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トップ > マクドナルド > マクドナルド - 人気ブログ(Blog)検索結果詳細 (2009年1月7日 6時)

コミュニケーション・リペア:会話共同体を維持するためのトラブルシューティング

英会話に対する誤解のひとつに、「単語、文法とも所定のレベルに達していないと話せない、だからもっと勉強してから会話の練習をしよう」というものがあります。しかし、これはある意味では「いい加減」に進められる英会話の実態をご存じないために、ターゲットをむやみに高いところに設定していると言わざるを得ません。実際の英会話は、互いに助け合いながら流れを作っていく「会話共同体」により行われるものであり、一方が詰まれば、相手は助け舟を出してくれたり、あるいは言葉を引き取って、「つまり、こういうこと?」などと未完の部分を補ってくれるものです。ですから、本当は、そこそこの英語(中学程度)で十分対応できるのです。

例えば、「どの本が一番よかった?」と聞かれた場合に「ハリー・ポッター」と答えようとして、ど忘れしたとすると、こんな感じで助けてくれるものです。ただ、そのためには、ご覧のとおり、話し手自身、言葉を換えて「それ」を形容しながら相手の助けを待つのであり、それなりの「自助努力」が求められます。

A: So you like fantasy and adventure books. Which book did you like best?
B: Er...the famous one...it's a huge best seller world wide.
A: Best seller, hmm.
B: It's about a boy, a boy who is a magician. Does magics.
A: Magician? Like pulling out a rabbit from a hat?
B: No, no. Mmm, fights against a bad gay, using magic.
A: Oh, that's Harry Potter.
B: Yes, Harry Potter!

このように会話では、片方が言葉に詰まったりして会話共同体のメンテナンスが必要となった場合、共同で修繕を行うのであり、こういったトラブルシューティングを指して、専門家たちは、「コミュニケーション・リペア」と言ったり、「コミュニケーション・ストラテジー」と呼んだりしています。

普通に英語を話す人々は、意識しているかは別として、英会話のメカニズムを念頭に置きながら、自分の発言の流れ・全体としての構成を示す「節目での標識」をどう使うのか(ロジック)、会話共同体の参加者として共同作業をしていることをどうアピールし続けるのか(ディスコース・マーカー)、会話共同体にほころびが生じた場合にどう修理するのか(コミュニケーション・リペア)という問題を次々処理しているわけで、トラブルシューティングないしコミュニケーション・リペアは、英会話能力のサブスキルの一つとしてそれなしでは済まないものと位置づけられます。

だからこそ、CEFR(ヨーロッパ共通参照枠)の前身である、Waystage, Threshold, Vantageの解説書では、人々が言葉を手段として行っていること (what people do by means of language) を類型化する中で、コミュニケーション・リペアを独立の項目として立てているのです。

例えば、のちのち CEFR の A2 になる Waystage というレベルでは、コミュニケーション・リペアとして以下の10の類型を挙げています。

1)わからないと言う → Sorry, I don't understand that.
2)全体を言い直してもらう → Sorry, can you say that again?
3)一部を言い直してもらう → A: My boyfriend always carry a huge xxx. B: Sorry, a huge what?
4)説明を求める → Sorry, what is X?
5)確かめる → Sorry, did you say, X?
6)スペルを言ってもらう → Can you spell that?
7)書いてくれと頼む → Can you write that down for me, please?
8)どう言ったらいいのかわからないと言う → I don't know how to say it.
9)助け舟を求める → I don't know the English word. In Japanese, we say...
10) もっとゆっくり話してくれと頼む → Can you speak slowly, please.

コミュニケーション・リペアに関しては、最低限この10のスキルを身につけていないと、basic command of the spoken language(話し言葉を運用する基本が身についていること)を要求する A2 レベル(ケンブリッジ英検では KET) をクリアできないということでもあります。

これほど大事なスキルだというのに、学校ではきちんと教えていないようで、中級と上級レベルの中学生とネイティブスピーカーをそれぞれのグループに分けた上、その中で会話をさせ、内容を分析した研究(Junko Negishi. "How do Beginners of English Develop Their Oral Interaction skills")では、中級レベルの中学生だと、詰まってしまうと以下のように、I'm sorry. の応酬になってしまうようです。

A: Ah!...Mmm... Er?(当惑しながら)I'm sorry.
B: I'm sorry. Harry Potter.
A: I'm sorry.

共に行き詰まっており、会話共同体の存続危うしという意識はあるものの、トラブルシューティングの道具として I'm sorry. しか教わっていないがゆえの「悲劇」に終わっています。

この点は、上級者でもそうは変わりがなく、以下のようにせいぜいが "I can't explain" を付けている程度で終わっています。

A: Cold? (うなずく)Why don't you like cold?
B: Mmm...Ahaha. I'm sorry I can't explain.

この調査は、中級レベルの中学生12名、上級レベル12名、ネイティブ12名というグループに分けて行われていますが、ネイティブグループは一切「謝る」という類型に属する表現を使っていません。察するに会話が行き詰まるような場面がなかったか、あったとしても、Ah, I forget the title of the book; It's at the tip of my tongue but can't remember it. などの Sorry 以外の言い方によるトラブルシューティングをしたのでしょう。

ここでは中学生の例を取り上げましたが、自分が見聞きしてきた範囲では、社会人の英語もそうは変わりません。基礎的な英語力のある人の場合、英会話のフレーズ集を買ってきて暗記すれば、それで英会話ができるようになると思い込んでいる方がいらっしゃいますが、実はそうではなく、上で述べたように普通に英語を話している人々は、英会話のメカニズムを念頭に置きながら、On the other hand. などを使って自分が話をどう組み立てているのかを示し(ロジックの提示)、Uh-huh, I see. などを使って会話共同体の参加者として共同作業をしていることをアピールし(ディスコース・マーカーの挿入)、Sorry, I'll try to say that again. などを使ってトラブルシューティングを行っている(コミュニケーション・リペア)のですが、こういったスキルは、フレーズ集を買ってきて「何を言うのか」を覚えることでは身につきません。「どういう場面で、どういう言うのか」をおさえる必要があるのです。自分の経験で言えば、会話では、単語・文法・会話フレーズといったWHAT の問題より、どういうタイミングで、どう言うのかという HOW の方がものを言います。

考えてみれば、英語でコミュニケーションを楽しみたいという方の多くは、実は受験英語のおかげで WHAT については十分なはずです。そうとすれば、このように英語の基礎ができている人は視点を変えて、HOW についての問題意識をもって英語を勉強するほうが効率的だと考えます。

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(完)ディスコース・マーカー

ディスコース・マーカー(会話の流れをコントロールするためのツール)の最終回は、主として話し手が発するマーカーの特集です。

1. And I’m pretty sure, he’ll get erm, er a er fatty liver sooner or later.

MEMO 話し手が発する er は、「何て言ったっけ、あれ」と言葉を探す間、沈黙が流れるのを防ぐ、一種の穴埋めで、「まだ話が終わったわけではありません。言葉を見つけるまで、ちょっとお待ちください」というメッセージの代わりになっています。特にこの例文のように思い出すのに手間取る場合、erの長めのバージョンであるermを入れたり、erを繰り返すようなことになります。

2. I’m not that stupid, you know. Anyway, what I was saying was, when...

MEMO この Anywayは一つの話から別の話に移るときによく用いられます。

3. OK. Anyway, we’ll need to continue this discussion.

MEMO このAnywayは、話が終わりつつあることをにおわせるツールです。

4. Go to a spa for a couple of days ‘cos (= because) it’ll give you a break. You’re about to burn out, obviously.

5. Oh, if there's anything I can do for you, just give me a call.

MEMO 急に思いついたこと、思い出したことを付け足すときに、「そうそう」という感じでOKを使います。

6.

So, how was your day?

So, what have you been doing today?

MEMO Soは「ところで」という感じで何か新たな話題を切り出すときによく使われるツールです。

7. So anyway, we decided to change our travel plans.

MEMO この So は、先行している話を受けて、「それでね、そこでね」というニュアンスで使われるツールです。

8. So, that's how we met. And after a while, we started going out.  

MEMO 話をしてきて、「というわけで」と、まとめをつけるときのマーカーで、終盤で使うものであることから、anywayとの相性が良く、実際、So, anyway, that's how we met. という言い方もよく耳にします。I was out of work for two years before I landed this job. But still (= on the other hand), there’s nobody who doesn’t have a hard time today.

9.

Well! You finally got here.


Well, it's such a pleasure to meet you after all those e-mails.

MEMO 言葉を発する前の間合いを整えるための Well で、強いて訳せば「やあ」「いやー」という感じでしょうか。次の 10 番の用例での「さて」「では」と紙一重の差です。

10. Well, shall we get started?

MEMO ここでの Well は口火を切るために使われており、「ここから話を始めます」という合図になっています。

11. Money is not a priority. Well, at least not for me.

MEMO 何か言い切ったところで思い直して、やや軌道修正を図るときに、この Well を使います。

12. It’s not what it used to be, you know.

MEMO この you know は「前とは違うんですよ、わかるでしょう」というニュアンスで使われています。相手が前はどうだったかなど知る立場にない場合は、you seeを使います。

13. Remember that guy we met at the restaurant, you know, the guy wearing a flaming red tie.

MEMO ここでの you know は対象となっている人を明確にするため、「ほら、あいつだよ」という感じで使われています。

14. I could hardly believe what I was seeing, you know.

MEMO 信じられなかったよ、自分の目を疑ったよという気持ち、「わかるでしょ」と同調を求めるツールとして使われています。

15.

A: If you’re visiting Madrid, be sure to visit this museum. Trust me. B: You see, I’d never got my boyfriend into a museum to look at art.

I can’t buy such an expensive thing. You see, I lost my job last week.

MEMO このYou see は You know に似ていますが、You know は「ご存じのとおり」と相手が知っていることを言うのに対して You see は、「ご存じないかも知れませんが、実はこうなんですよ」というニュアンスであり、相手が知らないことまでも守備範囲にしている点で違いがあります。


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(3)ディスコース・マーカー

前回と前々回の記事を通じて、英会話をこなすためには、単語と文法の知識に加えて Rules of Use つまり「どういった言い方」を使うべきかを心得た上、Rules of Discourse つまり「どういった話し方」をすべきかも頭に入れておく必要があると説明してきました。

この枠組みに即して言えば、ディスコース・マーカーの特集は、Rules of Discourse の世界に属する事柄で、「どういった話し方」をすると相手とのやり取りが円滑に行くかを知る上で重要なツールです。ただ、ここで取り上げているものは、もっぱら、通常のやり取りを維持するためのマーカー、言い換えれば会話共同体のメンテナンスに必要なものばかりです。

実質に踏み込んで話をふくらませたり、限定をしたり、あるいは、話にメリハリをつけるためのマーカーは機会を改めてお届けします。

▶ その他の聞き手の応答

11. A: How far is it to Chiba? B: Er, I don’t know. About fifty kilometers I suppose.

MEMO 何か質問された相手が発するErは、瞬間的なものながら、「質問は確かに承りました。ただ、答えを考える間、今しばらくお待ちください」という合図です。

12. A: Do you know her number? B: Let me see, it’s here somewhere.

MEMO 答えようとしているものの、ぱっと答えられないときに、言わば時間かせぎに使うフレーズの定番です。これとの対比で言えば、Wellは、何か意見を言おうとしながら言葉を探すという感じが強いと言えます。

13. A: How about doing lunch sometime, say, next week? B: OK. Now, how about next Monday?

MEMO このNowは答えるための「時間かせぎ」に使われており、Wellと取り替えることができます。

14. A: Did you know she got married to Jake, of all people? B: Now, who’s this Jake? I don’t know him.

MEMO このNowは相手の発言につきもっと情報が欲しいときに使います。この場合は、Wellと取り替えることはできません。

15.

A: You’re wearing your pullover inside out. B: Oh.

A: What time is it? B: Two o’clock. A: Oh, is it two already? I’ve got to get going soon.

MEMO 言われたことが意外なものであるときの、典型的なリアクションが Oh で、日本語で言えば、「えっ!」に相当します。

16.

A: I’m just back from a trip to Beijing. B: So, how was it?

A: I’m afraid she’s still in Paris. B: So, when is she coming back?

MEMO 相手が言ったことを受けて質問をするときは、たいてい、「それで?」「で、どうだった?」というニュアンスで、So を頭につけます。

17. A: The last train has gone. B: So, we’ll have to walk or look out for a taxi.

MEMO 相手の言ったことを受けて、「ということは」という意味で使う So です。

18.

A: So, you’re a medical doctor. B: Well, I finish my training in two years’ time.

A: Seems train service is suspended in both directions...on the entire line. B: It’ll take a couple of hours to get back to normal. A: Well, I’d say a couple of days.

A: What, she flunked all her courses? B: Well, yeah, I think, um, she didn’t fail in all her courses.

MEMO 相手が思っているであろうことと違うことを言う場合の前置きとして使われています。話の流れにつき軌道修正するときのツールと言えます。

19. Well, I think it’s unfair to brand him as incompetent.

MEMO 自分の考えをまとめる時間をかせぐためのWellです。

20. A: This is the Smith residence. B: Hello...this is Robert Roe speaking. I'm a friend of Mr. Smith. Who is this? A: This is the maid. A: Oh...Well, when do you expect him in?

MEMO このWellは、話題を切り換えるツールとして使われています。上では「あなたは一体誰?」「わたしはメードです」という、ひとまりのやりとりが終わったところで、帰宅時間という別件に移行するために使われています。

21. A: The world financial crisis seems to be over. B: Well, I don’t know really.

MEMO ここでのWellは、相手の言ったことに疑問を投げかける場合の前置きとして使われています。

22. A: He didn’t say that he was defecting to our competitor. B: Well, no one’s perfect.

MEMO ここでは単に何か言おうとするに当たって、「ええ、まあ」と間合いを取るために使われています。

23. A: Anyway, let’s keep in touch. B: Well, I’d better be going now.

MEMO この場合のWellは、会話の終わりを告げるツールとして使われています。


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きちんと話すために不可欠な CohesionとCoherence

「きちんと英語が話せる」とはどういうことかが論じられる際に必ず出てくる言葉に cohesion と coherence があります。英語の専門家は「結束性」だの「一貫性」だのとむずかしく表現しているようですが、要は、cohesion というのは「言っていることのつながり具合」であり、coherence というのは、「言っていることにまとまりがあること、筋道が通っていること」です。語句の形式的なつながり具合を見るのが cohesion なら、その語句を使って言おうとしていることどうしが辻褄が合っているかを問うのが coherence という言い方もできます。

★ cohesion と coherence

この二つがいかに大事な要素かは、言語運用能力の判定基準として今やグローバルスタンダードになっている CEFR でも、会話でのやり取りをこなす能力の一つとして、Coherence and Cohesion を以下のような形で取り上げていることにも表れています。(CEFRの全文はこちらです。その125ページにこれを取り上げた表があります)

まず、1人で英語圏を旅行し、レストランでの注文をこなせる程度の上のレベルである B1 のすぐ上の B2 すなわち、抽象的な議論のできるレベルの B2 レベル(ケンリブッジ英検のFCE)での要求水準はこうです。

B2 Can use a limited number of cohesive devices to link his/her utterances into clear, coherent discourse, though there may be some ‘jumpiness’ in a long contribution. 限定的ながら接続詞などを使いこなして、言っていることを明確で筋道の通ったやり取りとしてまとめあげることができる。ただ、発言が長めになると、つながり具合が悪くなることもある。

その上の「概ね実際に使う話し言葉をこなせる」C1、すなわちケンブリッジ英検の CAEだと、cohesion、coherence とも問題がないレベルにあることが要求されます。

C1 Can produce clear, smoothly flowing, well-structured speech, showing controlled use of organisational patterns, connectors and cohesive devices. Can use a variety of linking words efficiently to mark clearly the relationships between ideas. 明確かつよどみなく、構成のしっかりした発言をすることでき、その際、話を組み立てるための手段、接続のための語句、接続詞などを意図的に使い分けることができる。伝えようとしている観念が互いにどういう関係にあるかをはっきり見て取れるよう、様々な接続用の語句を使える。

当然、「何ら不自由なく話し言葉を使える」レベルであるC2(ケンブリッジ英検のCPE)だと、自由自在に cohesion と coherence を使える必要があります。

C2  Can create coherent and cohesive text making full and appropriate use of a variety of organisational patterns and a wide range of cohesive devices. つながり具合がわかり、かつ、筋道の通った発言をすることができ、その際、話を組み立てるための手段ならびに接続詞などを十分に、しかも、その場に見合った形で使いこなせる。

★ cohesion と coherence の異同

このように、cohesion も coherence も会話でのやり取りが形式的にも実質的にもまとまりがあることを要求する Rules of Discourse であることにおいて共通していますが、前者が形式的なつながり具合を見るのに対して、後者は実質的なまとまり具合を見るわけで、別物です。

ですから、cohesion は整っているけれど、coherence の側面での要件が満たされておらず、したがって、ナンセンスだということもありえます。例えば、以下の発言は、day, work といった形式的な共通項があり、cohesive ではあります。しかし、全体として、ナンセンスですから、coherent ではありません。

A week has seven days. Every day I go to work. Work is boring.

学生の作文にありがちですが、以下のように、いくら接続のための明示的なツール(下線部)をてんこ盛りにして入れても、もともと内容にまとまりがなく、coherence が欠けていますから、どうしようもありません。

Hanako got ready to do some shopping but as she went out of the door, what was a light shower was already a downpour. Hence she gave up on the idea of doing shopping. Then, she sat down to listen to some music...

逆に以下の例は、形式的には「つなぐ」ツールが一切ないのに、まとまりがあり、ひとまとまりのやり取りとしてつじつまがあっています。

A: That’s the telephone.
B: I’m in the bath.
A: OK.   

ただ、上の例は、一緒に住んでおり、やり取りの背景となる情報を共有している部分が大きいからこそ成り立ちうる珍しい例であり、通常の会話ではありません。通常の会話では、つながり具合を明示していくのが普通です。

★ cohesion と coherence を理解し、学ぶ重要性

冒頭で触れたように、cohesionとcoherence は「きちんとした話し方」の二大要素とでも言うべきものです。だからこそ、CEFRでもレベルの判定基準として使っているのであり、また、スピーキングテストの場合、IELTSでも、ケンブリッジ英検でも試験委員は評価項目の一つとして、この点に注意しながら受験生の英語を聞いています。

受験生にしてみれば、課題につき、1分強で自分の考えをまとめてから発表したり、他の受験生と課題につきうまくやり取りできれば、それだけで安心してしまうことでしょうが、やり取り自体、円滑であっても、「つなぐ言葉」がいつも and, but, or, so だけだと、C1レベルには合格できても、C2レベルではむずかしいと思われます。

事実、IELTSのことになりますが、元試験委員だったChris Greenという人は  Fluency & Coherence で、6以上の評点が取れる人と5までしか行かない人との差は、and, but, because, so 以外の接続詞を自在に使い分けられるかだと断言しているぐらいです。ケンブリッジ英検の場合も、スピーキングで接続詞をうまく使い分けるのは、加点事由となります。

(上で紹介したウェブページはIELTSのスピーキングテストを受ける人には必須の情報を含んでおり、おすすめできます。また質問に正面から答えるとはどういうことかを説明しており、ケンブリッジ英検のスピーキングテストを受ける人にとっても有用です)

いずれにしろ、「きちんと話せる」かは、第一に、然るべきツールで言ったことを形式上きちんとつないであるか、そして、第二に、その結果として、「筋道のとおったひとまとまりの話」になっているかにかかっています。

その中でも大事なのは、つなぐツール選びで、次に言うことを予告すると共に、既に言ったこととのつながりもぱっとわかるようなツールで、その場に合ったものを選ぶ必要があり、それを果たしていてこそ、筋道が通り、相手にもこちらの話の組み立てがわかるというものです。

英検であれ、TOEIC であれ、ジャパンローカルの英語検定で高いスコアを得ながら英会話となると自信がない人に共通しているの sociolinguistic competence (社会的言語運用能力)に対する認識の欠如です。社会言語的運用能力自体、前回とりあげたような Rules of Use と、今回取り上げた Rules of Discourse に区分されますが、外国人と英語でやり取りする場合、むしろ重要なのは、Rules of Discourse の方ではないでしょうか。Rules of Use に反しても違和感を持たれる程度ですが、Rules of Discourse に反すると話が通じないのであり、ことが深刻だからです。

次回以降、この Rules of Discourse に対する理解が深まるよう、合いの手という程度を超える、もっと実質的な意味合いのあるディスコース・マーカーを分類整理して、取り上げていこうと思います。


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ゴーマンな輩:プラグマティクスでの失敗

単語や文法ばかりに力を入れ、プラグマティクスというものに意を用いないで英語を勉強していると、自分でも気づかないまま、傲岸不遜な奴という印象を与えてしまうおそれがあります。プラグマティクスとは、社会的文化的要素を踏まえた上での、状況に見合った言葉の的確な運用のことですが、今回は、もっぱら形式としての言葉にばかり注目し、生身の人間が実社会で英語を使う際に考慮すべき点を無視ないし軽視している学校での英語を意識しながら、プラグマティクスがいかに大事かを見ていきたいと思います。

実は、橋内武著『ディスコース:談話の織りなす世界』(くろしお出版)という本を読んでいたら、「インターアクションの社会言語学」という章で、チュートリアル(イギリスの大学での個人指導)における日本人留学生とイギリス人学生の対応が比較されており、それがまさにプラグマティクスの素材としてうってつけだったので、思わずブログネタにした次第。

まず指導教員が、画家Xについて、

Are you familiar with the work of X?

と尋ねたの対して、当然、プラグマティクスがわかっているイギリス人学生は、こう答えています。

Yes, I saw her exhibition last week at Y Gallery. Although she is not my favorite, I know she has influenced my work, particularly in respect to Z.

注目したいのは、「Xの作品、どの程度知っていますか」という趣旨の問いに対する答えが Yes のひとことである点です。あとは相手の問いを起点に自分にとってXがどういう存在であるかの説明になっています。

一方、日本人学生、A, B の返答は以下のとおりです。

A: Yes, I am familiar with the work of X.

B: Yes, I am familiar with the work of X. She is one of my favorites. I have many books about her works.

著者の説明は、イギリス人の教師にとって学生は真理探究に向けて作業を共に進める同輩であり、教師の役どころは手助けであるのに、日本人の場合、もともと教師中心が当たり前で、その分、教師との距離もあり、また、教師からの指示待ちという姿勢に終始しがちであり、そこからぎごちない質疑応答が観察されるというものです。

しかし、私がびっくりしたのは、二人の Yes, I am familiar with the work of X. という答え方です。自分が言われたら、「何だエラソーに」と、カチンと来る言い方です。さきほど触れたとおり、普通に英語を使う人間の感覚からすれば、こういった場合は、Yes だけにとどめるべきであり、敢えて、I am familiar with the work of X. を加えるのは、(もちろん二人の間の空気や表情によっても左右されますが)字面から見る限り、傲岸不遜の輩です。

日本語的には、「Xの作品などご存じですか」と問われた場合、知っていれば、「はい、知っています」と答えるでしょうから、そういう視点からはこの英語も別におかしくないのかも知れません。しかし、英語感覚で言うと、このくどい答え方自体、「知っているさ、それがどうかしたの?」という、一種挑戦的なものと感じられるのです。母語の感覚を外国語にそのまま持ち込んでしまうために生ずる軋轢の種です。

★ プラグマティクスでの失敗

こういった具体的な言語の表現形式とは別に、そこでの状況に照らして、Aというつもりで言っている話し手の意図がそのとおりAとして伝わらず、Bとして受け止められるようなことはプラグマティクスの問題として知られています。とりわけ問題なのが、母語の感覚をそのまま外国語を使うときにも持ち込んでしまう例で、上で紹介した日本人留学生の返答ぶりもそうですが、次のロシア語の例もそうです。

Thomas という研究者がロシアで英語を教えていた当時の経験を紹介していますが、上の日本人の例とまるで同じです。ロシア人は、英語の Of course に相当する "konesno" をよく使うのだそうで、それがそのまま英語を使うときにも以下のように「転用」されてしまう結果、何だか妙な受け答えになってしまいます。

A: Is this a good restaurant?
B: Of course.

ロシア人は、Yes, it really is. という感じで使っているつもりなのでしょう。しかし、英語を使う人にしてみれば、「いいレストランでしょうか」という質問に対して、Of course. というのはプラグマティクスに照らして考えられる返答の「範囲外」であり、したがって「なんて馬鹿なことを聞くんだ」的なセリフに聞こえるという結果をまねいています。ロシア人の使った英語の言い方 Of course. が本人の意図とは違う結果をもたらしてしまっており、プラグマティクスの問題として取り上げられる代表的な例です。

つまりコミュニケーションと簡単に呼ばれているものを言語が社会において持つ独特の意味合いという視点から捉え直すと、人が言っていることを額面どおりに取ったものと、その状況において持つ具体的な意味合いとの間にずれが生ずることを踏まえた考え方であり、英語の知識としてのみ捉える受験英語の世界とはまるで趣が違います。

上で取り上げた Yes, I am familiar with the work of X. だとか、Of course. という言い方は文法上、何ら問題ありません。"know about English" という見地からは英語に違いありません。しかし、こうした言い方をした人の置かれた社会文化的状況に照らして考えると、つまり、"know English" という見地からすると不合格となります。なぜかと言えば、会話というのは単に情報/意見の伝達だけでなく、人間どうしが気持ちよくつきあうためのツールという役割も担っているのに、こうした答え方は、情報/意見の交換という限度では役目を果たしているものの、相手に違和感をおぼえさせ、「感じのいい人」と思ってもらえなくしている点、"know English" の域に達しているとは言えないからです。

もっといろいろな例を見て、このあたりを確かめてみますと、例えば、Analysis of Pragmatic Failure and College English Teaching というペーパーでは、二人の中国人研究者がこんな例を出しています。

Foreign Businessman: Thank you for accompanying me.
Chinese Host: Don’t mention it. It’s my duty to do so.

お供をしてくれ、なにくれと世話を焼いてくれた人に対してお礼を言ったところ、「どうぞお気遣いなく、仕事ですから」という返答が戻ってきてびっくりしたという例ですが、これなどは、たしかに筆者たちが言うとおり、プラグマティクスを踏まえた正しい答えは、My pleasure. でしょう。このままでは、「何をおっしゃいます。業務ですから」ということになり、「好きでやってるんじゃなえから、気にしなくていいってことよ」と言っているも同然です。「感じのいい人」と思ってもらえるはずがありません。

今度は、外国人の上司が秘書に対して、「ありがとう。助かったよ」と言っている場面です。

Manager: Thanks a lot. That’s a great help.
Secretary: Never mind.

ここでの秘書は相手が詫びたときに言う「どうぞお気になさらないでください」に相当する Never mind. を使っているので、相手もびっくりすることになります。何かの手助けをしたことで「ありがとう」と言われたら、「何でもありません。どういたしまして」ということで、これも My pleasure. で済ます場面です。ところが、場違いの Never mind. を使っていることにより、これまた(本人の気持ちとは違って)「いいって事よ」的な尊大な響きを持つ発言になっています。

次は、イギリス人の学生が Song Hua という名前の秘書に電話をするという例です。

English student: Hello, I’d like to speak to Song Hua, please.
Secretary: I’m Song Hua.

このペーパーによると、電話口での応答として中国ではティピカルなものだそうで、日本語でなら、「ソン・ファさんお願いできますか」という自分にかかってきた電話を取った場合に、「私、ソン・ファです」と言っている感じでしょうか。何であれ、英語的には、普通、こういった場合、Speaking. と応じるのが相場ですから、敢えて、I'm Song Hua. という一風変わった応答をすることで、「ソン・ファである、何の用だ」的な響きになってしまいます。

このとおり、英語特有の状況に見合った言い方をしていないがゆえに、妙な響きとなっており、言った本人は、知らないところでとんでもないマイナス評価をされる結果となっています。これがプラグマティクスのこわいところです。

★ プラグマティクスは教われるのか、教わらないとどうなるのか

言葉としての英語そのものと、英語の背景にある社会文化的事情を切り離して、「ああ、これは文化の違いによるものだからうんぬん」という発想をする人からすれば、ここで取り上げているようなプラグマティクスはひとまず英語の勉強が中級とか上級以上になってから別途取り組むべき課題と映るようです。つまり言葉が「できる」ようになれば、自然とこういうことが身につくということなのでしょう。しかし、私に言わせれば、こういったプラグマティクスの問題を形式的な言語表現と並行して学ばないと英語が「できる」ようにはなりません。単語や文法といった言葉の形式的側面を理解し、習得するのと同時に、その言葉が実際に使われる状況に応じてどういう意味合いをもって相手に伝わるかまでも意識できるようであって、初めて英語が「できる」と言えるものだからです。そうとすれば、単語や文法と並行して、英語を使う際のプラグマティクスにまで目を配った学習が必要だということになります。

実際、専門家の実証研究では、プラグマティクスは教えられることがわかっています。例えば、「ゆうべの食事、どうだった」という質問に対して、「盛りつけなどはよかったよ」という答えを通じて、暗に味の方がたいしたことはなかったと伝える手法につき、ネイティブとそうでない人との間での見解の食い違いが3割かた合ったのに、4年間の学習の後にはそういった食い違いが1割以下に減ったという報告があります。

また、Mane と Wolfson の共同研究では、アメリカ人が人をほめるときの言い方を700件集めて分類した結果、なんと85%が以下の三つのパターンでカバーされていることを発見しています。

1)何か(名詞)+ isまたはlook+(必要に応じて really) +形容詞

[例文] Your necklace is (really) beautiful.

2)I +(必要に応じて really)+ like/love +何か(名詞)

[例文] I (really) like/love your necklace.

3)代名詞+ is + (必要に応じて really)+形容詞+何か(名詞)

[例文] That's a really nice car.

これに、さらに以下の6パターンまで含めると、実に 97.2% がまかなわれます。

4) You + 動詞+形容詞+何か(名詞)

[例文]You have an adorable cat.

5) What (a) +形容詞+何か(名詞)

[例文]What a lovely cat!

6) Isn't +名詞句+形容詞

[例文]Isn't this handbag gorgeous!

7) You +動詞+ (a) (really) +形容詞+名詞

[例文]You did a good job.

8)You +動詞+名詞+副詞

[例文]You handled that situation very well.

9) 形容詞+名詞

[例文]Good job!

ということは、この9つのパターンをしっかり頭に入れた上、状況に応じて必要な言葉を補充すれば、誰でも、ほめるときの言い方を使いこなせるということです。無限にありうるパターンを詰め込む必要がないのです。

一方、プラグマティクスをきちんと教わっておかないと実害のあることがわかっています。単に相手に「おやっ」と思われたり、違和感を持たれる程度では済まないのです。

例えば、大学でのコース選定の相談に乗る教員と学生とのやり取りがネイティブとそうでない学生との間でどう違うかを研究した例では、英語の使い方がわかっている学生だと、自分なりの選択を指導教員に伝える際、I don't know how it works out but (どうなるか自分もわかりませんが、ただ、自分としては・・・)というふうに、自分を前に出さず、婉曲的な言い方を選ぶのに対して、プラグマティクスがわかっていない留学生は I will take...と、断定調のもの言いをすることが明らかになっています。そのぐらいだったら、まあ、留学生だから仕方がないかで終わる話ですが、Bardovi と Harlig という研究者による共同研究では、プラグマティクスから見て不適切な応答をする学生はそうでない学生と比べ、自分の志望どおりのコースに進める確率が低いと指摘されています。

ここまで状況に見合った言い方ができるか否かという視点からプラグマティクスを取り上げてきましたが、より広く言葉をきちんと使えるか、一般に受入れられているようなやり方で語句を連ねることができるかという視点まで取り込むと、こういった英語の知識プラスアルファの部分は、社会言語的コンテクストという側面だけでなく、書き言葉での語句の連ね方でも問題とされます。

この点、Kaplanという研究者は、様々な言語グループ出身の留学生が書いたおよそ700本のエッセーを比較対照したことで知られていますが、それによるとアラブ語系の学生は、やたら文頭に And や But といった等位接続詞を持ってくる上、従属節をほとんど使わないというクセのあることが指摘されています。もちろん、こういったクセは、自国語で書くときの流儀に由来するわけですが、英語のエッセーとして読み、採点する方にしてみれば、ただの手抜きとしか映りません。しかも、悪いことに、採点する方は、文法などの間違いについては比較的大目に見るのに、接続詞がきちんと使われているか、筋道だった話になっているかなどの文章を連ねるときのルールについては厳しいのが一般だとされています。してみると、書き言葉はもとより、話し言葉でもプラグマティクスがわかっていないと、本人の知らぬ間にマイナス評価をつけられてしまうということになります。

★ さいごに

プラグマティクスがわかっていないと、話している相手に違和感を持たれたり、あるいは大学などの人生の岐路で不利益を受けうること、その一方、プラグマティクスは教わることのできるスキルであることを見てきましたが、それでは、わが国の英語教育では、どういった位置づけを与えられているのでしょうか。

気になって高校英語の教科書をのぞいてみました。すると、Chat Room というコーナーがあり、「学校の図書館で、由美はおもしろい本を見つけました。その本の写真を見ながら Bob に話しかけます」という状況設定を示した上で、こんな形で会話を始めています。

Yumi: Bob, look at this picture. What is it?
Bob: It's a rabbit.
Yumi: To me, it looks like a duck.
Bob: A duck? It doesn't look like a duck at all.
[以下省略]

この会話、アヒルの置物の写真を回転させると、ウサギの置物になるという落ちになっていますが、第一に、二人が基本的にフルセンテンスで話をしていること自体、不自然で、普通なら、 A: Bob, want to have a look at this? Now, what do you see? B: A rabbit? といった感じでしょうか。第二に、「これ何だと思う?」と答えを知っている人が相手を試す感じで言うときに、はたして What is it? という尋ね方をするのか疑問です。先生が生徒に聞くならわかりますが。

そもそも、写真を見せながら、そこに写っているものに言及するときは、What is it? (=これは何であるか?)はないだろうというのが感想です。結局、

See this figure? What do you make of this? (この写っているもの、これって何だと思う?)

といった感じで言うのが普通だと思います。

いずれにしろわずか数行の会話例ながら、プラグマティクスに配慮した形跡がありません。

高校の授業を全部英語でやれという話が進んでいるようですが、いくら授業が全部英語でもそのコンテンツが相変わらず現実離れしているというのでは、不毛の英語教育を固守してきたこれまでの仕組みと何ら変わることがありません。制度上、Garbage in, garbage out. である以上、日本語だったgarbageを英語に変えてどうしようというのでしょう。


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作者: hinata nhashi@alc.co.jp

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褒め言葉に Thank you. と返していいのか?

誰かにネクタイ、ドレスその他自分が身につけている物あるいはバッグや時計などの持ち物をほめられた場合、Thank you. と応ずるものでしょうか。

例えば、女性が同僚の男性社員に対して「それ、すてきなネクタイですね」と言ったとして、日本語では「ありがとう」とは言わないのではないでしょうか。どうなんでしょう。「いや、たいしたことないよ」「娘からのプレゼントでね」「保険のおばちゃんにもらっちゃってね」などと照れ隠し的なことを言って受け流すのが普通ではないでしょうか。これに対して、アメリカ人などは、すなおに Thank you. と応じそうです。ところが、調べてみるとこれがけっこう微妙なのです。

まず、Good Housekeeping という有名な女性誌のサイトにあるマナー/エチケット関連のQ&Aコーナーを見ると、「パーティーで誰かがあなたのシャツを見て、お世辞を言ってくれたとしてます。さて、あなたはどう返しますか」と状況を設定した上、以下の選択肢を挙げています。

1) Say, "Really? It's not my favorite."
2) Say, "Thank you. You're so nice to say so."
3) Say, "This old thing? I got it on sale."

みなさんはどれを選びましたか。正解は、二番目とのこと。Giving and receiving compliments is a talent worth perfecting. So show your appreciation and pleasure by acknowledging this compliment sincerely.(お世辞で褒めたり、それを返したりするのは、うまくなるに越したことはない、社会的能力の一つですから、こういった褒め言葉に対してはまじめな気持ちで言葉を返し、言われてうれしいということを表現しましょう)というコメントが付いています。せっかくいいことを言ってくれているのに、謙遜したり、卑下したりして、水を差すこともあるまいというのが回答者の姿勢のようです。いかにもアメリカ人という感じがし、納得してしまいます。

ところが、その一方で、ペンシルバニア大学で第二言語習得を研究している先生は、以下のように Thank you. と言うのは、アメリカ人が返す言葉としては、ティピカルではないとしています。

Most people believe when you’re complimented the appropriate response is “Thank you.” In fact sociolinguistic research has shown that for Americans at least that’s not the typical response. The typical reply is a deflection. “Oh, I got it at Lord and Taylor,” or “My mother gave it to me,” because to say thank you means you’re agreeing with the praise and there are socio-pragmatic rules that say you shouldn’t engage in self-praise.

たいていの人は、お世辞でほめられた場合、しかるべき応じ方が何かと言えば Thank you. だと思っています。ところが、社会言語学の分野での調査報告によると、少なくともアメリカ人にとっては、それが典型的な答え方ではないことがわかっています。典型的には受け流しているのです。「いや、ロード&テイラーで買ってね」「母親からのプレゼントでね」といった応じ方をしているのです。なぜかというと、Thank you. と言ってしまうと、相手の賛辞に同意することになりますが、そこに自分で自分のことなどほめるなという社会言語のルールが働きかけるからです。

このことは、Herbert という研究者が1,000人あまりのアメリカ人大学生を対象に3年かけてまとめた調査からも裏づけられており、ほめられた場合に、それを素直に受入れる言い方で応じたのは36.5%どまりだったとしています。

しかし、こういうプラグマティクスの問題、つまり言葉プラスアルファの組み合わせがその状況でどう聞き手に響くかは時代によっても、状況によっても違う答えが出るので、むずかしいなと感じさせる側面があります。

例えば、アラブ首長国連邦の学生とネイティブスピーカーがほめられたときに、どういう英語の言い方をするかを比べた研究報告があり、そこでのネイティブの対応を見ると、決めつけるのはどうかなと考えさせられます。レポートは The Linguistics Journal というものに掲載された、Hessa Al Falasi. "Just Say “Thank You”: A Study of Compliment Responses というタイトルのもので、以下の状況でほめられた場合に、ネイティブがどう返答しているかを見てください。(ここでのネイティブは全員女性教員です)

✓ 「プレゼンテーションよかったよ」とほめられたのに対して

Really? I thought it was just ok.

と謙遜した一人を除いて、全員がすなおに受け止め、

Oh, thank you!

Thanks! I’m glad you enjoyed it.

と応じています。中には、

You have no idea how hard I worked for that!

と、さらに自分で自分をほめるような人もいます。

✓ ホームパーティーに招待したところ、ケーキをほめられたのに対して

10名中8名が

Thanks.

と言った上で、

Would you like the recipe?

とか

It’s a family recipe.

といったコメントを付け加えています。

✓ 同じくホームパーティーで来ている人のうち、誰かが、「あの時計、いいですね。このリビングに映えますよね」とほめてくれたのに対して

いずれも、コメントを加える格好で受け流しています。例えば、

It was a present from my daughter.

I bought it in Harrods.

または、単純に

Yes, I loved it when I bought it.

という格好で肯定的に受け止めています。

ということは、やはり相手に自分の持ち物をほめられたときは、Thank you. と応じることは少ないと言えそうです。

✓ 会社に新しいシャツを着ていったところ、同僚に「いや、よく似合っているよ。ブルーが実によく合うね」とほめられたのに対して

Thanks/ you made my day!”

と感謝の意を強めるようなコメントを付け加えたり、あるいは、

Is it really?

Do you think so?”

と質問で返したり、さらには、

I dunno, I prefer pink.

と否定する人もいたようです。そうかと思うと、

Oh, it’s my favorite color. Thanks.

と、すなおに受入れている人もいます。

時計をほめてもらったときは Thank you. が出てこないのに、こちらでは、Thank you. が登場しています。自分の持ち物と言うよりは、直接、自分がほめられているに等しい場合は、何か対応の違いを引き出すのでしょうか。

いずれにしろ、こうやって眺めますと、一概に Thank you. と言うのは少数派だと言い切るのはむずかしいようです。

なるほど、ほめてくれた相手の好意的態度に対してお礼を言いたいというのも人情の自然です。かと言ってそのまま「ありがとう」と言ってしまうと、自分をほめてくれた相手に同意する結果、自分を自分でほめたことになるという葛藤があるのも確かです。結局、これをどう社会生活上こなし、どう表現するかは、やはり文明人ならではの悩みと言うべきなのではないでしょうか。いずれにしろ、会話の場合、自分の言いたいことを言語で置き換えて外に発表すればいいというのではなく、さらに社会生活上のインパクト、つまりプラグマティクスをも加味しながらどう言うかまでも考える必要があることを改めて認識させられます。

ただ、こんなことを言っておきながら、人の着ている物や持ち物にコメントするもんじゃないという教育を受けたので、(滅多にありませんが)何かほめられたりすると、どう対応していいのかわからず、ついつい Oh, thank you. などと言っているような気もします。やはり Thank you. と返すのが人情の自然というものでしょうか。

ちなみに帰国子女の友人(女性)は、「Thank you. でいいじゃない。きれいな言葉じゃない」と Thank you 派の肩を持っていますが、冷然と Thank you for nothing. と言い放つタイプのお方でもあるので、Thank you. ってそんなにすてきだったかなと、いよいよわからなくなってきます。

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即効ビジネス英会話第5回:徹底解説

ポッドキャストでお届けしている即効ビジネス英会話第5回のビギナー向け徹底解説です。

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車を表に待たせております。どうぞ,こちらに。 We have a car waiting outside. Please follow me. 

(a) We have a car waiting.という言い方について

日本語でも「表に車を待たせてあります」と、あたかも自動車が人であるかのようなものの言い方をしますが、英語でも同じです。バリエーションとしては、以下のものをよく耳にします。ご覧のとおり、何か足すときは、to take you to [+場所]か、for youが多いことがわかります。

We have a car waiting.(車を待たせてあります)
We have a car waiting downstairs to take you to the hotel.(ホテルにご案内するため、車を下で待たせてあります)
We have a car waiting for you outside.
We have a car waiting that will take us to your hotel.
We have a car waiting out front to take us to the hotel.
We have a car waiting to take you to the Okura.

なお、こういった場合、取りあげられている car は言っている方にとっては特定の車であっても、言われている方はまだ見てもいませんから、identifiedされているとは言えず、つまり特定しているとは言えず、従って、the をつけることはありません。このことは、THATを入れてみると響きがおかしくなるのでわかります。

We have THAT car waiting outside.

THATはその車が相手にとっても既知である場合にのみ使えるわけで、ここでは、相手にしてみれば、未知の車であり、したがって、THATを使って「その車」とは言えないことを見て取れます。

対照的に hotel は言っている方も聞いている方も、予約が取ってある、「あのホテル」であることがわかっていますから、THAT hotel と言え、したがって、the hotel と定冠詞をつけます。

(b) Please follow me.をもっと丁寧にするには?

この言い方からPleaseを取り去ってしまえば、Follow me. という、要は命令形です。と言うことは、Please なんとかという言い方はとりあえず丁寧であり、問題はないものの、非常に丁寧だとまでは言えません。

そもそも英語の世界で丁寧な言い方にするためのポイントは直接的、断定的なもの言いを和らげることですから、やり方はいくつもあります。

その一つに would を使う方法があります。例えば、「私のあとについてきてください」と言いたい場合、Please follow me.を変形し、

Would you follow me?

とすることができます。このWOULDは意思・意欲を表すWILLを和らげた言い方ですから、Will you follow me? を一段と丁寧にした言い方に当たります。

これを更に丁寧にするためには、IF構文を使って、

If you would follow me?

という言い方にすることができます。IF構文を使うことで、「当然、ついてくるんだろうな」という決めつけではなく、「もしよろしければ」という格好の文にし、「飽くまであなたのご意思次第ですが…」というニュアンスを醸し出しているわけです。

なお、実際に口にする場合は、If you would follow me. だけで十分です。文書ですと、これでは未完成のセンテンスになってしいますが、ここでの場面は会話ですから、言われた方にとっては、そのあとに続くべき I will show you to the car. 等のせりふはいちいち言われるまでもないことだからです。

ここを出る前にお手洗いに行かれますか。 Would you like to use the rest room before we leave?

(a) この疑問文はどうやって作るのか?

YesかNoで答えてもらえる質問をするときは、まず助動詞、次に主語、そして動詞という順に並べて、疑問文であることがわかるようにします(つまり英語は普通、主語、そして次に動詞という順番が基本ですから、違った順番になっていれば、言われた方は「ああ、普通のセンテンスではないんだ」とわかる仕組みになっているのです)。

設例は、You would like to use the rest room.(あなたはトイレに行きたい)という事実をYes/Noで答えてもらい、確認しようというのですから、まず助動詞 would を先頭に出し、次いで主語の you、そして動詞の like を持ってきます。ここまでで、Would you like までの部分が完成します。

さらに動詞 like の目的語に当たる to use the rest room before we leave というTO不定詞で始まるフレーズを持ってきて、最後に疑問符をつければ、Would you like to use the rest room before we leave?が完成します。

(b) Would you like to use...という具合に to不定詞で受けるのではなく、usingと動名詞(動詞のing形)で受けることはできないのか?

確かに動詞 likeを使うパターンの一つとして、I like drinking wine.(私はワインを飲むのが好きです=私はワインが好きです)といった言い方をしますから、Would you like using the restroom before we leave. と言ってもよさそうなものです。ところが、実際には、would likeという動詞句のあとに来るのはto不定詞で始まるフレーズと相場が決まっています。

そもそもto use the rest room というto不定詞を使っているパターンとusing the rest roomという動名詞を使っているパターンの違いは何かと言えば、前者の方が仮定の話という色合いが濃いのに対して、後者は通常、実際に行われたこと、あるいは普段行なっていること、つまり現実のことがらとして取りあげる場合に使われることです。

そこで、would のような助動詞をつけて like の直接性がいわば薄められているようなケースでは、もともと「〜したいですか」を「〜もしかしたら〜したいのではないでしょうか」としているぐらいですから、そういった like を受けるのはある状況を想定している場合に使う to 不定詞の方が収まりがいいということになるのでしょう。

この点、人々が英語を実際にどう使っているかを調査した上でまとめられた Longman Grammar of Spoken and Written English によりますと、動詞 like と to 不定詞の組みあわせが現われるサンプルのうち75%に would が入っているとのことですから、「もしかして」「例えばの話」「飽くまで想像ですが」というニュアンスを醸し出したいときは to 不定詞を使うのが普通で、こういったケースでは動名詞は滅多に使われないということになるようです。


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作者: hinata nhashi@alc.co.jp

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基礎英語+ディスコース・マネジメント=英会話力

このところディスコース・マーカーを取り上げていますが、考えてみると、なぜディスコース・マーカーが重要なのかをきちんと説明せずじまいです。この種のマーカーが重要なのは、英会話を管理運用するスキルセットであるディスコース・マネジメントの要素だからです。となると、今度は、「ディスコース・マネジメントって何なの」ということになるので、改めて考え、まとめてみました。

なお、文中にある「英語では以心伝心が通用せず、基本的に何でも言葉にして明示するのが普通であることから、話を組み立てるための、What's more, As a result of that といった標準的部品を相手に対してこれだよと見せながら使うスキルが求められます」というくだりはディスコース・マーカーのことを指しています。

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英語を話せるようになるための最後のステップ:ディスコース・マネジメント

単語力も文法力も人並みにあるのに、どうも会話になると自信がない、駄目だという、あと一歩の学習者がおおぜいいます。言いたいことがあるのに切り出すタイミングがわからない、答えを考えているうちに話題自体が他に移ってしまう、そういう人たちです。なぜそうなるのかと言えば、英語の会話が「会話共同体」の設立に始まり、共同で運営され、これまた共同作業を経て解散されるというプロセスであることの認識を欠いているからです。教科書の会話例では、それぞれが大演説をぶっていたりしますが、実際の会話、特に日常会話は、各自がいわば不完全な部品を交互に組み付け、共同作業を通じて会話を完成させているわけで、会話共同体というものを観念できます。しかもそこでの公用語は相手への思いやり、気遣いまでもカバーしているコミュニカティブ英語です。こうした会話共同体の設立・運営・解散をこなす運用能力の総体すなわちスキルセットをディスコース・マネジメントと呼びますが、日本語で普通に会話ができる以上、英語の知識を身につければ英会話も自然にできるはずだという考え方は、このディスコース・マネジメントを考慮していない点で大事なことを見落としています。

ディスコース・マメジメントというものを考える必要、また、それを身につける必要があるのは、英会話の場合、日本語での会話の運び方とまるで違うからです。自分自身3歳の時から英語を話しているので(父が在英日本大使館勤務となり、ロンドンの幼稚園に入れられた上、毎週、Mrs Preeve という魔法使いのようなおばあさんが家庭教師で来ていました)、この違いを身をもって経験しています。例えば、英語圏では子供のときから、Don't interrupt me while I'm speaking. =「人が話をしているときに邪魔するものじゃありません」、Speak when you're spoken to. =「問いかけられたら黙っているものじゃありません」ということを徹底して教わり、ディスコース・マネジメントの要素である turn taking (会話での発言が厳格な交替制によっており、また、順番が来たら必ず発言しなければならないというルール)を叩き込まれます。同様に、What's the magic word? (ほら、願いごとがかなう、あの言葉、何だっけ)と、目上の人間によるしつけを通じて、Pleaseのひとことがコミュニケーションの根底にあることを教わります。こうしたことを通じて、会話では、相手への思いやりを心がけながら交互に発言して会話共同体を盛り立てるのが当たり前という感覚が身につきますから、何も言わずに沈黙モードに入るのは異常事態と受け止められます。「これより沈黙が数秒続きます」と相手に知らせず、つまり、Well, let me see...と断ったりせずに沈黙に入るのは、会話共同体の運営能力を欠く身勝手な奴という印象を与えるのです。

このようにディスコース・マネジメントを意識せずに会話をしようとすると相手に違和感を持たれてしまいます。その上、英会話の核心部分を担っている会話共同体の運営がうまく行かず、一往復程度の定型的やり取りで話が終わってしまいます。こちらが会員資格とも言える運用能力を欠いているのですから、共同体の運営上不可欠である相手の協力が得られないわけであり、当たり前と言えば当たり前です。運用能力がないと、仮に向こうが助け舟を出してくれても、それが助け舟だとわからず、あるいはそうとわかっても、どう乗っていいかわからないうちに共同体自体が消滅してしまいます。

ここでそもそもなぜディスコース・マネジメントのようなものが必要なのかを考えるに、それは英会話の本質とでも言うべきものに由来します。第一に、英会話は言葉だけの問題ではなく、上の「人にものを頼むような状況では、Please という言葉でその姿勢を明示する」といったプラグマティクスの問題でもあります。単語や文法だけでは足らないのです。第二に、上でも触れたように英会話では参加者が協力して会話共同体を盛り立てるための段取りやルールが種々用意されており、それを理解し、運用する能力がないと沈黙という異常事態を招き、共同体を強制終了させてしまいます。このような事情を踏まえて相手と協力しながら会話を始め、続け、かつ終了させるスキルの総体がディスコース・マネジメントだと言えます。

してみると、英会話をこなせるようになるには、今いちど英会話がどういうものかを確かめ、それを踏まえた上で英会話に固有の運用能力として具体的に何が必要かを振り返ったみた方がよさそうです。

★ 英会話は言葉プラスアルファ

基本的な英語力があるのに会話になると続かない、相手の話の内容がわかっていてもついていけない学習者に共通しているのは、会話を言葉の問題という角度からのみ捉えていることです。こういう人にとっての英会話は、書き言葉を音声化したものと変わりません(オーラルコミュニケーションの教科書に載っている会話例を見るとますますそう思えてきます)。そしてこういう人に限って、これだけ単語を知っており、文法のテストもまずまずなのに、どうして話せないのだろうと疑問を持ち、悩むことになります。その一方で、後述するとおり会話のプロセスはリアルタイムの急流であるため、みんな、中途半端なフレーズで済ませているのに、書き言葉の音声化を図るべくきちんとしたセンテンスを作ろうとモタモタしているうちに会話の流れから取り残され、挫折感を味わうことになります。

しかし、実際の英会話というのは書き言葉を音声にしたものとはまるで違います。会話は言葉だけの問題ではないので、イディオムその他英会話特有の言い回しを知っていればいいというものではありません。言いたいことを英語で言うためにどういう語句に置き換えたらいいのかという知識だけでは不十分で、これに加えて、実際に言葉がどう使われ、その状況でどういう役目を果たしているのかを知る必要があります。そこでの言葉の使い方が相手にどう映り、どう受け止められるのかということまで考えなければなりません。これが「プラグマティクス」と呼ばれるものです。

一例として会話を切り上げる場面を考えてみるに、言葉として、I've got to go.(失礼しなければいけません、行かなきゃ)とか、Bye (さようなら)を知っているだけでは不十分です。ひとしきり話をしたところで、いきなり、OK, good bye. と言って立ち去る人はいません。最初に素振りを含め、終わりが近づいていることを示す pre-closing と呼ばれるステップを経て、初めて「さようなら」を言うのであり、また、並行して、相手と話ができてよかったと相手を持ち上げ、あるいは「もっと話をしていたいのにすみませんねえ」という気持ちをにじませ、さらに、「また会いましょう」「また連絡をとりあいましょう」などと、場合によっては以下のように、かなりくどいやり取りが日常的に行われたりもします。

A: Anyway, seems that we need to think about it for some time.(いずれにしろ、しばらくの間、考える必要があるね)
B: Right. Er, well, I think that's all for now. I'd better be going.(そう。まあ、こんなところかな、きょうは。そろそろ失礼しなくちゃ)
A: It's been great talking with you. (きょうは話ができてよかった)
B: Same here.(こちらこそ)
A: We must get together some time next month.(来月あたりまた会いましょう)
B: Sure. See you next month. And let's stay in touch.(もちろん。じゃ、来月ということで。また連絡しあいましょう)
A: Of course. OK. See you.(そうでね、そうしましょう。じゃあ、また)
B: Bye for now.(じゃあ、きょうはこれで)
A: Bye till next month.(じゃあ、来月)
B: Yeah, next month. Bye.(ええ、来月。じゃあ)

同様に話し手として会話に入っていくときも一定の段取りがあり、頃合いとどういうツールを使うかがわかっていないと、まだ自分としては話が終わっていないのに相手が話し始めてしまったり、どう答えようか迷っているうちに、話題自体が変わったりしてしまいます。加えて、会話が続いているときも、短い答えでは済まず、ある程度長めの返答が期待されている場合に、Yes/No 程度で終わらせようとすると、「会話共同体」の運営に非協力的なパートナーという印象を与えてしまいます。

このように、単に言葉ないし言い方を知っているだけでは足らず、どういう場面でどういうタイミングで所定のツールを使うかまで知らないと会話はこなせません。だからこそ、実際に使われる状況に即しての言葉の意味合い、すなわちプラグマティクスにまで目を配る必要があるわけです。

一方、英会話が情報のやり取りのためだけでなく、人間どうしのふれ合いのためにも使われるという側面があることから、プラグマティクスを意識して会話を組み立てる必要があります。たとえば、英語で、「ネクタイ、すてきですね」と言われた場合、その人どうしの関係によるし、状況にもよりますが、Thank you. と応じると、何か自賛と取られるおそれがあるような状況では、I bought it at ABC. (いや、ABCで買いましてね)あるいは My wife bought it for me. (家内が買ってくれたもので)などと言い訳的なことを言って受け流したりします。また、Do you know...? と聞かれた際に、英語的には Yes. と言ってから、相手の出方を待ち、それに応じて、次に何かを言うのが手順であり、Yes, I know. などと言うと、これもその場の状況次第ではあるものの、「知っていますとも。で、それが何か」といった不遜とも取れる言い方になるおそれがあります。

してみると、会話でのやり取り即ちディスコースというのは、話し手が何を伝えようとしているのかに加えて、それが聞き手にどう響き、どう映るのかまでを含んだ言い方だと言えます。英語で「会話」という意味でも使われるディスコースには最初からプラグマティクスが要素として含まれているのだと解されます。言い換えれば、会話は、決して、ただの言葉のやり取りではなく、プラスアルファがけっこうものを言うことがわかります。

★ 会話という名のプロセスの特徴

このように会話では、知識としての言葉に加えて、言葉を具体的状況に見合う形で運用する能力が要求されますが、そこで言う具体的状況がどういうものかを理解するには、会話という名のプロセスが持つ独特の特性を知っておく必要があります。

会話という名のプロセスにおいて特徴的なのは、まず英会話の場合は日本語の会話と異なり、沈黙が流れるのは異常事態であり、間断なく言葉のやり取りを続けながら交替で話題をふくらませていくことです。したがって、話し手になったり聞き手に回るためのスキルが要求され、さらに自分が話し手になったときにしかるべく話をふくらませるスキルも持っていなければなりません。次に、英語では以心伝心が通用せず、基本的に何でも言葉にして明示するのが普通であることから、話を組み立てるための、What's more, As a result of that といった標準的部品を相手に対してこれだよと見せながら使うスキルが求められます。加えて、リアルタイムで進む作業であることから、主語を省略したり、あとから補足説明を付け足したりといった、書き言葉の世界にはない様々な慣行があります。そして、会話共同体にほころびが生じたときに、それを修正するための約束事も決まっているので、どういうものがあり、どう使うかを知っておく必要があります。

そうとすれば、2,000-3,000語の単語力があり、中学英文法程度の知識のある人の場合、英会話の流れが実際にどういうものであるかを踏まえた上で、流れの緩急を見きわめながら出入りするためのディスコース・マネジメントがわかれば、あとは練習です。状況に見合う方法できちんとものが言えるようになるかは、リハーサルの繰り返し、つまり千本ノックをこなすかの問題です。

★ 世界基準の英会話力

状況に見合う言い方できちんとものが言えるようになれれば、今や言語運用能力判定指標の世界基準と言える欧州評議会のスケール(最低のA1からネイティブ以上とされるC2までの6段階評価)で以下のようなスペックを持つB2レベルの会話能力をクリアすることになります。このB2レベルというのは、ケンブリッジ英検で言えば、First Certificate of English (CFE)であり、英米の多くの大学が水準以上の英語力の証明として認めているレベルです。

(1)何かを的確に論じるというスキル
✓ 例を出したりして自分の主張を裏づけることができる
✓ 選択肢のメリット・デメリットを挙げながら、ある問題に対する自分なりの考えを補強できる
✓ 「かくかくしかじかだから、こうだ」「そうとすれば、こう言える」というふうに筋道のとおった構成で話を展開できる
✓ 一つの視点を支持し、または支持しない角度から自分なりの主張を展開できる
✓ 問題点を明らかにして、相手に分が悪いことを納得させることができる
✓ 考えられる原因や結果につき推論を展開し、あるいはある状況を想定した上で推論ができる
✓ 自分の知っている事柄であれば、議論に参加して積極的に発言でき、その際、コメントし、自分の立場を明確に示し、選択肢を評価し、また仮定をした上でものごとを論じることができる
(2)普段の会話で、話が途切れないようにするスキル
✓ 話が自然に続き、しかも、状況に応じて的確に発言できる
✓ まわりがうるさい環境でも、相手が標準語で話してくれる限り、何を言っているのか、細かい点まで理解できる
✓ 自分が話す番になったらそれに乗り遅れず、話を続けることができ、また、切りのいいところを見きわめて会話を終えることができる(ただ、ときにはこのあたりに手間取ることがある)
✓ That's a difficult question. といった決まり文句で時間をかせぎながら、何を言うかを考えることができる
✓ 話を途切れさせず、また、必要に応じて会話のイニシアティブを取ることができるので、相手に余計なストレスを感じさせることなく、やりとりを続けることができる
✓ 話の方向が変わる、急にインフォーマルなスタイルに変わる、あるいは話の焦点が変わるといった、通常の会話にありがちな展開についていくことができる
✓ 意図しないで相手が笑うようなことを言ってしまう、あるいは、いらだたせるといったこともなく、また、仲間のネイティブスピーカーと話しているときとは違う格別の努力を相手に強いるようなこともなく、普段からごく普通につきあい、話すことができる



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(2)ディスコース・マーカー

前回のディスコース・マーカーがいずれも、ただ「聞いています、まだ話す順番を譲ってくれる必要はありません、どうぞ続けて」という意味あいであるのに対して、以下のものは、ちょっとしたコメント形式であり、本質的には変わらないものの、「会話共同体」をいっしょに盛り上げている感じがします。

イギリス人と比べ、アメリカ人はこういった一歩踏み込んだ言い方を好むというのが個人的印象です。そしておもしろいもので、アメリカで勉強したり、生活したりした人にはこの傾向が刷りこまれるようでもあります。ですから、アジア人留学生の英語を聞いているとアメリカで勉強したかが大体わかります。

▶ 共感していることをアピールする

1. A: It snowed thirty centimeters last night. B: Indeed! (=Amazing!) • A: Nice day, isn't it! B: It is indeed. (= used to express something strongly) • A: We live in strange times. B: Indeed (=Truly, really).

2. A: My husband works for a Fortune 500 company. B: That's good. • We’re going to buy a new car. B: Oh, that’s good.
MEMO That’s good. が「そりゃいいですね」「そうですか、それはけっこう」という感じなのに、Oh, good. は相手がしたこと、達成したこと(つまり過去の事実)に対して「そりゃよかったね」という感じになります。例えば、A: I got an A in Business English. B: Oh, good.

3. A: I just received an acceptance letter from XYZ Business School. B: That's great.

4. A: How many members are there in your family? B: We're a family of five. I have a younger sister and an elder brother. B: That's nice.

5. A: Finding work is tougher for older people. Don’t you think? B: Right. (= I accept that view) • My guess is that we would have to leave by ten at the latest. B: Right (= You’re correct.). • A: So, anyway. B: Well, you know. A: Right. (= I see.)
MEMO 「あなたのおっしゃるとおり」という感じが前面に出ているツールです。ただ、Right は、単に承りました、聞き届けましたという程度で使われることもあります。例えば、次のやりとりは電話での問合せの最後の部分です。A: OK then. B: Thank you very much indeed. A: Right. B: Bye. A: Bye.

6. A: She says she has invested more than $1 million in her business. B: I can't believe it. That's a lot of money. Serious money.

7. A: The island was once inhabited but the community was wiped out by a volcano eruption. B: Oh, no. How terrible!

8. A: Remember John Doe, the guy from California? B: Yes, what about him? A: He committed suicide last week. A: That's terrible. I'm sorry to hear that.

9. A: What with our cat getting sick and all that we missed the chance of a holiday. B: That's a shame! I'm sorry to hear that. • A: This temple was once destroyed by arson. B: What a shame!

10. A: I don't think I can come to Jane's farewell party. Say hello to her for me. B: That's too bad. OK. I'll tell her that you wanted to say hello. • A: After a year of job searching, he’s still without a job offer in hand. B: Oh, that’s too bad. • A: Seems she lost all her things in the fire. B: That’s too bad.
MEMO That’s too bad. は、「それは残念」「そりゃ大変だ、気の毒に」というニュアンスで使われますが、皮肉な調子で「おお、そりゃ大変だ」「そうかい、大変だね」という感じで使うこともあります。A: I need this yesterday! How fast can you get this done? B: But I’ve been sick! A: That’s too bad. You still have to get this done in two days. 同様に「外に遊びに行きたい」と言っている子供に対して、That’s too bad. You have homework to do.(そりゃお気の毒さま。なにしろ宿題があるからね、そっちをやらなきゃ)という感じでも使います。



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作者: hinata nhashi@alc.co.jp

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(1)ディスコース・マーカー

会話が主体の映画を調べると Now, Well, Right, Yes, OK, So が頻繁に使われていることが知られています。また、日常会話では、Mm, Uh-huh, Yeah が頻出します。こういったディスコース・マーカーと呼ばれるツールの会話での役どころを理解し、頭の中でのリハーサルを繰り返さないと、いくら基本文法がわかっており、単語を多数知っていても、会話ができるようになりません。

実際、相手の言っていることはわかるのに、自分からはうまく会話の流れに入っていけない原因の一つは、ディスコース・マーカーをうまく使えないためです。ペラペラしゃべり続ける相手のペースで進んでいる流れをせき止め、自分の順番を確保するツール、例えば、Well, I see your point, but...と切り込めないとおもしろくありません。あるいはもっと強めに、Listen, と打って出るためのツールだってあるわけです。

またディスコース・マーカーを要所要所で使い続けないと、相手には話を聞いてくれていないなと映ります。

そして、何よりも大事なこととして、マーカーをここぞという所で打ち出せないと、その発言が先行している発言との関係でどういうものかが相手にわかりにくく、交互に会話共同体の構築に寄与しつつ、情報・意見・気持ちを伝え合うという会話のプロセスが不完全燃焼で終わってしまいがちです。とりわけ、会話本で学べる定型的なやり取りではなく、非定型的な会話を自分で組み立て、運用していく上で決定的な役割を果たします。

要するに、ディスコース・マーカーは、英会話を成り立たせる本質的要素の一つなのです。いわば「会話共同体」の運営にちゃんと参加していることを示すため、当事者が交互に繰り出すマーカーであり、会話の管理運用(ディスコース・マネジメント)上、どういうマーカーがあり、どういうタイミングで出すかを知ることは英語でコミュニケートしようという以上、避けて通れない問題です。

そこで、こうしたマーカーを聞き手が繰り出すものと話し手が繰り出すものとに分けた上、聞き手が繰り出すものをさらに、「聞いているよ」と合図するだけのもの、積極的にフィードバックを与えるもの、その他のマーカーに分類してみました。

数が多いので、何回かに分けるつもりです。また、まだドラフト段階ですので、訳文は省略してあります。

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聞き手が使うディスコース・マーカー

★ 「聴いてます、どうぞ続けて」と合図する

英会話ではタイミングよく話し手と聞き手が入れ替わるというルールになっていますが、順番をまだ譲らなくていいですよ、そのまま話を続けてくださいと合図するツールです。次項で説明する「フィードバックを与えるマーカー」と異なり、会話共同体の運営上最小限のエネルギーしか供給しない、消極的なツールと言えます。

1. A: And then the manager took us around and showed us the work they do. B: Mm. A: After that we were taken to the factory canteen.

MEMO 同じように、相手の言ったことをひとまず受け止めるために使う Yeah. Uh-huh. Mm. の中では、Mm. が一番弱い感じがします。

2. A: Go straight down the hallway and make a left when you reach the first crossing hallway. B: Uh-huh. (= I see) A: You'll see the elevators on your right.

MEMO ここでの Uh-huh は、口を閉じたまま言う「ア ハ」です。口をやや開いて言う「ア ハア」 だと、「ははあ、なるほど、やっぱりね、そうだったのか」という意味の Aha に聞こえてしまうので注意を要します。

3. A: If it ever happens again, we'll have to have it serviced. B: Yeah. (= I agree)

4. A: Basically, you do it like this. B: I see. (= I understand)

5. A: Jokingly, some people say HBC stands for "Here before Christ." B: Oh, really? A: Well, as a matter of fact, it stands for the Hudson Bay Company, a more than 300-year old company. A: How interesting!

A: So, this is your first time here in Japan. B: Actually, this is my second visit. A: Oh, really? When were you here before?

A: I went to Kamakura last Sunday. B: Oh, really? A: Yeah, I saw that huge Buddha.

MEMO Really? だけでも十分ですが、Oh を入れることで、「それは知らなかった」というニュアンスが加わります。そこで、相手も、話を続けて、内容を補足しようとするものです。

6. A: The temple is said to be built in the 11th century. B: Is that so?
MEMO Is that so と Is that right? は入れ替えて使えます。

7. A: Cyclones, typhoons and hurricanes are all the same thing. B: Is that right?

8. A: We were already drunk when we got back to the hotel. B: And then? A: Of course, we hit the bar for our nightcap. A: Nightcap? B: Yes, a round of chilled Vodka to top off the night. A: Mm, Vodka...chilled Vodka.

9. A: We paid something like $50 each for dinner. B: Did you?

MEMO 相手がBe動詞以外の一般動詞の過去形を使っているときに、それに呼応する言い方です。

10. A: We've spent a fortune on our cats lately, what with vet bills and special diet food. B: Have you?

MEMO 相手が 助動詞have の入っている完了形を使っているときに、それに呼応する言い方です。

11. A: How was dinner at XYZ? B: It was incredibly overpriced. A: Was it?
MEMO 相手が He/She/It was...というふうに、Be動詞の過去形was を使って何かを言った場合に、その部分に着眼して対応させる言い方です。

12. A: I was born on the island of Chichi-jima, the largest one in the Ogasawara Islands. B: Were you?
MEMO 相手が一人称の過去形でI was...と言った場合、そこでのwas に呼応するためには、were を使います。

13. A: So they eventually offered us a 5% discount. B: Five per cent? (=repetition) A: Yeah, 5%.


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即効ビジネス英会話第4回:徹底解説

ポッドキャストでお届けしている「即効ビジネス英会話」、第4回のための徹底解説です。

今回の会話例はこういうものです。

【状況】

挨拶の次は、これからの予定について話します。

★今回の英文

A: We'll take you to your hotel. It takes about an hour and a half from here.
B: Thank you. There must be some messages from the head office at the hotel.


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訳文入りだとこうなります。

A: ホテルまでお連れします。ここから1時間半ぐらいかかります。 We'll take you to your hotel. It takes about an hour and a half from here. 

B: ありがとう。本社からのメッセージがホテルに届いていると思います。 Thank you. There must be some messages from the head office at the hotel.

(a) なぜ We take you ではなく、We will take you なのか?

ホテルまで案内するのは、話している時点から見て「これから」起きることですから、

We take you to your hotel.

とは言わずに、

We will take you to your hotel.

となります。ただ、ここでは会話ですから、We will が縮まってWe'll という言い方になります。

仮に現在形で take を使うとすれば、「いつもそうしている」といったことを表すときに使います。例えば、「いつも電車で通勤している」と言いたいなら、

I take the commuter train to work.

という言い方になります。

(b) It takes about an hour and a half from here.での It はどういう意味なのか?

ここでの It は、動詞take+to不定詞とセットで使って、所要時間を表すのに使われます。典型的には

It takes about three hours to get to Osaka.(大阪まで行くのに大体3時間かかります)

というふうに使いますが、設例の場合は、to get to the hotel(そのホテルに着くのに)がわざわざ言わなくてもわかるということで省略されており、ちょっとわかりにくいかも知れません。

(c) なぜ There must be some messages from the head office at the hotel.とmustを使うのか

ここでBE動詞についている助動詞 MUST は、話し手がどういう状態にあるかを示す BE つまり「存する、そこにある」という動詞につき、どの程度、その公算が高いものと見ているかを伝えています。こうした確率の高低ないし公算の大小を表す助動詞を、確率100%から弱い方へと並べていくと、次のようになります。
WILL
MUST
SHOULD
CAN
MAY
COULD
MIGHT

一番強いのがWILLというのは、例えば、

Gas will burn if ignited.(ガスは点火すれば燃える)

に示されるとおり、100%そうなる場合に使われるからです。MUST はそれの次に来ますから、「十中八九そうだ」「まずは間違いなくそうだ」というケースで使います。従って、

There must be some messages from the head office.

と言っている人は、間違いなく何点かメッセージが入っているに違いないと自信があることがわかります。

この例からわかるとおり、助動詞というのは本動詞が伝える意味あいに独特のニュアンスを付加するツールです。つまり、助動詞がなければ、

There are some messages from the head office.

となり、単に確定的事実に言及する格好で「本社からのメッセージがホテルにある」という言い方になるのに対して、must を加えると、「間違いなくあるはずだ」というニュアンスに変わるのです。

(d) なぜ hotel には定冠詞がついているのか?

可算名詞 hotel が特定のホテルを指しており、話し手も聞き手もそのことがわかっているときは定冠詞をつけて使います。ここでは、既にyour hotelという話が出ていることもあり、hotelと言えば、予め来訪客のために手配がしてあるホテルのことであり、言った方も、言われた方もそのことがわかっていますから、当然、定冠詞をつけて使うケースです。

ちょっとしたチェック法として、that を入れてみるとわかります。つまり

Thank you. There must be some messages from the head office at the hotel.

での the hotel の the を that で置き換えてみます。

Thank you. There must be some messages from the head office at THAT hotel.

実際にはこういう言い方などしませんが、that を入れても意味がとおるなら、特定のホテルで、相手にもそのことがわかっているケースだと言え、したがって、the を入れる場面であることを確認できます。


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(後編)英政府が説く英会話の本質

第二に、英会話ではコミュニケーションがリアルタイムで進められる。

(a) 当事者にしかわからない指示詞

何かを指す言葉であって、しかも、相手がその場にいないとわからない this や that のたぐいです。英語では、pointer words と言い、専門家は、deixis (読み方は、die-ik-sis) などと呼んでいます。

例えば、前方で道が分かれているのを見たときに、「このまま行くの?それともあっちの方?」と一緒にいる人に聞く場合、Which road shall we take, this one or that one? と言うわけですが、ここでの this や that が「当事者にしかわからない指示詞」に当たります。

これは日本語でも同じで、われわれも、結構、以下のような会話をしているものです。

「あっちのあれは困るよな」
「そうそう、こっちだって事情があるわけでし」
「それにしても、この前のあっちのあれってどういうことなんだ」
「あれは何てかあっちの方の事情があって、この前のあれと同じことをやろうというんじゃないかなあ」

結局、リアルタイムで「会話共同体」を運営している当事者どうしだからこそ、「あれ」だの「あっち」だのと通じ合います。

特に、IGTが取り上げているとおり、大きなものを一緒に動かそうとしているときのように、「あれ」「こっちの」「この」が状況からすぐさま何のことかわかるときは多用されます。

Could we just move that into this corner here? (あれをこっちのこの角に持って来れないかな)

もちろん、書き言葉でもこの手の代名詞は使いますが、話し言葉で使われるものは、その場にいないと何のことかわからないという特徴があります。

(b) 省略

これもその場にいる人にしか通じない話ですが、まさに「以心伝心」の英語版です。

例えば、友達どうしショッピングに行って、品物を手に取りながら、ああでもない、こうでもないと品定めしているシーンをご想像ください。こういった場面では、日本語でも

A: 「(これは)どう?」 B: 「(それは)ちょっと派手じゃない」

などとやっているものです。

それと同じで、英語でも、例えば、「これ、どう」「いや、趣味悪いよ」というやり取りなら、こんな感じになります。

A: So, (shall we choose) this one? B: No, (I don't think we should choose this one because it's) tasteless.

こうした省略は日常のやり取り、あるいはオフィスでのやり取りでもおおいに行われています。だからこそ拙著『即戦力がつくビジネス英会話』(DHC) でも一章をこのために割いています。そのぐらいコミュニカティブ英語においては重要な要素なのです。

しかも、大事なことですが、規則性があります。この点、先に紹介した、Exploring Grammar in Context は、こうまとめています。

(i) I didn't phone yesterday. が Didn't phone yesterday. で済まされるように、冒頭の主語が省かれる。特に使われている動詞が hope, think, expect, believe といった思考を表す動詞の場合、特にこの傾向が強まり、Do you think he'll ring? などは、Think he'll ring? になる。

(ii) Are you ready yet? とは言わずに、普通は、Ready yet? で済ますとおり、主語に加えて助動詞(ここではBe動詞を指します)も省略される。例えば、上記 (a) の例をも含めたやり取りとして、こういうものがごく普通に行われます。

A: You said you live in Yoyogi. Is it a pleasant place to live? B: I like it, (I am) very happy, (I) must say.

(iii) See, hear, think などの場合、"have you" とか "do you" は省略するのが一般なので、普通はこういう言い方をする。

Seen Matt lately? NOT Have you seen Matt lately?
Heard you were ill. NOT I have heard you were ill.
Think he'll ring? NOT I think he'll ring.

(iv) 何かをオファーする場合を含め、 Do you want...? Would you like...? という形式の疑問文では、"Do you" や "Would you" が省略されるので、

Do you want another coffee? は、Want another coffee? になりますし、Would you like some more cake? は、Like some more cake? となります。

こういった省略は言ってみれば、多少省略しても通じ合うぐらいわれわれはツーカーですよねとアピールしているわけで、言葉を換えて言えば、何でもフルセンテンスできちんと言おうとすることは、敢えて隔たりを演出しているようにも受け取ることができ、コミュニカティブ英語という見地からは決して好ましくありません。その意味で、互いにフルセンテンスを使ったよそよそしいやり取りに終始している「オーラル・コミュニケーション」(中高の英会話教材)の会話例にはこれでいいのだろうかと疑問をおぼえます。

(c) フレーズの連続

会話の場合、いちいちきちんと主節と従属節から成る複文を組み立て、論文を読み上げているかのようなしゃべり方をするのは普通ではありません。

例えば、IGT は、こんな例を挙げています。

Sure we got there um at seven actually around six fifteen and class starts at seven and I went up in this building that was about five or six stories high and I was the only one there and... (みんな、そりゃ7時に着いたさ、いや、正確には6時15分かな。ま、授業は7時からなんだ。そこで、5階か6階建の建物の上の方に向かっていったんだけれど、誰もいないんだよ…)

このように、けっこう、and でずるずると続けたり、because の省略形である cos (発音はクに近い音を出しながらの「コズ」)あるいは so でつなげていくものです。

もちろん、and などを使って、一直線に進んでいくばかりであなく、従属節も登場はしますが、独特の使われ方をします。普通と異なり、主節などはなく、以下のように従属節単体で使われ、ある要素を強調するために用いるのです。

I can't angle it to shine on the music stand, and the bulb's gone, which doesn't help. (うまく譜面台に光が当たるよう角度を調整しようにもうまく行かないし、しかも電球が切れていてさ、ますますどうしようもないことになっちゃってさ)

また、こうした単体で使う従属節の機能として、IGT は、先行する自分の発言にコメントを加えたり、あるいは、話し手の意見を伝えるときの前触れとして使われる、以下のような例を挙げています。

A: Well actually one person applied.(いや、実際、一人応募してくれたよ)
B: Mm.(ほう)
A: Which is great.(上々だよ)← 応募者が一人来たという事実を強調
B: Though that's relative. (そりゃ見方によりけりってもんでしょう)← 発言者の事実に対する評価の前置き

第三に、英会話は、当事者が対面してのコミュニケーションという形を取る。

(a) あいまいな言い方

会話では生身の人間が直接、相対していることから、互いに相手を気遣って、敢えて断定調のもの言いを避け、あるいは「自分が、自分が」と映らないよう努めるものです。こうしたことから、thing, stuff, whatever といった曖昧な名詞を使いますし、動詞でも、使おうと思えばもっと正確な言い方があるのに敢えて、make, do, get, take といった汎用性の高いものを使って済ませます。形容詞や副詞を使う際も、nice, good, terrible, usually, totally, hopefully といった平凡なものが頻繁に使われるものです。

してみると、低頻出語彙つまりむずかしい単語をやたら使ってしゃべるということは、「私は普通ではありません」と主張していることにもなり、相応の覚悟が求められるとも言えそうです。

いずれにしろ、IGTは、英会話の世界では、人々は努めて自分が前面に出るような言い方を避けるために敢えて「ぼかした」言い方をし、互いに親しみが感じられるようにしているのであるから、言葉の使い方がいい加減というのとは異なっており、その意味で、会話では人は purposefully vague language (意図的にぼかした言葉遣い)をしているとしています。

ですから、聞き手が十分わかっているはずのときなど、以下の例のように「コーラか何か」といった言い方をします。

A: She doesn't like coffee.(彼女、コーヒー駄目なんだ)
B: Well, she can have a coke or something.(じゃあ、コーラか何かにすればいいんじゃない)

ここで、曖昧さを取り去って、She can have a coke. と言い切ってしまうと、決めつけた感じが強まり、何ともギスギスした感じになってしまいます。こういうことを認識することこそが「言葉の力」を知るということなのではないでしょうか。

(b) 助動詞によるニュアンスの調整

学校文法では、助動詞の意味合いを説明することもないまま、ともかく「こういうもんだ」的な教え方をしますが、may, might, can, could, must, should といった助動詞(専門家は modal auxiliary verbs 法助動詞と呼んでいます)は、IGTに言わせると、"regularly play a part in making sure that utterances do not sound too assertive or definite" (発言が過度に自己主張的色合いを伴ったり、決めつけ調になることを確実に防ぐために常時一定の役割を果たしている)のです。また、助動詞のみならず、ニュアンスを調整する possibly, probably, I don't know, I don't think, I suppose, perhaps といったツールは、いずれも、発言が断定調になるのを防ぎ、あるいは和らげるために役立つものであり、この点、前項の「意図的にぼかした言葉遣い」をするという発想に通ずるものがあるとしています。

例えば、

I reckon that might be true perhaps. (あるいはそれは本当なのかとも思えます)

という言い方を考えた場合、reckon, might, perhaps と幾重にも断定調となることを防ぐツールがかませてあるおかげで、言われた相手も安心して異を唱えることができようというものです。これが

It's true.

という断定的判断では取り付く島もなく、会話を進めようもありません。ということは、こういった決めつけではないことを伝えるツールを駆使しているからこそ人々は協力しあいながら、また、別方向へと話を発展させる糸口を残しながら言葉での共同作業ができるわけであり、人間社会にとりきわめて重要なルールだと感じます。

(c) 副詞によるニュアンスの調整

対面してのコミュニケーション、つまり普通の英会話では、副詞は最後にまわします。通常、副詞は動詞のそばに置かれますが、書き言葉でのルールを無視して、会話の場合、副詞は以下のように最後にまわす傾向があるのです。話し言葉の場合、書き言葉の場合と異なり、一度書いたものを推敲といったことができませんから、ひとまず大事なことを言っておいてから、その「衝撃」を緩和するために、副詞をあとからくっつけるのだと説明されています。

You know which one I mean probably. (どれのことを言っているのかおわかりですよね・・・おそらく)

おもしろいことに、最後に微調整をするという副詞の役割を反映して、書き言葉ではありえないことですが、isn't it といった付加疑問文のあとに副詞を入れたりもします。

Spanish is more widely used isn't it outside of Europe? (スペイン語人口はもっと多いんですよね・・・ヨーロッパ大陸外での方がという意味ですけれど)

★ さいごに

世の中、「英語が話せるようになりたい」「英語を話せるようににしてあげましょう」という人がおおぜいいる割には、ここで取り上げた英会話の本質に誰も目を向けていないような気がしてなりません。だから、単語力もあり、文法のわかっているのに、「英語が話せない」となげく人が多いのでしょう。

要するにこれまで何どか別の記事でも取り上げたように、英語を話せるようになるには、単語力や文法だけでは駄目で、コミュニケーション能力ないしプラグマティクス(自分の話をきちんと組み立て、展開できるスキルなど)といったプラスαが必要だということです。

近頃、言葉の力だの生きる力といったスローガン(?)を耳にしますが、学校でそういったものに焦点を当てるなら曖昧なまま使わず、今回取り上げたイギリス政府の会話研究ないし分析を見習って、それがどういうことを意味し、「言葉の力」を使う当事者にとりどういう意味合いがあるのかをきちんと説明して欲しいものです。ひと昔前なら、それこそ「言わなくても通じあう」ハイコンテクスト社会だと言えたかも知れませんが、都市化の影響なのか現代の日本は価値観が分化しており、親兄弟だってお互いにわかりあえなかったりするのですから、言葉を使って言葉の力を説明する必要があるのではないでしょうか。


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作者: hinata nhashi@alc.co.jp

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(前編)英政府が説く英会話の本質

Do Dapper Politicians Ever Speak Meaningfully?

「政治家さんたち、外身はいいものを着ているし、立派なのはいいとして、中身はどうなの、いったい内容のある話なんかできるの?」と問いかける、このセンテンス、実はイギリス政府による「英会話研究」の成果を反映しているもので、英会話の本質的特徴7つがすべて織り込まれています。今回は、この話です。

このところ何度か英会話がどういうものかを取り上げていますが、先日、留学生に日本文化を教えている先生と雑談をしていてこの問題について新たに気づいたことがあります。日本語では、よく「座談の名手」とか「話術に長けている」といった言い方がありますが、こういった人たちは、決して英語で言う conversationalist (= person good at or fond of conversation) ではないな、と。

以前から、英会話をテニスなどのように「打てば必ず返球がある」ゲームに例えるとすれば、日本語の会話はボウリングのように、「互いに投球を見守り、感想を述べ合う」ゲームだといった話をよく聞かされます。そういった下地があるところに、最近、なぜか「英語できちんとものを言えない」人々に接する機会が多く、もっとこのスタイルの違いを認識してもいいのではないか、そうすれば今の単語力・文法力を活かして英語が話せるのにとの思いが強まっています。

例えば、一般の英語学習者の場合、英会話が「間を置くことなく交替しながら進める」共同作業だという認識が希薄ですから、第一に、教室で質問されてもすぐ答えねばならないという切迫感がなく、仲間と相談したり、ぼーっとしたり、ともかく沈黙が流れて