血脈』、神話上の神々はそりゃ現在も生きているだろうが、どんな風に?
を書いた『アメリカン・ゴッズ』、黙示録実現を巡って天使と悪魔がすった
もんだの『グッド・オーメンズ』、ロンドンの廃線だの地下世界だのが出て
きてウットリの『ネバーウェア』などなど。

なんですが、翻訳しかもどれも長い(上下巻)ということもあり、
(『サンドマン』はマンガだけど)これがマンガだったら凄いのに!
どんな長尺でも売れるのに、と新刊が出る度に残念に思っている作家。

ではありますが、今回出た新刊は短編集。詩や短編が収録。
短編は長編に比べて動かないし、まして詩、金を出して?が定説ではありま
すが、こんなに詰め込めれててお買い得なものはない、と思うような内容。
ファンタジー小説のおせち的なつまりっぷり。

ちなみに、どんな内容かと言うと、ベーカー・ストリートにレストレイド警
部がやってきて王族がらみの事件解決を依頼と書くとまんまホームズですが、
事件の鍵である緑の血が意外な世界(クトゥルー界)の扉を開ける「翠色の
習作」に始まり、心臓をピンで留められたハーレクイン話、魑魅魍魎渦巻く
世界の小説家の書く幻想文学について、ナルニア国物語で一人残ったスーザ
ン、秘密サーカスの出し物、他人と入れ替わった男、旅する女の子、迷い込
んだパーティーの不思議な女の子たち等々が31編。
*
*
少々奇妙な味わいのある短編集といってしまえば、それまでですが、かつて
本や映画の中で行ったことがあって、しっている世界。大好きで、どうして
その中に自分はいないんだろうと焦がれて泣いたことのある場所たちが、思
いもよらぬ形となって次々に登場するのです。

もちろん、いい大人ですから、なぜそこにいないのかは重々承知しておりま
すが、「小林少年」と見るだけで、夕方の寂しい気持ちだの夢中になって読
んだ江戸川乱歩本のストーリー展開やら、少年探偵団のつもりで針金を鍵穴
に詰まらせて親に叱られた午後まで浮かぶように、どこかに持ち続けている
場所たち。

本を読むのは一人だし、読んだ時間も感想も気持ちも私だけのもの。
読んだ誰かと感想を語りあったとしても、技術や時間や足らなかったり、言
葉が違くて、素敵だったことが全部が溶けてなくなってしまうような気持ち
になったりもするけれど。この本を読むと、こうして、繋がって行く場所は
やっぱりちゃんとあるんだ、と嬉しく。

えぇ、いい大人ですから、誰かと繋がる場所について語るんなら国家とか社
会とか言えた方が聞こえも通りもいいし、今作について言えば、抽象度が低
く具体的な分少し息苦しい気持ちもあるのですが(たとえば、ネズミで有名
なテーマパークに対する気持ちに似た)

「壊れやすい」ものの儚さ、美しさは手放したくない、と思う方は手に取っ
てほしいな、と思います。小口が青くてきれいな本です。

そうそう、先日発売になった昨年のファンタジーノベル大賞作家の新刊
中村弦『ロスト・トレイン』新潮社、日本のどこかにあるという伝説の廃線
跡についての小説も大変面白かったです。

といったところでまた。

(オオウラウタコ 35才 読書記録をネット上でつけはじめたのですが、マン
ガばっかり読んでることが判明しました)

---------------------------------------------------------------------
「書評で巡る、男の生き様劇場」蕃茄山人
 (57)「国際暗黒プロデューサー」、虚実皮膜の人生哲学
---------------------------------------------------------------------
康芳夫『虚人のすすめ 無秩序を生き抜け』(集英社新書・735円)

45歳から50歳くらいの人に聞きたいんだけど、猿顔の同級生に「オリバ
ー君」って仇名つけなかった? つけたよね? 人間とチンパンジーの丁度
中間の遺伝子を持つと言われて、鳴り物入りで来日したあの人、というか、
あのお猿さん(献身的にそのお世話をしていた若きAD・伊藤輝夫君こそが、
現在のテリー・伊藤である)。

そのオリバー君騒動や、石原慎太郎を団長とする「ネッシー捜索隊」、覆面
作家・沼正三の『家畜人ヤプー』プロデュース、アントニオ猪木対“人喰い”
アミン大統領のデスマッチ、等々のお騒がせ企画で知られるプロデューサー
がいる。それがこの本の著者・康芳夫。別名「国際暗黒プロデューサー」。

戦前の蒋介石政権時代の中華民国大使の侍医の子どもとして東京に生まれた
日中ミックス。ごく普通に当たり前のように東京大学を出たあとは、「元祖
・呼び屋」・神彰(有吉佐和子の夫。ということは有吉玉青の父)のもとで
明日をも知れぬ「呼び屋」稼業に身を投じる。インディ500の日本開催な
どを経て独立した後の活躍は上で挙げたとおり。その波乱の半生から紡ぎだ
された、実業ならぬ虚業家の、いや虚実の皮膜を行き来する人生の哲学をた
っぷりと語ったのがこの本だ。浅薄なノウハウ本が跳梁し安直な自己啓発本
が跋扈する昨今に疑義を呈しつつ、こんな時代には混沌を泳ぎきる胆力が必
要と説く。さらには、裏と表、虚と実を軽やかに歩く知恵までも授けてくれ
る、そんな怪書、快書だ。

著者には数年前に『虚人魁人 康芳夫』というとんでもない名著、というか
奇書があって、本当はそちらを先に読んだほうがいいのかもしれないけど、
いまや入手困難。まずはこの『虚人のすすめ』からお読みいただきたい。

いやまあ、確かに「自慢話」のオン・パレード。でも、なぜ「いわゆる自慢
話」がよくないかというと、それは面白くないから。つまり「面白い自慢話」
なら当然、大歓迎である。この自慢話は文句なしに最高に面白い。


余談だが、というか私事で恐縮であるが、この本を読んでいたら、前職時代
にある経営者のインタビューに行った時のことを思い出した。当人が急用で
中座してしまい、その間に先代が相手をしてくれたことがあった。そこで聞
いたのが、現在は地方財界の重鎮である先代が青年時代、いわゆる闇屋をし
ていた頃の冒険譚だった。戦後の混乱時代、進駐軍に渡りをつけて繊維製品
や食品の横流しをした話や、夜の国道の非常線を札束入り段ボールを積んだ
トラックで強行突破した話など、そのあと再開した当代へのインタビューが
霞んでしまうほどの面白さだった。

この本のエピソードの数々は、その先代の武勇伝につながる面白さがあった
のだ。もっともその先代の話のオチが「そなわけで人間、真面目に生きなあ
きまへん」という枯れたものだったのに対し、この本とこの著者はまるで枯
れていない。バリバリの現役、ギラギラの現役である。


この康芳夫と言う人、一般的にはもの凄く有名と言うわけでもないが、見る
からにただものでないルックスをしている。白髪のロンゲの大男でピンクの
チャイナ・スーツを好んで着る。それはそれはもの凄く怪しい見た目である。
そして、ありとあらゆるパーティーに出没するという。

ネット上でこの人のことが大きく話題になったことがある。2006年の亀
田興毅のボクシングの試合(対ランダエダ戦)でのことだった。リングサイ
ドの客席には女優の川島なお美がいた。その丁度まん前に康芳夫がいたのだ。
なにしろ体が大きくてロンゲなので真後ろの席の川島からすれば邪魔な壁で
しかない。ところが康さんが右へ左へよく揺れるんだ。そのたびに川島が迷
惑そうに体の位置を変える。それの様子がテレビ中継にパッチリ移っていた
ものだから、「川島なお美の前にいた、あれは誰だ?」とネットでは大変な
話題になっていた。「内田裕也だ」と言う人もずいぶんいた。似ていなくは
ないが、裕也はあんな怖い顔をしていない。

そんな康さんの容貌については、蕃茄山人さんがブログに似顔絵を描いてい
て、これがとてもよく似ているからクリックしてご覧ください。

http://d.hatena.ne.jp/banka-an/20060807

いや、本当に似ているんだってば。と自画自賛。

実は僕も一回だけ康さんと接近遭遇したことがある。業界筋某・パーティー
に代打で出た時のこと、すぐ傍で某・作家と談笑する康さんがいた。いつも
のようにピンクの中国服を着ていた。そして足元には薔薇の花。

そうか、招待者の名札つき造花を落とされたのだな。だれかに踏まれる前に、
と僕はさっと拾い上げると「康先生、落とされました」と声をかけて手渡し
た。すると康さんはニコッと凄くいい顔で微笑み、


「あっ、これはどうもスミマセン」

と頭を下げた。こんな二周りも年下の、しかも見るからに小物の若造にも礼
を尽くす。もっと怖くて倣岸な人だというイメージだったのだけど、もう、
凄く感じいいの。

これは相当の人ッたらしだなぁ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
蕃茄山人=都内出版関係某社勤務。8秒間出演した映画『美代子阿佐ヶ谷気
分』は、横浜・ジャック&ベティにて11/21〜11/27、京都・みなみ会館にて
11/30〜12/8、松本・市民芸術会館にて12/4、神戸・アートビレッジセンター
にて12/12〜12/18、札幌・シアターキノにて12/19〜12/25と、全国順次公開
中。
退屈な日常と多忙な妄想は毎日更新のブログ『蕃茄庵日録』に連載中。
http://d.hatena.ne.jp/banka-an/

---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------

 蕃茄山人さんの連載を読んでいて、神彰氏のことを書いた大島幹雄著『虚
業成れりー「呼び屋」神彰の生涯』(岩波書店 2004年1月)を再読したいと
思ったのですが、どこに行ったのか、本棚から発見できません。

 持っているはずの本を買うのもばかばかしいですし、どうしたもんかと途
方にくれています。それこそ引越しでもしないと出会えない予感もします。

 急な残業でデートの待ち合わせに遅れてしまってキャンセルになってしま
ったような、なんか切ない気分になりますね。なりませんか?(aguni原口)

======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ」(毎月四回発行)
■ 発行部数 4708部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで info@shohyoumaga.net
■ HPアドレス http://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================

作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.433

■■-----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ     2009.11.17発行

■           vol.433
■■  mailmagazine of book reviews  [ 最終回続々 号]
■■-----------------------------------------------------------------

[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。『一箱古本市の歩きかた』関連。
★「ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱」根岸哲也
 →“本棚のために家をつくった男”がずっと読み続けてきた作家たち。
★「古今東西歌舞音曲芸能図書偏読三昧」高野ひろし
 →寅さんを演じた渥美清が、人生で演じた役柄とは何か。最終回。
★「オヤツのオトモ」大橋あかね
 →アマいオヤツにゃ本が合う。本邦初の「食い合わせ」書評。最終回。
★「〈畸人研究〉今柊二の読書スジ」
 →一冊を読みはじめるとそれがべつの本につながっていくのだ。最終回。
★「中山亜弓が選ぶこの一冊」
 →最終回にあたり、これまでご紹介してきた本と人のその後を報告します。
★「全著快読 編集工房ノアを読む」北村知之
 →「全著快読」新シリーズ。大阪の文学出版社の全冊を読みます。

*本文中の価格は、表示のあるもの以外は、税抜き(本体)価格です。

-------------------------------------------------------------------
■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
★南陀楼綾繁『一箱古本市の歩きかた』刊行記念イベント
 はい、今回のこの欄は私事に使わせていただきます。光文社新書から今月、
『一箱古本市の歩きかた』という本を出しました。不忍ブックストリート、わ
めぞ、ブックオカ、BOOKMARK NAGOYA、お好み本ひろしま、Book! Book! Sendai、
高遠ブックフェスティバル……。いま、全国各地でブックイベントの動きが盛
んになっています。本書はその現状をレポートしたものです。
 刊行を記念して、各地でトークを開催します。ぜひおいで下さい。

【その1】オヨちゃんとモクローくんの古本ジェットストリームvol.5 
「東京と地方、どっちがイイ!?」

2009年11月22日(日曜日) 19:00〜
古本酒場コクテイル
高円寺北2-24-13 TEL 03-3310-8130
http://koenji-cocktail.com/
チャージ 800円
※予約優先

出演:山崎有邦(オヨヨ書林)
   南陀楼綾繁(ライター・編集者)
ゲスト:リブロ精鋭軍団(荒木幸葉、辻山良雄、栗田朋子)

【その2】南陀楼綾繁さん×津野海太郎さんトークイベント
「本とともに街を歩こう」

誰でも一日だけの「本屋さん」になることができる一箱古本市や、日本各地のブッ
クイベントの現状をレポートした『一箱古本市の歩きかた』が光文社新書から11
月17日に刊行。それを記念して、著者で一箱古本市の仕掛け人でもある南陀楼綾
繁さんが、新潮社から『したくないことはしない―植草甚一の青春―』を上梓し
た津野海太郎さんと、古本の楽しみ、読書と散歩の関係などを語り合います。

■2009年11月24日(火) 19:00〜20:30(開場:18:30〜)  
■会場:青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山
■定員:100名様
■参加費:500円(税込)
■ご参加方法:2009年11月11日(水)10:00より
[1] ABCオンラインストアにてWEBチケット販売。
[2]青山ブックセンター本店店頭にてチケット引換券を販売。
※入場チケットは、イベント当日受付にてお渡しします。当日の入場は、先着順・
自由席となります。
※電話予約は行っておりません。

■お問い合わせ:
 青山ブックセンター本店
  03-5485-5511 
 (受付時間: 10:00〜22:00)
http://www.aoyamabc.co.jp/10/10_200911/20091124.html

【その3】第2回モクローくん大感謝祭

5年半ぶりのご無沙汰です。新刊『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)刊行を記
念して、不忍ブックストリート結成のきっかけとなった、あのイベントが〈古書ほう
ろう〉に帰ってきます。
古本大好きのモクローくん=南陀楼綾繁の「けものみち」から発掘された古本を販
売するとともに、各地のブックイベントに関する資料を展示します。期間中、2回
のトークも行ないます。

2009年12月5日(土)〜27日(日)
月〜土 11:00 〜 23:00
日・祝 11:00 〜 20:00
毎週水曜日定休 ただし、23日(水祝)は営業します

古書ほうろう
〒113-0022 東京都文京区千駄木3ー25ー5
tel./fax. 03-3824-3388
http://www.yanesen.net/horo/

◎トーク1 本を売るだけが古本屋の仕事じゃない!?
広瀬洋一(古書音羽館)×瀬戸雄史(古書往来座)×南陀楼綾繁
12月11日(金) 開場18:30/開演19:00
入場料 1000円(飲み物持込み可)

◎トーク2 古本が先か? 仕事が先か?
黒岩比佐子(ノンフィクション作家)×南陀楼綾繁
12月17日(木) 開場18:30/開演19:00
入場料 1000円(飲み物持込み可)

※ご予約は電話かメールで。
 古書ほうろう 03-3824-3388
        horo@yanesen.net
(トーク1か2か、お名前、人数、当日ご連絡できる電話番号をお書き添えく
ださい)

【その4】「不忍VSわめぞ 仁義なき戦い・名古屋死闘編」
南陀楼綾繁(ライター・編集者、「不忍ブックストリート」発起人)
向井透史(古書現世店主、「わめぞ」代表)

日時:12月6日(日) 14時30分〜(14時開場)
会場:カフェパルル(052-262-3629)
入場料 :500円 (ドリンク代別途) 定員30名

ご予約はこちらまで↓
リブロ名古屋店 
TEL : 052(264)8526
mail : pbc-nagoya@libro.co.jp
住所 : 〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄3-29-1 名古屋パルコ東館4F

【その5】「読書からはじまること」
南陀楼綾繁(ライター、編集者)
内沼晋太郎(ブック・コーディネーター)
橋本倫史(『HB』編集発行人)

□日時…12月23日(水・祝) 18:30 open/19:00 start
■会場…ジュンク堂書店新宿店 8階喫茶
□料金…¥1000(1ドリンク付)
■定員…40名
□受付…7Fカウンターor電話予約
ジュンク堂書店新宿店
TEL.03-5363-1300

【その6】「ブックイベントのたのしみ」
南陀楼綾繁(ライター・編集者)
石川あき子(Calo Bookshop & Cafe)
郷田貴子・真治彩・次田史季(貸本喫茶ちょうちょぼっこ)

なお今回のトークショーは、開催中の「第6回 海文堂の古本市」(12月23日〜1月
11日。1月1日・2日を除く)会場でおこないます。古本好きにはたまらない、大量
の古本に囲まれてのイベントになります。

日時 2009年12月27日(日)
開場14:30/開演15:00
参加費 500円
ご予約方法  電話、FAX、メールで海文堂書店までお願いいたします。
50名を超えた場合、立ち見になる可能性があります。あらかじめご了承ください。

海文堂書店
〒650-0022 兵庫県神戸市中央区元町通3丁目5番10号
電話:078-331-6501
FAX:078-331-1664
http://www.kaibundo.co.jp/
books@kaibundo.co.jp

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

-------------------------------------------------------------------
■ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱 
(16) SFの可能性に身震いしながら書きまくった小松左京 その1
-------------------------------------------------------------------
 インフルエンザの猛威は一向に衰えなかった。日本では、二ヶ月で三千万人
が罹患し、都市部では死亡率が二五%を超えようとしていた。通勤電車のラッ
シュは緩和され、プロ野球、大相撲も中止、工業生産指数の低下、ダウの暴落、
生鮮食品の暴騰が起こる。ワクチンは底をつき、殺到する患者で病院は混乱し、
ついには医者も次々と倒れ、死者は八千万人にも及んだ。

 もちろん、現在、流行している新型インフルエンザの話ではない。小松左京
『復活の日』のストーリーの一部だ。新井リュウジによりリライトされた『復活
の日 人類滅亡の危機との闘い』(ポプラ社)が刊行されたのも、人々がインフル
エンザを恐れている現在の状況と無縁ではないだろう。しかし、ストーリーを半
分にダイジェストし、時代を現在に移しただけのジュブナイルを出す意義はどこ
にあるのか。40年以上前(1964年)に書かれながらも、古びていない原作を、背
伸びをして読むほうが、子供たちにとって魅力的な読書体験になるのではないだ
ろうか。最終戦争、宇宙からの侵略者といったモチーフで描かれていた当時の破
滅テーマSFに、ウィルスを破滅の原因として持ち込み、日本SFを一気に世界レ
ベルまで引き上げた作品である。核兵器による破滅SFを書くには、当時の核体制
の情報が手に入らず、困っていたところ、ウィルス学の新しい知見の論文が次々
と発表され始めたことが、当時の最新の科学情報に裏づけされた、この作品の執
筆のきっかけだと、小松は語っている(『小松左京のSFセミナー』集英社文庫)。

 小松のデビュー作は「SFマガジン」の「第一回SFコンテスト」に応募した
「地には平和を」である(選外努力賞となり、その後、SF同人誌「宇宙塵」に掲
載された。「第二回SFコンテスト」入選の「お茶漬けの味」とともに直木賞候補)。
太平洋戦争をテーマに小説を書きたいと思っていたが、当時(1960年)はまだ「戦
争が近すぎ」て、手をつけかねていた。そんなときに「SFマガジン」創刊号掲載の
ロバート・シェクリィの「危険の報酬」を読み、SFとして書けば、重苦しくて辟易
するようなテーマも、距離を置いてコンパクトに書くことができると気づく。本土
決戦を戦ったかもしれない世界と、戦後の平和な風景を対比して描いた作品は、太
平洋戦争、朝鮮戦争を経たばかりの日本にはリアリティがあった。タイトルは、聖
書ルカ伝からとられている。応募時には「地には平和」だったが、下読みの編集部
の森優(南山宏)氏が「を」を付け加えたというエピソードが残っている(『SF魂』
新潮新書)。

 1968年に、『果しなき流れの果に』が刊行された。この作品は、ジュラ紀のティ
ラノザウルスとステゴザウルスとの闘いから幕を開ける。闘いに勝利したティラノ
ザウルスは、辺りに響くうるさい音に悩まされ、その音源である洞窟の中に入る。
そこにあったのは、身をふるわせて、カン高い金属音を発し続ける電話機だったと
いう奇妙な場面は、SFというジャンルの受け入れが可能かを判定するリトマス試験
紙のようなプロローグだ。日本SFを代表するワイドスクリーンバロックの傑作だが、
やはりコアなSFファン向けで、受け入れられない人も多い、読者を選ぶ小説と言え
るだろう。

 小松が「国民作家」になるには、『日本沈没』が発表される1974年まで待たねば
ならない。『日本沈没』の第一章の執筆が開始されたのは、『復活の日』の原稿を編
集者に渡した翌日で、『復活の日』のために地震のことを調べ始め興味を持ったの
だった。その日から完成までに九年の歳月が流れることになる。(この項つづく)

(ねぎし・てつや) 1966年生まれ 団体職員。映画化された「復活の日」で、生き
残った南極大陸の人々の間で、誰がオリビア・ハッセーの相手になって子孫を残す
かを決めるくじ引きのシーンにドキドキした思春期の自分。「戦国自衛隊」で自衛隊
員たちが村娘たちを犯すシーンもそう。今の若者には大して刺激的な場面ではない
のかもしれないが。

「ふぉっくす舎」
http://d.hatena.ne.jp/foxsya/

---------------------------------------------------------------------
■古今東西歌舞音曲芸能図書偏読三昧  高野ひろし
(51・最終回)私だけの寅さん
---------------------------------------------------------------------
小泉信一『おーい、寅さん』朝日新聞出版、2009年9月、900円

 もしかしたら渥美清の思い出は、車寅次郎の思い出にかき消されてしまうんじゃ
ないかって思うんです。13年前に亡くなったのは喜劇役者・渥美清ではなく、寂し
がり屋の風来坊・フーテンの寅さんじゃないかって。恐らく寅さん以外の渥美さん
を見たことのある人は、この先もの凄いスピードで減っていくはずです。柴又で騒
ぎを起こす僕らの寅さんが、永遠にあの笑顔を残していくのと反比例して……。

 本書に載っているのは、歴代のマドンナや映画関係者のインタビューを中心とし
た仕事仲間。それに柴又の町の人々や、昔の仲間の面々です。みんな少なからず渥
美さんとの親交があり、その言葉の中には、熱い思いが今も持続している様子が分
かります。しかし、ずっと映画で競演している役者さんでも、彼等が知っている渥
美清は、撮影現場での姿がほとんど。だから共演者ですら、寅さんが半ば実像のよ
うに映っている。マドンナならば尚更です。私だけの渥美清ではなく、私だけの寅
さんなんですよ。

 きっと渥美さんは、接する相手が思っているであろう渥美清像を演じていたに違
いありません。家にいる時以外、一秒たりとも気を許してはいなかったのかも知れ
ません。共演者には共演者なりの、恩人には恩人なりの、昔の仲間にはそれなりの
「渥美清」という役柄を演じていたのではないでしょうか?

 寅さんは死んではいけない存在になってしまった。サザエさん一家が永遠に年を
取らないように、落語の熊さん八っつぁんみたいに、寅さんは未来永劫寅さんでな
ければいけなかったことを、渥美さんは知っていた。だから我を消して、寅さんと
して私達のリクエストに応え続けたんです。役柄を超えて、共演者の心に深く存在し
続ける寅さんを、渥美清は全うしたのだと、ページをめくるたびに強く思うんです。

〈たかの・ひろし〉東京生まれ、路上ペンギン写真家。
とにかく寅さんは美声だった。美しい高音が、あの四角い骨格の中で共鳴し合い、
更に磨きがかかって僕らの耳に届いてきた。しかも滑舌良く、聞き取りやすく、
流れるような鼻濁音の東京弁だから余計に、寅さんの名言は心に残るのだ。

「歩くお正月」http://arukuhibi.exblog.jp/

---------------------------------------------------------------------
■オヤツのオトモ  大橋あかね
(41・最終回)小説家
---------------------------------------------------------------------
江口雄輔、川崎賢子、沢田安史、浜田雄介編『定本 久生十蘭全集』全11巻
国書刊行会、2008年〜、各9,500円(1〜4巻既刊、以下続刊)

 久生十蘭の作品を初めて読んだのは二十年程前。きっかけは都筑道夫の賞賛。
「久しく生きとらん、食うとらん」が筆名の由来というのも良かった。

 初めに『ノンシャラン道中記』にはまった。コン吉・タヌの世界を股にかけ
た珍道中が、エスプリという言葉に相応しい皮肉な笑いとオチで語られている。
 その次は『顎十郎捕物帖』で、江戸の匂いが漂って来そうな風俗描写と論理
的な謎解きで、時代物・ミステリファンとしての自分を満足させてもらった。

 三一書房版の全集を買ってから、久生十蘭が翻訳小説や冒険物に戦争物、恋
愛や日常の一コマを切り取った作品まで、多岐に渡るジャンルの作品を書いて
いることを知った。どの作品でも情景が目に浮かぶ様な臨場感は、著者が演劇
に関わっていたせいだろうか。また、女性主人公の伝法な口調は明治生まれの
名残、垢抜けた台詞回しには若い頃の渡仏経験が生かされているのだろう。

 久生十蘭の作品は、自然な文体と過不足のない話運び、緻密な計算を感じさ
せない様にする筆力に満ち溢れている。現在発刊中の『定本 久生十蘭全集』
で、未読の作品を読む度、著者の変幻自在な筆さばきに魅了され、久生十蘭と
言う大きな迷路に入り込んだ気分になる。彼こそまさに「小説家」なのだ。

 オヤツには『セレネー』のベリーのロールケーキを。ベリーが練り込まれた
甘酸っぱくしっとりした生地にふんわり生クリーム。正直にきっちり作ってま
す感溢れていて、作り込まれた小説を読む時に相応しい、お気に入りのオヤツ。

〈おおはし・あかね〉ハラゴメカエル作家。今回で連載最終回です。七年に渡
っておつきあい下さった皆様、ありがとうございました。本については、自分
のメルマガ『ハラゴメ日記』でも触れています。また、ネットラジオでも本を
紹介する機会が出来そうです。また皆様とお会い出来ることを祈りつつ。
HP『ハラゴメゴコロ』http://www.haragome.com/
メルマガ『ハラゴメ日記』http://archive.mag2.com/0000122113/

--------------------------------------------------------------------- 
■〈畸人研究〉今柊二の読書スジ
(30・最終回)つながる過去と現在
---------------------------------------------------------------------

 目的を持って書店に本を買うよりもふらりと訪ねて知らない本に偶然出会う方
が感動が大きいような気がする。先日ある古書店で春名幹男『秘密のファイル 
CIAの対日工作』上下(新潮文庫)を買ったところ、これが滅法面白い。戦前
から戦後に至るまでの歴史上の人物たちの背後関係が見事に洗い出されていて、
通史としても楽しい。

 ちょうど本書と前後して佐野眞一『甘粕正彦 乱心の曠野』と『阿片王 満洲の
夜と霧』を読んだところなので、さらに知識が立体的になった。双方とも長編だけ
ど、実に読み応えがありますよ。ちなみに『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後
史』はまだ読んでない。

 また、当然のことだけど、現代とも強くつながっていて、鳩山一郎と吉田茂の激
しい権力闘争などは、現在の民主党の鳩山由紀夫総理と、自民党の麻生太郎の逆相
関を見ているようだ。ちなみに、よく知られている通り、それぞれの祖父であるのだ
った。

 さらに、最初吉田茂を追放しようと激しく非難し、その後親密な交際をするように
なったCIS(民間情報局)のポール・ラッシュは、戦犯や戦争責任者の公職追放に
関する情報を集めていたが、現在彼の名前自体はむしろ清里の開発を行った「清里の
父」やフットボールを日本に紹介した人物として知られているとのことで、戦前戦後
の人は特に多角的な「顔」を有しているのだなと感じ入ったのだった。

〈こん・とうじ〉畸人研究学会
神奈川新聞にて連載している「かながわ定食紀行」が、神奈川新聞のかもめ文
庫にて、文庫本としてついに刊行! 値段は定食一回分です(笑)

------------------------------------------------------------
■中山亜弓が選ぶこの一冊
(35・最終回)本たちのその後
------------------------------------------------------------
 これまでおつきあいいただいた私の連載も今回で最後。メルマガのおかげで、数
ヶ月に一度だけですが、書評を書く貴重な機会をいただくことができました。

 本に関わる仕事の楽しみは、本を通して、ときに作家の方、編集や営業の担当者
さん、そして読者皆さんとの出会いがあることだと思います。というわけで、書店
員の立場から本を作る人との出会いをまじえて、紹介文を書いてきましたが、今回
はその総集編? として、縁あって、これまでご紹介してきた本あるいは紹介しそ
こなった本と人のその後を少し報告してみたいと思います。

 まず、漫画家友沢ミミヨさんに紹介していただき、10年以上にわたりタコシェで
細々と扱い続けてきた、マルセイユのアート出版le dernier criの自家製セリグラ
フ本。

 主宰者パキート・ボリノは、太田螢一、根本敬、市場大介ら日本のアーティスト
たちをフランスに早くから紹介し、その交流を通して日本のアートや漫画も吸収し、
最近では不思議なキャラたちが登場する独自のBD「SPERMANGA」などを発表し、ア
ーティストでもある自らの表現領域を広げています。  以前から「日本に行って
みたい」と語っていましたが、その想いがいよいよつのり、ついに来日準備に着手
しました。首尾よくいけば来年2010年の秋に、彼の出版やアート、パフォーマンス
を東京の何カ所かで見ることができるでしょう! 15年以上の活動を経ての、日本
初お目見えですが、国やキャリア、有名無名に関係なく自分にとって刺激的な作品
を強くサポートし紹介し続けてきたその情熱はいまだ衰えることなく、荒削りな作
風を持ちながら、15年の間に印刷の技術やデザインのスキルがアップしたle dernier
criの作品はきっと日本人に刺激的に映ると思います。そして、また、パキートが
目にする日本のアートが彼の期待に違わないものでありますように!

 それから、石原豪人先生こと林月光画集「月光秘宝館」をはじめタコシェが編集
した冊子たち。膨大な仕事をした豪人先生の偉業を記録するためにも、第二弾に着
手したいと思っています…。最新刊はキング・オブ・ジン!? 20余年のキャリアの
中で数えきれないお手製本を作って作品を発表してきた漫画家・石川次郎さんの
漫画集「GIRO」にいたるシリーズの中から、巨女とそのお尻に敷かれることを悦び
とするM男を描くマエストロ春川ナミオさんの「聖女の臀堂」は、マニア枠に風穴を
開け、おしゃれな女性に憧れる男女、あるいはアート好きの皆さんにナミオワール
ドを広めるワンステップになったのでは、と自負しています。ナミオ画集が国内外
で今後も出る予定です。

 また、エロつながりでいえば、田亀源五郎さん監修の「日本のゲイ・エロティッ
ク・アート」も、埋もれがちなゲイ・エロティック・アートの発掘、再評価を目標
に、2巻まで刊行されました。そして3巻目は、残っている原稿や掲載誌が少ない
作家の作品についてネットで提供・協力を呼びかけるなど、今までにも増してプロ
ジェクトの規模を大きくしつつ、イラストを通してゲイ・アートのみならずゲイの
歴史をも記す、万葉集的事業となってきている模様。発行はしばらく先のようです
が、今から楽しみです。

 それから、ここ何年かのうち、同人誌活動をコンスタントに行ってきた漫画家、
山川直人さん、武富健治さん、こうの史代さんらのそれまでの作品が、商業ベース
の出版で再び発表され、改めて、すばらしい才能や可能性が身のまわりに潜んでい
ることを思い知らされました。

 そして現在進行形で、ミニコミとかジンとか言われる出版物の中に、ユニーク
な視点や独特の表現があることを、10年以上お店を続けてきた今でも折にふれて
発見しています。

 最近では、安田理央さんが作るDVDマガジン「No1 in Heaven」が、かつてガロ
系の漫画家さんたちの作品まで収録していた自販機本などのエロ本に近い猥雑さ
と勢いまかせのパワーを持っていて、久々に雑誌ならではの雑食性の楽しさを感じ
ました。

 また、豆本作家・赤井都さんの新刊で豆本入門書「豆本づくりのいろは」の発
売にあわせて、赤井さんほか豆本作家さんたちの手作りの豆本が100円でお求め
いただけるガチャポンを12月初旬から一ヶ月くらい設置します。豆本を身近に感
じて欲しいという作家さんたちのご厚意による、ワンコインのお楽しみなので、
この機会にガチャポンをやってみてください。

 文字数もつきてきたようなので、それでは、このへんで。みなさん、ごきげん
よう。

〈なかやま・あゆみ〉中野タコシェ勤務。
タコシェ http://blog.taco.shop-pro.jp/

------------------------------------------------------------------
■全著快読 編集工房ノアを読む   北村知之
(11)不幸な人の友だちであろうとして
-------------------------------------------------------------------
島京子『竹林童子失せにけり』(一九九二)
竹内和夫『幸せな群島 同人雑誌五十年』(二〇〇七)

 平凡社ライブラリーの『白楽天詩集』を繰っていたら、去年まで働いていた職場
の従業員食堂の献立表がはさまっていた。八月一日は牛肉の柳川風とわかさぎのフ
ライとレンコンのきんぴら、二日は鮭のチーズ焼きとみそ田楽となすの南蛮漬け、
三日はいわしの蒲焼きとたけのこの土佐煮とアスパラベーコンとなっている。ただ
休憩時間にはどれも売り切れていて、毎日きざみうどんやそぼろ丼なんかをもそも
そと食べた。夏のあいだ、鞄の中に武部利男訳の詩集がはいっていた。

 島京子『竹林童子失せにけり』の末に、「ある中国文学者の死」がおさめられてい
る。「武部利男さんは、六十歳までやったら生きれるやろ、と言っていたが、六十ま
で四年余を残して生涯を終えた」

 一九八一年六月の『VIKING』366号は、武部利男の追悼特集が組まれた。その
年の正月、武部から竹内和夫に宛てた年賀状には、「ことしは酉どしですが、うちの
ハトも、セキセイインコも、ダルマインコも、にわにくるスズメたちもみんなげんき
です」と書かれていた。一時期、武部と『VIKING』の編集・発行人を務めた竹内は、
追悼文のなかに白楽天の訳詩をひいた。

きたの はなぞの
きたの その はるかぜ ふいて
はなばなが つぎつぎ ひらく
すぐ ちると しって いるから
いちにちに さんど よど くる
はなの した おさけは あるが
つぎかけて やはり ためらう
わが ともは せんりの かなた
さあ のめと いう やつが ない

 元版の『白楽天詩集』(六興出版)には、吉川幸次郎の帯文があり、「白楽天という
詩人は、不幸な人の友だちであろうとして、誰にでもわかる言葉で詩をつづること
に努力した」と書かれているらしい。

「カンジがだいきらい」だといった中国文学者のカナばかりの訳文を読んでいると、
冷房のききすぎた食堂と白湯に浸かっているようだったうどんを思いだす。

〈きたむら・ともゆき〉
1980年生まれ。海文堂書店勤務。

===============================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ 」(毎月4回発行)
■ 発行部数 4700 部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の執筆者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで kawasusu@nifty.com
■ HPアドレスhttp://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
==================================================================














作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム

[書評]のメルマガ vol.432

■■------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ   2009.11.17 発行

■         vol.432
■■  mailmagazine of book reviews  [ 我が道を歩む 号]
■■------------------------------------------------------------
[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。週末は広島とわめぞへ。
★短期集中連載「なぜ、フリーペーパーなのか」
 →全国各地のフリーペーパー発行者の「生活と意見」をお聞きします。
★「関西古本女子だより」頓花恵(トンカ書店) 
 →大阪と神戸の「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「音を探してページをめくる」貴島公
 →音楽サイト「モノノフォン」の主が、音とテキストの関係を考察する。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

-------------------------------------------------------------------
■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
-------------------------------------------------------------------
★今週末は広島で本イベント
 11月7日(土)、8日(日)の2日間は、広島で「お好み本ひろしま2009」
が開催。一箱古本市、路面電車イベント、北尾トロトーク、湊かなえトークなど
盛りだくさんの内容です。南陀楼は6日(金)19時に前夜祭として行なわれる
倉敷〈蟲文庫〉トークと、7、8日両日の岡崎武志さんとのトークに出演します。
もちろん、一箱古本市でも本を売ってます。広島のみなさま、ぜひおいで下さい。
http://www.bookrainbow.com/okonomi/

★今年最後の「外市」
第17回 古書往来座 外市 〜軒下の古本・雑貨縁日〜
南池袋・古書往来座の外壁にズラリ3000冊の古本から雑貨、楽しいガラクタ
まで。敷居の低い、家族で楽しめる縁日気分の古本市です。2009年度、最後
の開催になります。

2009年11月7日(土)〜8日(日) 
雨天決行(一部の棚などは店内に移動します。)
7日⇒11:00ごろ〜19:00(往来座も同様)
8日⇒12:00〜18:00(往来座も同様)

古書往来座 外スペース
東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階
http://www.kosho.ne.jp/~ouraiza/

メインゲスト
BOOK ONN(オンライン)http://www.bookonn.com/
文壇高円寺(荻原魚雷)いつもより出品量を増やして参戦!!
http://gyorai.blogspot.com/

なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/

---------------------------------------------------
■短期集中連載 なぜ、「フリーペーパー」なのか
(5)やむにやまれず動いてみた。 上原 敏(『フリーマガジンSCHOP』)
----------------------------------------------------
 みなさん、こんにちは。名古屋でSCHOP(スコップ)というフリーマガジン
を発行している上原といいます。「あなたの知らない名古屋を掘り起こす」をテ
ーマに、2005年2月に家内制手工業で開業後、一部工場制手工業に移行して早
3年。いろんなご縁により、今回この場に登場させていただくことと相成りま
した。

「なぜ、フリーペーパーなのか」

と、びゅーんと飛んできた玉をカキーンと気持ちよく振りぬきたいと思いつつ、
キーボードの前ではや5分。

「この連載をお読みになっている皆さんにしてみれば、お馴染みの背景、理由
ではないのかね?」という疑心暗鬼に包まれて、そのまま、背後で鳴ってる
13th floor elevatorsの2nd『EASTER EVERYWHERE』1曲目「SLIP INSIDE THIS
HOUSE」に意識をうずめそうに。とはいえ、第三の眼は未だ開かず。そう、自分の
中には「疑心暗鬼」という忍び寄るささやきこそが、まず「フリー」という選択
になったのだと思えます。それは、『ORDINARY FUNERAL』の大嶋さんの語る「気軽
さ」に直結する心的葛藤だと思いますが、「これで500円もとるの?」って認識
の裏返しで、モノの価値と対価のバランスについて、「そのモノにふさわしい価値」
「いや、そんなものあるの?」って揺らいでるためにとりあえず棚上げしちゃっ
たってのが真相なんでしょう。自腹切ってるのに、この有様。

 ただ、自分にとって「フリーかどうか」という点よりもむしろ、「この眼前の面
白い状況、現象がただ忘却されていくのを見過ごすことができない!」って焦燥感
の方が重要だったし、幸いなことに、ハードコアちっくに筆を構えて「何者かにな
る」なんて強い自意識も溶解し、多少、衝動にスーサイドする自分を傍観できる齢
も重ねてしまって、わずかの小金を稼ぎ出す身として「棚上げ、上等!」って軽く
いえちゃった、侘しさもあるでしょうね。

 名古屋って、日本の製造業の基盤地域で、生活にもコストパフォーマンスを重
視する傾向があるので、オルタナティブな文化を育みにくいエリアではあると感
じるんです。でも、その環境そのものがクリエイションには相応のストレスを与え、
リアクションを期待しない孤高のアーティストが生み出され、結果的に秘匿され
てきた歴史もあると思います。

 とはいえ、関西にはエルマガジンがあり、全国ベースでもマガジンハウスのrelax
なんて素敵な雑誌があって、名古屋には、ない。そういう土地柄ですからなくて当
たり前なんですけど、ない。

「え? 何でないの?」って思って数年を過ぎると「まずいでしょー」ってなりま
せん? 名古屋のオルタナティブな文化をかなりバックアップしている新栄今池界
隈の人々も高齢化が進んでる(まだまだ元気過ぎるくらい元気ですが)のに、明ら
かに団塊ジュニア世代以降の支持力や発信力が落ちてる。そんなわけで、疑心暗鬼
と仲良くするのは一旦幕引きにして、スコップが世に出ることになったワケです。

 あ、それじゃ「なぜ、ペーパー?」に答えてないですね。簡単に言うと、フェチで
あり、メディアの差別化だと思います。編集された1冊の本には、ディテールがあり
物語があり質感があり体験がある。だから、「残すべき記録や景色は紙で。それ以外は
WEBで。」と使い分けています。

 スコップは現在、主に4人のスタッフで製作していて、皆、本業をやりつつ手伝
うスタイルです。企画・取材・編集・営業、企画補助、表紙デザイン、レイアウト
デザイン・WEB運営という分業体制で「季刊」を標榜していますが、夢中で遊んで
ると陽が暮れちゃった子供みたいに日々が過ぎ行き、今年は1冊しか出せてないと
いう状況です。(南陀楼さんにも執筆頂いたミニコミ『そうぞうしい本』発行、トラ
ッシュカルチャーマガジン『TRASH-UP』最新号の名古屋インディーズミュージック
に関する試論「オルタナゴヤ 〜まだ暮れない黄昏とまだ明けきらない夜の間で〜」
の執筆など、いろいろとご縁ご協力頂きました。すいませんと同時にありがとうご
ざいます。)

 発行部数は、3000部。開始当初は、反響は正直言ってなかったですね。フリーペ
ーパーって、読者を選ばないけれども、読者に金銭的負担を強いない分、読み捨て
られやすいですから。でも、長く続けていると、取材や配布を通じて得られる交流
や縁で徐々に反響が連鎖していく。紙で発行しているから、手から手へ渡ることも
あって、意外な人が読んでいたりで、勝手に旅してくれる。これは利点だと思います。
 
 さすがに4年も経過すると、疑心暗鬼が「おまっとさん!」とばかりに顔を出す
ので、奴の裏をかきつつ、真剣に遊んでいきたいものです。「名古屋って何か面白い
ことないの?」って思ったら、「あ、そうそう」とうちのWEBをチラッと覗いてみて
もらえると嬉しいです。地方も案外なかなかですよ。

〈うえはら・さとし〉
平日夜間休日限定編集者兼ライター。京都出身。名古屋に転居後、2005年フリーマ
ガジンSCHOP(スコップ)を創刊。本を通して街で遊ぶイベント『BOOKMARK NAGOYA』
の実行委員としても活動中。

フリーマガジンSCHOP(スコップ) http://schop.boo.jp/

---------------------------------------------------
■関西古本女子だより  頓花恵
(26)今昔の記憶
----------------------------------------------------
 阪神大震災以後、神戸の下町は大きく変化したといいます。新たな都市計画を元
に区画整理が行われ、「昔ながら」の土地は大きく消失しました。

 そんな中、残された下町の佇まいを満喫しようというところから発足した「下町
レトロに首っ丈の会」。月に一回、下町遠足ツアーという下町散策案内を催していて
商店街や裏路地の喫茶店に入り、お昼にそばめしを食べ、立ち呑み屋さんでちょっと
一杯。地元の看板絵師さんやお面作家さんによるお教室なども開かれます。

 またこのグループは手の平サイズの『下町レトロ地図』も発行していて、通常観
光マップには掲載されないような小さなお店や銭湯、定食屋さんをずらり紹介。町
に生活する人と同じ目線で作られていて「生きた神戸」を感じさせられます。

 先日、個人的に午前中ツアーをお願いしました。横溝正史の生誕の地から出発し、
説明を受けて新たに知った三菱重工や川崎重工といった工業港とそれに伴う地域の
人々との密接な関係。駄菓子屋さんを梯子して100円分のお菓子をじっくり選び、
未だ現役ゲーム機テーブルの喫茶店でレモンスカッシュ。
 
 地図を片手にさらなる神戸を求めてぶらり探訪、地域の人に話を伺う糸口になる
かもしれません。
 
 かつて神戸のトーアロードにあったコスモポリタンホテルを住まいとした西東三鬼
の『神戸・続神戸』は戦中戦後の粋なモダン文化を思う存分味わえる一冊。謎のト
ルコタタール人や一癖二癖もあるエジプト人、ドイツ人水兵との交流。斬新、アナ
ーキーな俳人の生活は映画のような国際都市と深く繋がっていて、洒落が利いてい
て魅力的です。

 変貌する町の記憶と風景を少しでも留めていたいと町歩きしながら出会う小さな
発見が無性に嬉しくなるのです。

〈とんか・めぐみ〉神戸元町にてザックバランな古本屋「トンカ書店」を営業中。
イベント案内: 
11/24〜11/30 ノブヨシキタイ 作品展「ハイヌウェレ」
12/1〜12/25 絵本即売会「コミュニケエホン」
12/18(金)20:30より 「クリスマス・ボードゲーム大会」
12/19(金)20:30より 「オザキシュウヘイ シタールLIVE」   
詳細はHPまで

トンカ書店
650-0011 神戸市中央区下山手通3-3-12元町福穂ビル2D
078-333-4720
http://www.tonkabooks.com/

---------------------------------------------------------------------
■音を探してページをめくる  貴島 公
(18・最終回)メモ・フロム・ターナー
---------------------------------------------------------------------
片岡義男『ぼくはプレスリーが大好き』角川文庫、1974年3月 原著1971年

 手元にある角川文庫版のあとがきによれば、この本の原著は、1970年の夏に書
かれ、1971年に三一書房から出た。その後、『音楽風景 ロックというアメリカの
出来事』と改題されて1991年にシンコーミュージックから、『エルヴィスから始
まった』と改題されて1991年にちくま文庫として、再刊されているが、現在は絶
版もしくは品切れ状態であるようだ。内容を正確に表しているのはちくま文庫版
の題名だけど、客観的にすぎる。『音楽風景』では音楽が流れている風景を描写し
たもののように受け取れるし、補うように付けられている「出来事」がアメリカの
それに限定されていることにも躊躇する。当時の風潮に対してカウンター気味に付
けられている(から後に改題されることになるのだが)ものだけど、「ということは
いったいどういうことなのだ?」という著者自身が抱えた問いから読み始めること
ができるという点で、「ぼくはプレスリーが大好き」という最初の題名が最も秀逸だと
思う。

 手元にある角川文庫版は、片岡義男と言えば、の赤い背表紙ではない、のだが、
出た当時に買ったものでもない。かなり経ってから、角川文庫大量投入によるブー
ム(あまり本を読まない弟が何冊も本棚に並べていたのを思い出す)も過ぎ去った
頃に、古本屋の軒先に置かれた均一台で見つけた。片岡義男の名を知ったのは、や
はり角川文庫で出ていたビートルズの訳詞集、そしてジョン・レノンの1970年のイ
ンタビューをまとめた『ビートルズ革命』の翻訳者としてで、ブームよりは前なの
だが、一方で既に『ロンサム・カーボーイ』がパイオニアのカーオーディオのCM
に流用されていて、お洒落でアメリカンな作家というイメージがあった。FMでや
っていた「きまぐれ飛行船」もたまに聴いていたものの、そのイメージを覆すこと
はなかった。そして軽やかな恋愛小説の名手としてのブーム。いろんな意味で無縁
だった。「宝島」誌は読んでいたけど、JICCに移ってからのもので、晶文社から
出ていたときの深い結びつきについては知らなかった。だから、手に取ったのは均一
台で、音楽について書かれているのならまぁ読んでみよかといった軽い気持ちからだ
った。読み始めてすぐ見て見ぬふりをしていたことを後悔した。

 エルヴィス・プレスリーがどれだけ良くて、そんなエルヴィスをどれだけ好きか
ということを綴ったもの、ではない。プレスリーが登場し、熱狂的に受け入れられ
たということの背景と意味に、出来事や言葉を丹念に拾い集めることで、少しずつ
迫ろうとする試みだった。角川文庫版のあとがきで、その作業について、「ぼくとい
う個人にとってのごく個人的なメモ」をつけることだったと著者は書く。全体を予
想しないで、即興的に書いていったものだとも。ここには、ボブ・ディランやジョ
ン・レノンからフランク・ザッパやNRBQまで、おびただしい数のミュージシャ
ンの発言が書き付けられている。ひとつひとつ明示されてはいないけれど、雑誌の
記事から採られたものだ。背景をたどるための歴史叙述についても、多くの本を元
にしていることがあとがきに記されている。しかし、それらはあくまでも自分の経
験を探るための「個人的なメモ」なのだ。でも、それを「つけた」ことの責任は取
るという穏やかな気概がある(そのあたり「勉強」とは少し異なる)。

「371-1-」という同文庫ラインナップにおける片岡義男の著作の一冊目であること
が示されているこの本を読むことで、片岡氏の評論を読むことを覚えた。自分の経
験に探りを入れながらメモをつけ、メモをつけながら考えるという作業は、『音楽
を聴く』など、その後の評論でも行われている。片岡氏の評論は、音楽に限ったも
のではないけれど、この作業は、音楽という言葉にならないものについて書くこと
にとても合っている。背景や歴史をたどらなくてもいい。それはそうすることが必
要だと思ったらやればいい。重要なのは、思い出話や自慢話ではない、(自分の)経
験を、自分で探って、伝えるということだ。その実例をこの本は示してくれている。

 おまけ。ビートルズ語では長らく「シェアスタジアム」と表記されてきたアメリ
カの球場について、ここでは近年のMLB語と同じく「シェイスタジアム」と表記
されています。そのことをわざわざ言わないのがよいです。

〈きじま・こう〉説明業、趣味・読書と音楽鑑賞。
「音楽本について書きませんか」と南陀楼綾繁さんからお誘いを受けて始めた連載
は、今回が最終回です。最初は、音楽好きの邪道な視点による紹介を目論んでいた
のですが、後半、音楽について語ることのヒントをくれる本について紹介すること
が多かったように思います。音楽とテキストの関係については…ともかくとして。
語調も方針も定まらない連載におつきあいくださ(った方に限)り、ありがとうご
ざいました。

「モノノフォン」
http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/

---------------------------------------------------------------------
■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(78)仮式会社から株式会社へ
---------------------------------------------------------------------
『酒とつまみ』12号は、2009年9月18日午後、印刷所より納品された。また暑い
時期の納品だ。これは厳しいが、避けて通れない。

 大きなミスはないか。最新号の束を雑居ビルの3階まで運び上げていくとき、必
ず気になるものである。それで、だいたいは息の切れやすい私が先に梱包を開け、
パラパラとめくったりするのだが、今回は最初に、背表紙を見た。

 下のほうに、「酒とつまみ社」と印刷してある。この文字自体は創刊号から印刷さ
れていたものだが、ひとつだけ違うことがある。最初、名前の下に入れていた「(仮)」
という1文字が取れたのである。

 創刊号から11号まで、発行元は大竹編集企画事務所。背表紙に「酒とつまみ社」
と入れたのは洒落であって、事実そこに、(仮)と印刷して、これはなんですかと聞
いてもらえると、ええっとまあ「仮式会社」ということで、一応は後仮(あとかり)
っていうことなんですが、などと嬉しげに話したものである。

 それが、今、取れた。私は、奥付を見る。発行元は、株式会社酒とつまみ社とな
っている。編集発行人は、W君。
 創刊からちょうど丸7年経過して、雑誌はたったの12号までしか出ていないが、
大きなことが変わり、新しい時代になったのだと、はっきり思った。

 中身は、相も変らぬバカ話のオンパレード。前号からほぼ1年を経ての、ようや
くの刊行となった。

 銀座コリドー街の『ロックフィッシュ』に明るいうちから出かけ、まずは納品。
そしてみんなで、ハイボールで乾杯する。
 うまい。1年ぶりに出た最新号を祝うハイボールは、ことのほかうまかった。

 この12号を販売しながら、酒とつまみ社ではすぐに13号の準備に入ることにな
る。私の役割は、まず、自分の担当するページを滞りなく進めておくこと。それに尽
きる。時間がかかるのは『山手線一周ガード下酩酊マラソン』で、12号のときもひど
く時間がかかった。

 だから、まずはガード下。とにかくひと駅でも始めてしまわないど先が続かない
から、オータケを引っ張って、みんなで行こうという話になった。
 そして、まだ納品関連の仕事も全て終わってはいない9月下旬、W君、N美さん、
Sさん、私の4人は、連れだって代々木の駅へ降りた。
 さあ、ガード下マラソン、原宿を目指しますよお……。

 原宿へ向かう途中の住宅街を4人して歩く。ガードもなければ店もない住宅街。
まあ、しょうがねえや。と思いながら見上げると、きれいなきれいな月が出ていた。

〈おおたけ・さとし〉酒とつまみ編集長。
いつまでも飲み方というものを覚えられず、相変わらず、飲みすぎては具合が悪く
なるということを飽きずに続けています。先日も2日連続のトークイベントに参加
させていただいている間、緊張のため飲みっぱなし。トーク終了の翌々日の朝にな
って動悸が止まらないという怖いを思いをしました。
http://www.saketsuma.com

ブログ「『酒とつまみ』三昧」
http://blog.livedoor.jp/saketsuma/

---------------------------------------------------------------------
■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(88)新宿書房の巻 潰れずに頑張ってるベテランビル
--------------------------------------------------------------------- 
“日常の重層を探査する”新宿書房(社長・村山恒夫)は、千代田区九段北1ー8ー、
2、第2フクハラビル301号に居を。我が漫画屋から徒歩4〜5分。週1〜2回は通
う、アニメ声のおばちゃんが色っぽい(50代後半か)、「小諸そば」九段下店のすぐ
裏手。付近の主要版元は頭に入ってると増長してたが、まだまだ甘かった。本当は今
回、“気鋭の政治思想家”仲正昌樹の歴史的名著、『Nの肖像』の発行元で知られる、
双風舎の予定だった。が、急な冷え込みの中、浅草まで出張取材するのも面倒なので、
近場で済ませた(テキトー!)。

 5階建ての同ビル、外見は地味だが好感の持てる建物だ。4〜5階に大家さんが住
んでるせいか、清潔。定礎が昭和53年、つまり1978年とあるから、30年以上たつ訳だ
が、15年古いだけの我が三信ビルのオンボロ振りに比べると、いかに建物は綿密な維
持、管理が大切か痛感させられる。

 外見も中も白壁が基調。床や窓枠、各部屋のドア、変電設備等はこげ茶色。よくあ
るコントラストだが、両者共によく磨き上げられてるせいか、キュートだし廊下も狭
いのに、閉塞感を抱かせない。ただここまで神経質だと、退去する際に敷金をめぐっ
て、一悶着あるかもな(推測)。弱点はエレベーターがない点。家賃はかなり安い可
能性。70年に西新宿で設立されて以来、新宿区と千代田区とで移転を繰り返している
同社だが、かつてはエレベーター付き事務所だったのでは?(06年に新宿三栄町から
同ビルに越して来ている)。

 今、一番売れない分野の本を出してる版元の1つ。『どぶろくと女』(阿部健)、
『女湯に浮かんでみれば』(堀ミチヨ)、『ガルシア・マルケスひとつ話』(書誌コ
マンド)、『メコンデルターフランス植民地時代の記憶ー』(高田洋子)…愚書はな
さそうな近刊ラインナップだが、同時に店頭で見たとしても、身銭を切って買う程の
訴求力もない。そんな中途半端さが、出版物全体に漂う。桜映画社ってトコと関係あ
るらしいが、「まあよく潰れずに頑張ってますね!」と、求められもしないのに、エー
ルを送りたくなる。

 筆者にとっての新宿書房は、何と言っても『住所と日付けのある東京風景』(冨田
均)の版元様だ。この1冊は圧倒的で、『エイリアン・ネイションの子供たち』(野
崎六助)や『正直エビス』(蛭子能収)は即売り飛ばしたが、未だに大切に保存。に
しても冨田均、いい本出してるのに、ちっとも売れっ子にならない。人格に問題があ
るのか(仲正昌樹ほどじゃないだろうが…)、当人にその気がないのか…(下手な詩
のせいとも思えない)。

 70年代から生き残った人文系版元は、団塊世代の老化に伴う趣味の変化に合わせ、
歴史、旅、健康、福祉等に刊行物をシフトして来たが(現代書館はその筆頭)、新宿
書房はその気もなく、かたくなに我が道を歩んでる感じ。んなんで著者に印税払えて
んですか?(右文書院と一緒にして済まない)。

 詳しい事情は知らないが、前の大戦末期、ソ満国境に取り残された(関東軍主力部
隊は、家族共々さっさと逃亡後)、現地召集された老兵からなる、アリバイ的捨て石
部隊のように、同書房が見えなくもない(向かって右隣の九段第2勧業ビルには、通
称“全抑協”、つまり財団法人・全国強制抑留者協会も入居)。  
 
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)、『出版業界最底辺日記 エロ漫
画編集者「嫌われ者の記」』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊 俺が踏みつけ
た映画・古本・エロ漫画』(右文書院)。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄
金時代』なる恥ずかしいタイトルとカバーの新刊が、アストラから好評発売中。
なお、この連載に関しての批判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(た
だし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

========================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ 」(毎月4回発行)
■ 発行部数  4692 部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の執筆者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで kawasusu@nifty.com
■ HPアドレスhttp://www.shohyoumaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
==========================================================

作者:shohyou

更新日:

このブログのホーム